■二手三手先を考えてサッカーをするということ(その2)

 前回はカウンターサッカーとパスサッカー、それぞれの戦術の長所・短所を見ていきました。

それをしっかりと押さえた上で、現在の日本代表はピッチ内の状況に応じてちゃんと戦術を使い分けることができているのか、二手三手先を考えたサッカーができているのかという点について、検証していきます。

 ハリルホジッチ監督は、タテに速いカウンターサッカーを日本代表に導入しようとしていますので、その場合に起こりうる試合展開をフローチャートにしてみましょう。

この3パターンの戦術の使い分けは、あとでもう一度触れますので、良く覚えておいてください。

1.カウンターサッカーを選択→前へ出てきた相手の手薄な守備をついて先制ゴールをゲット→リードを保ったまま勝利→GOOD!

2.カウンターサッカーを選択→引き分け狙いの相手が最初からベタ引き→カウンター攻撃のためのスペースがない →パスサッカーで崩す必要性が出てきた→それに備えて普段からパスサッカーのトレーニングをしておいた→パスサッカーに戦術をスムーズに切り替えられた→ゴールをゲット→リードを保ったまま勝利→GOOD!

3.カウンターサッカーを選択→格上の相手が前に出て攻めてきたが先制されてしまった→相手がリードを守るために自陣に引き、そこから厳しいプレスをかけてきた→カウンター攻撃のためのスペースがない→パスサッカーで崩す必要性が出てきた→それに備えて普段からパスサッカーのトレーニングをしておいた→パスサッカーに戦術を切り替えて同点に追いつく→相手が再び前へ出てきたところでカウンター戦術に切り替えて逆転ゴールをゲット→リードを保ったまま勝利→GOOD!

これが「二手三手先を考えたサッカー」だと当研究所は考えます。

ここで特に重要なポイントとなるのは、相手に引かれると機能しづらいというカウンターサッカーの短所と、常に実戦やトレーニングでやり続けないとレベルが落ちてしまうというパスサッカー(ポゼッションサッカー)の短所をしっかり押さえておき、それに対して普段から準備を怠らないというところです。

ところが現実のハリルジャパンは、

・カウンターサッカーを選択→引き分け狙いの相手が最初からベタ引き→カウンター攻撃のためのスペースがない→パスサッカーで崩す必要性が出てきた→カウンターサッカーが機能しない状況があることを想定していなかった→これまでロングボールを多用するカウンターサッカーしかやってこなかったので、久しぶりにやったらパスサッカーの連動性が落ちていた→引いた相手を崩せない→シンガポールやカンボジアに大苦戦
→NO GOOD!

こうなっているわけです。

日本サッカー協会は、ザックジャパンのパスサッカーにハリルホジッチさんのカウンター戦術を上乗せしたいと考えているのでしょうが、カウンターサッカーとパスサッカーの長所・短所が良く理解できていないために、カウンターサッカーを上手く使いこなせず、これまでアジア諸国に差をつける重要な武器となっていたパスサッカーという日本代表のストロングポイントまで手放そうとしています。

だからシンガポールやカンボジアのような「格下」のはずだった相手に、苦戦するのです。

ブラジルW杯の直後、日本サッカー界では「ポゼッションサッカーのせいで日本は負けた」という的外れの議論が巻き起こり、「カウンターサッカーこそ正義」みたいな主張が幅をきかせていましたが、そのツケが回ってきたのが、引き分けとなったシンガポールとのゲームであり辛勝となった先日のカンボジア戦でした。

当研究所は、「パスサッカー」と「カウンターサッカー」を状況に応じて適切に使い分けるべきであり、どちらが正解でどちらが間違ってるということではないとずっと主張してきました。

ただ、カウンターサッカーが機能しなかったからといってパスサッカーに切り替えようとしても、パスサッカーは選手同士のコンビネーションと連動性が命ですから、普段からパスサッカーのトレーニングを継続的にやり、レベルを維持しておかないと、いざ実戦で使おうとしても機能しないというのは、これまで何度も述べた通りです。

「ハリルホジッチ監督のカウンターサッカーが上手くいかなかったら、ザックジャパン時代のポゼッションサッカーに戻せばいいじゃないか」という人がいますが、そういう人は長所と短所も含めてパスサッカーという戦術の何たるかを、まったく理解できていません。パスサッカーのことをナメてさえいると思います。

大切なことなので繰り返しますが、パスサッカーをやっていたチームにカウンター戦術を教えるのはそれほど時間と手間はかかりませんが、カウンターサッカーばかりやっていたチームに、実戦で機能するレベルのパスサッカーを教えるのには、それなりの時間と手間がかかるのです。

しかも代表チームはクラブと違い、トレーニングや実戦の時間が限られているということはわかりきっており、いくつもの戦術を同時に選手に教え込んでいるヒマはありません。

普段からパスサッカーのレベルを保ち、あるいは向上させていけば、日本代表にカウンター戦術を仕込むのに、2018年ロシアW杯の1年ぐらい前から取りかかっても十分間に合います。

しかしロングボールを多用したカウンターサッカーを日本代表のベース戦術にし、10月に行われたイランとのテストマッチみたいに、それが機能しなかったからといって、あわててパスサッカーに切り替えても手遅れになってしまう可能性が高いです。

ハリルホジッチ監督は、アジア2次予選は選手選考のために使うみたいな悠長なことを言っていますが、アジア最終予選でも自陣に引いてカウンターを狙ってくる中東諸国と数多く対戦することが予想されます。

アジア最終予選が始まってからとはいわず、遅くとも来年初めからパスサッカーのトレーニングを開始してテストマッチやアジア2次予選等で連動性をあげておかないと、中東勢に引かれた時にアジア最終予選が苦戦の連続となりかねません。

だから二手三手先を読んで、日本代表はパスサッカーを主たる戦術としてトレーニングと実戦を積み、状況に応じてカウンター戦術を選択すべきである、カウンター攻撃をやる場合でも浮き球のロングボールを多用するのではなく、ボールを奪い返したら攻撃の選手3~4人が連動してグラウンダーのパスをつないで攻撃する、「コレクティブ・カウンターアタック」を使うべきだと、当研究所はこれまでずっと主張してきたのです。

相手選手の間をグラウンダーのパスで崩していく「コレクティブ・カウンター」の延長線上に「パスサッカー」があるため、コレクティブ・カウンターをやることで、パスサッカーに求められる選手同士の連動性もある程度保たれますし、ボールを奪い返してから一つ一つのプレーに速く的確な判断が求められるコレクティブ・カウンターで選手が鍛えられると、パスサッカーのレベルもアップするという相乗効果が得られます。

コレクティブ・カウンターはグラウンダーのパスを主体に攻めるため、フィジカルコンタクトや空中戦にあまり強いとはいえない日本人選手に向いている戦術とも言えます。

以上が、日本代表はパスサッカーを主たる戦術としてトレーニングと実戦を積み重ね、状況に応じてコレクティブ・カウンター戦術を選択すべきであると当研究所が考える理由ですが、その使い分けをマスターできれば、前述のカウンターサッカーのところで述べた3パターンの戦術の使い分け以外にもこういう戦い方ができるようになります。

4.パスサッカーを選択→先制ゴールをゲット→リードを保ったまま勝利→GOOD!

5.パスサッカーを選択→先制ゴールをゲット→相手の反撃で防戦一方となり苦しい状況→コレクティブ・カウンター戦術に変更→手薄になった相手の守備をついて追加点をゲット→相手は精神的ダメージを受け攻勢が弱まる→リードを保ったまま勝利→GOOD!

6.パスサッカーを選択→相手の方が実力が上で押し込まれてしまった→パスサッカーをやりたいがそれができない→コレクティブ・カウンター戦術に変更→手薄になった相手の守備をついて先制ゴールをゲット→リードを保ったまま勝利→GOOD!

ブラジルW杯のコートジボアール戦で5の戦い方ができていたら、日本代表の成績も大きく変わっていたんじゃないでしょうか。

これこそが「二手三手先を考えたサッカー」であると当研究所は考えます。

ロシアW杯で良い成績を残すためにも、ピッチ上の状況に応じて、こうした戦い方を適切に使い分けることができるような戦術眼を、日本代表の選手全員に是非とも養ってもらいたいと考えています。

自分たちと互角か格下相手にはパスサッカーをベース戦術として、つまり4や5の戦い方を想定して試合に臨み、自分たちより格上の相手に対しては、1や3の戦い方を想定して試合に臨めば、本番になって大慌てしなくても済みます。

(2と6は、試合前に相手の実力を正しく評価できていなかったことを意味しますので、スカウティングさえしっかりしていれば、2ではなく4で、6ではなく1や3の試合展開になることを想定して最初から戦えば問題ないでしょう)

それでもW杯の本大会まで、基本的に自分たちより格下か、互角の相手との対戦が続くこともありますし、パスサッカーを日本代表のベース戦術にすべきであるというのは再度念押ししておきます。

 ところで「W杯の本大会ではシンガポールやカンボジアみたいにベタ引きで来る相手はいないのだから、日本が彼らに苦戦したことを気にする必要はない。アジアと世界は別」という人がいるようですが、それは違います。

弱いチームが自陣にベッタリ引いてスペースをできるだけ少なくするという守り方は、日本と互角か格上の相手が、コンパクトな守備ブロックから厳しく的確なプレスをかけることで、日本の選手がプレーするためのスペースと時間を消すのと同じ効果があります。

よって自陣に引いた弱いチームをいかに崩してゴールを奪うかというところに、パスサッカーの基本が詰まっているのであり、パスサッカーの基本ができていない者に、応用問題を解くことはできません。

前述のパターン2でゴールを奪えないようでは、パターン3ではなおさらゴールするのは難しいということです。

具体例をあげれば、ブラジルW杯で初戦を落とした日本がギリシャには絶対に勝たなければいけなかったのに、一人少なくなって自陣にべったり引いたギリシャを最後まで崩すことができず、それがグループリーグ敗退につながる一つの要因となりました。

あのときは、ギリシャのボランチの前にいる日本のボールホルダーを誰もサポートせず、相手のバックラインと一直線になった3トップ全員が手をあげてウラヘのボールを要求するという、みんなが一斉に同じ動きをワンパターンで繰り返していたから、決勝Tへ行くためのゴールが奪えなかったのです。

当ブログ過去記事・日本代表、ギリシャを攻めきれず

そうした過ちを、日本代表がカンボジア戦の後半でも繰り返しているのを見たとき、負けて選手が泣きじゃくったあのブラジルW杯のつらい経験はいったい何だったのかと思わずにはいられませんでした。

ブラジルW杯における日本のサッカーを「ポゼッションサッカー」なんて呼んだら、「一緒にすんな」とカタルーニャの人たちに怒られてしまいますし、「ハリルホジッチ監督のカウンターサッカーが上手くいかなかったら、ザックジャパン時代のポゼッションサッカーに戻せばいいじゃないか」という、パスサッカー(ポゼッションサッカー)をナメているとしか思えない発言も日本サッカー界から聞こえてきますので、日本式ポゼッションサッカーのどこがダメだったのか、パスサッカーの基礎から日本代表をみっちり叩きなおすための記事を書きたいと思います。

解説図がたくさん必要になりますので、来月気が向いたときにアップするようにします。


当ブログ関連記事・ポゼッションサッカー悪玉論は間違い

(当ブログ関連記事・ポゼッションサッカー悪玉論は間違い(その2))



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