■二手三手先を考えてサッカーをするということ(その1)

 今年3月・4月のテストマッチで2連勝を飾ったハリルジャパンのカウンターサッカーを国内メディアが絶賛し、日本代表のボールポゼッション率が50%を切ったことをまるで「正義」のように書きたてていた頃、当研究所はこう警鐘を鳴らしていました。

今メディアはハリルジャパンのカウンターサッカーをもろ手を挙げて絶賛していますが、いずれそれが相手に研究されて、日本のカウンターを防ぐために自陣深く引いてスペースを消し、逆カウンターを狙ってくるチームが現れることでしょう。

相手が「強豪の日本からは勝ち点1取れればOK」と判断して前へ出てこなければ、ハリルジャパンが相手をワナにはめるために引いてカウンターのチャンスをうかがっても試合時間がどんどんすぎるだけで、日本は0-0のドローゲームが増えていくだけになると思います。

そういう場合は、守備ブロックをつくって自陣で構えている相手からゴールを奪う戦術が必要になります。

もちろんハリルホジッチ監督も、そうした状況におかれた場合の解決策を用意しているでしょうが、相手をティキタカで崩すパスサッカーは一つの選択肢となります

ポゼッションサッカー悪玉論は間違い(その2) 

 

その予言は、わずか2か月後のW杯アジア予選(日本0-0シンガポール)で早くも現実のものとなりました。

 今から8か月前に、どうして現在のハリルジャパンの苦境を正確に予測できたのかと言えば、これまでたくさんのゲームを見てきた自分の経験からです。

W杯や各大陸ごとの予選、アジアカップ・ユーロ・コパアメリカ・アフリカNC・北中米ゴールドカップ、欧州各国リーグにチャンピオンズリーグと様々なレベルの試合を、これまで20年以上にわたって数多く見てきました。

どっちのチームが勝った・負けただけじゃなく、ポゼッション対ポゼッション、ポゼッション対カウンター、カウンター対カウンターといったぐあいに、両チームがどういう戦術で戦って、それがどういう結果をもたらしたのかということにも着目して見ていました。

そうした経験を積み重ねていくと、戦術ごとの長所・短所や得意とするシチュエーション・苦手とするシチュエーションというものが、だんだんとわかってきます。

☆カウンターサッカーの長所

・自分たちより強い相手に対しても使える戦術であること。

・攻撃時に使うスペースは前に出てきた相手チームが用意してくれるので、狭いスペースでもパスをつないでいくために求められる足元の技術力・空間認知力をあまり必要とせず、弱者でも使える戦術であること。

・選手に戦術をマスターさせる上で、あまり時間と手間がかからない。

★カウンターサッカーの短所

・手薄になった相手の守備をついてゴールを狙う戦術のため、相手に自陣に引かれてスペースが無くなると、とたんに機能しづらくなる。相手が最初から引き分け狙いでベタ引きに守ってきたり、自分たちより格上のチームに先制されて引かれてしまうと、打つ手がなくなってしまう。

・浮き球のロングボールを多用するカウンターサッカーばかりやっていると、狭いスペースでもパスをつないでいけるような足元の高い技術や空間認知力をもった選手が育たず、選手同士の連動性も低下するので、パスサッカーをするための組織力が養われない。

・浮き球のロングボールを多用するカウンターサッカーは、自分たちよりフィジカルコンタクトや空中戦に強い相手には機能しづらい。

これは好みの問題ですけど、守っている時間が長く、攻撃も単調で面白くない、エンターテインメント性に欠けるところをカウンターサッカーの短所としてあげるサポーターもいるのではないでしょうか。

上記二番目の短所ともつながってくる話ですが、たとえカウンターサッカーで成功しても、「試合に勝った」という記録だけは残りますが、優秀な選手などそれ以外の財産がその国なりチームなりに残りにくく、カウンターサッカーで成功したチームは、「一発屋」の傾向が強くて、覇権が長続きしないというのも事実だと思います。

ユーロ2004で優勝したギリシャがその典型ですし、5バックでカウンターサッカーをやっていたオランダはブラジルW杯で3位となったものの、それが原因で優秀な若手選手が育たず、ロッベン・スナイデル・ファンペルシーに続く世代への交代に失敗したことがユーロ2016予選で敗退した原因なんじゃないでしょうか。

 では次にパスサッカー(ポゼッションサッカー)です。

☆パスサッカーの長所

・相手に引かれようが、逆に前に出てこようが自分たち次第でいくらでも機能させられる能動的な戦術であること。

・攻撃時に自分たちから積極的に動いてスペースをつくりだす必要があり、敵選手に囲まれた狭いスペースでもパスをつないでいくために足元の技術力や空間認知力が求められるので、継続してやり続けることで高い能力を備えた選手が養われる「強者のための戦術」あるいは「強者になりたい者のための戦術」であること。

・グラウンダーのパスを中心に攻めるので、たとえ選手の身長が低くフィジカルコンタクトが苦手であっても、それが不利にならない。

★パスサッカーの短所

・敵選手に囲まれた狭いスペースでパスを正確につなぐには選手同士のコンビネーションや連動性が必須であるため、それなりのレベルのパスサッカーをやるには、ある程度の時間と手間をかけたトレーニングが必要。しばらくやらないと連動性が落ちるため、パスサッカーのレベルを一定に保つためにもトレーニングや実戦で使い続けることが必要。

・相手のパスサッカーの方がレベルが上であった場合、相手にボールをポゼッションされ自陣に押し込まれることで、こちらがやりたくてもできなくなる。そういった意味でも「強者のための戦術」であるということ。

・リスクマネジメントをしっかりやっておかないと、相手のカウンター攻撃から失点する可能性がある。(これはカウンターサッカーをやる場合でも言えることですが)

もっと細かく見ればいろいろあると思いますが、2つの戦術の長所と短所をざっとあげるとこうなります。

監督さんなりサッカー協会あるいはクラブの幹部が、自分のチームにどういった戦術でサッカーをやらせるのかを考える場合、 最低限こうしたことを押さえておかないと、あとで痛い目にあうことになります。

ある戦術には必ず長所と短所があり、ピッチ上の状況によって機能しやすい場合とそうでない場合とがあります。

ですから一つ目の戦術が機能しなかったときに備えて、つねに別の戦術をいくつか用意しておかなければなりません。

それが「二手三手先を考えてサッカーをやる」ということです。

たった一つの戦術しか準備しておかず、それが行き詰ったのを見て初めてベンチが大慌てをするようでは、世界を勝ち抜いていくことなんてできません。

 カウンターサッカーとパスサッカー、それぞれの戦術の長所・短所をしっかりと押さえたところで、

「じゃあ今の日本代表はピッチ内の状況に応じて、適切に戦術を使い分けることができているのか?」

「ちゃんと二手三手先を考えて、サッカーをやっているのか?」

というところを見ていきましょう。

次回につづく



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