■改めてブラジルW杯を評価する

 日本サッカー協会(JFA)が、次期日本代表監督の候補を5人程度に絞り込んだと報じられています。

コメントを寄せてくださった読者さん御推薦のプランデッリ氏の名前も、その中に入っているという噂です。

その一方で、マスメディアによる次期日本代表監督予想が一斉に行われていますが、元鹿島のレオナルド氏やジョルジーニョ氏のような、代表監督どころかクラブの監督としても経験や実績が不足している人の名前が盛んに取り沙汰されるなど、メディアを含めた日本のサッカー界に、「ともかく日本になじみのある南米人なら良いだろう」みたいな、奇妙な「南米サッカー推し」の風潮があるように感じます。

日本サッカー界がブラジルW杯の結果を正しく分析できていないことが、そうした風潮の原因ではないでしょうか。

ブラジルW杯決勝戦の中継を担当したNHKの放送ブースも、どういうわけか南米推し・アルゼンチン推しで、解説を担当した早野氏は「前半を終わってアルゼンチンペース」と指摘する一方で、ドイツにはダメ出しをしていました。

当研究所の見方は逆で、ドイツがゲームの主導権を握って自分たちでゴールチャンスを創りながらアルゼンチンを攻め、アルゼンチンは引きぎみに構えてメッシやイグアインの個の能力に頼ったカウンター狙い、主にドイツがミスをしてくれたときにゴールチャンスが生まれていました。

より高度なサッカーをしていたのはドイツであり、いわゆるパスサッカーでゲームの主導権を握り、それでもレーブ監督は攻めが機能していないと見たか、後半に4-1-2-3から4-2-3-1へフォーメーションを変更して、延長戦での決勝ゴールへとつなげました。

「ディマリアさえいたら、アルゼンチンが優勝したかもしれない」という声もありますが、「ディマリアが戦術」「メッシが戦術」みたいに、特定の個人に頼った戦術はその選手がケガや累積警告で出られない場合に、チームに大きな危機をもたらしてしまいます。

これに対してドイツはより組織的で、アルゼンチンと比べて突出した個の能力を持つ選手はいませんが、誰が出てもチーム全体の戦力が大きく落ちることはありませんでした。この意味でもドイツの戦略が優れていました。

実際、相手選手との激突で脳しんとうを起こしたクラマーが前半でシュールレと交代しましたがドイツの戦力は落ちず、まったく守備をせず、自分の目と鼻の先を相手のパスが通過しても歩いたままのメッシがいる右サイドをシュールレに突破されて、センタリングからゲッツェの決勝ゴールが生まれたのは、ドイツの戦略勝ちを象徴するようなシーンでした。

同じように突出した個の能力を持つ選手がいない日本代表にとっても、参考になります。

この大会後に「ブラジルW杯で南米諸国の躍進が目立った」という評価が日本のメディアからあがりましたが、逆だと思います。

ブラジルW杯はコスタリカを除き、中南米諸国にとっては失敗の大会でした。

メッシやネイマール、ハメス・ロドリゲスに代表されるように相変わらず選手個々の能力は高いのですが、11人の力を総合したチーム戦力で見ると、南米のトップレベルの国々は欧州のトップレベルの国々に引き離されてしまったと思います。

ブラジルW杯は中南米諸国にとっては自分たちに有利な環境、欧州勢が苦手とする蒸し暑い気候に加え、ラテンアメリカ社会という自分たちが生まれ育ち、慣れ親しんだ環境でサッカーができる、いわば“ホーム”の大会。

これまでアメリカ大陸で行われたW杯は、すべて南米諸国が優勝しており、南米諸国が欧州と並び立つサッカー先進地であることを証明するためには、自分たちに有利なホームの大会であるブラジルW杯で優勝することが絶対に必要でした。

ブラジルはグループAでしかも1日早く開幕戦をやるなど、開催国としてどのチームよりも有利な日程になっており、グループGに入ったドイツより体力的に楽なスケジュールが組まれてもいました。

しかし、ネイマールがいなかったとはいえブラジルはドイツに準決勝で大敗し、アルゼンチンもドイツの前に屈して優勝を逃しました。

もしW杯2014年大会が欧州で行われていたら、もっとはっきりした形で欧州勢の躍進が試合結果として現れていたと思います。

「相変わらず南米諸国は選手個々の能力が高い。しかし、長期的な視野に立ったチームづくりのための戦略やマネジメント方法、ピッチ上で展開されるチーム戦術を見ると、欧州のトップレベルの国々が世界の最先端を行っていることがあらためて証明された」というのが、当研究所が分析した2014年ブラジルW杯です。

いつも拙速な結論を出すことが多い、コリンチャンス出身の日系ブラジル人解説者の方が、前回王者スペインの早すぎる敗退をもって「パスサッカーは終わった」などと主張していましたが、単にスペインからドイツへと覇権が移っただけで、いわゆるパスサッカーそのものが依然として有効な戦術であることも証明された大会でした。

スペイン敗退は、シャビやイニエスタら主力メンバーの高齢化と、メッシという個の能力への依存を深める近年のFCバルセロナが、高度なパスサッカーに要求される組織力を低下させてきたことなどが原因でしょう。

ドイツはパスサッカーをベース戦術としつつも対戦相手によって戦術を使い分けるなど、選手個々としてもチーム全体としても、応用力の高さが光っていたと思います。

 冒頭で指摘したように、今の日本サッカー界の一部には奇妙な「南米サッカー推し」の風潮があるように思えるのですが、レオナルド氏やジョルジーニョ氏は監督としての経験や実績が不足していますし、昔の南米人指導者にありがちでポルトガル人のカルロス・ケイロス氏もそうした傾向がありますが、個の能力が高い選手をピッチに11人そろえてあとは選手の自主性に任せ、基本的に自由にやらせるだけ、監督は自己主張の強い選手同士がチーム内で対立しないようにするための調整役と割り切っているようなタイプの指導者は、日本代表監督として一番向いていません。

当研究所としても、JFAに日本人選手の個の能力アップを急いでほしいと考えていますが、残念ながら現時点においては日本人選手が世界トップレベルの個人能力を備えているとは言い難いです。

そうであるならば、そうした条件を前提としてそれでも日本サッカーが国際大会で好成績を残せるように、知恵を出し合って対応していかなければなりません。

JFAにはブラジルW杯の結果や試合内容を正しく分析し、世界のサッカーの進化の方向性を踏まえた上で、それを次期日本代表監督選びに生かしてほしいと思います。

いつまでものんびりとしてはいられませんが、焦って決める必要はまったくありません。


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■コメント

■ [名無しさん]

大仁会長や原氏の任命責任は問わないというニュースを見ました
自分はこのニュースを見てとてもガッカリしました
こんな事をしていてはJFAは信頼出来る組織たりえないと思うのですが、いかがお考えでしょうか?
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