■おめでとう手倉森ジャパン

 連載記事の途中ですが、手倉森ジャパンがリオ五輪の出場権を獲得したというグッド・ニュースが入ってきました。

選手・監督・スタッフの皆さん、おめでとうございます。

勝因は何と言っても、センターバックを中心とした日本のディフェンス陣が、ゴール前での空中戦にほとんど競り負けなかったことが第一だと思います。

自分たちのゴール前で一対一の争いに負け、相手のヘディングシュートを食らってというのが、ユース・ジュニアユースも含めた日本の育成年代代表がアジア予選で敗退する典型的なパターンだと前回記事で指摘しましたが、手倉森ジャパンは植田選手を中心に、身長が高くフィジカルコンタクトに強いセンターバックを揃えていたので、ゴール前で空中戦に負け、あっけなく失点というシーンがほとんどありませんでした。

逆に、イラク戦の失点と韓国戦の相手の1点目は、センターバック以外の選手がゴール前の空中戦に競り負けたことで、失点につながっています。

だから「センターバックは専門職。最低でも身長は185㎝以上あって、フィジカルコンタクトに強いセンターバックのスペシャリストを日本サッカー界の総力をあげて育成しろ」と、当研究所は口を酸っぱくして言ってきたのです。

センターバックを中心に前半を無失点でしのげれば、アジアトップの持久力を生かすことができ、後半の半ばすぎに相手の運動量が落ちてきたところで、豊川・浅野ら切り札となる選手を投入し、ゴールを奪って勝つ。

そのためにも先発メンバーを固定せず、ターンオーバー制で短期集中開催の大会を乗り切る。

これが手倉森ジャパンの必勝パターンでしたね。

 ただ、一番重要なのは、日本のU-23代表選手たちが将来どういったプレーヤーに成長していくのか、年齢制限がとれたA代表や欧州四大リーグのクラブで、世界の強豪チームを相手にバリバリ活躍できるような大人の選手になれるかどうか、ということです。

イラン・イラク・韓国等のU-23代表チームは、世界のA代表の強豪がやっているサッカーの内容と比べれば、アジアの枠を超えるものではありませんでした。

五輪出場権を得たことや、決してあきらめないゲルマン魂ならぬ大和魂をもって、決勝で大逆転勝利をおさめたことについては、選手たちは良くやったと思うのですが、五輪のアジア予選突破はあくまでも一つの通過点にすぎず、最終目標はもっと高いところにあるということは、サッカーをやる方も見る方も決して忘れてはいけないことだと思います。

リオ五輪まで、あと半年ぐらいしか時間が残されていませんが、解決すべき課題が少なくないのも事実です。

手倉森ジャパンは、当研究所の基準からすればカウンターサッカーのチームでした。

手倉森さんが指揮していた頃の仙台のゲームを思い出せば、そうなるんじゃないかと思っていましたし、この年代はU-20W杯出場を逃しているので、内容はともかく五輪予選に勝つことを最優先にした采配であり、手倉森さんの監督起用であったのでしょう。

問題なのは、このチームが持つ戦術の引き出しはたった一つ、カウンターサッカーのみで、戦況に応じて戦術を柔軟に使い分けるということがほとんどできず、いつも一本調子でカウンター攻撃を仕掛け続ける、ロンドン五輪に出場した関塚ジャパンと良く似たチームだということです。

イランとの準々決勝やイラクとの準決勝は、いずれも後半キックオフ直後から防戦一方となったのですが、チーム全体でも選手個人でも、ボールをキープする時間をつくるということがほとんどできないので、相手にプレスをかけられるとボールを奪われないように縦に大きく蹴り、カウンターを仕掛けるのですが、それを相手にぜんぶ拾われ、波状攻撃を受け続けてチームが「息継ぎ」できない苦しい展開となりました。

そういう状態でボールを奪い返したときに、チームでボールをキープしてあえて遅攻をやることで相手の攻勢をいなし、チームに一息つかせられるよう攻撃のリズムに変化をつけられれば、もっと楽に試合を進められますし、もっと試合巧者になれます。

五輪出場権を獲得したあとの決勝戦では、リスクをかけて前半からパスサッカーをやろうとしていたようですが、相手の守備ブロックの間でグラウンダーのパスをつなぐ能力が低いので攻撃がほとんど機能せず、後半の半ばまで苦戦が続きました。

普段カウンターサッカーばかりやっているチームに、いきなりパス(ポゼッション)サッカーをさせようとしても無理だというのは、これまでしつこいくらい強調してきましたが、手倉森ジャパンも同様でした。

チームレベルでも個人レベルでもボールキープ力に問題があり、戦術や攻撃のリズムに変化をつけるということができないので、リオ五輪本番をこのスタイルのままで行っても、五輪をあまり重視していない欧州の強豪相手に番狂わせを起こすことはできるかもしれませんが、したたかで地力に勝る南米の強豪国やメキシコあたりと当ったら、完敗を喫する可能性が高いと思います。

そうならないためには、リオ五輪本番までに次の2点を集中的にトレーニングすべきです。

まずチーム全体でボールをキープする能力を高めるためには、「パスサッカー戦術」を基本から応用までやり直し、攻撃の組織力をあげるしかありません。

手倉森ジャパンは、中盤をフラットにした4-4-2を使っていますが、一番重要なピッチ中央に選手が足りず、パスサッカーにはあまり向いていません。

やはり“トップ下”のポジションを置いた4-2-3-1か4-1-2-3、あるいは足元の技術があってボールをキープできる選手をセカンドストライカーに置き、ポゼッションしたいときは、その選手が相手のバイタルエリアに出たり入ったりしながらパスで攻撃を組み立てる4-4-1-1みたいなフォーメーションも、オプションとして持っておくべきだと思います。

課題の2点目は、選手個人レベルのボールキープ力を、もっともっとあげること。

手倉森ジャパンに限らず、A代表からジュニアユースに至るまで日本人選手全体に言えることなんですが、一対一で相手にボールを奪われないための体や手の使い方、つまりフィジカルコンタクトのスキルが低い選手が多く、それが個人レベルでのボールキープ力の低さにつながっています。

ボールを奪われないためのコンタクトスキルが高くないために、相手に体を寄せられてあっさりボールを奪われてしまうシーンを、今回の五輪予選でも何度も目にしました。

まず体の正しい使い方なんですが、イラン戦で岩波選手が相手にショルダータックルをかまして、日本のゴール前で危険なFKを与えたことがありました。

近年における国際主審のレフェリング傾向を見ていると、日本国内では「正当なプレー」と教えられているショルダータックルをあからさまにやった場合、ファールと判定されてしまうケースがほとんどです。

これに対して、欧州4大リーグでフィジカルコンタクトに強い選手の体の使い方を良く観察していると、自分の横もしくはナナメ後方から当たってくる相手選手に対して肩をぶつけるのではなく、自分の「太ももの付け根の外側」もしくは「臀部(でんぶ)」を相手の「太もも」あたりに当てることで敵選手のボディバランスを崩し、ボールを奪われないようにしていることがわかります。

次に手の使い方についてですが、相手が自分の横から迫ってきたときに、自分の体の前に相手の肩を入れられてしまうと、高い確率でボールを奪われてしまいます。

相手が自分と並走しながらボールを奪いに来た場合は、まず両腕を飛行機のマネをするように広げ、上体をやや前かがみにすることで、自分の体の前に相手の肩を入れられるのを防ぎつつ、もし自分の前にドリブルするための十分なスペースがあるなら、体の重心をやや落とし、自分の「太ももの付け根の外側」を相手の太ももあたりにガツンとぶつけた反動でドリブルを加速させると、相手を振り切ってボールをキープすることができます。

手と体の両方をタイミングよく使ったコンビネーション技で、フィジカルコンタクトの戦いに勝つというわけです。

相手が自分の後方からボールを奪いに来たケースでは、後ろからボールを突かれると奪われる可能性が高まりますから、「来たな」と思ったら自分の手を相手の胸に当てて、自分の腕をつっかえ棒のようにして、まず自分のボールを守ります。

相手が体で自分の腕を押して来たら、自分の腕をいったん折りたたみ、相手が自分を押す力を利用しつつ、手のひらで相手の胸を押したその反動でドリブルを加速させると、ファールをした印象をレフェリーに与えない自然な感じで相手を振り切り、ボールをキープすることができると思います。

ここで注意しなければいけないのが、手で相手のユニフォームをつかんだり、手で相手の胸ではなく顔やノドを押さえつけると必ずファールを取られるということです。さらに自分のヒジが相手の顔や腹に入ったら一発退場もありえますので、ファールにならないような手や体の使い方のスキルを身に着けなければなりません。

どこまで手を使ったらファールを取られるのかは、審判によって基準がまちまちなので、キックオフ直後にファールを取られても良い場所で実際に手を使ってみて、ファールを取られたらファールになる基準をレフェリー自身にも質問しながら、試合ごとに臨機応変にやっていくしかありません。

手倉森ジャパンが個人レベルでボールキープ力を高めるためには、ボールを蹴る・止める・ドリブルするといった足元の技術をもっと高める必要があるのはもちろんなんですが、ほとんど手つかずになっているように見える、こういったコンタクトスキルのトレーニングも絶対に欠かせません。

手倉森ジャパンに、コンタクトスキル(体や手の使い方)を選手に教える専門のコーチがいないなら、速やかに招へいした方が良いでしょうし、日本人のフィジカルコンタクト能力の強化のために、日本のA代表からJリーグ各クラブの育成部門に至るまで、コンタクトスキルを教える専門のコーチングスタッフを必ず一人は置くよう、日本サッカー協会も奨励すべきです。

日本人に適当な人材がいなければ、欧州や南米から呼んだらどうでしょうか?

 チームと個人レベル双方でのボールキープ力の低さに加えて、選手のメンタル面にも改善すべきところがあると思います。

北朝鮮との初戦は、前半早い時間帯に先制ゴールをあげたところまでは良かったのですが、1点を守り切ろうと選手全員が気持ちまで守りに入ってしまい、ボールを奪われて失点するのが怖いからと、マイボールになったとたん慌てふためいてロングボールをひたすら前へ蹴るだけで、逆に北朝鮮から連続攻撃を受け続けてアップアップの状態。

これは、コートジボアールと対戦したザックジャパンのブラジルW杯初戦と非常に良く似た心理状態でした。(関連記事:日本代表のブラジルW杯総括(その1)

相手に1点でも返されていたら、ブラジルW杯でのザックジャパンやドイツW杯におけるジーコジャパンのようにメンタル面でガタガタッといってしまい、初戦の結果も手倉森ジャパンの大会全体の結果もまったく違ったものになっていた可能性があります。

もしそうなっていたら、「ブラジルW杯でザックジャパンが負けたのはポゼッションサッカーのせいだ」と主張していた、サッカーを見る目をもたない一部の記者たちは、「手倉森ジャパンはカウンターサッカーのせいで負けた。ポゼッションサッカーに戻せ」なんていう記事を書いていたのでしょうか。

イラクや韓国との試合でも必要以上に相手の個の能力を警戒しすぎていて、相手選手が自分の方を向いていても後ろを向いていても、一発で抜かれないように相手との間合いを2mも3mも空けてしまうので、逆に相手のパス回しにプレスが後手後手となり、失点をしてしまう原因となっていました。

そこは相手がタイだろうがイラクだろうが自分がやるべきことを淡々とやり続けることだけに集中し、1m以内に間合いを取ってしっかり相手に詰めないと。

ともかく、日本のサッカー選手が国際大会の初戦で失敗を恐れすぎ、慎重になりすぎてしまう結果、自分たちが持つ潜在能力の半分も出し切れないということが、W杯でも五輪の予選でも続いています。

チームや選手個人の実力は短期間でそれほど変わらないはずなのに、コンスタントに実力を発揮できず、初戦で勝てば優勝、負ければグループリーグ敗退などといった、好不調の波が両極端すぎるのも困りものです。

W杯決勝戦のように毎日のトレーニングを真剣にやり、毎日の練習でやっているように、W杯の決勝戦で自分たちの普段どおりの実力を発揮する。

言うほど容易いことではありませんが、ブラジルW杯決勝でドイツ代表が心地よい緊張感のもと笑顔でプレーしていたように、日本の選手たちもそれぐらいの強い精神力を身につけることができるよう、メンタルトレーニングを各年代ごとの日本代表選手に受けさせるなど、早急に何らかの対策をとることが欠かせません。

ロシアW杯の初戦で、もう同じ過ちを繰り返すことは絶対にできません。

真剣勝負のW杯本番やその予選で、リスクをかけたパスサッカーを平常心でやり遂げ、勝利という結果を得るのはもちろんのこと、試合内容の面でも魅力あふれる、見て面白いスペクタクルなサッカーをするためには、リスクを徹底的に抑えたカウンターサッカーで戦うチームよりも、はるかに高い個の能力・チームの組織力が要求されます。

それを当たり前のようにできるようになったとき、日本代表を「世界の強豪」と呼んでも恥ずかしくない日が来るのだと思います。

記事が長くなりました。選手個々の評価は次回にしましょう。



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