■日本代表、ボスニアに逆転負け(その3)

前回のつづき

 特筆すべき活躍をしたプレーヤーはまず宇佐美選手。ドリブルがキレッキレで、左サイドを何度も切り裂いてミドルシュートを放ったかと思えば先制ゴールにつながるチャンスメークと、攻撃面で最大の貢献。自分の実力がどれくらい通用するか試すために、すぐにでも欧州リーグのどこかに再挑戦すべき。
ただしチームがボールを失ったときは、スキのない守備ブロックを形成するためにすみやかに自陣へ戻り、相手にプレスをかけてボールを奪い返すことを試みること。守備力に穴があると監督さんも起用しづらいです。

清武選手はいい位置に走りこんで先制ゴールをゲット。ザックジャパン時代よりもゴールへの意識が高まり、成長したところを見せてくれました。あとはさらにシュートの精度をあげていくこと。シュートチャンスでは「外したらどうしよう」みたいな邪念を一切捨て、良い意味で「自分の世界」に入って冷静になり、ゴール枠内の狙ったところへ強めのパスを正確に出すイメージでシュートを打つと良いのではないでしょうか。
しかし、トップ下としてパスを受ける動きに関してはまだ物足りなさを感じます。相手の守備ブロックの中で厳しいプレスをかけられても、敵選手のギャップでフリーで味方のボランチなどからパスを受け、前を向いてゴールにつながる決定的な仕事(シュートやラストパス)をする回数をもっともっと増やしてほしいです。香川選手もドルトムントでトゥヘル監督から求められているプレーだと思いますし、彼も最初はもがき苦しんで今それを乗り越えつつありますが、世界で通用する攻撃的MFになるためにも、清武選手もその試練を乗り越えて欲しいですね。
セビージャへの移籍が決まったそうですがレベルの高いクラブなので、体を休めて十分ケアした後はプレシーズン・キャンプからしっかり練習に参加して、新シーズンから定位置を獲得できるように。

 逆に吉田選手は2失点にからんでしまいました。
最初の失点は、前にいる味方のプレスの掛け方が甘く、ボスニアのボール保持者が好きなタイミングで前方へパスできる状況をつくってしまったことがそもそも問題ですが、であるからこそ自分がマークすべきホジッチのウラヘ抜ける動きをもっとも警戒しなければならず、簡単にウラを取られてしまったのが敗因。森重選手にもありがちなミスなんですが、ポジショニングもまずく、マークすべきホジッチを自分の前に置いて相手のボールホルダーと一緒に自分の視界の中にいれておけば、あれほど簡単にウラを取られることはないはずです。
逆転ゴールを奪われた場面では、またしても相手のボールホルダーにまったくプレスが掛かっていませんでしたから、ウラヘ抜け出そうとしたジュリッチに吉田選手がついて行ったのは悪くない判断だったと思います。しかし、パスを受けたジュリッチに併走して相手を見ているだけなので、ジュリッチにとってベストのタイミングでシュートを打たれてしまいました。この瞬間ならほぼ確実に相手からボールを奪えるというタイミングで自分から足を出し、ボールをラインの外へ出してCKへ逃れるような「攻めの守備」の姿勢が欲しいです。

彼はクラブで試合に出れていないので、実戦感覚も守備に対する自信も失っているように見えます。実戦を経験できないので守備のスキルがあがらない、だからたまに出場するとプレミアの能力の髙い選手にやられて失点に関与してしまう、さらに出番が減ってセンターバックとしてのスキルが下がる一方、という悪循環に陥っているのではないでしょうか。

来季もセインツで先発できないことがわかっていて、吉田選手を欲しいと言ってくれるクラブが他にあるなら、「必ず強くなって戻ってくるからレギュラーで出られるクラブへレンタル移籍させてください」と、セインツのクラブ幹部にお願いした方が良いと思います。プレミアやセリエA・リーガエスパニョーラは日本人があまり得意ではない独特のクセがありますので、欧州では一番オーソドックスなサッカースタイルのブンデス1部の中堅から下位クラブあたりはどうでしょうか。それでもハードルが高く感じられるのであれば、オランダ・ベルギー・スイス・オーストリア・スコットランドなど欧州四大リーグの周辺リーグか、ドイツやイングランドの2部リーグあたりはどうですかね。リーグ・アンは黒人選手が多くてフィジカルコンタクトがとても厳しいというクセがありますから、そこで成功できれば大したものですが、それなりにリスクもあります。

本田選手が良いことを言っていますが、この際クラブの格なんか気にせず、自分にとってちょっとやさしいぐらいのレベルのリーグに移籍して、実戦感覚と自信を取り戻すことを最優先に考えるべきだと思います。イングランド3部ミルウォールからスタートしてプレミアのブラックバーンなどでプレーしたルーカス・ニールが代表例ですが、オーストラリアの選手は「いきなり欧州1部クラブは無理」と思ったら2部、それも無理だと思ったら3部のクラブからスタートして時間をかけて環境に適応し、自信とスキルをアップさせて最終的にトップリーグのクラブでレギュラーポジションを獲得するのに成功した例が少なくないんですが、逆に日本人選手はいきなり欧州四大リーグの1部クラブに移籍して、1年でダメだったらすぐJリーグに帰ってきてしまい本当にもったいないです。本田選手だってVVVがオランダ2部に落ちてからゴールを量産してチームを優勝させて大ブレイク、CSKAモスクワからACミランへとステップアップしていったのですから。

吉田選手は、せっかくアイリッシュなまりのきつい英語も理解できるほど語学力を身につけたのですから、2018年ロシアW杯までの2シーズン計画で、16-17シーズンはドイツやオランダなどのクラブでレギュラーを獲得して30試合以上しっかり戦い抜くことで守備力をみがき、そこで実力と自信がついたら17-18シーズンにステップアップしてセインツに復帰するか、他のプレミアクラブへ行ったらどうでしょうか。もちろんリーグのレベルを落としたからといって成功が約束されるほど甘くはありません。必要なら専属コーチを雇ってでも、移籍先のクラブでセンターバックのポジションを基礎から学び直し、必死に練習する必要があります。

日本を背負って立つ次世代のCBを育成するにはしばらく時間が必要でしょうから、当研究所はまだまだ吉田選手が代表チームに必要だと考えています。名古屋に帰ってくるのは30歳を超えてからでも全然遅くないですし、守備力に自信がないからゴール数で貢献しようというCBを使ってくれる監督さんはまずいないと思ったほうがいいです。

森重選手は前半しょっぱなにジュリッチに競り負け、失点してもおかしくないヘディングシュートを許しましたが、その後は苦しみながらもジュリッチに粘り強く食らいついていきました。ところが後半ドリブルでカットインしてきたステパノビッチに抜かれるのを恐れたか、その場でフリーズしてしまい、逆転ゴールにつながるパスを許す結果に。あの場面ではシュートやパスコースを消すためにドリブルするステパノビッチの方へ前進してプレッシャーを掛けて欲しいです。

西川選手は、2回ほど相手の決定的なシュートを防ぎましたが、逆転ゴールを浴びた場面では、シュートが吉田選手の股を抜けてきたので見えにくかったとは思いますが、あれを何とかセーブして欲しいところ。

長友選手は、交代出場したばかりのステパノビッチのフェイントに振らされ、彼への対応がやや軽かったでしょうか。

岡崎選手は、シュートはもちろんチャンスメークでもほとんど顔を出さず、センターFWとしては不満の残る出来。

柏木選手は攻撃のパスはまずまず良かったと思いますが、ボール奪取力や守備ブロックを形成するためのポジショニングなど、守備力に物足りなさを感じます。

長谷部選手も中盤の汗かき役としてがんばっていましたが、攻撃を組み立てるためのパス能力がもっと必要です。敵選手のギャップにいるトップ下などの足元へ、強くて正確なグラウンダーのパスをビシッと通せるように練習を。練習すればまだまだキックは上手くなると思います。相手からボールを奪う能力もさらに向上を。

遠藤選手は守備にしつこさが出てきたのは一歩前進。次の課題は長谷部キャプテンと同様、攻撃のためのパス能力をあげることです。まずは敵選手のギャップにいるトップ下やFWの足元へ、受け手の効き足や敵選手の位置を考慮に入れながら、強くて正確なグラウンダーのパスをビシッと通せるように。 

浅野選手は、サイドバックとの連携に課題があるものの、右サイドを得意のスピードで崩す場面が何回かあったのは収穫。
ただし、本人も泣いて悔しがっているので十分わかっていると思いますが、チームが同点に追いつくラストチャンスでシュートではなくパスを選択してしまったのは本当に残念。シュートを打って外してくれた方が何億倍良かったことか。日本代表のFWを任された以上、自分のシュートで相手からゴールを奪うという仕事から逃げてはいけませんし、ペナルティエリア内で自分の前にゴールとGKしかいない状況で、他人へのパスという選択肢はありえません。この試合の負けは、浅野選手がこうしたことを学ぶための投資と考えることにしましょう。その投資が無駄にならないように世界に通用するFWに成長して欲しいです。

        ☆        ☆        ☆

 キリンカップ2016決勝戦は、1-2で敗北という結果はとても残念でしたし、試合内容も解決すべき課題が次々と出てきたように思います。

「キリンカップの2試合で、W杯アジア最終予選を勝ち抜くためのチーム戦術を固めておき、9月に選手が再招集されて短時間の練習でも本番の試合では高いレベルのゲームができるようにしておく」ということを大会前に課題としてあげておきましたが、この試合、ピッチ内の状況に応じた戦術の適切な使い分けができたとは言い難いです。

パスサッカーで先制ゴールをあげたところまでは問題ありません。

そこで相手が同点に追いつくために猛攻を仕掛けてきてこちらが押し込まれてしまったら、守備で辛抱しつつも相手が高くあげたDFラインのウラを狙ってコレクティブ・カウンターを仕掛けてゴールを奪い、精神的ダメージを受けた相手の足が止まったら、パスサッカーに切り替えてチャンスがあればもう1点、そのまま試合をクローズしてしまうというのが理想の展開。

しかし日本が先制した直後に集中を切らして失点することで相手を勢いづけてしまい、ボスニアに押し込まれた時間帯にこちらがボールを奪い返しても、カウンターを仕掛けるためにスピードに乗ったタテのドリブルをするのではなく、ボール保持者がホッとしたようにタメをつくりながら、横方向へドリブルしているシーンばかりが目につきました。

後半、逆転ゴールを奪ったボスニアが守備ブロックを自陣深くに引いて逃げ切り態勢に入ったものの、疲れた相手の足が止まってきてプレスが弱まり、ここからパスサッカーで引いた相手の守備ブロックを崩してゴールを奪い返す絶好のチャンスが訪れたのですが、狭くなっている相手バックラインのウラヘロングボールを盛んに放り込んでは、オフサイドになったり相手ゴールキックになったりして時間を無駄使いしているうちにタイムアップ。

日本代表の「試合巧者への道」は、まだ遠いようです。

この試合に出場したメンバーの現時点での実力では、W杯のグループリーグさえ勝ち抜くことが困難であることがわかったと思います。各選手がこの結果を重く受け止め、クラブでの練習や実戦に今まで以上に真剣に取り組んでくれることを望みます。

特に欧州組は毎週行われるクラブの試合において、W杯で対戦する相手は最低限このレベルで、自分個人としてその相手にどれくらい通用しているかということを常に意識しながらプレーして欲しいです。

 キリンカップのまとめ的な記事を次回書きたいと思います。
ユーロ2016も始まりますし、1週間後を目標にアップする予定です。

◇    ◇     ◇     ◇     ◇     ◇    ◇

        2016.6.7 市立吹田サッカースタジアム

         日本 1 - 2 ボスニア


        清武 28'    ジュリッチ 29'
                  ジュリッチ 66'



       GK 西川      GK シェヒッチ

       DF 長友      DF スシッチ
         (槙野 70)      シュニッチ
          森重         コカリッチ
          吉田         ベキッチ
          酒井高
                   MF ブランチッチ    
       MF 柏木        (アレジナ 88)
         (遠藤 46)      ハイロビッチ
          長谷部       (コソリッチ 90+)
         (小林悠 88)    メドゥニャニン   
          宇佐美       ホジッチ
         (小林祐 74)    ドゥリェビッチ
          清武        (ステパノビッチ 66)
          浅野      
                   FW ジュリッチ
       FW 岡崎        (コジュリ 76)
         (金崎 79)



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