■コレクティブ・カウンターアタックとは

 前回、相手がコンパクトな陣形から厳しくプレスをかけてきたり、自陣にべったり引いて守備ブロックを形成している場合は「パスサッカー」で崩し、相手に押し込まれている場面でボールを奪い返した時には「コレクティブ・カウンターアタック」で崩すのが有効と書いたんですが、では「コレクティブ・カウンターアタック」とはどういうものか、映像で見た方がわかりやすいと思うので、今回はそれを見ていきながら、日本人選手のストロングポイントを生かせる有効なカウンターアタックについて考えてみます。

 まず「コレクティブ・カウンターアタック」の例ですが、下の映像を見てください。2012年10月12日にサンドニで行われた日本対フランスのゲームです。



当時のデシャン監督に「ああ、グサッと来たよ」と言わしめたやつですね。

ハリルホジッチ監督はこの映像見たことあるのかな?

相手のセットプレーをしのいでボールを奪ってからの判断の速さ、サポートの的確さ、そしてグラウンダーのスルーパスでウラヘ抜けて、中央への折り返しを香川選手が決めています。

「コレクティブ・カウンター」は瞬時の判断力と足元の技術・スピードが重要であって、もし背の高さやフィジカルコンタクトの強さで劣勢にあっても、そうしたハンデはほとんど関係ありません。

だから日本人選手に向いていると思うんですよね。当研究所が求める「タテに速い攻撃」「カウンターアタック」とはまさにこれです。

次は、2013年11月20日にブリュッセルで行われた日本対ベルギー戦から。



香川選手のラストパスがやや大きくなってウラヘ抜け出した柿谷選手が直接シュートまでもっていけなかったものの、相手に押し込まれている状況で本田選手がボールを奪ってから、香川選手のタテへの攻撃の判断の速さ、的確さが良いですね。

欲を言えば下図のように、相手のバックを幻惑するためドリブルする味方の前を交差するような動きを織り交ぜてスルーパスを受けたり、相手バックを引きずり出してドリブルする味方が直接シュートまでもっていけるようにしたりできれば、なお良いです。

正カウンター2
(クリックで拡大)

日本代表は今まですっかり忘れていたのを突然思い出したように、ときたま素晴らしい「コレクティブ・カウンターアタック」を見せてくれるんですよね。

やればできるんじゃん。

どうしてこの戦術を、ワールドカップのような大事な試合で、自分たちが意図したタイミングで意図的にやろうとしないのかがわかりません。

 じゃあ次に、今ハリルジャパンでしばしば見られるカウンターの例。

先日のイランとのテストマッチから。



自陣でボールを奪い返して、柴崎選手からサイドへ流れる武藤選手へロングボールという展開。絵的にはすごいチャンスに見えますけど、実はそうでもない攻撃です。

センターFWがタッチラインぞいでボールを受けても直接シュートは打てないですし、たとえ相手DFを抜いてゴール前へドリブルできたとしても、サイドでガチガチやっている間に戻って来てしまったイランの選手が、中央に2枚残っています。

よって武藤選手が相手に競り勝ってボールをキープし、タメをつくっている間に味方の押し上げを待つぐらいしか手立てはないのですが、味方が押し上げる時間をつくるということは、多くの敵選手がゴール前へ戻る時間もつくってしまうということであって、案外ゴールには結びつきません。

しかも前方へ大きくロングボールを放り込むことで、相手GKとの一対一の局面で使いたいウラのスペースを自分たちでつぶしてしまっています。

カウンター攻撃としては、それほどクオリティが高いものではありません。

霜田さん、こんな攻撃を選手に何十回やらせても、この戦術をこれから高度に発展させるなんてことはできないと思いますよ。

チャンスになるとしたら、相手のセンターバック2枚の間にできる“門”を抜けて味方がロングボールを受け、そのままゴールまで一直線にドリブルしてシュートを打つケースですが、相手もそれは十分警戒しています。

現代の守備戦術においては、バックラインを高めに保つことが流行していますが、その分ウラに広く空いたスペースへのケア方法もすでに確立されています。

相手ボールホルダーにプレスがかかっていれば、DFラインを押し上げて相手FWをオフサイドポジションに置き去りにし、相手ボールホルダーにプレスがかかっていなければ、ウラヘ抜けようとするFWにDFがそのままついて行って自由にやらせないというのは、守備戦術の基本。

相手のレベルが高くなればなるほど、味方へパスを通すのが難しくなってきます。

たまに運よく決まることもありますけど、次からは厳重に警戒されて、そう何度も使える手ではありません。

J3のゲームで、町田ゼルビアがバックラインを高く押し上げていたという理由だけで、U-22選抜がひたすらロングボールをウラヘ放り込み、攻撃がまったく機能しないまま負けたという話を小耳にはさんだんですが、手倉森さん、リオ五輪大丈夫ですか?

 次に「タテに速い攻撃」をするのがふさわしくない局面の例。



イランが自陣に引いて守備ブロックをつくっているので、相手DFラインとゴールラインの間のスペースが非常に狭くなっており、そこへロングボールを放り込んでも、味方が追いつけずボールが直接ラインを割ってしまうか、相手GKにキャッチされるか、それがせいぜいでしょう。 

相手が自陣に引き気味でブロックをつくっている時は「タテに速い攻撃」をやるのにふさわしいシチュエーションとは言えません。相手DFラインの前の、守備ブロックの中で、グラウンダーのパスを使った「パスサッカー」で崩す方が有効です。

シチュエーションごとにどういう戦術を使えば有効なのかを考えて、上手に使い分けていくことが重要です。

柴崎選手、意外と戦術理解の面で経験が足りないですね。

 つづいて同じくイラン戦から、こっちは良いカウンターの例。



相手のセットプレーからボールを取り返して、清武選手が的確な判断でタテにすばやくパスをつなぎ、宇佐美選手の絶妙のスルーパスから武藤選手とGKとの一対一をつくった場面。

ドリブルの2タッチ目が大きくなって武藤選手がシュートまでもっていけなかったんですが、それは彼自身が練習でこれからいくらでも改善していけます。

トランジション(攻守の切り替え)を早くし、チーム全体で統一された意図をもって、こうした「コレクティブ・カウンター」をどんどん狙っていくべき。

「コレクティブ・カウンター」が上手くできるようになるためには、次にどういうプレーを選択すべきか、プレーヤーは瞬時に正しい決断を下す能力が求められます。

さらに言えば、「コレクティブ・カウンター」をやるときの判断の速さ、パスをつなぐリズムで、「パスサッカー」(=ポゼッションサッカー)をやって欲しいのです。いつも言っていますよね、プレーヤーが1度にボールを持つ平均時間を2秒以内にしなさいと。

「コレクティブ・カウンター」で鍛えられると、「パスサッカー」をやるときにも、マイボールにしたあとの最初のタテパスが段違いに良くなってきますし、ボールの持ちすぎもだんだんと減ってくるでしょう。

ゴールが欲しいのに、いったんチームを落ち着けるために、ボールを奪い返したあとボールホルダーがゆっくりドリブルしながら周囲を見回して、決まり事のように横パス・バックパスをまず選択するという日本流ポゼッションサッカーではダメです。(もちろんボールを落ち着けたほうが正しいシチュエーションはありますが)

「コレクティブ・カウンター」が上手くなれば、「パスサッカー」のレベルもアップしますし、ゲーム中たえず「コレクティブ・カウンター」を狙っていて、それができないときに「パスサッカー」に切り替えれば良いわけです。

相手が日本代表より強ければ、押し込まれる時間帯が長くなるでしょうから、攻撃のときに「パスサッカー」よりも「コレクティブ・カウンター」で攻撃を仕掛ける回数が多くなるでしょうし、相手が日本代表より弱ければ、こちらが押し込む時間帯が長くなりますから、「コレクティブ・カウンター」よりも「パスサッカー」をやる回数が多くなるでしょう。

難しく考えることはありません。ただそれだけのことです。

 同じカウンターアタックでも、「コレクティブ・カウンター」は背の高さやフィジカルコンタクトの強さで劣勢であってもあまり関係なく、スピードやアジリティ・足元の技術を生かせる分、日本人選手向きだと思いますし、日本サッカーの新しいアイデンティティになりえると思います。

あとは選手個々の、瞬時の判断力をレベルアップさせるだけ。

だいたい頭の上をロングボールがポンポン超えていくのでは、アジリティのある香川選手や非凡なドリブルを持つ宇佐美選手が、宝の持ちぐされじゃないですか?

「コレクティブ・カウンター」がやりたいという理由もあって、当研究所は少なくとも「左右のハーフ(ウイング)にはスピードがある選手を!」と言っているわけです。


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