■キリンカップが突きつけた課題(その2)

前回のつづき

 キリンカップ2016の直前、この大会にのぞむ日本代表の課題をいくつかあげておいたのですが、その一つに「本田選手にとって最適のポジションはどこか探す」というものがありました。

本田選手は並はずれてタフな精神力やリーダーシップ、競争の厳しい欧州各国リーグでプレーしてきた豊富な経験を持ち、日本代表にはまだまだ欠かせない選手です。

しかしながら、ACミランで昨シーズン10ゴール10アシストぐらいマークしていれば、こんなことは書かないのですが、代表でもクラブでも右ウイング(サイドハーフ)というポジションで彼が機能しているようには見えません。

単独でサイドを突破してゴールに絡むようなシーンはほとんどなく、アジア3次予選のラストゲームとなったシリア戦では試合の後半に運動量がガクンと落ち、守備ブロックを形成するために自陣へ戻るのが困難になって、シリアに猛反撃を許す一因となっていました。

代表戦では多くのゴールをあげている本田選手ですが、そのほとんどはゴール前中央においてであり、ウイングというポジションにこだわらなければならない理由が乏しいです。

それならば守備の負担が軽いセンターFWにコンバートしたらどうかと思います。

失敗が許されるキリンカップで、本田選手にふさわしいポジションはどこなのかを試して欲しかったのですが、彼が足を痛めて2試合とも欠場してしまったのは痛かったですね。

よってキリンカップの2試合は、このようなスタメンとなりました。



                 岡崎


           
      清武        香川       小林悠
     (宇佐美)     (清武)      (浅野)



           柏木       長谷部



     長友    森重       吉田    酒井宏
                            (酒井高)

                 川島
                (西川)
  

(カッコ内は2戦目の先発)

 攻撃面では、ブルガリア戦で試された香川・清武両選手の併用で7ゴールをゲットするなど、非常にポジティブな内容でした。

ボスニア戦では、先発起用された宇佐美選手による左サイドでのドリブル突破が猛威を振るい、それも大きな収穫でした。

同時にその試合では、W杯までに解決しておかなければならない課題をいくつか突きつけられたように思います。

その一つ目は、ブルガリアのような格下相手では問題なくても、ボスニアのようにこちらと同等かそれ以上の攻撃力を持つ相手と対戦するときは、このメンバーでは「攻撃的すぎる」ということです。

言いかえれば、そのような相手が本気で攻めに出てきたときに、守備で持ちこたえられない不安が浮き彫りとなりました。

実際ボスニアに追いつかれたあと、ハリルホジッチ監督は柏木選手に代えて遠藤選手を投入しましたが、相手の攻撃力に対し柏木・長谷部のダブルボランチでは守備力が足りないという判断だったのでしょう。

しかし今度は遠藤・長谷部のダブルボランチでは、攻撃を組み立てるためのパス能力が不足しており、相手のブロックの外から単純なロングボールを放り込んではボールを失うということを繰り返していただけでした。

そうこうしているうちにボスニアの監督が切り札を切ってきて虚を突かれたように失点。守備ブロックをつくる相手にそのまま逃げ切られてしまいました。

W杯本大会では、「ボスニアの2軍」よりも攻撃力のある相手と対戦する可能性が高いですから、上記のシステムでは不安が残ります。

柏木選手にはさらなる守備力の向上を、遠藤・長谷部両選手には守備力はもちろん攻撃時のパス展開力をもっともっと高めて欲しいのですが、現有戦力のうち、より優れた選手をピックアップして試合をするということを単純に繰り返していくのではなくて、ロシアW杯で良い成績を残すために日本代表は何を求められているのか、そこから逆算して選手やシステムをチョイスしてチームづくりをしていく必要があります。

香川・清武両選手の併用が攻撃面で非常に機能したことと、キレキレだった宇佐美選手のドリブルによるサイド攻撃を生かしたいこと、運動量が落ちてきた本田選手の守備的負担を減らす必要があることの3点を踏まえて、当研究所はいくつかのシステムを提案したいと思いますが、まずは日本と互角か格下の相手と対戦する場合です。



                 本田
                (岡崎)

            
    宇佐美        香川       岡崎
                        (浅野・原口)
                     
 
           清武      長谷部


  
    DF      DF       DF      DF


                GK



パス展開力に優れる清武選手を攻撃的なボランチに持ってきて、ピッチを広く見渡せる中央に近いところから攻撃に参加してもらい、香川選手とパスのコンビネーションで攻撃を組み立てていきます。

そして宇佐美選手が左サイドからドリブルで相手を崩し、ゴール前で本田選手か右サイドの岡崎選手、あるいは後方から走りこんだ香川・清武選手がゴールを決めるというのが攻撃の一つの形。

本田選手はフィジカルコンタクトの強さを生かし、二列目の3人からパスを受けて誰かにリターンパスをすることで、バイタルエリアで攻撃の基点をつくる役目も担ってもらいます。こうすれば本田選手は守備のためにサイドを激しく上下動して体力を消耗しなくても済みます。

プレミア優勝クラブのレギュラーFWではあるもののゴール数が今ひとつ物足りない岡崎選手は、守備の運動量を買って右サイドでの起用です。センターFWの位置で本田選手と、浅野・原口両選手の得点力やチャンスメーク力・守備力が伸びてくれば、右サイドハーフで彼らとも競争してもらいます。


 ただこのシステムだと日本より攻撃力の高い格上の相手だと守備力に不安があるかもしれません。特にボランチのところで。

どんな相手でも清武・長谷部の両ボランチで守りきれれば良いのですが、そうでない場合は対策が必要でしょう。



                 香川
             

     宇佐美       清武       岡崎
                        (浅野・原口)


           本田     長谷部
                  

    DF      DF       DF      DF
  

                 GK


 フィジカルコンタクトに強い本田選手をボランチに入れて、長谷部選手と協力してバイタルエリアを固めます。彼は元トップ下ですから、ボールを奪い返した後のパス展開力にも優れているはずです。

本田選手がこのポジションで開眼してくれれば、彼の努力次第で35歳ぐらいまでは日本代表の中心選手として十分やっていけると考えています。

本田・長谷部のダブルボランチで相手ボールをひっかけ、こちらを押し込んでいる相手の守備が手薄になったところを狙って清武・宇佐美・香川らでコレクティブカウンターを仕掛け、ゴールを奪います。

マンチェスターUでは監督さんに上手く使ってもらえなかったので自信を失っていたところがありましたが、香川選手はどちらかといえばチャンスメークよりもゴールを奪う方が得意な選手だと思いますし、彼がドルトムントへ移籍してから大ブレイクしたときも、トップ下の位置からセカンドストライカー的に動いてゴールを量産したからでした。

逆に清武選手は、ゴールを奪うよりもチャンスメークする方が得意な「パサータイプ」のトップ下だと思います。

ドルトムントに帰ってきて、香川選手もシュートへの自信を取り戻しつつあるように見えますので、適材適所を考えてトップ下に清武選手、ワントップに香川選手を据えてみました。

この「ゼロトップ」気味のシステムが格上に対するカウンターサッカーのみならず、格下相手へのパスサッカー時にも機能するならば、これでいいのではないかと思います。

これでも宇佐美選手のところで守備力が不足してしまう可能性があります。

アウクスブルクへの移籍が決まった彼も、攻撃だけでなく守備能力もしっかり高めて欲しいですし、ドイツはマンマーク・ディフェンスの時代が長かったので、守備時にマッチアップしている相手とのデュエルで簡単に負けてしまうような選手は、ブンデスで生き残っていくのは難しいです。

それから磐田の小林祐希選手は、代表でもトップ下をやりたいんじゃないかと思いますが、身長182cmと体の大きさが魅力的ですし、まずはフィジカルコンタクト能力と守備力を高めて、ボランチのポジションを狙ってみてはどうかと思います。

 もしこのシステムが機能しなかった場合は、当研究所としてはあまり推奨しない「最後の奥の手」であり使用には注意を要する「副作用の強い劇薬」なんですが、ハーフナー選手をワントップに、その下に香川選手をセカンドストライカー的に置いた
4-4-1-1はどうでしょうか。



                 ハーフナー

             香川


    宇佐美    本田     長谷部    岡崎
   (酒井宏)                 (浅野・原口)


     DF      DF       DF      DF
  

                 GK


ボールを奪い返したらハーフナー選手にクサビのボールを当てて、彼がバイタルエリアに落としたボールを香川選手が拾ってシュートもしくは宇佐美・岡崎ら味方へのラストパスからゴール、あるいはゴール前でのセットプレー(FK・CK)からハーフナー選手のヘディングで1点取ったら、カウンターから追加点を狙いつつも自陣にブロックをつくってひたすら守るという“アンチ・フットボール”スタイルです。

リードした時点で残り時間を見計らい、守備固めとして宇佐美選手のところに酒井宏選手を入れて、念には念を入れます。

でも、相手にボアテンクやキエッリーニ、アルデルウェイレルドなど世界トップクラスのセンターバックがいたら、イブラヒモビッチでさえ抑え込まれかねないので、いくらハーフナー選手が高いといっても、そういう相手にはこのシステムが機能しない可能性があります。

そもそもこういうスタイルは世界では決して珍しくなく、経験豊かなワールドクラスのバックであれば、対処法は十分知っているでしょうし、過去の例から見ても、このスタイル一本ではW杯で上位に行くことは難しいんじゃないでしょうか。

また仮に上手くいったからといって、この「麻薬」に頼りっぱなしになってしまうと、香川・清武・宇佐美選手らとダブルボランチが連携して相手の守備ブロックの中で厳しいプレスをかわしながらパスをつなぎゴールを奪うという、強者になるためのパスサッカー戦術がいつまでたっても上手くなりません。

それでは日本代表が「弱者のカウンターサッカー」から永久に抜け出すことができなくなりますので、使い方には十分注意しなければなりませんし、あくまでも「手も足もでないような格上の相手」に使う「苦しまぎれの最後の手段」として欲しいです。

これをいきなりW杯でのぶっつけ本番でやろうとしても機能しないので、クサビのパスを受けたハーフナー選手がどこへボールを落とすのか、それを拾う香川選手らがどこでそれを拾ったら良いのかタイミングを合わせるために、ロシアW杯の1年ぐらい前から実戦で使えるように何度か練習しておいた方が良いでしょう。

 またこのシステムを使うかどうかは別として、ハーフナー選手を代表に呼んでおくのも悪くないと思います。

日本のバック陣(CB・SB)やボランチが、自分より身長が高くフィジカルコンタクトに強い相手に守備のデュエルで勝つための練習相手になってもらうためです。

例えばハーフナー選手にロングボールを放り込んで、DFやボランチがヘッドで競り勝ったり、ポストプレーを妨害する練習をするわけです。(対処法については過去記事参照

 これと関係してくる話ですが、キリンカップが突きつけた二番目の課題は、W杯本大会で好成績をあげるためにセンターバック陣の能力が十分ではないということです。

ボスニア戦で相手FWジュリッチにやられたあと、今ごろになって「日本代表に身長185㎝以上の選手がヨシダしかいない」と言って監督さんが大騒ぎしていますが、だーかーら「センターバックは専門職であり身長は最低でも185㎝以上欲しいところ」と当研究所は言ってきたのです。

だーかーら「浅野選手が呼べるんだったら鹿島の植田選手もキリンカップに呼べ」と言ったのです。

攻撃では世界に通用する日本人選手が出現し始めていますが、世界に通用するセンターバックはまだ現れていません。

欧州四大リーグで1シーズンに30試合以上出場し、クラブを自分の守備力で最低でも一部に残留させることができる日本人センターバックが、ケガや出場停止のことも考えれば、代表に少なくとも3人は必要です。

2018年に向け、植田選手を始めとした若手センターバックの育成を急がねばなりません。

 というわけで、ロシアW杯の本大会に向けて日本代表が解決しなければならない、「本田選手が最も機能するポジションを見つける」「現在のダブルボランチでは守備力が不足」「ワールドクラスのセンターバックがいない」という三つの課題について、解決策を考えてみました。

最後に付け加えるなら、ボスニア戦を見て日本人選手は全体的にフィジカルコンタクトの能力がまだまだ不足しているように思いました。

フィジカルコンタクト・スキルをアップする方法も既に提案しておりますので、このオフにでもしっかり練習して、相手に体を寄せられてもボールをキープする能力、相手からボールを奪い取る能力をしっかり鍛えて欲しいです。




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