■日本代表、イラクに冷や汗の勝利(その2)

前回のつづき

 選手個々で特筆すべき活躍だったのは、値千金の決勝ゴールをあげた山口選手。CKからのこぼれ球を見事なダイレクトシュートで決めてくれました。

ゴールが欲しくて欲しくてたまらないときに、日本代表は4トップ5トップみたいな形になって相手のマーカーまで引っ張ってきてしまい、「相手ゴール前に2階建てバスを置く」ような状況を自らつくり出してしまうということをこれまで何度も指摘してきましたが、相手のMFがDFラインに吸収されて一直線になっているような状況で効果的なのは、実はペナルティアーク周辺からのミドルシュートです。(下図)

攻撃7
(クリックで拡大)

もしこちらのFWがゴール前でベッタリ張りついてもいないのに、相手チームのMFがDFラインに吸収されてゴール前で一直線になっているような場合は、最低でも1人はこぼれ球狙いでペナルティアーク付近で待ち構えていて、ミドルシュートを狙うべきです。 選手によって得意不得意があるでしょうが、直線的な弾丸シュートよりも足のインにかけたコントロールシュートの方が入る確率が高いかもしれません。 山口選手もこのミドルシュートを自分の重要な武器とするために一生懸命練習して、2~3本打てば1本は決まるようにシュート精度を高めておいてください。 いつか必ず自分とチームを助けてくれるでしょう。もちろん他の選手も同様です。

逆に言えば自軍ゴール前でのセットプレー時に、ペナルティーアーク内に1~2人の味方を必ず置いておき、ここから敵にミドルを打たれないように速やかにボールを拾ってクリアすること。 オーストラリアはいつもここでミドルシュートを狙っています。

 原口選手は、中盤で相手からボールを奪ってコレクティブカウンターの起点になり、長い距離を走って自ら貴重な先制ゴールをゲットしました。 前半は相手も元気でコンパクトな守備ブロックにスペースを消されて苦しみましたが、相手の足が止まった後半からはドリブル突破が冴えてチームの攻撃を牽引。 引き続き好調さを維持しています。

 清武選手はトップ下としてコレクティブカウンターの中心となり、原口選手の先制ゴールをナイスアシスト。 バイタルエリアでボールを受けてからのミドルシュートやパスでチャンスメークする動きもなかなか良かったと思います。
 でももっとやれるはずです。 清武選手のバイタルエリアに入るタイミングが早すぎて、バックからボールを受けて3トップにパスを供給する役目を果たす選手が誰もいなくなってしまい、パスの出しどころが無いことに焦れたCBがアバウトなロングボールを前線に放り込んでしまうことで、チームの攻撃が機能しない時間帯も長かったです。 味方のバックやボランチがボールを持っているタイミングでは、相手のダブルボランチの前や横のスペースでもっと積極的にパスを受け、それを確実に前の選手へつながなければいけません。セビージャでレギュラーを獲得するために乗り越えなければいけない課題です。

 西川選手は、チームを救うナイスセーブがありましたが、自分のキックの技術をやや過信しすぎではないでしょうか。 クラブでも敵に囲まれた味方の足元へパスを出してピンチになるシーンが散見されますが、GKの本分は何といってもゴールを守ることですし、ゴールキックやバックパスの処理などはシンプルに安全第一でお願いします。

 逆に、またしても右ウイングで先発した本田選手はデュエルに勝ってサイドを突破することができず、いつものようにピッチ中央へ流れてプレーしていましたがシュート・パスでミスが多く、相手に体を寄せられてボールをロストするシーンも目立ち、攻撃のブレーキに。 体力的な衰えからプレーのキレや正確性が失われているように思われ、もはやセンターFWで90分間プレーすることさえも難しいのかもしれません。
初めから守備をやる気もサラサラ無いようで、彼が守備に戻らないのでチーム全体でコンパクトなブロックをつくることができず、それによってなかなかボールを奪い返すことができないので、相手チームが自信を持ってボールをポゼッションし日本の陣地に攻め込むことができるのです。 失点の原因となったイラクのFKは、彼が守備に戻らなかった右サイドで与えたことを見逃すわけにはいきません。

私はまだ本田選手を見放してはいません。近いうちに再生策を提案したいと思ってますが、本田選手が攻守両面でこのチームの弱点となっており、オーストラリア遠征以後はしばらく彼抜きでのチーム作りをしていくべきです。

酒井高選手は、ゴール前でアブドルアミルとの空中戦に競り負けて失点の原因に。 ジャンプ前の体のぶつけ合いから負けないようにしっかり競って欲しいですし、もし万が一ジャンプのタイミングが遅れてしまっても、空中で自分の体をしっかりぶつけて相手の体を押すことで、クロスの軌道から外れさせて相手が強いヘディングをできないようにするといった工夫が欲しいところ。 試合後に「自分の成長のためにはこういうミスから学ぶことも必要」という彼のコメントがありましたが、そういうことは高徳選手を起用した監督が言うならまだしも、反省すべきミスをした選手本人が言うべきことではありません。 前半3分にも高徳選手が同じ選手に競り負けてシュートがポストを叩くシーンがありましたが、セットプレー時にアブドルアミルにつくマーカーを変更するといったベンチワークも必要だったんじゃないでしょうか。

岡崎選手は、前線で精力的に動き回って味方のプレーを助けようとしていましたが、決定的なシュートシーンは無く、センターFWとして不満の残る出来。
試合後に「センターFWの自分が下がると相手CBもマークするためにあがってくる。そこでDFラインのウラが広く空くので、自分がそこヘ走りこんでボランチあたりからパスが出れば、ゴールできる」という趣旨のコメントを彼がしていましたが、当研究所がずっと指摘してきたことをやっと理解してくれたようですね。
しかしスペインやドイツのようなサッカー先進国の選手の多くは、こうした攻撃戦術の基本を20代前半までには身につけてプレーしているわけで、そうした戦術理解の差が積み重なり、欧州四大リーグのクラブでスタメンが取れるか取れないかの大きな違いとなって現われてくるわけです。 それは岡崎選手だけの責任ではなく、彼がユース年代になるまでに出会ってきた日本人指導者の限界だったとも言えますが、遅すぎるということはありません。 こうした攻撃戦術の理解を生かして代表でもレスターでも今後ゴールをあげ続けて欲しいですし、このブログを見ている20代の若い選手がいるなら、この戦術知識を生かしてワールドクラスのプレーヤーに成長して欲しいです。

吉田選手は、相手がロングボールを放り込んできて森重選手と敵FWがヘディングで競っているときに、森重選手よりも前で立ち止まり、それを見ているだけというのはいただけません。 味方の選手が敵に競り負けてこぼれてくるボールに備えるため、森重選手よりも自軍ゴールに近い、ナナメ後方でカバーのポジショニングをとらなければなりません。
 また森重選手もそうなんですが、味方のGKがゴール前でハイボールをキャッチするときに、西川選手の周りをイラクの選手2人に囲まれるような状況を許すと、もし西川選手がキャッチングミスした場合、即失点につながりかねません。 ファールに注意しながら味方のGKと相手選手との間に吉田・森重両選手がポジショニングし、ハイボールをキャッチしようとしている西川選手を守ってやらないと。バックの心構えとして重要なのは、常に最悪のことが起こることを想定し、もしそれが実際に起こっても致命的な結果にならないように、いつも準備しておくことです。
パワープレーについては当研究所は推奨しませんが、もしやるのであればヘッドで相手のウラヘボールを落とすことばかりを狙うのではなく、バイタルエリアに落として味方に拾わせ、そこを攻めの基点とするのも一つのアイデアです。

酒井宏選手は、守備のときに手を使うことがクセになっているようです。 リーグアンでは許されるのかもしれませんが、アジアの判定基準ではファールになってしまいます。 手で相手をひっぱったり押したりするのではなく、相手と併走しながら自分の肩を相手の前に入れて、自分の太ももの外側を当てて相手のバランスを崩しボールを奪うようにすると良いでしょう。

柏木選手は守備をがんばっていましたが、チームがコンパクトな守備ブロックをつくれておらず、広いスペースを守らなければならないので、彼の守備力ではよけいに厳しいように思われます。
パスによる攻撃の組み立ても今ひとつで、精度の低いロングパスを多用しては味方に通らず、チームがリズムに乗った攻撃ができない一因に。 バックがボールを持っているタイミングでは、相手のボランチの前でパスを受ける動きをもっと増やし、それを主にグラウンダーのパスで、トップ下や左右サイドハーフに正確につないで欲しいです。

長谷部選手は、中盤でのボールの奪い合いで劣勢でした。ボール奪取力のさらなる向上を。

        ☆        ☆        ☆

  イラクとのゲームは劇的な勝利となりましたが、「試合結果」で「プレー内容」を美化してはいけません。

岡崎選手の試合後のコメントにあったように、当研究所が何度も指摘したUAE戦・タイ戦での課題がようやく修正され、3トップ+トップ下がゴール前で立ち止まってベッタリと張りつくのではなく、あえて引くことで相手DFラインを高く保ち、そのウラのスペースやバイタルエリアを広く空けておくことで、自分たちが攻めるためのスペースを確保することができていました。(下図)

バランスが良い
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それによって、「ゴール前で止まった自分」「止まった相手」「止まったボール」という日本人選手にとって苦手なシチュエーションではなく、「後ろに下がりながら守る相手」に対し「前進する自分」「テンポの良いパスやスピードに乗ったドリブルで前へ進むボール」という得意なシチュエーションをつくり出すことができるのです。

その象徴的なシーンが、清武選手が中心となったコレクティブカウンターからの原口選手のゴールでした。これは当研究所が狙っていた攻撃の一つの形です。

もしあのシーンで相手に上手く守られてしまった場合は、途中でパスサッカーに切り替え、トップ下やボランチが中心となってグラウンダーのパスで相手の守備ブロックを崩すことを狙って、攻め直せば良いわけです。
それが当研究所が何度も言っている「戦術の使い分け」です。パスサッカーをやる場合でもゴール前にベッタリ張りつかず、相手のバックラインを高く保つということは同じ。

しかし、パスコースが無いことに焦れたバックやボランチがアバウトなロングボールを前線に放り込んではボールを失い、攻めのリズムがなかなかつくれなかったことは課題ですし、一番深刻なのは、コンパクトな守備ブロックをまったくつくることができず、不安定な守りから失点を重ねていることです。

ブラジルW杯アジア予選においてザックジャパンは圧倒的な強さだったと前回言いましたが、当時だって「センターバック2枚を残して全員総攻撃だー!!」みたいな、最初から5-0・6-0で勝つことを狙ったサッカー、UAE戦のハリルジャパンのようなサッカーをしていたわけではありません。

慎重にコンパクトな守備ブロックを90分間つくって厳しくプレスをかけていくことで中盤でどんどんボールを狩り取り、「ヤバイ。こっちの攻撃が全然通用しないぞ」と相手に思わせてひるんだところを攻めて、1ゴールまた1ゴールと積み重ねていき、終わってみたら3-0で勝っていた、苦戦したけど焦らずに攻めて最後は1-0あるいは2-1で勝っていたというのがザックジャパンのサッカーだったわけです。

そこを本田選手を中心としたハリルジャパンのメンバーはすっかり忘れています。

だから現在、守備ブロックもつくらずに「センターバック2枚を残して全員総攻撃だー!!」みたいなサッカーをやって何度も失点を食らい、ホームでUAEに負け、イラクに冷や汗をかかされてしまうのです。

サッカーとボクシングは審判による「ホームタウンデシジョン」が起こりやすいスポーツと言われていますが、この試合は、ホームである日本に有利な判定に助けられた結果でもあることを絶対に忘れてはいけません。

        ☆        ☆       ☆

 一つの記事にあれもこれもと話題を詰め込みすぎて申し訳ないんですが、オーストラリア戦まで時間がないので。

次のオーストラリア戦をどう戦うかですが、時間が無くてサウジVSオーストラリアの試合を見れていないんですが、守備組織の構築や若手への切り替えなどの面でハリル監督のチームづくりが遅れているのに比べ、オーストラリアはポステコグロウ監督のもと若手を積極的に育成し、ロングボールを前線に放り込む「古き良きイングランドスタイル」からパスサッカーへの転換をはかっており、アウェーでUAEに勝ちサウジには引き分けるなど、現時点では残念ながらオーストラリアの方がチーム力が上のようにも見えます。

よってボールポゼッション率でオーストラリアが日本を大きく上回る試合展開も予想されます。

2位以内に入れば良いわけですから、W杯出場を目指す日本にとっての直接のライバルはサウジ・UAEと考えていますが、両チームはオーストラリアのホームゲームで勝つことは難しいと思われます。

そこでオーストラリアとのアウエー戦で日本が勝ち点1でも確保できるならサウジ・UAEに差をつけられますし、オーストラリアをホームに迎える来年までにチームを立て直しそこで勝ち点3が取れれば、さらにUAEに勝ち点3サウジに2の差をつけられますし、UAEとサウジの直接対決で星のつぶし合いもあるでしょう。

現時点の順位は暫定のものですから、4位だからといって焦る必要はありませんし、全10試合の結果でW杯行きが決まることを忘れてはいけません。

もちろん最初から引き分けだけを狙って試合をするのではなく、堅固な守備ブロックを90分間つくってそこから厳しくプレスをかけ続け、ボールを奪ったらコレクティブカウンターを仕掛けるなどして虎視眈々と勝利を狙いながら、どんなに悪くとも引き分けでゲームを終わらせることも一つの案ではないでしょうか。

この試合は、負けるリスクを冒してCBを前線に上げてパワープレーをやってまで、絶対に勝ち点3を取らなければいけない試合ではないと思います。

 もし堅守速攻のカウンターサッカーというプランで行くなら、このようなフォーメーションはどうでしょうか。
       

               浅野  
           

      原口      清武      斎藤
                       (小林)

            山口   長谷部   
                  (永木) 

     SB     森重    吉田    SB
    

               GK


日本ではサイドバックは何が何でも攻めないといけないみたいに考えられているようですが、この試合では攻め上がるのを極力自重し、守備に徹してもらいます。

もし両サイドの攻防戦やゴール前での空中戦での守備力に信頼がおけると監督さんが考えるなら、丸山選手や槙野選手のようなセンターバックタイプをSBに入れてはどうでしょうか。

ゴールがどうしても欲しいシチュエーションになってから、太田選手や高徳選手のような攻撃参加ができるSBを入れても遅くはないと思います。

ダブルボランチは守備力を最優先させて山口・長谷部もしくは永木選手のコンビで。

両サイドバックが攻め上がりを自重する分、ボールを奪い返したら清武・原口・斎藤・浅野の4人にはしっかり動いてもらい、コレクティブカウンターからゴールを狙います。 斎藤選手はクラブでは左サイドが主戦場ですが、ドリブルで右サイドをブチ抜いてからのドリブルシュートやクロスで得点チャンスをつくれるはずです。守備時は原口・斎藤もしくは小林がダブルボランチの位置まで下がり、4-4のコンパクトな守備ブロックをつくります。

 ハーフナー選手のようなポストプレーヤータイプを呼んでいないのが本当に痛いのですが、上記のシステムが機能しなければ、4-4-2で行くというのはどうでしょうか。

              
                    岡崎
             浅野   (本田)
            (香川)  
                   

      原口   山口   長谷部    清武   
                  (永木) 

      SB    森重    吉田     SB
    

                GK


守備時の注意点は前述のシステムと同様です。

攻撃時は、原口・清武両選手がカウンター攻撃の中心となって攻めを構築し、スピードのある浅野選手や岡崎選手にゴールを狙わせます。

後半25分を過ぎて相手の足が止まり始めたところで、岡崎選手もへばっているようであれば、そこでスーパーサブとして本田選手を投入するなら、機能するかもしれません。浅野選手の足が止まった場合は香川選手を投入します。

 ともかく、今のハリルジャパンのように間延びした陣形で、選手それぞれがバラバラに個の能力だけで守っているようでは絶対にダメです。

ハリルジャパンは、1980年代までに見られたようなクラッシックな4-2-1-3になっていることがそもそもコンパクトな守備ブロックをつくれない元凶であり、攻撃時でも両サイドハーフが早い段階から上がりすぎるのを避けた4-2-3-1に戻すべきだと思います。

ポゼッションサッカーの信奉者である当研究所が、日本代表に堅守速攻からのカウンターサッカーを推奨するということは、それだけイラク戦の試合内容が良くなかったということです。

手倉森さん、日本代表の守備組織構築をよろしくお願いします。

◇    ◇     ◇     ◇     ◇     ◇    ◇

          2016.10.6 埼玉スタジアム2002

          日本  2 - 1  イラク

       原口 25'       アブドルアミル 60'
       山口 90'+


      GK 西川        GK ハミド

      DF 酒井高       DF サリム
         森重           ナティク
         吉田           アハマド.I
         酒井宏          ドゥルガム

      MF 柏木        MF アブドルアミル
        (山口 67)        アムジャド
         長谷部         (マフディ 53) 
         清武           ヤシン
                      (バシャル 83)
      FW 原口           アリ・アドナン
         岡崎      
        (浅野 75)     FW ムハナド
         本田          (ジャシム.M 69) 
        (小林 81)        アブドルザフラ




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