■ドリブラー養成計画

 今回は「ドリブラー養成計画」と銘打ち、日本人選手の攻撃面における個の能力を高め、世界に通用する優秀なドリブラーを1人でも多く世に送り出すための特別講座を開きたいと思います。

このブログを長く愛読してくださっている方にはもうバレバレのことでしょうが、高いドリブル技術やスピードの緩急で何人もの相手選手をヌルヌル抜いていくウインガーは、当研究所・所長であるスパルタクの大好物です。

パスサッカーを信奉する当研究所ですが、4-1-2-3あるいは4-2-3-1システムを使うなら、高度なドリブル・テクニックを駆使し個の能力で相手チームの守備を崩すことができるプレーヤーをサイドに置くことで、初めて理想のパスサッカー戦術が完成すると考えています。

体が大きくなくてフィジカルコンタクトの能力でも劣勢な日本人選手の、攻撃面での個の能力を高めるためには、やはり足元の技術(具体的に言えばドリブルやフェイント)で一対一に勝って相手を抜くためのスキルを磨いていくことが欠かせません。

 それでは世界に通用するドリブラーになるために何が必要なのでしょうか?

ドリブルで一対一に勝って相手を抜くために必要不可欠だと当研究所が考えているものは、次の2つです。

(1)ボールを自分の意図した通りに動かし、「マシューズフェイント」や「ダブルタッチ」のようなドリブル技を正確に実行できるだけのスキルを持っていること

(2)自分と対面している相手がどういう状態になったらドリブルで抜くチャンスなのか、そのタイミングを知識として持っていること

(1)については、多くのサッカー教本やDVDが販売されており、それらを参考にしながら選手個人で地道に練習していくことでかなりの程度まで上手くなれるはずですし、プロを目指している人がこうした努力を自発的に辛抱強く継続できないようではお話になりません。

ただし市販のドリブル教本では非常に多くのドリブル技が掲載されていますが、コンパクトなブロックをつくって守るべきスペースを限定し、そこからチャレンジ&カバーで組織的にプレスをかけていく守備戦術が当たり前となっている現状では、「シャペウ」や「ヒールリフト」みたいな技は、あまり実用的とは言えません。

守備の組織化・サッカーの高速化を踏まえ、当研究所が習得を推奨する技は「マシューズフェイント」「ステップオーバー」「ダブルタッチ」の3つです。

この3つを完璧にマスターできているなら、世界に通用するドリブラーになるために最低限の準備が整った状態であると当研究所は考えていますので、良く練習しておいてください。

以降この3つの技をすでに習得していることを前提として、この特別講座を進めていきます。

 (2)について、日本サッカー界ではあまり研究されていないようで、相手選手がどういう状態になったらドリブルで抜くチャンスなのかということについて、私が目にした現役Jリーガーが書いたドリブル教本でもほとんど明確にされていませんでした。

他の本でも「相手選手がこう動いたらこちらはこうドリブルする」といったような、受け身のやり方を教えるものがせいぜいでした。

よって、この特集記事では(2)を詳しく取り上げていきますが、当研究所は、攻撃側から積極的にプレーを仕掛けていくことでドリブルで相手を抜きやすいシチュエーションを自発的につくっていくことを目指します。

参考にするのはFCバルセロナに所属するメッシやイニエスタのプレーです。

メッシやイニエスタは世界を代表するドリブルの名手ですが、彼らのプレーを良く観察していると、ドリブル突破に成功した瞬間、対面している守備側の選手の多くが、ある決まった状態になっていることに気づきます。  

裏を返して言えば、メッシやイニエスタは相手を一対一で負けるような状態に追い込んでからドリブル突破を仕掛けることで、勝つべくして勝っているのです。

守備側の選手が攻撃側に対して脆弱になるのは、「両足をそろえて立った状態」の時です。(図1)

図1
ドリブル0
(クリックで拡大)

この状態になると、横方向へあまり大きく移動することはできなくなりますし、左右どちらに対しても一歩踏み出してしまえば、踏み出した足が着地するまでの間、相手選手は反対方向へ移動することが絶対にできなくなります。(図2)


図2
ドリブル1


ドリブラーが意図的に相手選手をこのような状態に追い込み、その瞬間を狙って相手選手が動いたのと反対方向へボールと自分の体を通せば、一対一に勝って相手を抜くことができます。

それでは具体的に自分がプレーしたつもりになって一対一の闘い方をイメージしてみましょう。

当研究所所長であるスパルタクは利き足が左なので、右ウイングのポジションでのプレーを例にあげてみます。(利き足が右の人は、左右を逆に読み替えてください)

自分が右サイドで味方からパスを受けて前方へ数mドリブルすると、守備側の選手が寄せてきたとします。

<ステップ1> そこで相手の背後の状況を見て、左右どちらを抜けばゴールの確率が高くなるか、どちらを抜けば自分でシュートを打ちやすいか、得点につながるラストパスが出しやすいかを考えておきます。

ここでは、こちらから見て相手の左側をカットインドリブルで抜いてから、左足のインにかけたコントロールシュートでゴール左上スミを狙うか、それが難しい状況であれば、DFラインのウラヘダイアゴナルランする味方にスルーパスを出すのを狙うことに決めたとしましょう。

<ステップ2> 相手が最初から両足をそろえて立ってくれれば楽なのですが、セオリー通りに片足を前に出して半身で構えていたら、ドリブルのスピードをやや落とし、ボールを小刻みに動かしながら、図1のように相手の両足がそろうようにゆさぶりをかけます。

<ステップ3> 相手の両足がそろった瞬間がドリブル突破を仕掛けるタイミングです。

ここでは相手の左を抜きたいわけですから、図2のように相手選手が自分の左足を一歩外側へ踏み出すことで、左側(相手から見た場合は右側)へ絶対に移動できないようなシチュエーションを自らつくっていきます。

まず体の重心を落として右足を踏み込み、自分の体重移動で右側(相手から見た左側)を抜くぞと見せかけつつ、左足でボールを右へ動かすフェイント(マシューズフェイントのファーストタッチ)を行います。

左足でのボールタッチだけでなく、体全体の重心移動も使って「右を抜くぞ」というフェイントをしっかりかけることで確実に相手の逆を取ることができ、ドリブル突破に成功する確率も上がります。

<ステップ4> 相手がこちらのフェイントにひっかかり、図2のように左足を外側へ一歩踏み出した瞬間に、マシューズフェイントのセカンドタッチを行います。いったん右へ動かしたボールを左足のアウトサイドで左前方へ押し出し、踏み込んだ右足を踏ん張りながらボールと自分の体を相手の左側を通して逃がすことで、ドリブル突破を図ります。

もし自分の体重移動によるフェイントだけで相手がひっかかり左足を踏み出してくれた場合は、マシューズフェイントから途中でステップオーバーに切り替え、左足でボールをまたいでからアウトサイドで左前方へボールを押し出しつつドリブル突破を図れば、ミスプレーの確率が低くなると思います。

言葉で説明すると長い時間かけてプレーしているような気がしてきますが、ステップ3・4は、相手の左足が浮き上がった瞬間からゼロコンマ数秒、長くても1秒ほどの勝負です。

同じシチュエーションで「ダブルタッチ」も使うことができます。

相手の右を抜くと見せかけた体重移動のフェイントにひっかかり、相手が左足を外側へ一歩踏み出した瞬間、自分の右足でボールをファーストタッチして左へ動かし、左足でボールを前方へ転がして相手の左を突破するわけです。

イニエスタやメッシが得意としているプレーですね。

実は図2の状態以外にも、ドリブル突破する絶好のタイミングがあります。(図3)

図3
ドリブル2


図2の動作の続きで、外側へ一歩踏み出した左足が着地して相手の全体重が左足にかかり、次に右足を左方向へ引いてから着地するまでの間は、その選手は左右どちらへも動くことができません。(無理をすれば慣性の法則でそのまま右方向へ進むことができるかもしれませんが、足がついていかないので最後には転倒することになるでしょう)

こちらがボールを動かしたり体重移動などでフェイントをかけることで相手が図3のような状態になった時も、マシューズフェイント・ステップオーバーやダブルタッチを使って相手の左側にボール(A)と自分の体を通して突破することができますし、この瞬間、相手はこれ以上右側へ移動できないので、ボール(C)と自分の体を相手の右側を通してドリブル突破を図ることもできます。

さらにメッシが時々やりますが、自分がタッチライン際にいてピッチ中央方向へのカットインを狙っている時、相手を図3のようなシチュエーションに追い込んでから、相手の股の間の重心がかかっている左足のすぐ脇にボール(B)を通し、自分の体を相手の左から逃がすことで突破するというやり方もあります。

相手の全体重が片足一本にかかっている瞬間は、たとえその足の10㎝脇をボールが通過してもカットすることができません。

以上がドリブルで相手を抜くときの基本テクニックですが、これをベースにして練習や実戦における相手選手との様々な駆け引きの中からさらに応用技術を磨いていくことで、自分のドリブルテクニックをさらに高めていってくれることを希望します。

それでは座学はこのくらいにして、メッシ先生に実技のお手本を見せてもらいましょう。




このビデオの中でメッシはごく基本的なドリブル技術しか使っていませんが、いずれも両足をそろえた相手が横へ足を出したタイミングで、その逆を突いてドリブル突破を図っているのが良くわかります。

 原口(ヘルタ)・宇佐美(アウクスブルク)・乾(エイバル)・宮市(ザンクトパウリ)・斎藤(横浜M)・中島(F東京)の各選手から建英君ピピ君に至るまで日本のドリブラーの皆さんにとって、何か参考になるところがあれば幸いです。

この特集記事で取り上げたことが完璧にマスターできれば、たとえ欧州四大リーグレベルの選手と対峙しても、ドリブルで相手をヌルヌル抜いていくことができるようになるはずです。あとは自分を信じ、できるようになるまで努力し続けることができるかどうかが勝負の分かれ目。

ワールドクラスのドリブラーになりたいのなら「マシューズフェイント」「ステップオーバー」「ダブルタッチ」の3つは最低限、完璧にマスターしておくべきです。

そして相手がどういう状態になったときにドリブルで抜くチャンスが訪れるのか、その正しい知識を持っていれば、チームの得点力アップのために自分の武器であるドリブルを最大限生かすことができるようになります。

最近シュツットガルトでもサイドで起用されることが多い浅野選手に、「マシューズフェイントを完璧にできるように練習しておくこと」という宿題を出しておきましたが、その理由が今回の特集で良く理解できたのではないでしょうか。

香川・清武両選手のように主なプレーエリアがピッチ中央付近の選手も、「ボールキープ力」や「相手の守備を個で崩す力」をアップさせるために、どういう技術を相手がどういう状態のときに使えば自分のドリブル突破で局面を打開してゴールにつなげることができるのか、その知識を持っておくことは大変重要です。もちろんそれをプレーとして正確に実行できなければ意味がありませんが。

建英君のドリブル突破はあの年代にしてはかなりイイ線を行っていると思いますが、相手を惑わすフェイントにさらなるキレを与えるため、より大きなモーションで体重移動をかければ、もっと楽に相手の逆を取って抜くことができるようになると思います。

逆に守備側の視点で言えば、ワールドクラスのドリブラーが相手を抜くためにどういうことを考えているのか理解できたでしょうし、「両足をそろえて構えるな」と当研究所が口を酸っぱくして言う理由もお分かり頂けたことでしょう。この特集記事を参考にして日本人選手の守備時における一対一の能力をもっともっとアップさせ、相手のドリブラーからどんどんボールを刈り取って行って欲しいです。

それでは、そう遠くない未来に世界屈指の日本人ドリブラーが何人も出現する日がやってくることを楽しみにしています。



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