■トゥーロン国際

 トゥーロン国際に参加したU-23日本代表は、パラグアイ・ポルトガル・ギニア・イングランドと同じ組に入り、1勝3敗に終わりましたが、手倉森ジャパンの戦いぶりがどうだったか振り返ってみたいと思います。

大会前にレギュラークラスの負傷者が続出していて、今まであまり組んだことのないメンバーだったせいもあるのでしょうが、守備はともかく攻撃面で組織というものが感じられず、選手同士のコンビネーションで相手の守備を崩して攻撃を組み立てるという場面があまり見られなかったのは残念でした。

初戦の相手はパラグアイでしたが、ここは伝統的にカウンターサッカーの国で、この大会に送り込んできたユース年代を主体とするチームも例外ではありませんでした。

パラグアイはコンパクトな守備ブロックを引き気味に構え、前線にいる2~3人が日本のボールホルダーをしつこく追い回して、日本の選手が自陣でミスするのを狙っているのがミエミエの戦術。

手倉森ジャパンとしては、自分たちの主戦術であるカウンターサッカーがハマりにくい状況で、こういう場合はパラグアイの守備ブロック内で組織的にパスをつないで攻撃するパスサッカー戦術に切り替えて崩せたら良かったのですが、攻撃面での組織力が低く、パスがなかなかつながりませんでした。

逆に相手がカウンターサッカーをやりたくてDFラインを引き気味にしているのに、日本の守備的MFやバックが相手のセントラルMFの前からスルーパスを出して、ウラへ抜け出した味方FWにボールを通そうとしていましたが、相当無理がありましたね。

グラウンダーのパスは良いとしても、スルーパスを出す位置がボールの受け手から遠すぎますし、FWが相手のウラヘ抜け出すタイミングも早すぎです。

やはりある程度パスをつないで相手バックの前にあるバイタルエリアへ侵入し、そこからDFラインのウラヘ抜け出した味方へスルーパスを出さないと、パススピードが速すぎて受け手がボールを受けられません。

で、攻めあぐねているうちに、相手の狙い通りにこちらのバックが自陣でパスミスをして失点。

後半はさすがのパラグアイも運動量が落ちて日本もパスがつながるようになり、一時は同点に追いついたのですが、日本のゴール前で精度の高いFKを決められて初戦を落としました。

ドリブルするパラグアイの選手を見ているだけでズルズル下がってしまえば、流れの中からやられてしまいますから、ボールを奪いに行ってファールになったのはやむをえませんが、ファールをしないでボールを奪い返す技術を身に着けたり、あるいはゴールから遠いところで早めに相手のドリブルをつぶすようなクレバーさが必要でしょう。

次の相手はポルトガルでしたが、まだユース年代では組織戦術についてそれほど仕込まれていないのか、どちらかというと個の能力で戦うチームでしたが、ここぞというときにはレベルの高い連動性を見せつけられます。

引き気味に構える日本の守備ブロック内でテンポ良くパスをつなぐと、バイタルエリアにパスをやさしく流し込み、そのボールを日本のセンターバックの前でノートラップ・シュートしてポルトガルが先制。

まさに「カウンターサッカーのチームを崩すにはこうやるんだよ」というお手本のような攻撃でしたが、後半は相手も運動量が落ちて、日本も何度かチャンスをつくるんですが決めきれず
2連敗。

ギニアが第三戦の相手でしたが、力の差どおり日本が勝利。 ここまで相手DFのウラでボールを受けてシュートを打つことばかりこだわりすぎていてミドルシュートの意識が欠けていた手倉森ジャパンでしたが、南野選手のゴールの形は良かったと思います。

しかし、またしてもバックのミスから失点して一時は追いつかれるなどゲーム運びには問題がありました。

この大会中も手倉森ジャパンに負傷者が続出し、満身創痍で迎えたイングランド戦ですが、グループリーグ突破が決まっていた相手がメンバーを落としていたせいか、それとも1日おきの4連戦で疲労が蓄積していたせいか、イングランドの選手個々の動きもチーム組織のレベルもさほど高いようには見えなかったのですが、「イングランド」というビッグネームを恐れてしまったのか、日本の選手が慎重になりすぎて相手のプレーを「見て」しまい、守備で後手後手に回って日本にはやや厳しい判定でPKを献上、それが決勝点になってしまいました。

リオ五輪でも「ナイジェリア」とか「コロンビア」といった相手の名前にいちいちビビッていては、勝利はおぼつきません。

 それではまとめますが、トゥーロン国際に参加した手倉森ジャパンの攻撃面で一番気になったのは、選手同士のコンビネーションが取れておらず、とにもかくにも相手の守備ブロックの中でパスがつながらなかったことです。

これでは「パスサッカー戦術の基本」から、もう一度やり直さないといけません。

特にパラグアイ戦のように、相手もカウンターサッカーで自陣に引き気味に構えてウラのスペースを消して来たら、手倉森ジャパンがいくらカウンターサッカーをやりたくてもできないわけですから、その状況を打開するための別の戦術「プランB」を用意しておかなければ、対戦相手との違いをつくり出し、その先へ勝ち進んで行くことが難しくなります。

それにパスサッカー戦術で攻撃面の組織力を高めておき、誰が出ても一定以上のレベルのサッカーができるようにしておけば、急に負傷者が出てもあわてずに済みます。

逆に誰か特定のスター選手に頼るような攻撃戦術だと、その選手が試合に出られない状況になればお手上げになってしまいます。

初戦で攻撃が機能しなかったせいか、二戦目以降ロングボールを前線に放り込む攻撃を多用していた手倉森ジャパンでしたが、ユースチームと言えどもポルトガルやイングランドのようなレベルともなれば、そのような単純かつ初歩的な攻撃で簡単にウラを取ってゴールを決めさせてもらえるほど、世界は甘くないということを再認識させられたのではないでしょうか。

手倉森ジャパンが他のチームより優れていた点は、持久力の高さだと思います。

どの試合も試合の後半に相手の運動量が落ちてきて、そうなると手倉森ジャパンもパスが回せるようになるのですが、それまでにこちらが辛抱しきれず先に失点してしまい、追いかけさせられる展開が多かったですね。

たとえパスがつながらず攻撃が機能しなかったとしても、それに焦って先に失点してしまうのではなく、「最悪の場合でも同点で後半突入なら充分OK」と開き直ることも大切です。

サッカーの勝敗は前後半90分で決まるのであり、相手の足が止まってくる後半にこちらが決勝ゴールを決めれば良いだけのことです。

 守備に関してはまずまずでした。

はっきりと守備ブロックを崩された失点はポルトガル戦の決勝点のみで、あとは自分たちで防げるミスが原因であったり、こちらにとってちょっと厳しいPK判定であったりと、それほど悲観すべきものではなかったと思います。

ただ、ちょっとでもプレスが遅れると、致命的なゴールを奪われてしまうんだよということを、ポルトガルの高いレベルの攻撃から学ばないといけません。

あと大会を通して気になったのは、日本人選手は全体的にパスが弱いということです。

トゥーロン国際はどのスタジアムも小さくて観客も少ないので、普段よりピッチ内の音が非常に良く聞こえました。

足元へショートパスをつなぐ場合でも、ポルトガルやイングランドの選手だと「バスッ!バスッ!」とボールを蹴る音が集音マイクを通してハッキリと聞こえてくるんですが、日本の選手の場合ボールを蹴る音がほとんど聞こえず、受け手の直前でボールが止まりそうになる「コロコロパス」ばかりなんですよね。

それが攻撃時にパスがつながらなかったり、味方のバックパスが相手FWにかっさらわれて失点したりした原因の一つとなっていました。

Jリーグで使用されているピッチは、プレーする選手が過保護になるくらい素晴らしく手入れされていて、芝がつねに短く刈り込まれており、水はけも良くて蹴ったボールがとても走りやすいのですが、海外のピッチは芝が深く荒れていて、下が粘土質で雨が降って水を含むと非常に重たくなって、ボールが転がりにくいスタジアムなどいくらでもあります。

リオ五輪で使用されるスタジアムもそういうタイプのピッチである可能性があり、日本と同じように美しく整ったピッチじゃないとサッカーができませんというのではお話になりません。

こういうことは「慣れの問題」なので、海外へ遠征してもJリーグでやっている感覚でつねにボールを蹴るのではなく、実際のボールの転がり方を見てそれに応じてキックの強弱を調整し、自分たちがプレーするピッチにすばやく適応できるようにしておかなければなりません。

 選手個々では、浅野選手のスピードや決定力、南野選手の思い切りが良く正確なミドルシュートは可能性を感じさせました。原川選手のチャンスメークもまずまず良かったんじゃないでしょうか。

守備では、空中戦・地上戦どちらでも対人守備能力の高さ、フィジカルコンタクトの強さでほとんど負けなかった、植田選手が光っていました。

ただ彼の場合ポジショニング能力の面で、まだ経験の無さが時おり顔をのぞかせます。

図1
植田1
(クリックで拡大)

上の図1のような場面を、トゥーロンでもJリーグの鹿島の試合でも何回か見かけたのですが、味方のセンターバック(CB)が敵選手Aに応対している時、ゴール前にいる敵選手Bに引っ張られて植田選手が密着マークしてしまうケースです。

こういうポジショニングをしてしまうと、味方のCBが敵選手Aにドリブルで抜かれた場合、いきなりGKと一対一の局面をつくられてしまい、即失点となりかねません。

図2
植田2
(クリックで拡大)

こういう場面では、敵選手Aに向かって出されたパスのボールが動いている間や、敵選手Aがパスを受けてドリブルするために下を向いてボールを見た瞬間など適切なタイミングで、植田選手がSBに声をかけながらDFラインを押し上げ、植田選手が味方のCBのナナメ後方にポジショニングして“コペルトゥーラ”の隊形をつくります。

こうしておけば、もし味方のCBが敵選手Aにドリブルで抜かれても、カバーリングしている植田選手がすぐ対応できますし、敵選手Bはオフサイドゾーンに取り残され、プレーに関与できなくなります。

もし敵選手Bがオンサイドゾーンまで戻ってきた場合は、植田選手の近くに来たら植田選手がマークをし、SBの近くにいればマークを受け渡してSBに見てもらいます。

鹿島はブラジルサッカーの影響が強いので、こういうヨーロッパ式の守備戦術は教えられていないのかもしれませんが、植田選手が世界に通用するセンターバックとなって欧州四大リーグで活躍したいという夢をもっているのであれば、絶対に身に着けておくべき知識です。

さして難しい戦術ではないので、すぐにできるようになるでしょう。このあたりが改善されてくれば、フル代表で1試合、今すぐにでもセンターバックのポジションで試してみたいと個人的には考えています。



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