■日本サッカー界、混乱の原因

 前回記事で指摘したように、ハリルホジッチ監督の戦術選択の誤りによって、イラク戦が致命的な引き分けに終わる寸前だったところを山口選手のスーパーゴールに救われ、「(守備で)デュエルにこだわりすぎた」「監督の指示を聞きすぎてロングボール攻撃が多すぎた」という反省の声が選手たちから上がり、コンパクトな守備ブロックをつくってゾーンで守り、グラウンダーのショートパスを使った攻撃で貴重なゴールをあげたオーストラリア戦。

監督の判断ミスをピッチ内の選手たちが一生懸命カバーしているという日本代表の現状に大いなる不満を感じていますが、アウェーで1-1という結果について現時点では悪いものではないと思っています。

イラク戦のゲーム内容を見れば、ハリルジャパンが攻守両面でチーム組織の構築に遅れていたのは明らかで、アジアカップ2015からポステコグロウ監督が戦術にポゼッションサッカーを採用し、シュウォーツァー・ニール・ブレシアーノらの世代に見切りをつけ、積極的に若手を登用して計画的に世代交代も進めてきたオーストラリアと比べれば、特に試合の後半、守備重視のカウンターサッカーになってしまったことについてはやむを得なかったと思います。

あの試合もデュエルとか言って日本の選手がバラバラに一対一を挑んでいたら自爆していたことでしょう。

W杯の欧州予選・ユーロの予選ですと、あるグループの上位3チームがW杯で決勝トーナメントに行くだけの実力を持っているなんて状況が起こりえますし、予選10試合がすべて終わって勝ち点差1あるいは得失点差・総得点の差で本大会に出場できる、できないが決まるなんていうのもザラ。

だから自分たちと同じぐらいの実力の相手であっても、守備重視のカウンターサッカーでアウェーを戦い、最低でも勝ち点1を確保するような戦術を選択することも良くある事です。

日本サッカー界はこういう経験がまだ足りないように思います。

 そんなオーストラリア戦のあと、日本のサッカー言論界を眺めていて強い違和感をおぼえたのが、セルジオ越後氏の「臆病なサッカーにがっかりした」というコラム。

(http://www.soccerdigestweb.com/news/detail/id=19579)

「自陣に引いてチャンスを待つだけだった」とハリルジャパンのカウンターサッカーを批判していますが、この人ザックジャパンがブラジルW杯で負けた時、「スペイン・日本のようなパスサッカーは終わった」とかいって、ボールを長い時間支配するサッカーを批判していたんですが、わずか2年前にご自分で何を口走っていたのかもう忘れてしまったんでしょうか?

 (http://www.nikkansports.com/brazil2014/column/sergio/
news/p-cl-tp0-20140621-1321445.html)

ブラジルW杯で日本が敗退したときに、「ザックジャパンはポゼッションサッカーのせいで負けた。世界で勝つためにはカウンターサッカーに転換しろ!」という意見が、マスコミを含む日本のサッカー界でかなり多かったと記憶していますし、日本サッカー協会がそういう声に引きずられてハリルホジッチ氏を連れてきたんじゃないですか。

ブラジルW杯のときにポゼッションサッカーを批判していたセルジオ氏が今ごろになってポゼッション派に変節したのだとしても、オーストラリアはアジアでは数少ないワールドクラスの相手であって、その相手にアウェー戦でボールポゼッション率でも
ゴール決定機の数でも上回って勝つようなサッカーをするためには、ザックジャパンが敗退したあともセルジオ氏の主張とは正反対に、ポゼッション戦術が得意な優秀な監督さんをヨーロッパあたりから日本代表に呼んでこなければいけなかったんですよ。

オーストラリアがロングボールをひたすら放り込むカウンターサッカーを捨てて、新しい監督のもとポゼッションサッカーを採用したのとは逆に、ブラジルW杯後に「ポゼッションサッカー悪玉論」が台頭した日本では、「タテに速いカウンターサッカー」をやるハリルホジッチ監督を呼んできて、ベタ引きできたシンガポールやカンボジアにカウンター攻撃のためのスペースを消されて苦しみ、今月のイラク戦ではロングボールの縦ポン・サッカーが機能せずあわやドローになりかかり、アウェーのオーストラリア戦で相手にボールを圧倒的にポゼッションされて「臆病なサッカーだ」と叩く人が出てくる始末。

ブラジルW杯以後の日本のサッカー界は混乱しているというか、本当にうろたえていますよね。

じゃあどうしろと言うのでしょうか。

「ポゼッションサッカー悪玉論」あるいは「カウンターサッカー悪玉論」みたいな、白か黒か・善か悪かの単純な二元論ほど、
日本サッカー界に大きな害を及ぼす考え方はありません。

ポゼッションサッカーとカウンターサッカーを相手やシチュエーションに合わせて両方やれるようにしておけば、戦術選択の幅が広がってより柔軟な戦い方ができるようになりますし、世界で日本が勝つためには理想主義(ポゼッション)と現実主義(カウンター)をうまく使い分けていくことが欠かせないと思います。

具体的にはオーストラリア戦の前半の戦い方をベースに、コンパクトな守備ブロックをつくってゾーンで守るのは同じで、あとはDFラインを低くして守備重視のカウンターサッカーをするか、それとも高く押し上げてパスサッカーをするか戦術を使い分けていくのです。

攻撃は原口選手のゴールシーンが一つの理想型ですが、ボールを奪ったらグラウンダーのショートパスをテンポ良く前方へつなぎ、わざと空けておいたバイタルエリアに侵入した味方にパスを出してラストパスの起点とし、最後はウラヘダイアゴナルランする味方へスルーパスを出してゴールを決めさせる。

カウンターでもポゼッションでも、センターFWが相手ゴールから離れるようにポジショニングすることで相手のバックを引きつけ、DFラインのウラのスペースをできるだけ広く保つというのは同じです。

こういう柔軟なサッカーを相手がサウジだろうがオーストラリアだろうがポルトガルだろうがやらなければいけません。

 セルジオ氏と言えば、いつもJリーグ組を代表で使えといっていますね。

彼は、「代表にはコンディションの良い選手を選ぶべき」で「大半の海外組とJリーガーに、大きな力の差はないと考えている」から、代表には国内組を使えと主張しています。

(http://www.soccerdigestweb.com/news/detail/id=19197)

私も、本当に実力があるなら国内組にも等しく出場チャンスが与えられるべきだと考えていますが、大半の海外組とJリーガーに大きな力の差はないという彼の意見には賛成できません。

オーストラリア戦の前半のような攻守にわたって組織的でプレースピードが速くプレスの掛け合いも厳しいインテンシティの高いサッカーを、残念ながら今のJリーグでは見ることはできませんし、国内組主体で先発メンバーを組み、ぶっつけ本番であの試合を戦ったら引き分けることも難しいと思います。

原口選手が相手GKとの一対一を制して貴重なゴールをあげてくれましたが、フィジカルコンタクトの強さ・ドリブルのスピードや技術・シュート決定力で彼に匹敵する「個の能力」を持ったJリーガーは、ほとんどいないんじゃないでしょうか。

Jであれだけゴールを量産している小林悠選手も、代表に来ると攻撃では消えている時間が長いですし、単純にJリーグのある選手が昨シーズン20ゴールあげたから、ドイツやスペイン・イングランドのクラブに移籍しても20ゴールあげられるとは言いにくいところがとても残念です。

ところで国内組だけで臨んだ東アジアカップ2015、ハリルジャパンは最下位に終わってしまったわけですが、そのときセルジオ氏はこんなことを言って批判していました。

「Jリーグのレベルが低いからアジアで勝てないということだよ」

(http://www.soccer-king.jp/news/japan/national/20150810/338855.html)

「アジアで勝てないほどレベルの低いJリーグ」の選手が、ドイツやスペイン・イタリアでプレーしている大半の海外組と大きな力の差がないというのも理解不能なんですが、アジアで勝てないレベルの国内組を「コンディションが良い」という理由だけでW杯のアジア予選に出場させろというセルジオ氏の主張はもっと不可解です。

結局セルジオ氏の主張は「批判のための批判」なんですよね。

ザックジャパンのポゼッションサッカーを批判したかと思えば、ちょっと時間がたつとハリルジャパンのカウンターサッカーを「臆病で情けない」と批判する。

国内組で臨んだ日本代表が東アジアカップで最下位に終わり、「Jリーグのレベルが低いからアジアで勝てない」と断じておきながら、しばらくたつと主力の海外組を招集した代表チームを批判して「JリーガーをW杯のアジア予選で使え」という。

是々非々でものごとを論じるということができずに、日本代表がなにかやるたびにそれを否定し、いつもその正反対をやれというだけで、本当に無責任極まりないと思います。

にもかかわらず「日本サッカー界のご意見番」のように彼の主張をありがたがる一部の記者やサポーターがいて大変困るのですが、こういう無責任な主張に引きずられているから、ブラジルW杯以降の日本サッカー界はうろたえ、右往左往し、混乱しているのではないでしょうか。

サポーターの皆さんは、何も建設的なものを産み出さない「批判のための批判」に耳を貸さないようにしてください。

セルジオ氏のコラムは「絶対に正しいマニュアル」ではありません。絶対に。

10年ぐらい前まではセルジオ氏も日本の解説者のなかではマシな方だと思っていたんですが、実は、日本代表が何をやってもそれを批判するように組まれたアルゴリズムで動くAI(人工知能)が、代表戦が終わるたびにセルジオ氏のコラムを自動生成しているんじゃないかと疑いそうになるくらい、最近は本当にひどいと思います。

 最後に余談ですが、中東出身のレフェリーでしたが、オーストラリア戦のジャッジは極めてノーマルでした。だからこそ日本対UAE戦の笛を吹いた、あのカタール人審判団のジャッジの異常さがあらためて際立ちます。



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当ブログ過去記事・ポゼッションサッカー悪玉論は間違い

当ブログ過去記事・ポゼッションサッカー悪玉論は間違い(その2)



  

■コメント

■その通りだ!! [nakahiro]

正確に分析された結論が、理路整然と記されている。
全くもってその通りだ!!

セルジオの記事の矛盾と極悪な影響を検証し、レッドカードを突きつけるべき時期に来ている。

■ [名無しさん]

セルジオ越後はたとえ日本代表がW杯で優勝しても批判するような気がします笑

まあ日本代表叩きで飯食ってる人間ですから、見る側のリテラシーが重要ですね
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