■日本代表、ロンドン世代でサウジに勝利(その2)

 前回のつづき

 選手個々で特筆すべき活躍だったのは、まず清武選手。
トップ下として攻撃の組み立ての中心となり、パスを大迫・原口・久保らに上手く散らしていきました。プレッシャーのかかる中、先制ゴールとなるPKも落ち着いて良く決めてくれましたね。
ただ、代表でもクラブでも定位置を確固たるものにするためには、ボランチやサイドの選手がボールを持っているとき、その選手をサポートして常にグラウンダーでパスが受けられるポジショニングを取ることと、どんなに厳しいプレスをかけられてもバイタルエリアで正確にボールをトラップして前を向き、ゴールにつながるパスあるいはシュートの数をどんどん増やしていくことです。
セビージャで出場機会を与えられても、ミスを恐れているのか無難なヨコパス・バックパスが多いのは残念。レギュラーポジションが欲しいのであれば、勇気を出してゴールに貢献するようなパスに挑戦していくことが欠かせません。試合に出られないときは90分間走り切れる持久力を保つためのトレーニングを欠かさないことも重要です。

原口選手は、香川選手が触ってコースが変わったボールを正確にシュートして決勝ゴールをゲット。
守備も非常にがんばっていましたが、代表・クラブでの連戦の疲労がたまっているのか体が重そうで、ドリブルにいつものキレがなかったように見えました。オマーンとの試合でも彼の動きがあまり良くなかったので、もしかしたらと思っていたのですが、練習中に監督・コーチ陣が早く気づき、カシマでのテストマッチは休ませて完全休養にあてるべきでした。

大迫選手は、味方からのパスを受けてポストプレーで前線に基点をつくり、味方が押し上げる時間をつくるなど攻撃面で大きな貢献。
ただ、前半15分をすぎてチームに得点が無かったので、ゴールを焦るあまり前へ前へと行きすぎ、チーム陣形を間延びさせて選手同士の距離が遠くなったことでパスがつなぎにくくなり、逆に得点から遠ざかってしまったことについては今後の課題です。
チーム全体としても大迫選手のポストプレーに頼りすぎのところもあったので、2列目の3人がもっとがんばらないといけません。

長友選手は、左サイドをかけあがって原口選手の決勝点をナイスアシスト。
守備もまずまずでしたが、失点は彼の責任ではないものの、西川選手が相手のシュートを弾いたあと、すばやく自分の体を前へ向けることができていたら、うまくクリアできていた可能性があります。

森重選手は後半37分、相手のスルーパスをカットしたプレーはとても良かったです。
前半17分に相手がドリブルからシュートしたシーンは、山口選手がついていたので対応が難しかったとは思いますが、相手のボール保持者にもっと寄せた方が良かったのではないでしょうか。相手選手の能力がもっと高かったら、ドリブルでブチ抜かれて失点していた可能性があります。

長谷部選手は、自分のパスで攻撃をビルドアップするという課題に意欲的に取り組んでいた点は評価できますが、さらなる努力を求めたいです。浮き球のミドルパスの精度にやや問題があり、グラウンダーのショートパスをもっと大事にしてトップ下や両サイドハーフに辛抱強く入れていった方が、ベターだと思われます。
また、トップがゴールを焦るあまりゴール前へ行くタイミングが早すぎて、陣形が間延びしてしまったり、守備時にコンパクトなブロックをつくれなくなっている時は、ピッチ上の監督として修正の指示をチームメイトに出して欲しいです。
前半バックからパスを受けたとき、トラップが大きくなったことが1度あり、UAE戦の決勝点となったPKを誘発したプレーを思い出してヒヤっとしました。つねに足元にボールがピタッと吸い付くようなトラップをお願いします。

後半から右サイドハーフとして投入された本田選手は、2点目の起点になったパスは良かったのですが、その他のパスやシュートの精度には欠けました。片方を必ずタッチラインで切られるサイドは守備がしやすい反面、攻撃で相手を崩すのは高い技術やスピードが要求され、ピッチ中央部よりも難易度が高くなります。
持久力や足元の技術を回復させるトレーニングをしっかりやり、攻撃的なボランチとしてピッチ中央部でプレーすれば、まだまだ彼も代表で生きると思うのですが...。

 逆に後半からトップ下に入った香川選手は、まったくと言っていいほどゲームに参加できていませんでした。 ボランチやサイドバックがボールを持ったらそちらへ寄っていってパスを受け、そこからワントップやサイドの選手にパスを散らして攻撃を組み立てるのがトップ下の仕事であり、香川選手のプレーで一番改善すべき点であると以前指摘しました。
CLのスポルティング戦まではそうした課題を解決しようという姿勢が見えていたのですが、どうしてやめてしまったのでしょうか。
代表やクラブでの生き残りのために「パスが出せるトップ下」という新たな武器を身につけることをギブアップしたということであれば、トップ下で起用するのはもうやめにすべきです。
現時点においてボールを前へ運ぶ能力のない彼をトップ下に入れるとチームの攻撃力がガタ落ちになってしまうというのは、この試合の後半やオーストラリア戦などで何度も何度も証明されています。
もし彼を生かしたいなら、2トップのセカンドストライカーとして大迫選手のようなセンターFWタイプと組ませるべきで、クラブチームも出場機会を求めてそういうシステムを使っているところへ移籍した方が良いのではないでしょうか。
現在の絶不調の原因が足の故障にあるなら試合や練習を休んで完全に治るまで治療に専念すべきですし、背番号10が過度のプレッシャーになっているなら来年から別の番号で心機一転、一からやり直したらどうでしょうか。

久保選手は、不慣れな右サイドハーフとして起用されましたが、数度シュートシーンはあったもののあまり機能せず。
ゴールが欲しいあまり前へ行くタイミングが早すぎ、彼自身もともとパス展開力があるタイプではないので、陣形が間延びしてチームがボールをポゼッションしている割には効果的なパスがつながらない原因となっていました。
前半5分にヒザを痛めて満足に強いボールが蹴れなくなったように見えましたが、正直に申し出てベンチに交代を求めるべきだったのではないでしょうか。先発のチャンスを絶対に逃したくないという思いが強かったのでしょうが、実質10人で戦わないといけないチームに大きな迷惑がかかってしまうことになりますし、自分自身にとっても選手生命に影響を与える様な大ケガにつながりかねません。まだ若いのですからこれからいくらでもチャンスはあります。ベンチも彼の異変に早く気づいて交代させないといけません。

酒井宏選手は、後半ロスタイムにアルシャムラニへのマークがずれて危うく失点するところでした。
自分の体をもっと相手につけて競るべきでしたし、もしジャンプのタイミングが遅れてしまったのだとしても、絶対に手を使わずにアルシャムラニの体に自分の胸あたりをまず密着させ、空中を飛んでいる相手の体をボールの落下地点から押し出すようにジャンプすれば、相手に強いヘディングシュートを打たれることはないはずです。また、クロスの精度もなかなか改善されませんね。

吉田選手は、失点シーンで相手のファーストシュートをなんとか足に当てることはできなかったものでしょうか。攻撃面では、ヘディングシュートを最悪でもクロスバーの下へ飛ばして欲しいですし、ロングパスもミスが目立ちました。

        ☆        ☆        ☆
 
 サウジ戦に向けて当研究所が推奨していたシステムは以下のようなものでした。 

               大迫  
           

      原口      清武      小林祐
                       (斎藤) 

            山口   長谷部   
                 

     SB     森重    吉田   酒井宏
    

                西川


 右サイドハーフ以外は、ほぼそのままサウジ戦の先発メンバーとなり(左SBは長友選手の状態を練習でチェックできないので、一番調子の良い選手が出ればいいと考えて空欄にしておきました)、負ければW杯予選敗退もあり得るという非常に重要な試合で、このシステムで勝利という結果が得られたことについてはうれしく思っていますし、ハリルホジッチ監督の決断を評価しています。

この試合のスタメンを見て「驚きの采配」とか「大きな賭けに出た」と報じたマスコミもありましたが、プレー内容を冷静に分析して1年以上前から本田選手の右ウイングからのコンバートを8月のUAE戦後からトップ下に清武選手を起用することを提案してきた当研究所にしてみれば、勝利の確率が一番高いと思われる極めて論理的なシステムでした。

今年6月のキリンカップで「(北京)世代の成功・失敗の経験から得られた知恵をより若い世代に継承させつつ、ロシアW杯に向けてゆっくりと着実に日本代表の世代交代を進めていくことが、日本サッカー界全体の強化にとって極めて重要」であり、「これをW杯の予選で勝利という結果を出し続けながら成功させなければならないという意味において、日本代表は大切な時期に差し掛かっている」と指摘しましたが、迷走を続けていたハリルジャパンに、ようやく光るい兆しが見え始めたように思います。

(当ブログ過去記事・キリンカップが突きつけた課題) 

ただ若い選手は経験が少ない分、チームが危機に陥ったときの乗り越え方がわからなかったりするので、まだまだベテランの力も必要ですし、再びポジションを奪い返すためにきっとハードワークしてくれるはずです。

そういう健全な競争が日本代表を、さらに強くしていくわけですから。

 W杯アジア最終予選の前半戦で非常に重要な試合となったこのサウジ戦、勝利という結果は順当なものでしたが、ロシアで好成績を残すためには、試合内容の方でまだまだ改善すべき点が多いです。

特にゴールを焦るあまり、縦パスを急ぎすぎてしまい、ボールをチームとしてポゼッションしている割には、質の高いシュートチャンスが少なかったところは反省点です。 

たとえ監督からそういう指示があったのだとしても、「タテに速いサッカー」や「デュエル」が機能していないなと感じたら、ピッチ内の選手たちが自分の頭で考えて監督さんの同意を得てから、1.5~2秒ぐらいボールをキープしてタメをつくってみたり、コンパクトな守備ブロックをつくってゾーンで守るような臨機応変さが欲しいです。

それが世界で勝つために求められる「サッカーの基礎から応用力のピラミッド」のうちの、応用の部分です。

世代交代を含めたハリルジャパンのチームづくりが遅れていますし、若手に経験を積ませて日本代表の選手層をもっと厚くするためにも、来年3月のUAE戦までに何試合かテストマッチを組めないものでしょうか。欧州組だけでも試合はできますから、来年1月あたりに比較的温暖なスペインやフランスなどの地中海沿岸都市で、テストマッチができたら良いのですが...。

 最後にこの試合を裁いた審判団のジャッジは正常でした。それだけにあのUAE戦を担当したカタール人レフェリーの異常さが際立っています。

◇    ◇     ◇     ◇     ◇     ◇    ◇

        2016.11.15 埼玉スタジアム2002

          日本 2 - 1 サウジ


     清武(PK)45'        ウスマン 90'+
     原口   80'


     GK 西川         GK アルウワイス

     DF 長友         DF ハッサン.F
        森重            ウサマ.H
        吉田            ウマル.H
        酒井宏          アルシャハラニ
               
     MF 長谷部        MF アルハイバリ
        山口            (アルルワイリ 70)
        清武             S.アルファラジ
       (香川 65)          アルシャハリ
                       (アルムワラド 57)
     FW 原口             アルジャッサム
        大迫            (アルシャムラニ 79)
       (岡崎 90+)         アルアビド
        久保       
       (本田 46)       FW アルサハラウィ


        ☆        ☆        ☆

 これまで当研究所はあまり足元の技術の話はしてこなかったのですが、攻撃面で日本人選手の個の能力を高める目的で、ワールドクラスのドリブラーを育成するための特集記事を書きたいと思います。

図をいくつか作成しなければいけないので、今月末か来月あたまのアップを予定しています。

原口(ヘルタ)・宇佐美(アウクスブルク)・斎藤(横浜M)・中島(F東京)の各選手から建英君ピピ君に至るまで、日本のドリブラーの皆さん、お楽しみに!



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