■これからの4年間でやるべきこと

 ブラジルW杯における日本代表の戦いぶりを総括してきたこのシリーズの締めくくりとして、これからの4年間で日本のサッカーをどう立て直していくべきかについて考えてみたいと思います。

次の動画を観ていただきたいのですが、オランダ戦の本田選手のゴールやベルギー戦の岡崎選手のゴールなど、日本代表の良いときって、相手のバイタルエリアで複数の選手が適切な距離を保って連動し、美しいパス交換から相手DFラインを崩してゴールを奪っていますよね。

やればできるのに、どうしてこれがブラジルで出来なかったかな~と今でも残念に思っています。



「練習の王様」「テストマッチの王者」ではだめなんです。W杯の本番でこれができなければ、意味がありません。

W杯だろうがCLの決勝戦だろうが、どんなにプレッシャーのかかる重要な試合でも、自信満々で実力を出し切れるような選手・チームをこれから日本サッカー界で育成していかなければなりません。

私は「日本人は世界で一番、失敗のしかたが下手くそな民族」だと思っています。

日本人にとって失敗とは忌み嫌うべき「ケガレ」であり、絶対に経験してはならないものなのではないでしょうか。

だからこそ日本人は失敗することを異常に恐れ、たった一度でも失敗が許されないという強いプレッシャーから本番に弱くなる、子供を育てるときもその子の良いところを伸ばすよりも、失敗や欠点をゼロにすることに力点がおかれているように思います。

しかし、世界のどこにも一度も失敗しないで成長する子供なんていませんし、失敗してみて初めてわかることも多いものです。むしろ「1度も失敗しないで大人になることこそ人生最大の失敗」であり「失敗こそ最高の先生」なのです。

アメリカでは失敗や挫折を自分の力で乗り越えた人間でなければ、厳しいビジネスの現場では通用しないという意味で、“fail fast”(若いうちに失敗しておけ)なんて言われたりします。

ですから、どんなささいなことでも上手くできたら大人が子供をほめてやって自信や成功体験を植えつけさせ、その子の良いところを伸ばすようなやり方に変える。

その失敗が子供が全力を尽くした結果であるかぎり、周囲の大人はその試練を乗り越えるヒントを与えつつ、できるようになるまで温かい目で見守ってやることで、「失敗は決して怖くない。次にできればいいんだ」ということを子供たちに理解させることが、本番に強いサッカー選手を育成することにつながっていくのではないでしょうか。

これを日本サッカー界はもちろん、政府や教育界も巻き込んで、日本全体で何年もかけて地道にやっていくしかないと思います。

何度も言いますが、代表チームとは良いところも悪いところも、お国柄や民族性の反映なのですから。

ブラジルW杯において、メンタル面の強さで世界と互角に戦えていたのは本田選手ぐらいでした。日本代表が世界で勝ち抜いていくには、彼と同等以上のメンタルの強さを持った選手が少なくとも23人は必要です。

 メンタル面の強化の次は、日本サッカーそのものの具体的な強化策を考えていきましょう。

ザッケローニ氏のおかげで、攻守両面における世界標準の組織戦術が導入されましたから、今後もこれを維持し、さらなるレベルアップをはかること。

ユース年代になるまでには、ゾーンディフェンスによる組織的な守備のしかたや、チームワークによる攻撃のしかたといった基本的な組織戦術・個人戦術を選手にマスターさせること。

そのうえで、日本サッカー界の永遠の課題ともいえる個の能力アップに一層力を入れることが求められます。

日本人選手は相手からボールを奪い返す能力が高いとは言えず、ブラジルでもそれが目立ちましたね。

体格やフィジカル能力の面で問題があるのかもしれませんが、日本人選手は心がやさしすぎるというか、自信や勇気に今ひとつ欠けるところも、ボールの奪い合い・競り合いに弱い原因になっているのではないでしょうか。

そこで、子供の時から楽しみながら1対1に勝つことを重視した練習を行い、一定の年齢に達した時点で、ケガを防ぐためにちゃんとレガースをつけさせて、真剣勝負のボールの奪い合いをガチガチやらせることで、1対1に強い選手を育成していくべきでしょう。もちろん大人になってJリーグ各クラブでやる普段の練習もそうでなくてはなりません。

 ブラジルでは「専守防衛」ではなく、ある程度ボールをポゼッションして相手陣内へ攻め込むことができるようになりました。そこでクローズアップされてきたのが、日本人選手のシュート決定力の低さという問題です。

その原因は、日本人選手に足元の技術が無いのではなくて、練習でシュートを打つ経験が絶対的に不足していることではないかと考えています。

サッカーにおいて、シュートのパターンはそれこそ無限大にあるわけですが、その中でも特に使用頻度が高くて、利用価値の高いシュートの型というのがあります。

その一つが、まず自分の目の前にいるDFをフェイントで振り、自分でシュートを打ちたい方向にコースを空けてから相手DFの前から打って決めるという形です。

当研究所も香川・本田ら代表の各選手たちに、W杯までにこのシュートの型を身に着けるよう強く勧めてきました

日本代表、W杯壮行試合は勝利で締めるも...) 

モイーズ解任) 

その威力をまざまざと見せつけられたのがコロンビア戦でした。マルティネスの3点目、ロドリゲスの4点目がそれです。

どちらも自分の目の前にDF1人、その後ろにGKがいる状況で、まずフェイントでDFを右に振ってバランスを崩させ、自分が打ちたい左にコースを空けて、相手DFの前からゴールを決めています。

オランダのロッベンの得意な型である、サイドからドリブルしてゴール前へカットインし、相手DFを振ってその前からミドルで決めるという形も含め、このシュートの型は非常に利用価値が高く、応用範囲も広くて破壊力があります。



このようなシュートはただ漫然と練習していれば自然とできるようになるのではなく、自分の前にDFとGKをつけて、できるようになるまでこのシュートの型をくりかえしくりかえし練習することで、はじめて実戦で使える正確さ、シュート決定力を身に着けることができるようになります。

以前にも言いましたが、味方に相手GKとの1対1の状況をつくってもらわないとゴールが決められない選手と、自分の前にDFが1~2枚いても問題なくゴールが決められる選手との間には、越えられない壁があります。

後者の状況で高いゴール決定力を持った日本人選手というのはとても少ないです。

他にも使用頻度が高く、利用価値の高い「シュートの型」というものがありますから、子供のときからくりかえしくりかえし練習させて、実戦で使えるシュートの型をできるだけ増やしておくことが、日本人選手のゴール決定力改善に欠かせません。

 世界レベルのセンターバック(CB)の育成が急がれるのも、日本サッカー界の課題として浮かび上がりました。

複数のポジションをこなせるポリバレントな選手が重宝される現代サッカーですが、CBとゴールキーパーは「専門職」だと考えています。

ですから、トップ下やFWになれなかった「下手な子供たち」がしょうがなくCBのポジションにまわってくるのではなくて、CBというポジションの重要性をしっかり教えながら、それに向いた子供たちを集めて育成していく必要があるのではないでしょうか。

CBというポジションは身長が高くて体が大きい方が有利で、現代サッカー選手の大型化を考えると最低でも身長185㎝以上は欲しいところです。

そこで、DF志望の子供たちで身長の高い子を優先的に集めて、適性を見ながらCBに必要なトレーニングを施すべきではないでしょうか。

(身長の低い子は絶対にCBをやってはダメと言っているのではありませんが)

私が選ぶ歴代日本代表No.1センターバックは横浜Mの中澤祐二選手ですが、彼は苦労人でユース年代の日本代表歴はいっさいありませんし、Jリーグクラブからもなかなかプロ契約してもらえませんでした。

彼がトルシエ監督によってU-23代表に呼ばれたころはインサイドキックすら危なっかしくて、たとえ身長が187cmあっても足元の技術の無さが理由で、セレクションを落とされ続けてきたのではないかと思いますが、その後努力してCBに求められる足元の技術と読みを身に着け、ついに日本を代表するCBになったわけです。

もし彼が途中で挫折していたら、日本代表センターバック・中澤祐二も南アフリカW杯ベスト16に貢献した獅子奮迅の働きもありませんでした。

いかに日本サッカー界に、良いCBになりそうな若者を見抜く目がなかったかをあらわすエピソードではないかと思うのですが、私が街を歩いていると185㎝を超えていそうな若者をけっこう見かけるのに、Jリーグ各クラブのCBは高い方でも180㎝代前半が多く、足元の技術を優先させてCBを育てているから身長の高い選手が少ないのではないでしょうか。

もちろん足元の技術や読みも重要ですけど、足元は上手いけれども身長の低い選手を練習で高くすることは困難ですが、身長の高い選手に足元の技術や読みを教えることの方がはるかに容易です。

なるべく身長185㎝以上(になりそうな)の若者を集めて、センターバックに求められる能力を専門的に教えた方が良いのではないでしょうか。

いま日本のサッカー界は「攻撃サッカー」がもてはやされる一方で、守備の強化が非常におろそかになっていると感じます。

サイドバックは攻撃参加もしますので良い選手が次々と出てきますが、一番軽視されているのがセンターバックのポジションだと思います。

Jリーグでも、しまらない点の取り合いのゲームが多い気がしますし、ACL決勝トーナメントでもJリーグ勢は簡単に失点を重ね、アウエーゴールの差でみんな敗退しています。ブラジルW杯でもちょっと攻められると我慢できない守備力の弱さが目立ちましたよね。

一部の民族をのぞけば、試合中ずっと守っているよりは攻撃しているほうが楽しいに決まっています。
しかし、こちらが入れたゴール以上に失点してしまえば、サッカーの試合は負けです。

世界レベルの日本人センターバックの育成が本当に急がれます。

 ザックジャパンではチームの主力であった遠藤・今野の両選手がW杯の前年にJ2でプレーし、ブラジルW杯に向かって調子が下降線をたどってしまうという問題が起こりました。

日本のサッカー選手は責任感が強いですから、所属クラブが2部に落ちても移籍せず、自分が責任をもって1年でJ1に復帰させようとすることが多いです。

しかし、代表の主力選手がレベルが高いとは言えない2部で1年間プレーすることで能力を落としてしまえば、日本サッカー界全体の損失となります。

今後、代表の主力選手が所属するクラブが2部に落ちた場合は、Jリーグやクラブ側が事情をよく理解してその選手を説得し、少なくともJ1クラブへ移籍させることでその選手のプレーのクオリティを落とさないようにすることが必要です。

 最後に、次期代表監督にはどんな指導者がふさわしいかについてですが、ザックジャパンがやっていたサッカーの方向性は決して間違ってはいなかったと思います。

相手の守備ブロックの間をグラウンダーのショートパスをつないで崩し、オフサイドを避けながら相手DFラインのウラヘ味方とボールを送り込んでゴールを決める、守るときはコンパクトな守備ブロックをつくりバイタルエリアで相手を厳しくマークして点をやらない。

今後もこうした方向性を保てるように、新しい指導者に最低限望むことは、

1.日本人の長所・弱点を良く理解したうえで、攻守における世界基準の組織戦術を選手に教えることができること。

2.メンタル面も含めて、世界に通用する能力を備えた日本人サッカー選手を育成することができること。

3.「勝者のメンタリティ」を持った、積極的で勝負強い指揮官であること。


の3点でしょうか。

原博実・技術委員長がメキシコのアギーレ氏にずいぶんといれこんでいるようですね。

エスパニョールの試合をフォローしていなかったので、彼が今どんなサッカーをやっているのか良く知らないんですが、4年前の南アフリカW杯でメキシコ代表を率いていたときは、3-4-3を使っていましたね。

メキシコ2
(クリックで拡大)

2002年W杯は3-5-2だったと思いますが、どちらの大会もそれほど目を引くものではなかったというか、すごいサッカーだったという印象はあまりありません。

ブラジルW杯が終われば、監督の移籍市場も本格的にスタートすると思いますから、いろいろな候補をピックアップしながら、じっくりと監督選びをしたほうが良いのではないでしょうか。

アジアカップとW杯アジア3次予選(最終予選の一つ手前)までやってもらえば、だいたい新監督の力量がわかると思います。

 それでは2018年W杯のために、今よりもっと良いチームをつくって、積極果敢に挑戦してやろうじゃありませんか!


<了>


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