■アジア8枠という“堕落”(その2)

前回のつづき

 なんでFIFAが2026年からW杯出場国を48に拡大し、アジアを「優遇」して8もの出場枠を割り振ったのかと言えば、ウン十億円単位の移籍金をポンと出して欧州四大リーグから選手を次々に爆買いするような中国マネーに目がくらんだからではないでしょうか。

「アジア枠を8に拡大すれば中国でもW杯に出場できるだろうから、巨額の中国マネーがサッカー界に落ちるだろうし、13億人のマーケットにサッカーを浸透させられる。今から10年後には人口で中国を追い抜くと言われているインドが強くなってW杯に出場してくれたら、もっとカネがもうかる!」

これが今のFIFAのホンネだろうと思います。

FIFAは2年連続で赤字決算が続いており、だから「カネの亡者」になっているのでしょうが、それは自浄能力を欠いた幹部たちの相次ぐ汚職が原因です。

その穴埋めのために、W杯で行われるサッカーの質を落してでも出場国を増やし、サッカーは弱いけどカネをもっている国が予選を突破しやすくなるようにしようというのであれば、クォリティの低いゲームをたくさん見せられる私たちサッカーファンが最大の犠牲者となるわけで、たまったものではありません。

2026年大会で、片方のチームが5バックをゴール前にベタ引きして90分のあいだ専守防衛に努めたにも関わらず、0-7や0-8で惨敗みたいな試合が続出すれば、W杯の権威は失われるでしょう。

どんなお金持ちでも1日に使える時間は24時間しかありません。よってサッカーのようなスポーツは、他の娯楽と消費者の「可処分時間」を奪い合う競争をしているわけです。

W杯の質が落ちてつまらないゲームが続出すれば、目の肥えた消費者はUEFAチャンピオンズリーグなど良質のサッカーコンテンツに逃げるでしょうし、あるいはWBCで盛り上がったばかりの野球やバスケットボール、映画やオンラインゲームなど他の娯楽へ向かうかもしれません。

そうなればFIFAはW杯の放映権料やスポンサー料を高く売りつけることができなくなりますから、めぐりめぐってFIFAの幹部たち自身のクビが締まることになります。

参加国が48にも拡大すれば、一つの国でW杯を開催する場合にそれだけ経費負担が重くなりますし、W杯の人気低下によって放映権や広告を売ることで得られる収入も減少ということになれば、まさにFIFAのオウンゴールであり、「これって誰得?」という話です。

 中国の「爆買いマネー」を当てにして2026年W杯の出場国を48に増やしたのだとして、これから9年も時間があるのにFIFAの思惑通りになるでしょうか?

FIFAの前会長であったジョセフ・ブラッターは、アフリカ諸国から組織票をもらうことで会長選挙に勝利できたので、その見返りとして2010年W杯の開催権をアフリカに与えたと言われています。

そして2004年3月のFIFA会議で実際に2010年W杯の開催地が南アフリカに決まるのですが、有色人種への差別政策であるアパルトヘイトを撤廃し、歴史上はじめて全人種参加の民主的な選挙を行い、ネルソン・マンデラ氏を中心に国づくりを再スタートさせた南アフリカに対する国際社会からのイメージが非常に良かったこと、金やプラチナ・ダイヤモンドなど豊富な地下資源に恵まれた南アフリカがアフリカ大陸随一の経済大国であったことも、開催地決定に大きく関係していました。

2014年W杯がブラジルに決まったのは2007年4月ですが、これも当時のブラッター会長が2014年大会を南米大陸でやるとあらかじめ決めていて、ブラジル以外の南米諸国が開催地立候補を取り下げたため、無投票で決まりました。

そして2010年に、2018年W杯開催国がロシアに、2022年大会がカタールに決まります。

2010年大会が南アフリカ・2014年がブラジル・2018年ロシア、世界経済について良く勉強している人ならこの組み合わせにピンとくるのではないでしょうか。

そう“BRICS”です。

BRICSとは、B=Brazil R=Russia I=India C=China S=South Africaの頭文字をとったもので、世界最大の投資銀行の一つゴールドマン・サックスが最初に提唱した経済用語です。

2003年ごろから始まり2007年いっぱいまで続いた世界経済の拡大局面でこの5つの新興国は好景気に沸き、急速な経済成長をとげたことで世界的に注目を浴びたわけですが、2010年W杯が南アフリカに、2014年W杯がブラジルに決まったのは、ちょうどこの期間です。

2018年W杯開催国がロシアに、2022年大会がカタールに決まったのは、2008年にいわゆるリーマンショックが起こって世界経済が大ダメージを負った直後の2010年でしたが、まだこのときは原油相場が高くて、ロシアやカタールのような産油国に好景気の余韻が残っていた時期です。

で、何が言いたいかというと、FIFAはその時その時の「景気が良くてカネを持っている国」につられる傾向が強いということ。

ところが4年というW杯の開催サイクルよりも速く世界経済というものは動いていくので、FIFAの思惑が大ハズレになることもしばしばなんですね。

南アフリカ大会は何とか乗り切れましたが、リーマンショック以降、原油や鉄鉱石・大豆などの価格が下落してその輸出に頼るブラジル経済は一気に不況へ。

コンフェデをやったW杯の1年前から本番直前までブラジル全土でW杯反対の大規模デモが何度も発生したことは皆さんご存知だとは思いますが、それは「不況で生活が苦しいのに何でカネのかかるW杯なんてやるんだ? そんな予算がブラジル政府にあるなら国民の福祉に回せ」という怒りが原因でした。

スタジアム建設もなかなか進まず、ブラジルW杯はセレソンの成績と合わせてボロボロの大会になってしまいましたね。

そして今現在は原油・天然ガス価格が急落し、その輸出に頼るロシアが不況で苦しんでおり、政府もお金が無くてこちらもカツカツの状態です。

ロシアは事実上の独裁国家なので、W杯反対のデモが起こりそうになれば政府が力づくで押さえつけるとは思いますが、ロシアの原油マネーにつられたFIFAの思惑が外れて、ロシアの副首相が「FIFAに払う2018年W杯のTV放映権料が高すぎる。何とかしてくれ」と、今になってクレームをつけているのはそういう事情があってのことです。

FIFAは2026年W杯で、「選手爆買い」の中国マネーを当てにしているようです。

昨年に外国人選手の獲得に費やした額が円換算で520億だとか、カルロス・テベス一人のサラリーが2年間で94億円だとか言われていますが、サッカーのビジネスとして将来にわたって持続可能なのか疑問に感じます。

どう考えても、中国クラブのサポーターから得られる入場料収入やレプリカユニホームなどのグッズ売上から、爆買いに必要な資金がまかなえているとは思えません。

ではそんな巨額のカネがいったいどこから出てきたのかといえば、やはり中国で現在進行中の「不動産バブル」のおかげでしょう。

中国スーパーリーグ1部16チームのうち、ざっとあげただけでも広州恒大・広州富力・河北華夏・河南建業・石家荘永昌・吉林亜泰・杭州緑城などなど、マンションの建設販売が代表例ですが親会社がなんらかの形で不動産業と関係しているクラブが少なくありません。

中国経済において、不動産業は金融や製鉄・セメント製造・海運などあらゆる業界と密接につながっていますから、もし不動産バブルが崩壊すれば、北京国安や上海上港も含め、ほぼすべてのクラブが壊滅的打撃を受けるのは避けられないと思います。

中国の不動産バブルが崩壊するのかしないのか、するとすればそれはいつなのか、それは誰にもわかりませんが、FIFAの思惑通りに2026年W杯開催の時点でも中国の不動産バブルを資金源とする爆買いは持続可能なのか、疑問に思います。

かつてFC東京がワンチョペを、C大阪がフォルランを獲得して大失敗したことがありましたが、Jリーグでも中国の金満クラブのマネをして大金を払って世界から大物選手を連れて来ようという動きがありますが、それはやめた方が賢明だと思います。

同じお金をかけるなら日本人選手の育成にかけるべきで、Jリーグ各クラブはあくまでも地に足をつけて、長期にわたって持続可能な成長を目指すべきです。

ACLで中国クラブと対戦すれば、日本人選手が欧州四大リーグに移籍しなくてもオスカルやフッキ・パウリーニョみたいなワールドクラスの選手と戦って自分の能力を高めることができるわけですから、そういう形でチャイナマネーを利用すれば十分でしょう。

 それではまとめですが、中国の不動産バブルマネーにつられたFIFAが2026年W杯の参加国を48に拡大したものの、アジア予選が簡単になりすぎて日本代表の強化が難しくなり、予選も本大会もつまらないゲームが増加して、サッカーコンテンツとしての代表戦の魅力が低下してしまったということになれば、われわれサポーターにとって最悪の結末となります。

FIFAは汚職がらみで辞任したブラッター前会長に代わってインファンティーノ氏率いる新体制となったばかりですが、新しくなったFIFA技術委員会がオフサイドを廃止しようと提案して世界中から袋叩きにあったり、サッカーのクォリティ低下やグループリーグを3チームで戦うことによって不公平が生じるなど非常に問題が多い、W杯参加国の急拡大を強行しようとするなど、しょっぱなから迷走しているように見えます。

サッカーを良く知らない素人(本職は弁護士だとか)の方が、世界のサッカーをメチャクチャにしてしまったなんてことにならなければ良いのですが...。

<了>



サッカー ブログランキングへ
↑いつもポチッと応援ありがとうございます。



  

■コメント

■コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

 



管理人多忙につき、マメにレスを差し上げられません。
ゴメンナサイ。
もちろん、すべてのコメントは拝見させていただきますが、サイトポリシーに違反したものは、予告なく削除します。
悪しからずご諒承ください。

プロフィール

スパルタク

  • Author:スパルタク
  • FC2ブログへようこそ!

月別アーカイブ

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

リンク






   

ブログ内検索