■手倉森ジャパンのリオ五輪・総括(その2)

前回のつづき

 手倉森ジャパンのリオ五輪・総括、その2回目は手倉森監督の采配について振り返ります。

目標としていたグループリーグ突破に失敗したわけですから、まずその問題点から考えていかなければなりません。

前回、手倉森ジャパンの選手たちは自分たちの失敗を恐れ、対戦相手を恐れ、弱気で消極的なプレーをしてしまったことがチームの自滅を招いたのではないかというお話をしましたが、監督さんの采配にも少なからずそういう面があったのではないでしょうか。

もちろん、リオ五輪の欧州予選・南米予選・アフリカ予選のスカウティング・ビデオを見て、手倉森さんは「スウェーデン・コロンビア・ナイジェリアと比べて日本が一番の格下だ」と結論づけ、「カウンターサッカーで前半を耐えて、後半相手の足が止まってきたところで勝負に出て勝つ」という、リオ五輪アジア予選で成功した戦術・ゲームプランを選択したのでしょうが、試合前から自分たちの戦い方を決めつけてしまうのではなく、もっと実際のゲームの流れを重視した采配をするべきだったのではないかと考えています。

例えば初戦のナイジェリアとのゲーム。

日本は相手を恐れてズルズルと下がりすぎ、イージーミスもあって序盤で2点を失いましたが粘り強くすぐに追いつき、ナイジェリアの監督さんがベンチで非常に渋い顔をしていましたが、リードするたびにすぐに失点してしまうナイジェリアの方が「嫌なゲームの流れだ」と感じていたはずです。

ところが「前半は同点で良い、相手の足が止まってくる後半が勝負」という試合前のゲームプランにこだわりすぎたのか、2-2に追いついてゲームの流れがこちらに傾きかかっていたにもかかわらず手倉森ジャパンの勢いが徐々に弱まっていき、それまでのすばらしい攻撃がどういうわけか機能しなくなります。

日本の中途半端な攻撃に助けられてナイジェリアはチームの態勢を立て直すことができ、前半終了間際に1点、後半に2点を加えて再びリードを奪い、手倉森ジャパンのゲームプランは一気に狂います。

監督さんが、2-2に追いつけたところを「勝負どころ」と見て、
チームに攻撃の手(足)をゆるめるなと指示し、そのまま逆転ゴールを奪って3-2とゲームをひっくり返すことができていたら、焦ったナイジェリアが攻守に空回りを始め、試合そのものの結果も変わっていたかもしれません。

 つづくコロンビア戦も、後半にイージーミスもあって相手に2点のリードを許しますが、すぐさま2点を取り返し、ゲームの流れは一気に日本にやってきます。

「2点リードは一番危険な点差である」というのはサッカー界においては常識であり、過去何度も2点差をひっくり返しての大逆転劇が繰り広げられてきました。

他ならぬ手倉森ジャパンが、リオ五輪アジア予選の決勝戦において、0-2から3ゴールを叩きこんで韓国に大逆転勝利を収め、優勝しています。

コロンビア戦でも2-2に追いついた直後、浅野選手がもう少しで逆転ゴールという場面をつくり出し、明らかにゲームの流れがこちらに来ていましたが、後半35分に藤春選手に代えて同じサイドバックの亀川選手を投入しました。

この交代にどういう意図があったのかは監督さんに聞いてみないと本当のところはわかりませんが、コロンビアに負けてしまえば決勝T行きの可能性が完全に消えてしまうので、攻撃力はあるけど守備に不安を抱える藤春選手を念のために交代させたということなんでしょうか。

もしそうであれば、消極的な采配だったように思います。

守備固めとして同じサイドバック同士の交代をすれば、ピッチの中にいる選手には、「守備にやや比重を置いて、最悪でも敗戦だけは避けろ」というメッセージだと受け止められかねませんし、この交代が日本の攻勢ムードに微妙に水を差す結果にならなかったでしょうか。

もし交代カードを切るなら例えばFWの鈴木選手を入れて、むしろ「ここが勝負どころだ、勝ちに行け」というメッセージを選手たちに送るべきだったのではないかと思います。

サッカーを見る目がない一部のマスコミが「やっぱり初戦が一番重要だった」と盛んに書き立てていますが、決勝Tへ進出したコロンビアも、このグループで一番力が劣るスウェーデンと負けに等しいドローを演じてしまい、初戦で成功していません。

日本対コロンビア戦が始まる前に、ナイジェリアがスウェーデンを破って決勝T行きを決めたことが既に分かっていて、トップを走るナイジェリアを、2位争いをする日本とコロンビアが追いかける展開となっていたわけですから、日本にとってもコロンビアにとっても一番のポイントとなるゲームは、2位争いの直接対決である第二戦だったのです。

ですから、2-2に追いついて日本が押せ押せの状態になっているときに動くのであれば、逆転ゴールを奪うための「攻めの選手交代」を行って、コロンビアとの直接対決に勝ちに行くべきだったのではないでしょうか。

しかしコロンビアと引き分けてしまったことで、最終戦でスウェーデンに勝ったものの、コロンビアがナイジェリアに勝ったため、日本の決勝T進出はならず。

最終戦でコロンビアがナイジェリアに負ける可能性もあったとはいえ、後から振り返れば第二戦がグループリーグ一番の勝負どころであり、グループリーグ突破の可能性が完全に消えるリスクを冒してでもコロンビアから決勝ゴールを奪いに行かなければ、日本の決勝T進出はありませんでした。

当研究所では、「サッカーとは、弱気で消極的なチーム・選手が罰を受けるスポーツである」と常々言っていますが、一つ一つの試合の流れを的確に読み、自分たちに流れが来ている
「勝負どころ」では臨機応変に、リスクを冒してでも勝ちに行くべきところでそういう采配ができるようになれば、手倉森さんはもっと良い指導者になれると思います。

 つづいてオーバーエージの問題について。

読者の皆さんはリオ五輪の日本の試合を見て、オーバーエージは必要だと思いましたか?

当研究所はこれまで何度も「オーバーエージは必要ない」と訴えてきましたが、大会が終わってもこの考えかたに変わりはありません。

(当ブログ参考記事・おめでとう手倉森ジャパン(その2)

(当ブログ参考記事・オーバーエージは必要ない

手倉森さんはオーバーエージを使うという決断をしましたが、オーバーエージの選手は、経験を積ませ育成目的で招集されたのではなくて、そのポジションですぐに結果を出してもらうための即戦力として呼ばれたわけです。

厳しいことを言うようですが、J1の優勝候補と言われるクラブに所属する、そろそろ30歳になりそうなベテラン選手たちが、国際経験の不足からイージーミスをして失点にからんだシーンを何度も目にして、同じ経験を積ませるのであれば20代前半の若手に失敗させて、そこから教訓を学ばせた方がグループリーグ敗退に終わるにしても、よっぽど有意義だったんじゃないでしょうか。

コンディションさえ問題なければ、岩波選手や鈴木選手をもっと信頼して使ってあげても良かったのではないかと思います。

大会前に一部のマスコミが、リオ五輪にコロンビアのハメス・ロドリゲスやファルカオ、スウェーデンのイブラヒモビッチがやって来るかのような「飛ばし記事」を書いて盛んに煽っていましたが、「大山鳴動してネズミ一匹」で、結局ハメスもファルカオもイブラもリオにはやって来ず。

ヨーロッパのサッカー事情に通じている人ならば、この時期に欧州四大リーグよりもレベルが下がる五輪に彼らを招集するのは99%無理だというのがわかると思いますが、飛ばし記事に煽られたのか霜田さんが本田・香川・清武選手らを呼びに大マジメで渡欧してしまうあたりに、日本サッカー協会と世界のサッカーの中心地である欧州の常識との間に大きなズレを感じました。

清武選手をリオに行かせるよりも、プレシーズンマッチでレアルマドリードのプレスをかいくぐって正確にパスを出したり、ブラジル代表のマルセロとガチのマッチアップを経験させる方がよっぽど重要でしたし、ベルンの久保選手が五輪に行けなかったのは大変残念でしたが、そのおかげでUEFAチャンピオンズリーグの予選で、ウクライナの強豪シャフトル・ドネツクから2ゴールをあげる経験ができたわけで、やはりこちらの方が久保選手のためになったのではないでしょうか。

 手倉森監督の采配には以上のような問題点があったように思いますが、評価できる点も少なくありません。

前回ロンドン五輪に出場した関塚ジャパンは4位になったものの、戦術は「守ってカウンター」の一本やりで、相手にリードされるとそこで終わりというチームでした。

しかしリオ五輪に出場した手倉森ジャパンは、リードした相手が自陣に引いて守備ブロックを形成しても、ポゼッションサッカーでそれを崩して何度も追いついてみせ、複数の戦術を上手く使い分けていた点は大きな進歩です。

ナイジェリアから奪った2点目の南野選手のゴール、コロンビアから奪った1点目の浅野選手のゴールをそれぞれ引き出したバイタルエリアでのパスサッカーによる崩しは、かなりレベルが高かったと思います。 高い連動性やプレーの正確度などはA代表も見習ってほしいぐらい。

リオ五輪アジア予選時には手倉森ジャパンも関塚ジャパンと同様、カウンターサッカー一本のチームでしたが、相手が自陣に引いてカウンター攻撃のためのスペースを消しに来たときに対抗できるよう、ポゼッションサッカーという「プランB」の戦術を、五輪本番までの短期間にチームに備えさせた手倉森さんの手腕は評価したいです。

この世代はU-17W杯の2011年メキシコ大会で、吉武監督のティキタカ・サッカーを経験しているので、もともとポゼッションサッカーをやれるだけのベースがあって、それも大きかったのかなと思います。

選手個々への指導についても、太ももの外側で当たって相手のバランスを崩し、ボールを奪うようなフィジカルコンタクト・スキルをチームに導入したことで、リオ五輪アジア予選ではイランやイラクの選手にフィジカルで簡単に当たり負けしていた選手たちが、コロンビアやスウェーデンの選手たちと互角にバチバチ戦えるようになっていました。

正直アジア予選が終わった時点のプレー内容では、個の能力が高い中南米の強豪に苦戦するのは間違いないと思っていたので、コロンビア戦で手倉森ジャパンが相手を押し込んで優勢にゲームを進めているのを見たときは、選手たちの確かな成長を感じました。

つづくスウェーデン戦は、ほとんど危なげなく勝利し、「日本が一番の格下」という大会前のスカウティング情報は何だったのかなとも思いました。

 それだけに、選手も監督さんも平常心を失っていたのか、イージーミスから何度も失点したり、勝負どころで勝ちに行くチャンスを逸したりしてしまった、ナイジェリアとの一戦目とコロンビアとの二戦目はもったいなかったのではないでしょうか。

かつての大横綱・双葉山の「いまだ木鶏たりえず」という言葉は有名ですが、選手たちが「初戦が一番大切だから絶対に失敗したくない。そのためには最高のプレーをしなければ」といって過緊張に陥ったり、過度にイレ込んだりしたときに、「木鶏の境地」でそれを修正できるような指導者がこの日本に現われて欲しいです。

もしかしたらその人物こそが、世界で通用する初めての日本人指導者になるかもしれません。

次回につづく





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