■有効な攻めの形が見えない日本代表

 昨日イラン代表とのテストマッチがテヘランで行われ、日本は1-1で引き分けました。

対戦相手のイランは、ロシアやドイツ・カタールなど海外でプレーしている選手と国内組をあわせたチームで、テイムリアンやグチャンネチャドらが欠けていましたが、ほぼベストメンバーで来てくれました。

FIFAランキングは必ずしも各国の実力を正確に反映しているわけではないと考えているというのは以前に申し上げた通りで、FIFAランクはイランの方が上ですが、当研究所独自のポイント算定による格付けに従い、イランは日本とほぼ互角の実力を有する相手と見ていました。

相手にアドバンテージのあるイランのホームゲームで引き分けという結果はまずまずだったものの、日本の試合内容は悪かったと思います。どのあたりが悪かったのかは次で詳しく見ていきます。

        ☆        ☆        ☆

 アジア・トップレベルのフィジカルコンタクトの強さを生かしたイランのプレス守備に苦しみ、前半の日本は意図した攻めの形をほとんどつくれなかったというのは、前回シリア戦とまったく同様でした。

イランもロングボールを前線に放り込み、こぼれ球を拾ってサイドへ展開、クロスボールからヘッドでゴールを狙うという、さほど戦術的に高度ではない攻撃を繰り返し、日本がどうにか耐えるという展開。

前半終了間際、ミスからPKを与えてイランに先制されます。
 
後半キックオフ直後、今度はイランGKのミスから同点に追いつき、その後イランの足が止まり始めると、日本も少しづつ攻撃ができるようになります。

ただ、カウンターから良い攻撃の形が1~2度あった以外は、ロングボールの出し手と受け手の2人しかサッカーをしていない、グループ戦術やチーム組織というものがまったく感じられないものでした。

結局、個の強いイランの守備を最後まで崩すことができず、ドローに終わりました。

 この試合一番問題だったのは、どうやって相手のプレスをかわして攻めるのかという統一された意図なり戦術なりが日本代表にまったく見られず、選手それぞれがやっていることがバラバラだったことでした。

シリア戦後のコメントやこの試合のプレーぶりから判断すれば、本田・香川・宇佐美ら前線の選手は「シリア戦はピッチを広く使おうとした結果、選手の距離が遠くなりすぎて、パスがつながらなかった」と考え、選手間の距離を縮めて足元でパスを受けようとし、

逆に長谷部・森重・吉田ら後ろの選手は、岡崎選手へ出したロングボールがPKを誘ってゴールにつながった残像が頭に残っているのか、後ろから前方へ盛んにロングボールを放り込んでいました。

しかし、ブンデスリーガにあるという格言「手紙を速達で出すと、速達で返ってくる」(=ロングボールを放り込むと、ロングボールが返ってくる)そのままに、イランのストロングポイントであるロングボール攻撃で日本の間延びしたスペースを使われ、イランペースで試合を進められてしまいました。

日本は、チーム全体でどういう風に相手を崩すのかという意図が、まったく共有できていませんでした。

 当研究所もピッチを広く使えと盛んに言ってきましたが、シリア戦の前半のように、10人のフィールドプレーヤーがピッチに広範囲に広がって、あとは味方のボール保持者が何とかするのを見ているだけでは、相手のプレスをかわしてチームで意図を持った攻撃のビルドアップをしていくことはできません。

4-2-3-1の場合、両サイドハーフがピッチの横幅を広くとってポジショニングすることで、いったん相手の守備ブロックを広げたら、今度はその守備ブロックの中で、ボール保持者の周囲にいる選手がボール保持者と適切な距離を保ってサポートしつつ、トライアングルやダイアモンドの形をつねに維持してパスをつなぐことで、攻撃をビルドアップしていかなければなりません。

グラウンダーのパスを出すコースとなるトライアングルやダイアモンドの一辺は6~7mぐらい、相手選手の配置状況によっては、4mから12mぐらいまで伸び縮みすることはあるでしょう。(下図参照)

ダイアモンド
(クリックで拡大 以下同様)

相手にプレスをかけられた結果、トライアングルやダイアモンドの一辺に相手選手が立ちふさがってパスコースを切られた場合はサポートする選手がポジショニングを調整し、常にトライアングルやダイアモンドの形を維持してグラウンダーのパスを出せるようにしておくことがとても重要です。フィジカルコンタクトが得意でないチームは、空中で相手との肉弾戦になりやすい浮き球のパスをできるだけ避けるべきです。

なぜトライアングルやダイアモンドの形でサポートするかといえば、そうすることでパスがダイアゴナルになり、受け手は半身でボールを受け前方へターンしやすくなる(下図)ことが一つ目、

ボディシェイプ

パスがミスになって相手ボールになった場合でも、パスの出し手が相手のボール保持者にすぐさまプレスをかけることで、安全性が高まるというのが理由の二つ目です。(横パスをカットされるといっぺんに2人抜かれてしまう)

 続いて、チーム全体でGKからどうやって攻撃をビルドアップしていくか、イラン戦にあてはめて見ていきましょう。日本はいつもの4-2-3-1、イランが4-4-2でした。(下図)

ビルドアップ

まずこちらのセンターバック2枚がピッチの横幅を広く取り(1)、両サイドバックは押し上げます(2)。

相手は2トップでこちらのセンターバック2枚にプレスをかけてくるような状況では、最終ラインが相手と同数だとミスが起こったときに即失点につながりかねないので、ボランチが最終ラインまで下がって数的優位をつくると、よりセーフティになります。(相手がワントップならその必要はありません)この場合は2枚のボランチのうち、より守備的な長谷部選手が下がるべきでしょう。(3)

こうすることで相手の2トップにプレスをかけられても必ず誰か1枚余るわけで、GKから安全にパスを受けて最終ラインの3人でパスをまわすことができます。

長谷部選手が下がったことで左サイドで人数が不足していますから、トップ下の香川選手が左後方へ下がります。(4)

これで左サイドは、センターバックの森重を底として米倉・香川・宇佐美のダイアモンドが形成され、相手に対して数的優位に立っています。このダイアモンドを利用しながらパスをつないで前進していきます。

右サイドは同じく吉田を底として柴崎・酒井・本田のダイアモンドが形成され、また長谷部を底に、香川・柴崎・武藤で形成するダイアモンドも隠れていますが、これらダイアモンドを使って局面局面で数的優位をつくりつつ、パスをつないでボールを前へ運んでいきます。

当然相手も指をくわえて日本のパス回しを見ているわけではなく、厳しくプレスをかけてきますので、相手のプレスをかわしてパスをつないでいかなければなりません。

そういうケースでの選手の動き方とボールの動かし方を一例あげてみましょう。(下図)

ビルドアップ

まず西川が長谷部にパスしますが、相手FWのひとりがプレスをかけてきます。(1)

そこで長谷部はフリーの森重にパス。(2)

左サイドバックの米倉は自分をマークしているイランの右サイドハーフを引き連れて前進することで味方にスペースをつくり、森重は米倉がつくったスペースをフリーでドリブルします。(3)

たまらず相手の右セントラルMFが森重にプレスをかけに行ったら香川がフリーになれるので、香川は森重からのパスを受けて前を向きます。(4)

この時、香川は宇佐美・武藤とのトライアングルを使って中央から攻めることもできますし、米倉・宇佐美とのトライアングルで左サイドを攻撃する選択肢もあります。

さらに前進した香川を柴崎が右ななめ後方からフォローすることで、柴崎・武藤とのトライアングルが形成され、柴崎から本田とパスをつないで右サイドへ攻撃を展開することもできます。

局面で3~4人の選手がつねに適切な距離を保ちながらトライアングルやダイアモンドを形成することで、相手のプレスをかわしながらパスをつないでいくことが容易になりますし、攻め方のパターンは選手のアイデアでいくらでも増やせます。

代表チームは練習時間が非常に限られているわけですが、トライアングルやダイアモンドを形成してボール保持者をサポートし、パスをつなぐという約束事と共通理解が選手全員にあれば、攻撃時のグループ化・組織化が容易になり、パッと集まって試合をしても、それなりに高度な組織サッカーができるはずです。

 シリア戦の記事で言いたかったことをもう一度繰り返しますが、PKもらいに行ってレフェリーに笛を吹いてもらわなければゴールできない、それに頼らなければ試合に勝てないんじゃなくて、足元の技術の高さと俊敏さ・持久力という日本人の長所を生かしながら、つねに考えながら動いて(考えながらあえて動かないで)パスをつなぐ、それによってどんなに厳しいプレスもかいくぐり、相手を崩して自分たちの力でゴールを奪って試合に勝つ!

それが日本サッカーのアイデンティティであり、ジャパンウェイなんじゃないですか?

代表チームという限られた時間の中でこういう練習にこそ力を入れ、プレーの精度を高め続けることが大切なんじゃないですか?ということです。

 ともかく選手ひとりひとりが考えていることが、てんでバラバラというのは非常に良くありません。

日本代表の選手全員とハリルホジッチ監督が良く話しあって、シリアやイランとのゲームのように相手に厳しくプレスをかけられても、どうやって自分たちが意図した攻撃をやり、ゲームの主導権を握って試合に勝つのか、まずチーム全体としての意志を統一させることが急務です。

守備面での試合内容分析と選手個々の評価は次回とします。



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