■ブラジルW杯の金縛り状態ふたたび

 2018年ロシアW杯アジア2次予選、日本代表の初戦であるシンガポールとのゲームは、0-0の引き分けに終わりました。

 シンガポール代表は、マレーシアリーグでプレーする選手をベースに国内組をあわせたチーム。

日本がホームでもアウエーでも勝利できる相手、特にこちらのホームでは大差をつけて勝利しなければいけない相手と評価していましたが、引き分けで勝ち点2を失ったのは痛すぎる結果でした。

日本の試合内容も当然のことながら悪かったですね。シンガポールが突然強くなったというわけではなくて、こちらの自滅でした。

        ☆        ☆        ☆

 それでは試合内容を見ていきますが、引き分けという結果に終わった原因は「日本代表がブラジルW杯での金縛り状態に戻ってしまったこと」。

この一言に尽きます。

ハリルジャパンが発足して以降のテストマッチ3試合は、何の迷いもなくワンタッチでタテに速いパスが出せていたのに、この試合はキックオフから日本の選手全員に「大事なゲームで失敗してしまうことへの恐れ」がはっきりとうかがえ、パスがミスになってカウンターを食らうのを怖がり、選手ひとりひとりが金縛りにかかったようにボールを長く持ちすぎていました。

攻めの基点となるべき柴崎・長谷部の両ボランチのところで特にモタモタしていて、彼らが4タッチ・5タッチしているうちに相手は守備ブロックを完全に整えていて、こちらは常に守備態勢が整った相手を攻撃するハメになってしまいました。

前へリズム良くパスが出てこないこともあり、相手守備ブロックの中にいる日本の3トップ+トップ下も金縛りにかかったように足を止め、4人全員が棒立ちで相手の4バックと一直線に並び、味方のボールホルダーを見ているだけというシーンばかりが目立ちます。

これでは相手を崩してゴールできるわけがありません。

長い時間考えてからパス、考えてからパスを繰り返しているので、パスや選手の動きにリズムやスピード・ダイナミックさがまったく欠けていて、相手に次のプレーが読まれていることが多かったです。

サッカーというスポーツで最も重要なことの一つは「良いリズムでプレーすること」であり、自分たちから積極的に、できるだけ少ないタッチ数で速いパスをテンポよく前方へ入れていくことによって「良いリズム」はつくられていくのです。

シンガポールの守備ブロックはコンパクトではあったもののプレスは決して厳しいものではなく、前半は最終ラインを高めに設定していたので、タテに速いパスをどんどん入れていって、相手の4バックが下がりながら守備をしなくてはいけない状況をつくるべきでした。

相手がコンパクトな守備ブロックをつくっているということは、ゴール前中央かつペナルティエリアの横幅の範囲内で密集しているかわりに、両サイドにスペースが空くということを意味するのであり、ピッチ上の選手がそこにいちはやく気づかなければなりません。

速いスピードで両サイドにパスを入れ、相手の守備ブロックがボールサイドへ寄ったら逆サイドへすばやくサイドチェンジすることで相手の守備ブロックを左右に振りまわして疲れさせます。

守備ブロックがボールサイドへ寄るのが遅れたら、広く空いた方のサイドから突破し、できるだけ相手のバックが下がりながら応対せざるをえない状況をつくった上で、ゴール前へクロスを入れて中にいる選手が決めるという攻撃を何度でも繰り返すことが、コンパクトな守備ブロックを崩す攻撃戦術の定石です。

しかし、日本のパススピードがあまりにも遅すぎたので、それができませんでした

この試合、本田・宇佐美の両サイドハーフ(特に本田選手)が、カットインから相手の中央を崩すことにややこだわりすぎたことも、サイド攻撃が機能せず、それと同時に日本の攻撃に幅をつくることで相手の4バックを横に広げ、中央を崩すためのスペースをつくることができなかった原因の一つになったように思います。

ハーフタイムで監督からカツが入ったのでしょう、後半は日本の選手たちから「失敗への恐れ」から来る硬さが少しづつとれていきましたが、テストマッチの時と同じインテンシティでプレーできるようになるまで、試合時間を70分以上ムダにしてしまいました。

ここからは残り時間の少なさが選手ひとりひとりの焦りを生みだし、シュートやラストパスの精度をどんどん下げていきました。

シンガポールよりはるかに強いウズベキスタンやイラクとのテストマッチではできていましたから、日本人選手に能力がないわけではありません。

これはもうサッカーの問題ではなくて心理学の問題です。

負けて痛くもかゆくもないテストマッチではできている攻守両面で高いインテンシティを保ったゲームを、W杯の予選だろうが本大会だろうがキックオフからできなければ意味がないのです。

ブラジルW杯直後の記事でもさんざん書きましたけど、ブラジルW杯の敗因はザックジャパンがポゼッションサッカー(パスサッカー)をやっていたからではありません。

皆さんがこのシンガポール戦で目撃したように、負ければW杯に行けなくなる、W杯の決勝トーナメント進出への道が断たれるという「実際の痛み」を伴う公式戦だと、日本の選手は極度に失敗を恐れ、普段の実力の半分も発揮できなくなってしまうからです。

監督がポゼッションサッカーだろうがタテに速いカウンターサッカーだろうが、どれほど高度な戦術をさずけても、ピッチにいる選手11人が金縛り状態では勝てるわけがありません。

これは男女関係なく日本人全体の民族性のようで、いま女子W杯を戦っているなでしこジャパンにもそうした傾向がみられます。

先日のカメルーン戦後、阪口夢穂選手が「みんなボールを受けるのが怖くなってしまった」と言っていましたが、2-0のリードを奪ってから選手ひとりひとりが自分のところでボールを失ってカウンターを浴びるのを極度に恐れるようになり、パス出しはノロノロ、相手の攻撃にはズルズル下がるばかりで、まるでコートジボアール戦のザックジャパンを見ているかのように、相手の猛攻を受ける一方になってしまいました。

日本人選手が主体となったチームは、W杯の予選にしろ本大会にしろ、アジアカップにしろ、ACLにしろ、公式戦の初戦の成績が低調であるというのは代表・クラブに共通してみられる現象です。

日本代表だと、W杯予選の初戦はもう少しでスコアレスドローという試合ばかりでしたし、本大会の初戦も相手が強いということもありますが、あまり成績が良いとは言えません。

JリーグクラブがACLの序盤で連敗を重ねていくのは、「春の風物詩」となりかけています。

「これからの4年間でやるべきこと」で書きましたけど、「練習の王様」「テストマッチの王者」ではだめなんです。公式戦で普段の実力が存分に発揮できなければ、まったく意味がありません。

1月のアジアカップ2015、UAEとの準々決勝もそうなんですが、この試合のように何十本とシュートを打っても決められないのは、日本人選手にテクニックが無いからではないと思います。

自分の狙ったところに正確にボールを送るという意味では、パスもシュートも本質は変わりません。パスの上手い日本人選手なら本来シュートも上手いはずなんです。

しかしそうではないということは、メンタルの弱さがシュートの時だけキックの精度を下げているとしか考えられません。

日本人サッカー選手にとって最大の弱点は、メンタルの弱さだと思います。

ただ、失敗への恐怖感が強いということは、頭が良いことの裏返しでもあるので、悪いことばかりではありません。

頭が良くて想像力が豊かだと、自分がこういう失敗をするとどれほどひどいことになるのかという未来が見えすぎてしまうので、失敗への恐怖感が、頭の回転がにぶい人よりも強くなりすぎるわけです。

しかしサッカー選手の頭が良くないと、創造性あふれる高度なサッカーはできません。

ですから、日本人選手の頭の良さを保ったまま、メンタルの弱さを克服すべきなのです。

こうなったら日本代表に世界一のメンタルコーチを招聘して、日本の選手ひとりひとりが公式戦で過緊張に陥ることなく、普段通りの実力を発揮できるようになるまで、トレーニングを積むしかありません。

海外でプレーしている選手はなかなか日本に戻ってこれませんから、選手個々でメンタルコーチを雇い、自発的にトレーニングを受けることで強い精神力を養うのも良いでしょう。

じゃあいつからやるか?

たった今からです!!

 選手個々の評価は次回としましょう。



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