■香川選手の新たなチャレンジ

 今回のテーマは香川選手についてです。

2016-17シーズンが開幕しても、香川選手はドルトムントでレギュラーポジションを失った状態が続き、代表戦でも不調が続いていました。

そのことについては特集記事ですでに指摘したとおりです。

(当ブログ過去記事・香川選手はどうしたら復活できるか?) 

その後、10月2日のレバークーゼン戦で久しぶりに出場機会が与えられ、出場時間は短かったのですが、彼の課題であったバックやボランチからパスを受けてそれを正確に前へつなぐということを地道にやろうとしていたのが見てとれ、ようやく正しい方向へ歩みだすことができていたように思います。

それがトゥヘル監督に認められたのか、CLのスポルティング・リスボン戦でもフル出場の機会が与えられ、ミスはあったものの、バックやボランチからパスを受けてそれを前へつなぐというトップ下の仕事を地道にこなし、チームになんとか勝利をもたらすことができました。

そこからゴールにつながるようなラストパスを出す回数を増やすことが次の課題であるとオーストラリア戦でのエントリーで指摘しておいたのですが、そこで壁にぶち当たっているようでした。



例えばこの場面。(ビデオの3:55ぐらいから)

図1
SL1

(クリックで拡大、以下同様)

オーバメヤンがDFラインのウラでスルーパスを受けようとしますが、スポルティングの選手に読まれ密着マークを受けています。

香川選手もそれが十分わかっていたのでスルーパスを出すことができず、次のプレーを迷いながら出したパスを相手選手にひっかけてしまった感じでした。

この局面では図1のように、オーバの動きによって相手バックがつられ、それによってできたスペースにまずスルーパスを通し、左アウトサイドからウラヘ抜けたデンベレにボールを受けさせてシュートさせるか、スポルティングの選手の視線を彼に集中させた上でデンベレからのマイナスの折り返しを香川選手やオーバが決めるといったようなアイデアが欲しかったですね。

つづいて別の決定的なシーン。(4:27ぐらいから)

図1と同じようにバイタルエリアでフリーで前を向いた香川選手。図2の白いラインでスルーパスを出せば、ウラへ抜けたオーバがボールを受けてGKと一対一という場面でしたが...。

図2
SL2


香川選手の決断が遅く、ボールを持ちすぎているうちに直前にいた相手選手に詰められてしまい、パスをもらい損ねたオーバもオフサイドポジションへ...。(図3)

図3
SL3


苦しまぎれに出したスルーパスは、初めからオーバに通る可能性ゼロでした。このあと香川選手はユニホームを噛んで悔しがっていましたね。(図4)

図4
SL4


香川選手は失敗を恐れているのか、次にどういうプレーを選択するかの決断が遅いために、ゴールにつながるようなアシストをするタイミングがあってもそれを逃してしまうことがとても多いですね。

最後に後半のシーンから。(6:01あたりから)

図5
SL5


この局面では、ボールを受けた香川選手が大慌てで右サイドにいた味方へパスをしてミスになり、非常にもったいなかったのですが、バイタルエリア(相手バックラインの前のスペース)がたっぷりと広く空いていますし、トップ下としてこんなにおいしい局面はありません。

ただし、スルーパスを出すにはスポルティングの選手2人でつくる“門”までやや遠く、門を確実に通すには強いパスが必要となりますが、それではパススピードが速くなりすぎてオーバが受けられなくなる可能性が高くなってしまいます。

そこで香川選手が数タッチドリブルして相手DFを自分の方へ引きつけてから、タイミングよく適度な強さのスルーパスを出してやると、ウラヘ抜けたオーバも受けやすくなり、GKと一対一の局面をつくりやすいと思います。

 ともかくアシストするチャンスが来ても、香川選手は結果を出そうと焦っては絶対にいけません。

常に冷静さを保ち、どこへパスを出せば味方のゴールをアシストできるか、あるいはそのリターンをもらっていかに自分が得点するか、そのアイデアを試合中に楽しみながら見つけだすことです。

前述の3つの例でそのヒントを示しましたので、香川選手自身で良く研究してみてください。

そしてアイデアがゲーム中にひらめいたら「失敗したらどうしよう」などといった邪念は一切捨て、パスを出せる一瞬のチャンスを絶対に逃さずに、勇気をもって自分が決断したことをすぐさま実行に移すこと。

アシストが一本成功したら自分のプレーや判断力に自信がつき、次のアシストやゴールがどんどん決まっていくはずです。

スルーパスの精度を上げたいなら、芝生の上にコーンを2つ置いて相手選手2人でつくる“門”に見立て、その門の間を正確に通しつつコーンの後ろ5mでボールの勢いが弱まるようなスルーパスを出す練習を徹底的にやった方が良いと思います。

ドリブルしながら自分がパスを出す位置とコーンまでの距離や角度を変えたり、パスを出す足を左右で変えたりしながら、練習を数多くこなすことで自信をつけていくべきです。

前述の3つの例も含めてスルーパスを出すときに特別難しいキックは必要ありません。多くの場合、一番基本的なインサイドキックでも十分間に合うはずです。

ゴールやアシストのような価値の高いプレーほど、足のアウトサイドやヒールを使うような難しいキックが必要だと日本の多くのプロサッカー選手が誤解しているようですが、一番簡単で正確性が高いインサイドキックで用が足りるなら、わざわざ失敗する確率の高い難しいキックを選択する必要はないのです。

日本の指導者はほとんどの場合、この重要な事実に気づいていない気がします。
 
 多くの人が、香川選手がドルトムントに移籍して1~2年目のようなプレーを期待しているようですが、それは今のドルトムントでは求められていないように思います。

ユルゲン・クロップ監督のゲーゲンプレスというカウンター戦術のもと、香川選手はセカンドストライカーとしてレバンドフスキのようなセンターFWの周囲を動き回り、味方からパスを受けてラストパスを出したり、自分でゴールを決めたりすることでドルトムント移籍1年目から大活躍したわけです。

しかしゲーゲンプレスが研究され相手チームに引き気味に構えられてしまうとなかなか勝てなくなってクロップ監督は解任、ドルトムントの経営陣はカウンターサッカー一辺倒ではなくポゼッションサッカー導入の必要性を感じたのでしょう、グアルディオラ時代のFCバルセロナのサッカースタイルを強くリスペクトしているトーマス・トゥヘル氏が新監督として招聘されます。

トゥヘル監督が二列目の選手に求めているのはバルサでいう8番や10番のような役割、つまりバックやピボーテ(守備的MF)からボールを受け、それを確実に3トップやオーバーラップしたサイドバックへ配球したり、ゴールにつながるようなアシストをしながらチャンスがあれば自分でもゴールを決めるという役割ではないかと思います。

理想の選手としてはシャビやイニエスタということになります。

逆にゲーゲンプレス時代の香川選手のように、トップ下でありながら中盤でのパス回しにあまり参加せず、センターFWのすぐそばにいて味方からのパスを待つようなセカンドストライカー的なプレーは求められていないので、トゥヘル体制になってから香川選手の出場機会がぐっと減ってしまったのではないでしょうか。

それがトゥヘル監督がいう「シンジは自由にプレーができない」という言葉の真意ではないかと推測します。

ですから、多くの人が期待している香川選手がドルトムントに移籍して1~2年目のようなプレーをし続けるかぎりトゥヘル監督には起用してもらえず、今のドルトムントで香川選手が生き残るためには、味方からボールを受けそれを3トップなどへ確実につないで中盤での攻撃の組み立ての中心となり、そこからゴールにつながるラストパスを数多く出すという、よりパサーに近いトップ下へとプレースタイルを変えていく必要があるように思います。

香川選手が「パサー」という新たな武器を身につけることに成功すれば、現在は彼が出場してもほとんど機能していない日本代表の4-2-3-1システムのトップ下のポジションでも、チームの勝利に大きく貢献する活躍ができるようになるはずです。

香川選手はバルサでプレーすることが夢だと語っていましたが、バルサのポゼッションサッカーを理想とするトゥヘル監督のもとで彼が課題として取り組んでいる「パサーとしてのトップ下」へのプレースタイルの転換は、もし香川選手が今この瞬間にバルサへ加入できたとしても、先発ポジションを獲得するために同じように乗り越えなければいけない課題だとも言えます。

試合に出てゴールがないと、マスコミやサポーターから失望の声が多くあがるかもしれませんが、パサーとして攻撃の組み立ての中心となることでチームを勝利に導き、それをトゥヘル監督が評価してくれるかぎり、香川選手はその他の雑音を気にする必要は一切ありませんし、そうした地道な仕事で自分の足元をしっかり固めた上で、アシストやゴールのような数字に残る結果を積み上げていけば良いのです。

香川選手がドルトムントでレギュラーポジションを手に入れるために「パサーとしてのトップ下」という新しい武器を身につけるチャレンジをしている今はとても重要なときであり、クラブで彼の努力の成果がハッキリと出るまでは辛抱してやり、UAE戦・タイ戦・オーストラリア戦のように中途半端な状態で香川選手を代表戦のトップ下で起用して自信を失わせるような愚は避けるべきです。



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