■シリア相手にゴールもいっぱい、課題もいっぱい(その2)

 前回のつづき

 選手個々で特筆すべき活躍だったのは、まず香川選手。2013コンフェデのイタリア戦でブッフォンからゲットしたゴールをほうふつとさせるような、胸トラップしつつ反転してからのシュートは見事でした。金崎選手と相手DFが競ったこぼれ球の落下地点を予測しそこから2点目、さらに本田選手の得点もお膳立てして2ゴール1アシストの大暴れ。

トップ下としてのチャンスメークでも、ポゼッションサッカーの局面ではバイタル中央からDFラインのウラへスルーパスを出したり、宇佐美・酒井高選手らと協力してサイドを攻略、相手が前へ出てきたと見るや、何度もコレクティブ・カウンターの中心となりピッチを縦横無尽に駆け回りました。日本の選手はふわっとした山なりのクロスをあげる人が多いんですが、相手のオウンゴールを誘発した速くて鋭く落ちるクロスも良かったですね。
前半、左サイドで宇佐美選手が良い動き出しをしていたのに香川選手がどうするか迷ってボールを持ちすぎ、結局横パスで絶好のチャンスを逸したことがありましたが、それが唯一の修正点でしょうか。

あまりフィジカルコンタクトが得意でない彼のような選手は、常に良いポジショニングを取ってパスを受け、相手が自分の体に触れるまえにシュートなりパスなりといったやりたい仕事を終えてしまうのが理想ですが、いつも理想通りいかないのもサッカーです。
クラブでも課題として取り組んでいると思いますが、相手から厳しいプレスを受けてもボールロストをしないコンタクトスキルを身に着ければ、もっと怖い選手になれます。
半身でボールを受けているとき相手のゴール方向からプレスをかけられたら、相手に近い方の手を相手の胸にあてて「つっかえ棒」のようにしてボールを守ったり、相手が自分の横から奪いに来たら、相手の肩を自分の前に入れられないよう両腕を飛行機のように広げて防ぎながら、自分の太ももの付け根の外側を相手の太ももにガツンと当てて、相手がバランスを崩した瞬間ドリブルで引き離したり、当研究所は推奨しませんが相手ゴールに背を向けてパスを受ける時は、両手をナナメ後方に広げて自分の背後から相手がプレスをかけてきたのがわかったら、パスを受けるときに自分の尻を突き出すようにして相手の両太ももに尻をガツンと当ててボールキープすると、フィジカルコンタクトに負けてボールロストするようなことを防ぎやすくなります。

本田選手は、相手にしぶとく食らいついて香川選手の1点目をナイスアシスト。香川選手からクロスのお返しをヘッドで決めて1ゴール1アシストの活躍。
シュートを外したことを批判された日本人選手がパスに逃げてしまうと困るのでこれまであえて避けてきたんですが、批判ではなくどうすれば日本人選手のゴール決定力が上がるのかを真剣に考えていくため、そろそろ指摘していかなければならない時期に差し掛かっているように思います。ミランの10番なら是が非でも決めて欲しい、フリーで打たせてもらえたヘディングシュートがあと2本はありました。何が原因で外したのかしっかり研究を。

右ウイング(サイドハーフ)としての働きは、酒井高選手を上手く使うことでサイドを崩す場面が何回かありましたが、やはり本田選手単独でサイドを突破できていないので攻撃パターンが限られ、このポジションはやはり彼にとって適材適所ではないと思います。 前半からハイプレスをかけてピッチを激しく上下動したせいか、クラブでの疲労が蓄積しているせいなのか、試合の後半へばって守備にまったく戻れなくなってしまい、チーム陣形が間延びした4-2-4みたいになってシリアの危険なカウンターを食らう原因に。
ベテランで運動量が落ちたとは言え、まだまだ本田選手の強いメンタルやリーダーシップが日本代表に必要ですし、以前にも提案しましたが、4-1-2-3の二列目として香川選手と並べるか、4-2-3-1の攻撃的なボランチなど、ウイングのような激しい運動量が必要とされないポジションへのコンバートを至急検討を。
本田選手がフィジカルの強さを生かして長谷部(山口)選手らと共にボールを奪い返し、香川・宇佐美・原口選手らで高速カウンターを狙い、ポゼッションするときは本田選手が一列前へ出て、香川選手と共にパスで攻撃を組み立てて相手を崩すイメージです。どうしても右ウイングとして使いたいのであれば、本田選手がへばって守備に戻れなくなった時点で別の選手と交代させるべき。
遅くとも6月のキリンカップでこういうことを試しておかないと、最終予選になって大慌てしかねません。

原口選手は、後半シリアが攻勢に出始めたタイミングでボランチとして出場し、チームの攻撃を再活性化。長友選手からのクロスをヘッドで確実に決めたゴールも良かったです。

宇佐美選手は香川・長友選手らと良くからんで、左サイドで良い崩しが何度も見られました。あとは記録に残るゴールやアシストをするだけですね。

西川選手は、後半ビッグセーブを連発しクリーンシートに貢献。しかし前半10分過ぎ、相手と競り合いながらキャッチしたハイボールをハンブルしそうになったのは修正点です。 

長友選手は、ようやく正確なクロスから原口選手のゴールをアシストできました。インテリスタから「ナガトモのクロスは機械のように正確だから、スタジアムで金を払って観る価値がある」と言われるように、練習を続けて欲しいです。

酒井高選手は、シュートの正確性など改善すべき点がまだまだあるものの、右サイドの崩しに良くからんで成長の跡がみられました。

清武選手は前の試合はトップ下としてポゼッションサッカーの局面で良いパス出しをしていましたが、この試合はコレクティブカウンターからすばやく的確なパスを通して好機を演出。

 逆に森重選手は、後半17分のパスミスからシリアにポスト直撃のシュートを打たれてしまい、前半ヘディングクリアで相手のカウンターを防いだ好プレーが台無しに。チームが2-0とリードしたあと攻撃の選手が守備にまったく戻ってこなくなり、吉田選手と共にシリアの猛攻の前にサンドバック状態になってしまったのは同情の余地があります。

長谷部選手は、危険を察知して相手の攻めの基点をつぶし、攻撃参加も積極的でしたが、自陣深くでボールを奪われ、あわや失点かというピンチを招いてしまいました。次のプレーの判断をもっとすばやく的確に。

岡崎選手は、ウラヘの飛び出しが不発に終わったあと、オンサイドへ戻るのが緩慢で、長友選手の強烈なシュートをGKが前へはじき自分の目の前にボールがこぼれてくる絶好機に1ゴール損してしまいました。「点取り屋」が商売なのにこれではいけません。

これは山口選手が悪かったというわけではなく、アフターぎみに危険なヘッドをした相手選手がいけなかったんですが、彼もヘディングする時の腕の使い方がちゃんとできていたら、顔面骨折のような大ケガを防げたかもしれません。
まず半身になり体の前のほうの腕を振り上げながらジャンプします。そのとき振り上げた腕のヒジを90°ぐらい折り曲げて「アイーン」のようなポーズをつくり、自分の前腕との間にできたスペースでボールにヘディングするようにします。ペナの中でボールが前腕に当たってしまうとPKを取られるのでそこは要注意。こうすれば相手の頭を自分の前腕で押さえてヘッドできるので、少なくとも前から来た相手の頭と自分の顔面がバッティングすることは防げるはずです。ヘディング時のこうした腕の使い方は海外リーグでは見かけるんですが、日本国内では教えられていないんでしょうか。

        ☆        ☆        ☆
 
 ハリルホジッチ監督が就任したとき、アジア二次予選が一通り終わったころには指導者としての力量がだいたいわかると言いましたが、彼は、緻密かつ合理的な戦術理論をもとにチームを理詰めで指導していくグアルディオラ監督のようなタイプではなく、良くも悪くも芸術家肌で情緒的、元サッカー選手としての本能や直感にもとづいた指導をするタイプのようにお見受けしました。

選手を親身になって情熱的にサポートしてくれているところは好感がもてるのですが、戦術面でいくつかの矛盾を露呈し、そこにやや不安を感じたというのが、予選8試合を通して観た率直な感想です。

もともと堅守速攻型のサッカーがお好みのようですが、そういう戦術を選択すれば相手にボールをポゼッションされて攻められる時間が長くなることが予想され、先に失点してしまえばゲームプランが一気に狂ってしまうのに、攻撃の選手の発掘ばかりに熱心で、守備の要であるセンターバックの強化がおろそかになっているように見えるところにも疑問を感じます。

W杯アジア予選が最終ステージに入って、そのあたりが修正されるのかどうか、注目していきたいと思います。

        ☆        ☆        ☆

 それではまとめますが、シリア相手に5-0の大勝という結果はとても良かったのです。

試合内容の面でも、ピッチ内の状況に応じてポゼッションとカウンターサッカーを適切に使い分けるということが、だんだんできるようになってきたところは進歩がうかがえます。

しかし攻守にわたってフォーメーションのバランスがとれておらず、後半20分すぎからスタミナ切れを起こしたのか攻撃の選手が守備にまったく戻れなくなり、中盤がスカスカになって相手のカウンターからいつ失点してもおかしくない状態になってしまいました。

最終予選を有利に進めるためにも絶対に一位通過が欲しい状況でリスクマネジメントが全然できていない、まずいゲーム運びだったと言わざるを得ません。

ザックジャパン時代よりもサッカーのレベルをアップさせるためには、こうした問題を解決していかなければなりせんし、W杯の本大会でもっと強い相手と当ったときに、日本代表の選手たちが望む結果が得られなくなる可能性が高いです。

最後に、オランダサッカー協会から「そういうことはやめて欲しい」と要請があったのであれば別ですが、ヨハン・クライフ財団が金沢市に少年サッカー用コートを寄贈してくれたという浅からぬ縁もあったわけですから、クライフ氏を追悼するため、この試合のキックオフ直前に日本・シリア両チームの選手22人がセンターサークルを丸く取り囲むように並び、1分間の黙祷をささげるセレモニーがあったら良かったのになと思いました。

 ところで日本とメキシコの五輪代表同士のテストマッチを見たら、手倉森ジャパンがアジア予選とはまるで別物のチームになっていてびっくり。どのあたりが「化けた」のかは、次週エントリーで書きます。

◇    ◇     ◇     ◇     ◇     ◇    ◇

         2016.3.29 埼玉スタジアム2002

          日本 5 - 0 シリア


  O.G.(アルマスリ)17'
         香川 66'
         本田 86'
         香川 90'+
         原口 90'+


       GK 西川       GK アルミハ
 
       DF 長友       DF カラッシ
          森重         (アルアハマド 46)
          吉田          O.アルミダニ
          酒井高        アルマスリ
                       サバグ
       MF 長谷部
          山口       MF Z.アルミダニ 
         (原口 58)       アルマワス
          本田          ウマリ
          香川         (アルフサイン 60)
          宇佐美         アルムバイド
         (清武 85)      (アシュカル 78)
                       アルアジャン 
       FW 岡崎
         (金崎 78)    FW ハルビン




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