■手倉森ジャパンのリオ五輪・総括(その3)

前回のつづき

 手倉森ジャパンのリオ五輪・総括、その3回目は選手たちのピッチ上における戦いぶりについて振り返ります。

チーム組織としては、手倉森監督の指示に良く応えてカウンターサッカーとポゼッションサッカーを上手く使い分けて戦うことができ、カウンター攻撃時に焦って攻め急ぎすぎ、そのせいでチャンスをフイにしたり、初戦で守備ブロックのつくりかたがまずくてナイジェリアにスペースを与えてしまったりと課題も残ったのですが、全体的に見てまずまずの出来だったと思います。

 逆に、日本のU-23代表選手が世界と一番差をつけられているところが、守備時における一対一の対応です。

攻撃ではゴールが奪えているのに失点が多すぎて、なかなか勝ち点3につながっていきません。

オーバーエージで呼ばれたJ1の優勝候補と言われるクラブ所属の選手たちも含めて、守備時における一対一が基礎からまったく出来ていない選手が多すぎます。

日本人は「教え魔」であり「教えられたがり魔」でもあると良く言われるので、これまであえて我慢して日本サッカー界の自助努力に期待していたのですが、今回のリオ五輪で忍耐の限界を超えましたので、守備時における一対一の対応の仕方について集中講座を開きたいと思います。

大会前のブラジルU-23とのテストマッチや初戦のナイジェリア戦が典型なんですが、日本の選手は相手に抜かれることを怖がりすぎて、ボールホルダーの前方2~3mのところで両足をそろえながら立ちどまって対応しようとするケースが多かったですね。

しかし、相手がドリブルで前進するとそのままズルズル後退するだけで、ドリブルで抜きにかかった相手が自分の横に来ただけで、「もうダメだ」みたいに簡単にあきらめて、そのまま相手を見送ってしまうシーンが目立ちました。

守備側が両足をそろえて立つと、横や後ろへ体を反転させて応対することが難しくなり、左右へもそれほど大きく動けないので、攻撃側はボールを動かしたりフェイントを使ったりして相手の両足をそろえさせ、その瞬間を狙ってドリブル突破やパス・シュートを狙ってくることが多いです。

ですから、守備側が初めから両足をそろえて相手の前に立つと、ワールドクラスのドリブラーにとっては「えっ? こっちから何もしなくても両足をそろえてくれるの? だったら遠慮なく抜かせてもらうわ」といった感じで、日本の選手が空けてくれた前方のスペースでブラジルの選手がドリブルを加速させると、日本の選手はなすすべなく抜かれ放題というのが、あのブラジルとのテストマッチでしたね。

 ここで守備時における一対一の対応の仕方を再確認しておきます。欧州四大リーグでも一対一に強い南米出身プレーヤーの対応の仕方は、体格が似ている日本人選手にとって非常に参考になると思います。

<ステップ1>

まず相手ボールホルダーの前方1mぐらいまで速やかに寄せて、腰をやや落として体全体を適度にリラックスさせながら、片足を軽く前へ出します。

ボールを奪いに行くときは、両足をそろえるのではなく、片足を前に出した状態で行います。

ここで自分が完全に止まってしまうと、ボールホルダーに次の動きを読まれやすくなるので、ステップ2の動作までなるべく足を止めずにスムーズにつなげていきます。

完全に止まらざるを得ない状況になっても、片足を軽く前に出して構えるようにします。

<ステップ2>

自分のナナメ後方で味方の選手がコペルトゥーラの隊形をつくってカバーしてくれているなら、細かいステップを踏みながら相手にさらに寄せていき、勇気をもってボールを奪いに行きます。この時に大股で飛び込むと相手に一発でかわされてしまうので要注意です。

ボールを奪いに行く時に絶対に忘れてはならないのが、「相手の利き足の方向を切りながらボールを奪いに行く」ということ。(自分がタッチライン際にいる場合を除く)

ボールを両足でまったく同じように扱つかうことができる選手は対応がより難しくなりますが、たいていの選手は本来の利き足と、後から練習してボールを扱えるようにした足があるはずで、ドリブル突破をするときに、守備側の選手から遠い方の足がボール扱いが上手い利き足になれば攻撃側が有利になります。

(たとえば左利きなら、左足でボールを扱いながら相手の左を抜けば、上手い方の足でボールを一番遠くに置きながらドリブルできる)

ですから守備側としては、相手の利き足の方向を切りながらボールを奪いに行くことで、相手をボール扱いがあまり上手くない利き足と反対の足の方向へ誘導すれば、ボールを奪える確率が高まります。

(相手が左利きなら利き足とは逆の右側[守備側から見た場合は自分の左側]へ抜くよう誘導すれば、ボールを遠くに置きたい相手は利き足とは反対の右足でボールを扱わざるを得なくなる。それでも左足を使ってドリブルしてくるなら、ボールを奪う時に自分の足が届きやすくなる)

よって、試合前に相手チームのスタメン全員とベンチ入りメンバーの利き足は、すべて頭に入れておかなければなりません。チームから事前にデータが配られるでしょうが、そうでなくとも試合前の練習中に相手チームの全選手の利き足をチェックしておくこと。

もちろん相手との駆け引きがありますから、利き足の方向を切っていても、その裏をかいてあえて利き足の方向から相手が抜いて来たり、守備側に近い方の足でわざとボールを扱って、守備側が足を出した瞬間に抜くようなことも考えられますから、練習や実戦で経験を積み、相手との駆け引きに強くなるように。

もし自分がタッチライン際にいる場合は失点の確率を減らすため、相手の利き足がどちらかに関わらず、ピッチ中央方向へドリブル突破されないように警戒しながら対応するのが基本ですが、「あえてタテを切って中へ行かせろ」というチームの約束事があれば、その限りではありません。

<ステップ3> 

基本的には相手の利き足の方を切りながら、自分と正対している相手に対し小刻みなステップで接近してボールを奪いに行きますが、ファーストアタックでボールを奪えればそれでよし。もしそうでなくてもあきらめてはいけません。

相手が自分の左右どちらかをドリブルで抜いてきたら、速やかに反転してその相手に並走するようについて行くこと。

相手までの距離を1mぐらいに詰めて、片足を一歩前に出した体勢をとるのは、このためです。

相手と正対している時よりも、並走している時の方がボールを奪うために仕掛けることができるチャンスは多くなりますし、むしろそこからがデュエル(決闘)の本番です。

(正面にいた相手がドリブルで自分の横に来ただけであきらめてしまうのではお話になりませんし、ボールをドリブルしている相手よりも、何もしないで並走しているだけの自分の方が足が遅いという選手は、さすがの当研究所も面倒見きれません。自分で何とかしてください)

相手と併走するポジションについたら、自分の太ももの外側を相手の下半身にドンと当てて相手のバランスを崩しながら、自分の肩を相手の前にいれるとボールが奪いやすくなります。

この一連の動作がスムーズにできるように何度も練習することです。

ナイジェリア戦で塩谷選手がPKを取られたように、「太ももドン」で相手のバランスを崩すだけでその後ボールを奪いに行かないと、レフェリーからファール(ペナの中だとPK)を取られかねないので、「太ももドン」と「ボールを奪う」という二つの動作を流れるように自然に行うこと。

ここでボールを取り切れなくても、相手チームのボール保持者がバランスを崩してドリブルをミスし、ボールを体から大きく放すように仕向けることができれば、自分のナナメ後方でコペルトゥーラの隊形を取ってカバーしていた味方が、そのボールをカットすることができますので、最後まであきらめず体を寄せて相手に食らいついて行くことが必要です。

併走する相手に自分の太ももをぶつけ肩を入れながら足を出してもボールが奪えない場合は、最悪ファールで止めてもやむを得ないでしょう。相手のドリブルをスピードに乗らせて手がつけられなくなるよりはマシです。

自分がピッチのどこにいるか(PKを取られるペナの中かFKが怖いゴール前か、それともファールしても問題ないところか)も考慮にいれながら、ファールで止めるかどうかを決断します。

 センターバックが、バイタルエリアで前を向いたボールホルダーに応対するときは、自分の後方をカバーしてくれるフィールドプレーヤーがいないことが多いのですが、基本はあまり変わりません。

相手までの距離を1mぐらいまで詰めながら片足を軽く前に出して構え、まず相手の利き足でのシュートやドリブル突破・パスを警戒し、顔や体を絶対にそむけずに相手の動きを最後まで良く見ながら、いつでも足をだしてシュートやドリブル突破を阻止できるように準備しておくこと。もちろん駆け引きがありますから、相手が必ず利き足でシュートを打ったり、ドリブル突破をしてくると決めつけてはいけません。

そして相手の利き足を警戒してそちらのサイドを切りながら、いけると思ったら一瞬のチャンスを逃さずに、小刻みなステップで一気に接近して相手のボールを奪うか、安全な方向へクリアします。

これも練習や実戦で駆け引きや読みのスキルを絶えず向上させていくことが欠かせません。植田・岩波の両センターバックは特に、この基本を良く頭に入れておいてください。

以上が、自分と正対している相手ボールホルダーへの対応の仕方ですが、ボール保持者と併走する場合よりもボールを奪える確率がもっと高いのは、相手が自分に背を向けている時です。

ボール保持者の後方から気づかれないように近づいて行き、立ち足を削ったりボールを扱っている足を蹴って相手を倒さないように注意しながら、自分の足を出してボールをかっさらうと奪える確率が高くなるのですが、日本人選手はこういうスキルも低いですね。

 日本人選手がいつまでたっても一対一に強くなれない原因は、Jリーグで多くのクラブがやっている消極的な守備戦術にあると思います。

Jリーグでは「相手に抜かれる」という失敗を極度に恐れ、自分たちから積極的にボールを奪いに行くのではなく、守備側が相手のボールホルダーをディレイさせながら自陣へ向かってリトリートし、相手がミスしてボールを失うのを待つような消極的な守備戦術を取っているクラブが多いのではないでしょうか。

しかし、選手たちはディレイさせた後どうするべきか?の解決策を持っていないので、相手がドリブルで前進するのを見ながらズルズルとひたすら後退していき、守備側の選手がペナルティエリア内に入ってしまって「もう下がれないよ」というところで相手にシュートをズドンと打たれて失点という、目を覆いたくなるような場面をチラホラ見かけます。

当研究所は、練習でも実戦でも相手に抜かれて反省した数だけ一対一に強くなれると考えていますので、これまで述べてきたような守備時における一対一の対応の仕方を基礎からしっかりと身につけ、U-23の選手はもちろんJリーグ組・海外組の別なくすべての日本人選手が、一対一の強さでは世界トップレベルだと言われるようになるまで努力して欲しいです。

同じ失敗をするなら、若ければ若いほど良いです。

自分のナナメ後方をカバーしてくれる仲間を信じていれば、抜かれることを恐れずに思い切ってボールを奪いにいけるでしょうし、その回数が増えれば増えるほど一対一に強くなり、ボール奪取能力も高まります。日本サッカー界はこういった好循環をつくり出すべきです。

逆に、抜かれることを恐れてズルズル下がるだけでは、絶対に一対一に強くなれません。

 最後は余談ですが、ACミランの本田選手がなぜ右ウイングのポジションで結果を出すことができないのか、ここまで読んで頂ければお分かりになったはずです。

彼は、右足が使えないのかあえて封印しているのか知りませんが、ドリブルする時ほとんど左足しか使いません。

ですから守備側としては彼の左足側さえ切っておけば良いわけで、右足のドリブルでタテを突破できない彼は行き詰ってしまい、左足でドリブルしながらピッチ中央方向へ流れて、ゴール前にアバウトなクロスをあげては跳ね返されるというプレーを繰り返すことが多くなっています。

左足と同じくらいボールを扱えるように右足を練習すれば、事態を打開できるかもしれませんが、それなりに時間がかかるのではないでしょうか?

だから右サイドで行き詰ってしまうよりは、ピッチ中央を主戦場とするセンターFWか二列目、あるいは攻撃的なボランチへのコンバートを推奨しているのです。

右ウイングをやるぐらいならまだ左サイドの方がマシではないでしょうか。

当研究所がこんなことを指摘するのは、レアルマドリードに移籍して活躍したいという彼の夢の実現を邪魔するためにイジワルしているのではなくて、むしろ応援しているからこそです。

「新しいポジションへのコンバートはリスクがある」と彼が語ったという報道も目にしましたが、彼が「教育者」を自認するのであれば、自分が変わることへの恐れを抱いてはいけないと思います。

強い者が生き残るのではなく、自分を取り巻く環境に適応するために変化できる者が生き残るのです。


次回へつづく



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