■有効な攻めの形が見えない日本代表(その2)

 前回のつづき

 日本代表の守備については、監督さんが「ラジカルチェンジ」と呼んだように、前線から積極的にプレスをかけてボールを奪い、ショートカウンターを狙っていたように見受けられましたが、前線でのプレスがなかなかハマらず、こちらの4バックが相手のロングボール攻撃もあって前へ押し上げることもできず、プレスをかける前の6人と4バックとのあいだが間延びしてそのスペースへ落ちたボールをイランに拾われて攻められ、なかなか自分たちのリズムでゲームを進めることができませんでした。

思い返せばアギーレ前監督も、昨年10月のブラジル戦でフォアチェックからのショートカウンターを狙う戦術で玉砕しています。

フィジカルコンタクトが得意でない日本の選手は、相手からボールを奪い返す能力が高いとは言えず、「フォアチェックからのショートカウンター」という戦術は向いていないんじゃないでしょうか。

そこまで無理せずとも、オーソドックスに自陣でコンパクトな守備ブロックをつくってそこからプレスをかけてボールを奪い、清武→宇佐美→武藤のダイレクトパスでGKとの一対一までもっていった後半13分のようなカウンターで、高くなった相手バックラインのウラを突けば、十分ゴールは奪えると思います。

「タテに速い攻撃」といっても、ワントップの武藤選手にひたすらロングボールを放り込むんじゃなくて、こういう攻撃こそ数多く使っていくべきです。

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 選手個々で特筆すべき活躍だったのは同点ゴールをあげた武藤選手。相手GKがフィスティングし損なったボールが背中に当たってのラッキーゴールでしたが、あそこに飛び込む積極性と勇気を買います。ただし後半13分にカウンターから相手GKと一対一になった場面で、パスをもらってドリブルのツータッチ目が大きくなりすぎ、シュートまでもっていけなかったのは反省点。高速でドリブルしてもしっかりボールをコントロールできるよう練習を。

本田選手は武藤選手のゴールをアシスト。GKの手元でボールが変化したようにも見えましたが、もしそうならゴールの半分は本田選手のものでしょうか。 ただ、イランの選手に体を当てられると簡単にボールを失ってしまうシーンが目立ちました。フィジカルの強い相手に当たってこられてもボールを失わないようなトレーニングを積むか、相手に体を寄せられる前にシュートやパスをして仕事を終えてしまうか、そのどちらかができるようにならないと攻撃の選手としては厳しいです。

西川選手は相手がPKを蹴る動きを良く見て、一度は止めたのが非常に惜しかったですね。ただし後半26分ぐらいだったでしょうか、相手のミドルシュートを左に横っ飛びでキャッチに行ったシーン、あれを前にこぼしてはいけません。しっかりキャッチするか、もし無理と判断したらゴールラインの外へはじいてCKへ逃るべきでしょう。

清武&宇佐美選手は、後半からイランのプレスが弱まって助けられた面はありますが、後半13分に相手のセットプレーから奪い返したボールを、清武選手が適切かつすばやい判断で前方の宇佐美選手へとパスし、彼から武藤選手への絶妙なスルーパスが通ったプレーはとても良い攻撃でした。当研究所が求める「タテに速い攻撃」がまさにこれです。

 逆に吉田選手は前半終了間際にPKを献上。吉田選手は相手を倒すつもりはなく、彼が前に出した足がイランの選手のかかとに偶然当たって相手が倒れたようにも見えましたが、ちょっとした注意力が欠けていました。 前半30分ぐらいに米倉選手から来たパスのトラップが大きくなって相手に奪われたあと、彼のリズムががおかしくなったように見えましたが、一つの失敗をひきずって目の前のプレーへの集中力を欠き、さらにミスを重ねてしまうのが一番良くありません。ミスの原因をしっかり反省したら頭をサッと切り替えることが重要です。

前述のように、米倉選手は吉田選手の直前で大きくバウンドするようなトラップが難しいバックパスをしてピンチの原因に。なるべく味方が受けやすいグラウンダーのパスを出すような配慮が欲しいです。

酒井選手はイランの選手がPKを蹴った瞬間、西川選手がセーブしたボールに誰よりも近かったにもかかわらず、後ろから走りこんだイランの選手に追い抜かれてシュートを許したのは残念。せっかく味方のGKががんばったのですからそれを助けてあげないと。 酒井選手は守備のときの「危険予測能力」が低く、いつも「まだ大丈夫でしょ」みたいな感じで軽くプレーしてやられるということを繰り返しています。

香川&柴崎選手は、フィジカルコンタクトでゴリゴリくるイランのプレスに苦しめられました。数少ないパスが通ったシーンでも香川選手のトラップミスでラストパスまで行けないという場面があり、柴崎選手はほとんどの時間消えていました。彼らのようなフィジカルコンタクトがあまり強くないタイプは、相手に体を寄せられる前にパスやシュートをして仕事を終えてしまえるかどうかにプレーヤーとしての命がかかっています。そのためには前回記事で説明したように、トライアングルやダイアモンドを形成してボール保持者がいつでもパスを出せるような複数のパスコースをつねに用意しておくことが欠かせません。その上で、マークするために食いついてきた相手を味方が引っ張ってつくったスペースに、別の味方が走りこんでそこにパスを出すといった工夫が欲しいですし、チームメイト全員や監督さんとよく話し合って、攻撃の組織の再構築を。
 
森重選手はゴール前で転倒していましたが、センターバックが足を滑らせると重大なピンチにつながりかねません。スパイクの選択ミスは論外ですし、横浜Mの中澤佑二選手は、ある代表戦でほんのちょっと足が滑ったことを猛反省し、下半身強化のために砂場での反復横跳びの練習を懸命にやっていたのが印象に残っています。 
日本サッカー協会もイラン側にアザディスタジアムの芝生を短くしてくれと要請していたようですが、相手のホームゲームでイラン代表が自分たちに有利なピッチ状態にするのは当たり前と考えなくてはいけません。長い芝生のせいでパスが途中で止まって相手にカットされたり、足を滑らせて転倒しないように、選手がアウエーの環境にすばやく適応する能力を身につけなければなりません。

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 監督の采配面では、本田選手の右サイドハーフ起用が適材適所とは思われず、センターFWやボランチで試したり、香川選手と並べて4-1-2-3にするとかして、右サイドハーフ(ウイング)には、スピードがあって相手をタテに突破できる選手を使ってほしいと個人的に考えていたのですが、そのようなトライはまったく無かったですね。

ハリルホジッチ監督はFW出身のせいか、攻撃の選手はいろいろと試していますが、守備の要であるセンターバック陣の強化がおろそかになっているんじゃないでしょうか。

何度も言っているように若手センターバックの育成が急務です。ロシアW杯に平均年齢31歳の4バックを連れて行くつもりなのでしょうか?

南野選手を使うなら最低でも25分とか、もっと長い時間使ってあげないと出した意味がないと思います。

監督さんは、あと2~3年たてば彼はチームに不可欠な選手になると言っていますが、結果を出せる実力があるなら3歳でも90歳でも良いというのが当研究所の考え方です。(現実として、20代のピークを過ぎると人間は運動能力が低下していきますが)

イラン代表でセンターフォワードを張っているアズムンも20歳ですし、南野選手にある程度の時間を与えて、機能するならどんどん使ってやり、ダメならダメで別の選手にチャンスを与えれば良いわけで、「20歳だからまだ若すぎる」みたいな変なマインドセットにとらわれるべきではありません。

ハリルホジッチ監督は、試合に勝ちたいという欲求が強いのは大変結構なのですが、目先の試合に勝ちたいあまり、若い選手を育成してスムーズな世代交代をはかるといった、より長期的なチームの利益への配慮が希薄なように見えるのは、ベテランを多く起用して勝ちに行ったのか、勝負をある程度捨てて若手に経験を積ませるのか、中途半端に終わってしまった東アジアカップでも感じたことです。

イラン代表のケイロス監督は、3年後のことをちゃんと考えてチームづくりをしているように見えました。

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 アウエーでの貴重な機会となったイランとのテストマッチは、引き分けという結果は悪くなかったものの、これはあくまでもテストマッチであり、W杯予選のような公式戦とは別物と考えなくてはいけません。

日本の試合内容は悪かったと思います。イランの厳しいプレスに苦しみ、こちらが意図した有効な攻撃を仕掛けることがほとんどできませんでした。

この試合の日本の選手たちは、相手の厳しいプレスにどう対処すべきか考えていることがバラバラで、シチュエーションごとにどういうふうに攻撃戦術を使い分けるべきなのか、頭の中でぜんぜん整理できていないようでした。

本田選手が試合後に「日本代表の成長曲線」についての話をしていましたが、ザックジャパン時代に比べて、いまの日本代表は対アジアにおいてさえ競争力が少し落ちているように感じます。

前回予選で当たったヨルダンなんかもイランと似たプレースタイルで実力もほぼ同じくらいですが、フィジカルの強い相手に厳しくプレスをかけられても、長友・本田・香川選手のトライアングルでショートパスをつないで左サイドを崩し、中央へ展開して本田・岡崎・前田選手らが決めるという攻撃戦術でアジアカップ2011を優勝、ブラジルW杯アジア予選も圧倒的な強さで突破しました。

ハリルジャパンになってから「タテに速いサッカー」というのを選手が意識しすぎて、雑なロングボールを放り込む場面が多いせいか、ボール保持者を中心にトライアングル・ダイアモンドを形成してサポートし、パスをつないで相手のプレスをかわして攻撃を組み立てる能力が低下しているように見えます。

相手がコンパクトな守備ブロックから厳しくプレスをかけてきたり、自陣にべったり引いて守備ブロックを形成している場合は、ボール保持者を中心にトライアングル・ダイアモンドを形成してパスをつなぐ「パスサッカー」で崩し、相手に押し込まれている場面でボールを奪い返した時には、この試合の後半13分に見られた、清武→宇佐美→武藤のダイレクトパスでGKとの一対一まで持っていったような「コレクティブ・カウンターアタック」で崩すのが有効です。

あれもこれもと欲張らず、まずはこの2つの攻撃戦術を適切な場面で適切に使い分けられるように、チーム全体で話し合って選手の意識を統一しておくべきでしょう。

次のシンガポールとカンボジアとの試合から、さっそく実践するべきです。

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◇    ◇     ◇     ◇     ◇     ◇    ◇

    2015.10.13 ワルジシュガー・アザディ(テヘラン)

           イラン 1 - 1 日本


    トラビ(PK) 45'+        武藤 48'


     GK ハギギ         GK 西川

     DF ハジサフィ       DF 酒井
        ホセイニ          (丹羽 75)
        モンタゼリ          吉田
        ガフォリ           森重
       (トラビ 23)         米倉

     MF エザトラヒ       MF 柴崎
       (プラリガンジ 64)    (柏木 72)
        エブラヒミ          長谷部
        アミリ            本田
        レザイアン        (岡崎 66)
                        香川
     FW アズムン         (清武 46)
       (タレミ 84)         宇佐美
        デジャガ         (原口 59)

                     FW 武藤
                       (南野 88)




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