■タイに勝利も、課題山積(その3)

前回のつづき

 今回は、疑問だらけだったハリルホジッチ監督の采配について述べます。

どん底に突き落とされた時、その人間の真の実力がわかると良く言われます。

UAE戦であんなレフェリーに当たってしまったことは極めて不運でしたが、どん底に突き落とされた日本代表の監督そして選手たちが、そこからどうやって這い上がってくるか、個人的にはそれをこのタイ戦で見極めたいと思っていました。

選手たちのあまりのパニックぶりに、ロシアW杯の初戦やそこで負けたあとのことが今から思いやられましたが、一番失望させられたのがハリルホジッチ監督の采配でした。

 彼の監督としての能力に、いくつもの疑問点が浮かび上がっています。

まず第一点目は、選手の特徴や長所・短所を的確につかみ、選手たちのポテンシャルを最大限に引き出せるようなフォーメーションを採用し、適材適所を考えて選手をピッチ上に配置していくということができていないことです。

UAE戦で明らかになったのは、ボールを奪い返したあとそれを受けて前方へパスを配球する攻撃の組み立て役として、トップ下の香川選手がほとんど機能していないという問題です。

しかし、このタイ戦でもハリルホジッチ監督は何の工夫もなく香川選手を同じ役目で起用し、再びチームの攻撃を機能不全に陥らせています。

以前指摘した通り、彼はパサーというよりはセカンドストライカータイプの選手であって、最前線でボールを収められるフィジカルの強いセンターFWの後ろを動き回りながらゴールやアシストを狙わせた方が、香川選手の潜在能力を最大限に引き出すことができ、彼を再び生き生きとプレーさせることが可能になるのではないかと考えています。(私はまだ香川選手を見放したわけではありません。いずれ再生策を提案します)

今の4-2-3-1を変えないならば、トップ下にはパサータイプの選手を入れるべきで、現状もっとも能力が高いのは、セビージャで一応レギュラーを取っている清武選手だと思います。タイ戦でもトップ下に彼を入れておけば、もっとスムーズに攻撃を組み立てられたのではないでしょうか。

ところがハリルホジッチ監督はUAE戦で左ウイングとして彼を起用し、「ウラヘ抜けるプレーができなかった」といって、途中交代させています。

わかりやすく言えば、シャビを3トップの背後ではなくウイングに入れ、「ロッベンやリベリーのように動けなかった」と批判してベンチにひっこめるようなもので、ハリルホジッチ監督は選手の特徴を見極める目を本当に持っているのか、強い疑問を抱かざるを得ません。

ハリルホジッチ監督が「タテに速い堅守速攻型のサッカーがやりたい」と言いながら、守備の強化がおろそかになっているのも理解できません。

柏木選手や大島選手のような、フィジカルコンタクトが苦手で守備力が低い“小兵”をボランチに入れると、攻撃力が強い相手には守りきれない恐れがあると当研究所はキリンカップ直後から警鐘を鳴らしていましたが、UAE戦で大島選手を入れたことが守備力の低下を招き、2失点にからんでしまいました。しかしながら一番の問題は適材適所で選手を起用できない監督です。

柏木・大島両選手の特徴・長所短所を考えれば、清武選手とトップ下のポジションを争わせるべきなんじゃないでしょうか。スピードがあってウイングとして適性があるように思われる原口選手をUAE戦でボランチとして交代出場させたことも理解に苦しみます。タイ戦では当研究所が提案していたように山口選手が起用されましたが、ハリルホジッチ監督の数少ない正しい判断でした。

ハリルジャパンで右ウイングとして起用され続けている本田選手は、加齢によるスピードやスタミナ・体力の低下が目立つようになり、相手がタイ代表レべルなのに、一対一のデュエルに勝って右サイドを崩すということができていませんでした。

逆に彼のスピードの無さが、チーム全体の攻撃を遅くしている面があるのは否めないと思います。

それで思い出すのがキリンカップのブルガリア戦です。あの試合は本田選手が負傷欠場していて、右サイドには小林悠選手が入っていました。

小林悠選手はほとんど機能していませんでしたが、それでもボールを相手ゴールへと運ぶチーム全体のスピードが格段に上がり、決して弱くはないブルガリアから7ゴールをあげ、「日本代表の攻撃ってこんなに速かったっけ」と驚いたことを覚えています。

特に左ウイングに宇佐美、右ウイングに浅野選手という、技術やスピードに高いものを持っている選手が投入されると、サイド攻撃のスピードに拍車がかかり、相手にとって脅威になるような攻撃ができていたように思います。

それと比較して現在の本田選手のプレー内容を見れば、サイドを激しく上下動するウイングというポジションで使うのは相当の無理があるのは明らかで、実際彼は本来の右ウイングというポジションにはほとんどおらず、プレーエリアがピッチ中央部に偏っています。

「だったら最初からそこへ入れておいたらいいのに」と考えるのは私だけでしょうか。

試合の後半になると、守備のために自陣へ戻って来られない状態までバテてしまうこともしばしばです。

スピードは無いけれどもフィジカルの強さとパス展開力に優れるという彼の特徴を生かすなら、守備の負担が軽く、味方がつくったチャンスをピッチ中央で待ち構えていてゴールを決めるセンターFWか、攻撃的なボランチなら機能するのではないかと推測しますが、監督はどうして右ウイングで彼を使い続けるのか理解不能です。

ハリルホジッチ監督は、その選手のプレー内容やそのクオリティーで判断するのではなく、「ACミランやレスター、ドルトムントに所属しているから」という“ブランド”だけで、誰をどのポジションで起用するか決めているようにも見え、彼の監督としての能力に大きな不安を感じます。

 彼の監督としての能力に疑問を感じる第二の理由は、攻撃でも守備でもスペースを管理することができていないところです。

アジアのようなサッカー後進地域でさえ、その完成度は別にしてもコンパクトな守備ブロックをつくってゾーンディフェンスで守ることが今や常識となり、「攻守におけるスペース管理能力」は、現代のサッカー指導者にとって絶対に欠かせないものとなりました。

相手が攻撃するためのスペースをできる限り狭くし、自分たちが攻撃するスペースはできるだけ広くすることが、「スペースの管理」という言葉の意味であり、これができなければ試合に勝つことは難しくなります。

守備では、10人のフィールドプレーヤーでコンパクトな守備ブロックをつくれば、相手が攻撃で使えるスペースを狭く管理することができます。

日本では「攻撃に迫力を出す」という意味不明の理由で、ゴール前に多くの選手を張りつかせて攻撃するのを良しとする風潮がありますが、それでは多くの相手選手をマーカーとしてゴール前へ引っ張ってきてしまい、「攻撃のためのスペースを広くする」ということとは正反対の結果を招いてしまいます。

むしろゴール前へ侵入するタイミングをできるかぎり遅くし、相手バックラインをできるだけ高く保つことでそのウラのスペースを広く空けておいたり、相手がDF4人+MF4人のコンパクトな守備ブロックをつくっている場合、自分たちが攻撃で使いたいスペースをそれ以上に狭めてしまわないよう、DFラインの前にあるバイタルエリアに配置する攻撃の選手を多くても2~3人にとどめておくことでスペースを確保し、攻撃のスイッチが入ったときに、わざと空けておいたバイタルエリアに選手が侵入してボールを受け、そこからシュートしたりラストパスを出したりすべきなのです。

ところがハリルホジッチ監督は、UAE戦で日本が5トップ・6トップみたいな形で攻撃していても試合中にそれを修正することができず、このタイ戦でも、選手たちがだんだん我慢しきれなくなって4トップのような形になっても、ベンチに座ったまま。

守備でも、いちおうDF4人・MF4人がピッチに並んではいましたが、日本の守備ブロックの横幅がペナルティエリアのそれからはみ出しても、4人が横に等間隔で並んでいなくても、DFラインとMFラインが間延びしていても、ベンチにどっかと座ったまま一向に修正しようとしません。

ハリルホジッチ監督が就任してからしばらくして、彼の半生記を読んだのですが、カウンターサッカーで、フランス二部のチームを一部にあげたとか一部の下位チームを上位に進出させたというのが、彼の実績らしい実績です。逆に強豪のパリサンジェルマンのように、対戦相手の多くが守りを固めるであろうチームを任された時は実績を残せていません。

カウンターサッカーを得意とする監督さんの場合、攻めるためのスペースは、相手が前掛かりになって攻めに出ることによって、相手チームが用意してくれます。

しかし、相手が自陣に引いて守備ブロックをつくった場合、相手チームの背後には堅守速攻型のサッカーをやるための広く空いたスペースはないわけですから、自分たちで攻めに使うスペースをつくり出さなければならないのですが、ハリルホジッチ監督にはそういう能力が無いように見えます。

日本は、アジアでは引いて守られることが多いわけですが、2次予選のプノンペンで行われたカンボジア戦で、相手が5バックのベタ引きで来てハリルジャパンはさんざん苦戦し、試合後にベンチで頭を抱えている彼の姿を見て、悪い意味で「これはヤバイ」と思いました。

 彼の監督としての能力に疑問を感じる理由の三番目は、ゲームの流れを的確に読んで交代選手を効果的に使っていくことができてないように思われることです。

このゲームは、前半25分すぎから中盤で攻撃の組み立てがうまく行かなくなり、日本は質の高いシュートチャンスをつくれなくなっていきました。

後半開始からトップ下に清武選手を入れても良かったと思いますがベンチは動かず、後半の15分すぎからはタイの足が止まり始め、そこでトップ下に正確なパスを3トップに配球できる清武選手を入れれば、もっと早い時間に2点目3点目が取れたんじゃないかと思いますが、ハリルホジッチ監督はベンチにどっかと座ったまま。

後半30分に浅野選手のゴールで相手を突き放すと、ようやく時間稼ぎのために次々とFWを変えていきました。

ゲームの流れがこちらに来ているときにベンチが動かないのはサッカーの鉄則ですが、「流れが来ている」というのはゴール数で相手をリードしているということと、イコールではありません。

たとえリードしていてもこちらの攻撃・守備が機能しておらず、ゲームをうまく進められなくなったときは効果的な選手交代を行い、ベンチが悪い流れを変えていかなければいけないのです。

ゲームの流れを的確に読んで、適切な手を打っていく「勝負師」としての能力面からも、ハリルホジッチ監督の采配には疑問の残る試合でした。

彼はブラジルW杯でアルジェリアを決勝トーナメントに進出させたのですが、それは選手がサッカーを良く知っていただけじゃないのか、本当に彼の手腕でチームが勝ったのかと、日本代表での采配を見て疑問に思います。

10年ぐらい前からアフリカのサッカー界を引っ張ってきたのは、コートジボアールでありガーナでした。しかし前者はドログバやヤヤ・コロのトゥーレ兄弟・エブエといった世代が交代時期に入り、ブラジルW杯以後はレスターのマフレズやスリマニ、ポルトのブラヒミに象徴されるアルジェリアがアフリカで台頭してきました。そのちょうど良い時期にハリルホジッチ氏がアルジェリア代表監督を務めていたのは間違いありません。

 それでは結論ですが、もし彼より能力が高いと思われる人物をリストアップできているならば、残念ながらこのタイミングでハリルホジッチ監督を解任した方が良いと思います。

これから日本代表の試合内容が良くなっていく、日本がもっと強くなっていくということを予測させるような潜在能力を、彼から感じ取ることができません。

仮にロシアW杯へ行けたとしても、本大会で良い成績が残せるとは思えませんし、タイとのゲームを「良い試合だった」と言う彼にこのまま任せておいたら、最悪予選敗退はあり得ます。

後任にふさわしい人物の条件は、

(1)選手の特徴・長所短所を的確に見極めて、その選手の能力を最大限引き出せるような起用法ができること。

(2)攻撃・守備両面で、チームを高いレベルでオーガナイズし、スペースの管理がちゃんとできること。

(3)ゲームの流れを的確に読み、交代選手を有効に活用してチームを勝たせることができる「勝負師」としての能力があること。

最低限この3点を満たしていることです。今から外国人監督の招聘は難しいというなら、上記の3つを満たしているという条件つきで日本人の暫定監督に任せてもやむをえないと思います。

ロシアW杯アジア最終予選グループBの今後を占いますと、UAEがホームでオーストラリアに敗れたので、たぶんアウェーでも勝つことは難しいでしょう。ということは、UAEがオーストラリアから奪える勝ち点はゼロということです。

アウェーで最悪でも引き分けてホームで勝つことができれば、日本はオーストラリアから勝ち点4を稼ぐことができます。(もちろん現状のままでは容易なことではありません)

タイやイラク・サウジ相手に絶対に取りこぼさないようにし、アウェー戦に勝ってUAEとの対戦成績を1勝1敗のイーブンに戻し、オーストラリアから勝ち点4を稼げれば、日本が逆転で2位以内に入ることは十分可能です。

ですから、このタイミングで日本代表に新しい監督を迎え入れ、イラク戦までの残り1か月の貴重な時間を1分たりとも無駄にせず、新監督のもとでチームを立て直すことができれば、間違った道から引き返すことができます。

もしこのままの体制で行って、イラク・オーストラリアに連敗するようなことでもあれば、そこから挽回して2位以内に入るのはますます困難になりますし、そこでハリルホジッチを解任して、新監督を招聘したとしても、その監督のチーム作りが軌道に乗り、勝利という結果になってあらわれるまで、W杯アジア最終予選でさらなる試合数を要します。

もし彼より有能な人材をすでに見つけているならば、今このタイミングで新監督にチームの再建を任せるべきだと思います。

次回は、日本代表をどう再建していくかについて述べる予定です。

◇    ◇     ◇     ◇     ◇     ◇    ◇

     2016.9.6 ラジャマンガラ・キラサターン(バンコク)

           タイ 0 - 2 日本

                    原口 18'
                    浅野 75'


     GK カウィン        GK 西川

     DF ティーラトン      DF 酒井宏
        コラピット          吉田
        タナポーン         森重
        トリスタン          酒井高

     MF ポックラウ       MF 山口
        シャリル           長谷部
       (プラキット 77)       香川
        クルクリット
       (ピーラパット 84)  FW 本田
        チャナティップ      (小林 86)
        ナルバディン        浅野
       (シロク 58)        (武藤 82)
                        原口
     FW ティーラシン       (宇佐美 90+)




サッカー ブログランキングへ
↑いつもポチッと応援ありがとうございます。



  

■コメント

■Re:タイに勝利も、課題山積(その3) [名無しさん]

香川選手に対しては管理人さんと同じように冷静さを欠いていると思います。香川選手もしっかりしてほしいんですけど、ファンやマスコミのゴール、アシストしないと香川は10番として失格みたいな雰囲気も影響していると常々思っていました。
香川選手並みではありませんが、もちろん試合に勝つためにはゴールが必要なんですが、日本は特に攻撃的選手に対してゴールのみを要求しすぎて、きちんとその場で必要な役割ができていないと思います。

香川選手も心を落ち着かせて今一度頑張ってほしいです。やはり一番輝いていたクロップドルトムント期はバリオスやレバンドフスキーの周りを衛星のように走り、忍者のように一瞬で仕事をしていたのが印象的でしたので、代表でも実現してほしいんですけど、強力なCFいますかね..。
■コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

 



管理人多忙につき、マメにレスを差し上げられません。
ゴメンナサイ。
もちろん、すべてのコメントは拝見させていただきますが、サイトポリシーに違反したものは、予告なく削除します。
悪しからずご諒承ください。

プロフィール

スパルタク

  • Author:スパルタク
  • FC2ブログへようこそ!

月別アーカイブ






   

ブログ内検索