■パスサッカーの基本(その1)


 前回記事では、0-0の引き分け狙いの相手がベタ引きで自陣から出てこないという、カウンターサッカーが機能しづらい状況があることをハリルジャパンが想定しておらず、引いた相手からゴールを奪うためにパスサッカーに戦術を変更する必要が出てきても、これまでロングボールを多用するカウンターサッカーしかやってこなかったので、久しぶりにやったらパスサッカーの連動性が落ちており、それがシンガポールやカンボジアに大苦戦する原因の一つとなったというお話をしました。

「カウンターがダメだったらザックジャパン時代のポゼッションサッカーに戻せばいいじゃないか」という、パスサッカーという戦術の奥深さ・難しさをまったく理解していない、大いなる誤解が日本サッカー界に存在していて、それがハリルジャパンの現在の苦戦につながっているように思えます。

そこで今回から年末スペシャル企画として、何回かに分けてパスサッカー(ポゼッションサッカー)という戦術を基礎から見直していき、日本代表を戦術面からもう一度叩きなおしたいと思います。

<パスサッカーの目的とグラウンダーのパスの重要性>

 パスサッカーに限ったことではありませんが、すべての攻撃戦術の最終目的はゴールを奪うことですから、まずそこから逆算していきますが、ゴールできる確率が一番高い攻撃の形は、オフサイドにならずに味方の選手とボールを相手DFラインのウラへ送り込み、GKと一対一になることです。

(無人のゴールに流し込むだけという形が一番確率が高いのでは?と思われる方もおられるでしょうが、ゴールにはたいていGKが張りついていますし、日本のサッカーチームにありがちなんですが、GKを誘い出して無人のゴールに流し込むだけという形をつくり出すために、ペナルティエリアの中まで細かくパスをつないで時間をかけていると、その間に相手DFが戻ってきてシュートチャンスそのものをつぶされてしまう恐れがあります)

では、オフサイドにならずに味方の選手とボールをDFラインのウラへ送り込んでGKと一対一になるような形をどうすれば一番つくりやすいのかと言えば、バイタルエリアで前を向いた選手がグラウンダーのスルーパスを出して、ウラヘ抜け出した味方にボールを受けさせる形が最も確率が高いと思われます。

これに対して日本サッカー界では、簡単に使える浮き球のロングボールを相手DFラインのウラヘ放り込むプレーが伝統的に好まれてきましたが、世界のサッカー先進地域ではこういうプレーに対する守備戦術は既に確立しています。

もしボール保持者にプレスがかかっていれば、DFラインを押し上げて相手選手をオフサイドゾーンに置き去りにし、ボール保持者にプレスがかけられない状態では、DFラインのウラヘ抜け出そうとする相手選手に最後までついていくことで対処されてしまい、たまに上手くいくこともありますが次からは相手にしっかり警戒されて、対戦チームのレベルが高くなればなるほど、そう何度も使える手ではありません。

どっかの国に「すぐに使えるものは、すぐ役立たなくなる」ということわざがあったはずですが、まさにそれです。

そもそも敵チームがベタ引きで、相手のDFラインとゴールラインとの間に挟まれたスペースが非常に狭くなっているような状況では、DFラインのウラヘロングボールを放り込んでも、前進してきた相手GKにキャッチされるか、敵GKも取れないけれど味方も追いつけずボールが直接ゴールラインを割ってしまうか、そのどちらかになる可能性がほとんどです。

だからハリルジャパンの浮き球のロングボールを多用するカウンターサッカーが、相手に引かれると途端に機能しなくなるのです。

相手バックのウラには、果てしなく広大なスペースがいつでも存在していて、自分がパスをもらってドリブルすると地平線のはるか彼方からゴールがせりあがってくるなんていうのは、キャプテン・○のような漫画の世界の話であって、現実のサッカーでは絶対にありえません。

相手チームがDFラインを高く設定するか低く設定するかによって、バックラインのウラのスペースも広くなったり狭くなったりするのだというサッカー戦術の常識を日本人選手が今ひとつ理解しておらず、ベッタリ引いた相手DFのウラヘロングボールを盛んに放り込み、相手のゴールキックを一生懸命増やしているシーンをしばしば見かけるのは、某国民的サッカー漫画の影響なのかもしれませんね。

仮に、オフサイドにならずに相手DFラインのウラでパスを受けられたとしても、浮き球のボールをシュートやドリブル・パスといった次の動作へと確実につなげるためには、足や胸でボールを一旦トラップしてコントロールすることが必要となりますし、その時間だけDFが攻撃側の選手に体を寄せてミスプレーを誘ったり、シュートコースを消したりする余裕が生まれます。

相手DFに体を寄せる時間を与えれば、日本人選手のようにフィジカルコンタクトに強くない方が不利になります。

自分の後方から来た浮き球のボールをダイレクトでボレーシュートすることも不可能ではありませんが、ボールを足で扱うのでミスプレーがどうしても多くなるサッカーというスポーツの性質上、シュート決定率が高いプレーとは言えません。
(浮き球のクロスボールをヘディングシュートする場合は別)

その点グラウンダーの短距離のパスであれば、自分の前方にいる2人の敵DFの間を抜けるだけのスピードがあれば良いので、浮き球のロングボールよりもパススピードが遅くても済み、相手DFのウラにある、パスを出したいスペースが狭くても、オフサイドを回避しながら敵GKより先に味方の選手が追いつける確率が高いパスを出すことが可能になります。

グラウンダーのパスであれば、来たボールをそのままシュートやドリブル・パスといった次のプレーに正確につなげやすいですし、来たボールをトラップする時間が必要ない分だけ、相手のGKやDFもボールホルダーの次のプレーが予測しづらく対処が困難になります。

パスの受け手が処理しやすく、シュートやドリブル・パスといった次のプレーに正確につなげやすいものこそが「良いパス」であり、そうした「良いパス」を出せる選手が「良いパサー」です。パスの出し手は常にそうした配慮ができなくてはなりません。

以上、グラウンダーのパスが持っている様々な長所を見てきましたが、グラウンダーのスルーパスを使えば、オフサイドにならずに味方の選手とボールをDFラインのウラへ送り込んでGKと一対一になる形をつくることがより容易であり、相手がDFラインを高く保っている場合はもちろんのこと、相手が自陣にベタ引きでウラのスペースが狭くなっているような状況では特に、グラウンダーのパスを主体として攻めるパスサッカーが有効なのです。

 バイタルエリアで前を向いた選手がグラウンダーのスルーパスを出せば、オフサイドにならずに味方の選手とボールをDFラインのウラへ送り込んでGKと一対一になる形をつくりやすいことはわかりました。

それでは、相手DFラインの前のスペースであるバイタルエリアで、味方の選手がボールを持って前を向くという形をどうすれば一番つくりやすいのでしょうか。

バイタルエリアはDFラインのウラと並んで、守備側がもっとも厳しくケアしてくるスペースです。

もしバイタルエリアで多くの敵選手に囲まれている味方に向かって浮き球のロングボールを放り込んだとしても、相手DFにヘッドでクリアされるなどして、味方にパスを通すのは容易なことではありません。

浮き球のロングボールを空中で競り合う場合、選手の身長やジャンプ力が互角であれば、自分の背後からボールがやってくる攻撃側よりも、自分の方に向かってボールが飛んでくる守備側の方が有利で、クリアがより容易であることが一般的です。

よって、フリーでプレーするための時間とスペースが限られているバイタルエリアにいる味方に対しては、やはりグラウンダーのパスを使った方が、通る確率が高くなります。

特に、相手がコンパクトな守備ブロックをつくり自陣に深く引いているような状況において、相手DFラインの前でスペースに出せるパスというのはサイドチェンジのパスかゴール前でのクロスボールぐらいで、それ以外は基本的に足元へのグラウンダーのパスを使って攻める場合がほとんどということになります。

現在、世界最高レベルのパスサッカーをやっているのはFCバルセロナであり、バルサにオランダ流のパスサッカーを導入したのがヨハン・クライフであったのは有名な話です。彼はこう言っています。

「私にとってフットボールとは両足でプレーするものであり、
ボールがピッチから離れることはない」 

               サッカーマガジン2011年2月1日号

クライフが現役時代、ボールが空中を飛んでピッチから離れることになる「浮き球のパス」をまったく使わなかったということは無かったでしょうし、少々誇張された表現だとは思うのですが、パスサッカーにおいて、それぐらいグラウンダーのパスが重要だということを、言いたかったのではないでしょうか。


次回につづく



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