■ポゼッションサッカー悪玉論は間違い

 自分たちの希望も多分にこめて、「新しい代表監督は、レオナルド・ジョルジーニョ・オリベイラが有力」なんて言いながら、「奇妙な南米サッカー押し」をしていたマスコミが手のひらを返したように、今度は東ヨーロッパ出身の新代表監督を手放しで絶賛しており、節操がないというか無責任というか、気楽な商売でいいですね。

ハリルジャパンとザックジャパンとを対比させて、ポゼッションサッカーこそがブラジルW杯の敗因だったという「ポゼッションサッカー悪玉論」を広めようとする動きも一部のマスコミに見られますが、それには強い違和感を覚えます。

ここで誤解のないように当研究所の「立ち位置」を明らかにしておきますが、私はFCバルセロナに象徴される、いわゆる「ポゼッションサッカー」を支持していますし、“スパルタク”というハンドルネームからもおわかりのように、インテリジェンスが感じられる東欧のカウンターサッカーも大好物です。

共通するのは、「選手たちが流れるように動いて連携しながら、グラウンダーのパス中心で攻める」ということ。

なんで「ポゼッションか?カウンターか?」という二者択一を迫るゼロサム理論をふりかざすのか、日本のサッカーメディアは不可解でしかたありません。

ハリルホジッチ監督についても今のところはポジティブに評価しています。

しかし、ブラジルW杯後からくすぶっている「ポゼッションサッカー悪玉論」は間違いだと思います。

日本が敗退した直後から、「自分たちのサッカーって何?」という声がマスメディアから一斉に湧き上がりましたが、たった4年前の南アフリカW杯で何が起こったのかさえ知らない新米記者さんばかりになったようですので、まずそこから振り返りましょう。

「日本人選手の個の能力は、世界と比べて決して劣っていない」と主張し、相手がスペインだろうがブラジルだろうが真正面から攻撃して試合に勝つことを目指した岡田ジャパンでしたが、3年間におよぶ強化策の失敗が明らかとなり、南アフリカW杯の直前に「自陣に引いて守りカウンター狙い」というスタイルに方針転換することで、ベスト16進出という結果を残します。

岡田監督のそうした判断は当時としてはやむをえなかったと思いますし、「ベスト16進出」は岡田ジャパンとして、これ以上望むことのできないくらいの成功でした。

エトオを良く抑えた長友選手もセリエA・チェゼーナへの移籍を成功させ、日本サッカー界は決して少なくない収穫を得ます。

しかしメディアも含めた日本サッカー界の一部から、「守ってカウンターみたいな面白くないスタイルでW杯を勝っても何の意味があるのか?」とか、「岡田ジャパンは臆病すぎた。攻撃的なサッカーでいけばもっと上まで行けた」「自分たちで主導権を握って攻撃しながら勝っている他の国がうらやましい」みたいな声が続々とあがり始めます。

岡田ジャパンがW杯で勝ったとたんに気が大きくなったあげくの、勝手な言いぐさだとは思いませんか?

その後、代表選手たちからも「いつまでも守ってカウンターでは進歩がない。次のW杯では自分たちで攻撃の主導権を握るサッカーがしたい」という要望が出て、岡田さんの後釜としてザッケローニ氏が招聘されます。

最近、「ポゼッションサッカーをかかげてブラジルで惨敗したザッケローニ監督は無能」みたいなことまで主張するサポもいますが、ザッケローニ氏の名誉のために言っておきますけど、彼が本当にやりたかったのは3-4-3でタテに速くパスを入れるサッカーです。

でも3-4-3が最後まで日本代表にフィットせず、選手たちの希望もあり自分たちで攻撃の主導権を握る「ポゼッションサッカー」で、ブラジルW杯を目指したわけです。

これがザックジャパンの選手たちが言っていた「自分たちのサッカー」です。 思い出すことができましたでしょうか?

ザックジャパンはアジアカップ2011で優勝し、ブラジルW杯アジア予選でも圧倒的な強さで勝ちあがります。W杯前の遠征ではオランダとドロー、完全アウエーのベルギー戦で勝利します。

当時ザックジャパンのサッカースタイルに対して、現在のように強い批判の声が大部分のメディアからあがることはありませんでした。

むしろ正反対で、ブラジルW杯の組み合わせ抽選後に「日本は楽なグループに入った」「これならベスト8以上も狙える」などと大騒ぎだったはずです。

当研究所は、決して楽なグループとは言えないと楽観論を戒めつつ、ブラジルW杯ではいわゆるポゼッションサッカーをベースとして戦うとしても、相手や試合状況によっては堅守速攻をするなどして、戦術を使い分けるべきだと考えていました。

そしてザックジャパンのブラジルW杯は、1分2敗のグループリーグ敗退という大変残念な結果となってしまうわけですが、大会直後に「自分たちのサッカーって何?」という自虐的な問いかけと、ポゼッションサッカーこそがブラジルW杯の敗因だったという「ポゼッションサッカー悪玉論」が一斉に噴出します。

しかし「ポゼッションサッカー悪玉論」は2つの意味で間違っています。

「ブラジルW杯におけるザックジャパンのサッカースタイルはポゼッションサッカーだった。だから負けた」というのが1つ目の間違い。

「ポゼッションサッカーはもはや終わった戦術である」というのが2つ目の間違いです。

コートジボアール戦で日本がやったサッカーと、いわゆるポゼッションサッカーの象徴であるバルサやレーブ監督率いるドイツ代表がやっているサッカーが同じに見えてしまう人は、サッカーを見る目がないと思います。

コートジボアール戦の日本は「初戦で失敗したくない」という守りの気持ちが強すぎ、本田選手の先制ゴールで守りの気持ちがますます強くなって、パスがミスになりカウンターを浴びるのを心配してどこへパスを出すか迷ってばかりのノロノロ攻撃と、うかつに飛び込んで抜かれるのが怖いからとドリブルで前進してくる相手を見ながらズルズル下がるだけの守備という、バルサやドイツ代表とは似ても似つかないポゼッションサッカーの出来損ないだったのです。

ポゼッションサッカーの完成度で言えば、良いときのバルサが100だとするとブラジルW杯の日本は30ぐらい。

ザックジャパンのベストゲームの一つ、アジア最終予選の埼玉でやったヨルダン戦やW杯前のベルギーとのテストマッチでも65はあったと思いますが、これらの試合の日本代表のインテンシティとコートジボアール戦のインテンシティが同じに見えるのであれば、やはりサッカーを見る目が無いと思います。

ブラジルW杯でのザックジャパンのサッカーは、とてもポゼッションサッカーと呼べるシロモノではなかったのですから、「ポゼッションサッカーのせいで日本は負けた」という主張は当然誤りです。

次に2つ目の誤りについてですが、対戦相手や状況に合わせて戦術を使い分けていたものの、ポゼッションサッカーをベース戦術としたドイツ代表がブラジルW杯で優勝したのですから、「ポゼッションサッカーの時代は終わった」という某“辛口解説者”さんの主張が誤りなのは明白です。

また、FCバルセロナに象徴される「ポゼッションサッカー」も、日本サッカー界では正しく理解されていなかったと思われます。

「ポゼッションサッカー」という日本語訳がそもそもの間違いで、「パスサッカー」とか「パスゲーム」と言った方がより適切なのかもしれません。

「ポゼッション」といっても、仮にチーム全体で長い時間ボールを保持していても、選手1人1人がボールを持つ時間はできるだけ少ない方が良い、ということが日本サッカー界ではあまり理解されていなかったんじゃないでしょうか。

日本では遅攻のイメージが強いバルサですが、前から積極的にプレスをかけて相手陣内でボールを奪ったら、相手の守備が整う前にスピーディにパスを回してシュートまで持っていく、ショートカウンター的なサッカーも実は得意です。

というか、相手陣内でボールを奪ってショートカウンターができなかったときに、結果的にティキタカによる遅攻をやるという具合に戦術を使い分けていただけで、遅攻そのものがバルサの最終目的ではなかったはずです。

レーブ監督のドイツ代表もポゼッションサッカーをベース戦術としていますが、レーブ氏がドイツ代表監督に就任した2006年時点では、ドイツ代表選手の1試合あたり平均ボール保持時間は2.8秒だったそうですが、彼はこれを8年かけてトレーニングで計画的に短縮していき、ブラジルW杯で優勝したときには平均1秒ぐらいになっていたそうです。

こうした戦略的なトレーニングによって、ドイツ代表はどんなに精神的プレッシャーがかかる試合であっても、高いインテンシティを保つことができるようになったのではないでしょうか。

パスの長短は違うかもしれませんが、ハリルホジッチ監督も同じことを代表選手たちに求めていますよね。

当研究所も日本代表に対し、プレー選択の判断をスピーディにできるだけ2秒以下で、自分よりゴールに近いところに味方がフリーでいたら、オートマチックに縦パスを入れたっていいと口を酸っぱくして言ってきました。

ところがこの日本では、「タメをつくれる選手」がサッカー記者や解説者から手放しで賞賛されてきた歴史があります。

後ろの味方が上がる時間を稼ぐために中盤でボールをキープしてタメをつくれば、当然のことながら相手チームが自陣に戻り守備陣形を整える時間も与えてしまいます。

これはポゼッションサッカーにしろカウンターサッカーにしろ、現代サッカーの攻撃としてはまずいわけで、「タメをつくれる選手」を手放しで絶賛してきた日本サッカー界がバルサのサッカーを正しく分析できなかった結果、1人1人がボールを長い時間持ち、チームとしても長時間ボールを持つサッカーが「ポゼッションサッカー」だと誤解されてしまったのではないでしょうか。

そうした誤解をもとに「ポゼッションサッカーは終わった」などといくら主張しても、それは間違いです。

最近日本に広がり出した「ポゼッションサッカーこそがブラジルW杯の敗因であり、もはやポゼッションサッカーの時代は終わった」という「ポゼッションサッカー悪玉論」には断固反対したいと思います。

 南アフリカでベスト16に入った岡田ジャパンのカウンターサッカーにブーブー不満を言い、攻撃サッカーをかかげたザックジャパンを「ブラジルでベスト8を狙える」とあおりたて、ザックジャパンが敗退すると手のひらをかえして「ポゼッションサッカー悪玉論」を言い立てながら、ハリルホジッチ監督の「カウンターサッカー」を絶賛する。

そのどこに、ブレない、確固としたサッカー哲学があるのでしょうか?

日本代表がブラジルで敗退して、やり場のない怒りをもてあます気持ちはわかりますけど、メディアを含む今の日本サッカー界はうろたえすぎです。

じゃあどうするか? それは次回述べます。



サッカー ブログランキングへ
↑いつもポチッと応援ありがとうございます。


  

■コメント

■コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

 



管理人多忙につき、マメにレスを差し上げられません。
ゴメンナサイ。
もちろん、すべてのコメントは拝見させていただきますが、サイトポリシーに違反したものは、予告なく削除します。
悪しからずご諒承ください。

プロフィール

スパルタク

  • Author:スパルタク
  • FC2ブログへようこそ!

月別アーカイブ






   

ブログ内検索