■日本代表のブラジルW杯総括(その1)

 それではお約束通り、ブラジルW杯における日本代表の戦いぶりを総括してみたいと思います。

2011アジアカップ優勝で幕を開け、圧倒的な強さでW杯アジア予選を勝ち抜き、コンフェデでイタリアをあともう一歩というところまで追い詰め、2013年秋のベルギー遠征ではオランダと引き分け、ベルギーには3-2で勝利と、ザックジャパンの4年をかけた強化策は決して悪いものではなかったと思います。

南アフリカW杯では固く守ってからのカウンターサッカーでベスト16という結果を残しましたが、ザックジャパンの選手たちは、いつまでもそういうサッカーでは進歩がない、ブラジルではボールをポゼッションし自分たちが試合の主導権を握る攻撃的なサッカーをやって勝利という結果を残したいという目標を持っていました。

私は基本的に、自分たちの足でブラジルW杯の出場権を勝ち取った選手たちの好きなようにやらせてあげたいと考えていましたが、サッカーは相手があることなので自分たちのやりたいサッカーをいつでもやらせてもらえるとは限りません。

いざブラジルで試合をしてみて、こちらが60~70%ボールをポゼッションして攻撃できればそれで良し、相手が強くてこちらが押し込まれ、結果的にポゼッション率が40%ぐらいまで下がってしまったときは、南アフリカの時のような堅守速攻型サッカーで相手を仕留めるという具合に、ザックジャパンが臨機応変に戦術を使い分けることでベスト16以上の結果を残せたら、「日本にとって良いワールドカップだったな」と言えるのではないかと考えていました。

いざブラジルW杯の初戦・コートジボアールとの試合がキックオフされると、アメリカでの直前合宿までは存在した「自分たちから試合の主導権を握って攻撃しよう」という積極的な姿勢が選手たちからまったく失われていて、Y.トゥーレをはじめとするコートジボアール代表を恐れ、失点や敗戦という悪い結果が起こることを心配し、相手がボールを動かすのを受け身になって見ている日本代表の姿がありました。

これまで選手たちから「周りから何を言われても自分たちがブレてはダメ」「ブラジルで自分たちのやりたいサッカーをやって結果を残す」という自信にあふれた声が繰り返しあがっていましたから、私が大会前に懸念していたのは、攻撃的サッカーをやりたいと選手たちが意気込むあまり、チーム全体が不用意に前のめりになって薄くなった守備をつかれ、カウンターから失点を重ね試合を落としてしまうということであり、日本がブラジルW杯でこういう試合をやってしまうとはまったく予想できませんでした。

先制されたものの、日本とは逆に時間がたつごとに緊張がほぐれてきたコートジボアールが普段どおりのサッカーをできるようなるにつれ、日本は相手に押し込まれる一方になっていきます。

そしてドログバの投入が自信と落ち着きを与えたことでコートジボアールの攻撃が一層活性化され、彼がピッチに入った直後に同点とされると、日本はまるでグループリーグ敗退が決まったかのようにガックリと落ちこんで、そのまま逆転ゴールを奪われ、あとは追いつこうという気力さえありませんでした。

今だから言えることですが、ギリシャが最終戦でコートジボアールに勝ったことから見てもわかるように、日本も持てる力を100%発揮することができれば、コートジボアールに勝つ可能性は十分あったと思います。

にもかかわらず、失敗を恐れ慎重になりすぎて、相手の出方をうかがって自分たちの力をセーブしているうちに、同点・逆転ゴールを浴びて試合が終わってしまうという結果になったことは、残念で仕方がありません。

 つづくギリシャ戦(その1その2)、初戦を落としたことが指揮官の判断を狂わせることになります。

ザッケローニ監督はこの試合、左サイドから香川選手を外して岡崎選手を入れるという決断を下します。

前の試合で香川選手や長友選手のいる左サイドを突かれてそこから2失点したことへの対策だったのは明らかでしょう。

これまでの4年間、ザックジャパンの攻撃におけるストロングポイントとなっていたのは本田ー香川ー長友のトライアングルであり、この左サイドのトライアングルで相手が固めた守備ブロックの間をぬってパスを回していき、ボールをゴール前へ運んで決めるというのが日本の得点源となっていました。

ところがギリシャ戦において香川選手を外し、足元での細かいパス回しが本来の持ち味ではない岡崎選手を入れたことで、日本は攻撃のストロングポイントを自ら手放してしまい、自陣に引いたギリシャの守備ブロックと厳しいプレスをかいくぐってゴール前へボールを運んでいくことがで難しくなります。

後半10分過ぎに香川選手を投入し、香川選手の体が温まってゲームに本格的に入っていくことにより、日本はゴール決定機を何度かつくり出しました。

残念ながら日本の攻撃が機能しだしてから試合終了まで30分とゴールを奪うために残された時間が少なすぎましたし、ロスタイムまであと10分という状況でザッケローニ監督は、吉田選手を最前線にあげてロングボールを放り込むというパワープレーを選択します。

しかし、日本はこういう攻撃の形をこれまでまったく練習していませんし、それに適した選手もブラジルに連れてきていません。

この第二の判断ミスにより、せっかく攻撃がうまくいきだしてゴールまであともう一押しの状態だった日本は、自分たちに来ていた試合の流れを自ら手放してしまい、絶対に勝利が欲しかったギリシャ戦をドローにしてしまいます。

サッカーには「自分たちの弱点をつぶし、相手のストロングポイントを消すサッカー」と、「リスクをおかしてでも、自分たちのストロングポイントを前面に押し出すサッカー」の二つのやり方があります。

日本は決勝T進出のためにギリシャ戦は勝たなければいけない状況でしたし、勝つためにはゴールが絶対に必要でした。
それを踏まえれば、日本がやるべきサッカーは前者ではなくて後者だったと思います。

初戦の負けがザッケローニ監督に眠っていた弱気な采配を呼び覚まし、それが二つの判断ミスにつながって結果としてスコアレスドローになってしまったのは残念でした。

 ここまで1分1敗とまったく期待外れの結果であったとしてもですよ、W杯のグループステージは短期決戦とはいえリーグ戦であり、もちろん初戦に勝ったチームが有利なのは間違いありませんが、リーグ戦が4チームの総当たりである以上、それぞれ他の3チームと試合をして1番目に強いチームと2番目に強いチームが決勝Tへ行くのであって、初戦に負けようが自力で決勝Tに行ける可能性が2試合を終わった時点で消えていようが、3試合ともベストを尽くしてプレーし、普段の実力を100%発揮することがいかに大切かということを教えられることになるのが最後のコロンビア戦でした。

コロンビア戦の前半日本は先制されたものの、ブラジルに来てから一番良い内容の試合をします。

自信と気迫をもって相手とボールの奪い合いをし、マイボールにしたらテンポよくパスをつないでボールをゴール前まで運び、チャンスがあれば迷うことなくシュートを放ちました。

その積極的・攻撃的な姿勢が前半終了間際の岡崎選手の同点ゴールに結実します。

同時刻に行われていたギリシャVSコートジボアールはギリシャが1点リード、日本が後半コロンビアからもう1ゴールを奪って勝つことができれば、大逆転で決勝T行きとなる願ってもいない状況となります。

さあこれからだと日本代表への期待がふくらみましたが、後半の日本はコートジボアール戦に逆戻り。

コロンビアの攻撃を受けて立ってしまい、相手がパスをつないで日本ゴールに迫るのをずるずる下がりながら見ているうちに失点し、同点に追いつくために前がかりになったところでカウンターを食らって立て続けにゴールを許したところで、決勝T行きの切符を半分つかみかけていた日本のブラジルW杯は終わってしまいました。

試合後の報道で、「ギリシャがリードという情報は知らされていた。後半も前半と同じように前から行こうと話していた」という選手コメントが複数ありましたが、後半のプレーぶりを見るかぎりは「前半と同じように前から行っていた」とは思えません。

ブラジルW杯における日本の戦いぶりに共通するのは、自力で決勝Tへ行ける可能性が残されている状態では、リスクをとって勝負に行った結果失敗に終わることを恐れて自分たちの実力を100%発揮することができなくなってしまい、もう引き分けさえ許されず勝つしかないという状況に追い込まれると、余計なことをあれこれ心配するようなことがなくなり自分たちがやりたいサッカーができるようになるということです。

コートジボアール戦は前者の状態であり、ギリシャ戦とコロンビア戦の前半は後者の状態で、ハーフタイム中にギリシャがリードと知らされたコロンビア戦の後半は、再び前者の状態に逆戻りしてしまいました。

選手たちは「失敗を恐れず、持てる力を100%発揮することの大切さ」を頭ではわかっていたのかもしれませんが、いざW杯のピッチに立つと、言葉とは裏腹に失敗を恐れる気持ちの方が強くなってしまい、体が思うように動かなくなってしまったのかもしれません。

最終的にコロンビアとギリシャが決勝T行きを決めましたが、グループCのすべての試合を分析すればコロンビアが頭ひとつリードしていて、ギリシャ・コートジボアール・日本の3チームにはすべて決勝T行きのチャンスがありました。

むしろ選手個々の能力やチームの組織力から見て、コロンビアをのぞく3チームの中で一番実力のあるところは日本だったと思います。

ところが、主に精神面の問題により日本は肝心なW杯の本番で、持てるポテンシャルを十分発揮することができませんでした。

どういう理由にせよ普段できていたことが本番で突然できなくなったということは、結局日本に実力が無かったということです。

ザックジャパンは好不調の波が激しくコンスタントにサッカーのレベル(インテンシティ)を保つことができないということを、
「東欧遠征の評価と今後の課題」という記事で指摘しています。

W杯のグループリーグを戦い抜くのに必要とされる最低限のレベルを60点以上、決勝Tを勝ち抜いて優勝を狙うために必要とされるレベルを80点以上だとします。

日本は10月の東欧遠征で60点以上という合格ラインにまったく届かないサッカーをして連敗しますが、11月のベルギー遠征ではオランダと引き分け、ベルギーをアウエーで破るなど突如75点レベルのサッカーをやりはじめます。

今年に入り、アメリカ合宿でコスタリカやザンビアを破ったときでも65点はつけられます。日本がタンパで破ったコスタリカはブラジルW杯で旋風を巻き起こしていますよね。

ところが肝心かなめのブラジルW杯で、日本は60点を切るような低調な試合ばかりでした。

ザックジャパンは試合ごとに好不調の波が激しく、コンスタントに自分たちのポテンシャルを発揮するということができないチームだった思います。

ただし、オシム元監督や長谷部キャプテンも述べていたように、ザックジャパンが理想として追い求めてきたサッカーの方向性は決して間違っていないと私は確信しています。

コートジボアール戦やギリシャ戦の終盤でやった、長身選手の頭めがけてロングボールを放り込むようなサッカーに未来があるとは決して思えません。

問題は75点レベルのサッカーをテストマッチだけでなく、W杯のような大舞台でもコンスタントに表現できるかどうかです。

中央突破にしろサイドから行くにしろ、相手の守備ブロックの間をグラウンダーのショートパスをつないで崩し、オフサイドを避けながら相手DFラインのウラヘ味方とボールを送り込んでゴールを決める、守るときはコンパクトな守備ブロックをつくりバイタルエリアで相手を厳しくマークして点をやらない。

それをW杯のようなプレッシャーがかかる大舞台であっても普段通りにできる、自分たちの実力を100%発揮することができる選手やチームを育てていくことが、これからの4年間における日本サッカー界の課題です。

では、これからどうやってプレッシャーに強い選手やチームを育てていくか、それは明日の記事にします。

つづく



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