■日本代表、ウズベクに大勝も危うさチラつく

 W杯アジア予選本番に向けて最後のテストマッチとなったウズベキスタン戦は、5-1で日本代表が大勝しました。

ウズベキスタン代表は国内リーグでプレーしている選手をベースに、ロシア・ウクライナなど国外でプレーする選手を組み合わせたチーム。日本との実力差は、日本のホームで日本の勝利、アウエーで引き分け程度と見積もっていました。

この試合、正GKネステロフやロシアリーグでプレーする選手2人が出場せず、相手が若干メンバーを落としていた点は考慮しなければなりませんが、それでも4点差をつけての大勝という結果はとても良かったです。

しかしながら試合内容を見ると、良かったところが半分、攻守両面での修正点や今後問題になりそうなハリルジャパンの危うさが見えたところも半分といった感じでした。

そのあたり、詳しく見ていきましょう。

        ☆        ☆        ☆

 まず攻撃面からですが、前半10分ぐらいまでは良かったと思います。

ボールを奪ったら香川選手を中心に各選手が連動し、グラウンダーのパスでスピーディな攻撃を仕掛けることができていました。それによってCKを獲得し、青山選手の先制ゴールを引き出しました。

しかしそのあとは、あまりに縦パスを急ぎすぎて攻撃が非常に雑になってしまいましたね。

DFラインやボランチから浮き球のロングボールを使った攻撃ばかりになってしまったため、香川・本田・乾ら二列目の選手の頭上をボールが超えていき、前線やサイドへ流れた岡崎選手が頭に当ててボールを落としても、縦に急ぎすぎているため、どうしても二列目以降の押し上げが間に合わず、敵にボールを拾われて攻撃がまったく機能しなくなりました。

浮き球のロングボールにも使い道はあり全否定するつもりはないのですが、ゴールするために速いパスを前方へ入れるのではなくて、ボールを奪ったら早くパスを出すことそれ自体が最終目的になってしまい、効果的な攻撃ができなくなってしまったのは問題です。

日本人選手はまじめすぎるので、監督からこうしろと指示されると、自分で状況判断をせずにそればっかりやってしまう傾向がありますが、早くパスを出せという指示に過剰適応してしまった感じでした。

ボールを奪った瞬間、数メートル前方に相手選手が立ちふさがったら、焦って前方へロングを蹴るのではなく、ダイアゴナルや横へのパスを使ってフリーな味方にパスし、そこからグラウンダーのパス中心に前方へ素早く展開していくべきです。

正確なボールコントロールができるギリギリのスピードで前方へパスを入れたけれども相手を崩せなかった場合は、いったんボールを中盤以降へ戻して、攻撃の組み立て直しをしても良いと思います。

前半10分以降、試合の流れをつかむことができなかった日本でしたが、後半はハーフタイムで監督さんから注意があったのか、先制ゴールをあげるまでの良い攻撃に戻り、4つのゴールを導き出すことができました。

攻撃は良かったところ半分、課題が出たところも半分という感じです。

 つづいて守備を見ていきましょう。

テストマッチ2試合を見る限り、ハリルホジッチ監督の守備戦術は、コンパクトな守備ブロックをつくって自分たちが守るべきスペースを限定し、そこからプレスをかけていくのではなく、ある程度スペースを空けてしまうのを覚悟の上で相手のボール保持者を追いかけ回し、人に食いついていく守備のようですね。

サッカー記者によってはこうしたやり方を「マンマーキング」と呼ぶ人もいるようですが、当研究所の定義では「マンマーキング」と呼ぶのはちょっと抵抗があります。

「ゾーンディフェンス」は、自分の受け持ちゾーンさえ埋めていればそれで良いというわけではなく、自分の担当ゾーンに相手選手が侵入してきたらマンマーキングに切り替えて、相手のプレーを妨害する守備のやり方です。

自分の担当スペースをただ埋めているだけの完全なゾーンディフェンスだと、守備側の選手と選手の間にできるスペース(守備ゾーンのギャップ)で相手に好き勝手にプレーされて失点してしまうので、相手に自由にプレーさせないためポジションを修正し、相手にプレスをかける必要があります。

しかし完全なマンマーキングのように、相手選手にどこまでも食いついていってしまうと、守備ブロックが広がりすぎて攻撃側に広いスペースを与えてしまったり、人がいて欲しいゾーンに誰もいなくなってしまったりする(マークされる攻撃側は当然それを狙って動く)ので、相手選手が自分の担当ゾーンから出て行ったら追いかけるのを止めて、隣接するゾーンを守っている味方へマークの受け渡しをするわけです。(もちろん、絶対にマークを受け渡してはいけない状況はあります)

これが当研究所における「ゾーンディフェンス」の定義です。

そして「プレスをかける時にどこまで人に食いつかせるか」、逆の視点から言えば「どこまでコンパクトな陣形や選手の並び方を維持するのか」の「さじ加減」は、各監督さんの好みであり腕の見せ所なわけです。

ですから、大昔に見られた、相手がシューズを交換するためにタッチライン際へ行ってもついていくような、原則マークの受け渡しをしないで守る正真正銘のマンマーキング以外はすべてゾーンディフェンスの一種であり、完全なマンマーキングディフェンスと、ただスペースを埋めパスコースを消すだけでプレスをほとんどかけない完全なゾーンディフェンスとの間に、現代におけるサッカー先進国のほとんどのチームの守備戦術が入るはずです。

違いは単に、人へのマークに重きを置いたゾーンディフェンスか、守備陣形の維持に重きを置いたゾーンディフェンスか、だけです。

完全なマンマーク           完全なゾーンディフェンス
       
     ←|ーーー|ーーー|ーーー|ーーー|→

例外としては、フランスサッカー界でのキャリアが長いハリルホジッチ監督は良くご存じだと思いますが、かつてフランスのリーグアンにオーセールという小さなクラブ(現在2部でプレー)が所属し、名将ギー・ルー監督のもと、1990年代半ばにマルセイユやPSGといったビッグクラブを制してリーグやカップ戦で優勝するなど黄金期を迎えるのですが、私は試合を見る機会がありませんでしたが、そのときのオーセールが4-3-3をベースにしたほぼ完全なマンマークディフェンスだったと聞いたことがあります。

 話を日本代表に戻しますが、過去の日本代表の守備戦術を分類すると、こんな感じでしょうか。


完全なマンマーク            完全なゾーンディフェンス

     ←|ーーー|ーーー|ーーー|ーーー|→
       ↑ ↑    ↑           ↑
      (4) (1)   (2)          (3) 

(図を正しく表示するためには、グーグル・クローム推奨)

(2)はプレスが効いている、良いときのザックジャパン、(3)はブラジルW杯のコートジボアール戦やコロンビア戦など、選手が全然動けずプレスがまったく効いていない、悪いときのザックジャパンです。

(4)は極めてマンマークに近かった岡田ジャパンの守備戦術ですが、バイタルエリアが広く空くという弱点をW杯直前のテストマッチで徹底的に突かれ、守備が完全崩壊しました。だから本大会では守備戦術をゾーン重視へと、ガラッと変えざるをえなかったのです。

 ハリルジャパンの守備は(1)のあたり、「人へのマーク志向が強いゾーンディフェンス」だと思いますが、それだけにコンパクトな守備陣形を保つことが難しく、中盤で広いスペースが空いてしまいます。

ボランチから前の5~6人が激しくプレスをかけると、特に4バックの前のバイタルエリアに広いスペースが空いてしまうのが、非常に気になります。

私が対戦相手の監督だったら、この弱点を徹底的に突きます。

本来であれば4バックが、プレスをかけている前の6人と連動してバックラインを高く押し上げ、センターバックの前にできる広いスペースを消すべきなのですが、高く保ったラインの後ろを取られるのを恐れているのか、それができていませんでした。

だからこそハリルホジッチ監督は後半からボランチに水本選手を投入し、どうしても空いてしまう両センターバックの前のゾーンを彼に埋めさせ、そのスペースを使われて相手に攻撃されないように手を打ったわけです。

後半に岡崎選手のゴールで2-0とすると、DFラインを下げて自陣に守備ブロックをつくり、1点返そうと前掛かったウズベキスタンの薄くなった守備をついて、カウンターから追加点を奪ったのは良かったのですが、広いスペースで激しいプレスを掛け続けたために日本の選手の消耗も激しく、後半の後半から相手のボール保持者へのプレスが遅れたりマークがズレ始め、CKを与えてそこから失点してしまいました。

そうしたところにも、ハリルジャパンの守備戦術の危うさがチラつきます。

実はウズベキスタンのシュート精度の低さに助けられていただけで、この試合の前半からセンターバックの前に広がるスペースを使われた危ういシーンがいくつかありましたし、これがアルゼンチンやブラジルなど、日本より個の能力が高いチームが相手だと、前6人のプレスをかわされてしまった時に、相手の攻撃陣に対してこちらの4バックが丸裸になり、広く空いたセンターバックの前のスペースを使われて、ボコボコにやられてしまう可能性が高いです。かつての岡田ジャパンのように。

ボールがサイドにある時に、センターバックがサイドへスライドせずにゴール前のゾーンを守っているため、相手のボール保持者にプレスをかけるサイドバックの後ろから、ニアサイドのセンターバックにかけてスペースが広く空くところも気がかりです。(下図の(2)のスペース)

悪い形
(クリックで拡大)

「相手がチュニジアやウズベキスタンだったからこうした守備戦術を取った」と監督さんが言えばそれまでですが、これをそのままW杯で、アルゼンチンなりブラジルなりにぶつけるのは疑問がありますし、中東で行われる酷暑のアウエー戦で最後まで守備の体力が持つかどうか不安です。

当研究所は、球際で厳しくプレスをかけ続けるのは当然としても、守備陣形をコンパクトに保ち、自分たちが守らなければならないスペースを限定して体力の消耗を防ぎつつ、個の能力が高い相手に広いスペースを与えないようなゾーンディフェンスのやりかたの方を推奨します。

 選手個々の評価は次回としましょう。




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