■日本代表、課題が多かったザンビア戦

 W杯開幕を控えた日本代表にとって、最後のテストマッチとなったザンビア戦は、4-3でまたしても日本が逆転勝ちしました。

今回対戦したザンビアは、国内組を主体にフランスなど海外でプレーする選手を加えたチーム。コートジボアールから1ランク落ちる相手であり、日本との実力差は日本のホームで日本の勝ち、ザンビアのホームで引き分け程度と見ていました。

中立地での戦いであれば、地力に勝る日本が勝たなければいけない相手であり、4-3で勝利という結果は順当なものでしたが、試合内容については修正すべき点が多いと思います。

私がザンビア代表のゲームを見るのは2002年アフリカ・ネーションズカップ以来だと記憶していますが、当時とは似ても似つかない、攻守にわたって組織が良く鍛えられたチームでしたね。惜しむらくはGKが若くて経験が無さすぎました。

それでは点の取り合いとなったゲームの流れをおさらいしておきます。

        ☆        ☆        ☆

 キックオフ直後は、コンパクトな守備陣形から組織的なプレスをかけてくるザンビアが日本の攻撃をはね返し、逆に日本を押し込む展開。押し込まれた日本は守備が我慢しきれません。

前半9分、ザンビアがパスをつなぎ、右サイドから入れたクロスをF.カトンゴが触ってコースを変え、 逆サイドにいた内田の背後からC.カトンゴに押し込まれてザンビアが先制。

コンパクトなブロックと厳しいプレスでスペースを与えてもらえない日本は攻めあぐみ、なかなかゴールに近いところでシュートまでもっていけません。

16分、遠藤のパスを受けた長友が左サイドからカットインしてミドルシュートしますが、GKが横っ飛びでセーブ。

29分ザンビアの右CK、F.カトンゴがスルーするトリックプレーに日本は惑わされ、ゴール正面でフリーになったシンカラのシュートが決まって0-2と突き放されます。

30分を過ぎると、「鬼プレス」をかけていたザンビアの足もさすがに止まり始めます。そのため日本も少しづつ相手陣内でパスが回るようになりました。

40分、岡崎にパスを当て、リターンをもらった香川が右サイドへ流れてからクロスをあげようとしましたが、これが相手選手の手に当たってPK獲得。本田がゴール右隅へ決めて日本が1点返します。1-2。

 後半から柿谷に代えて大久保を1トップに据えてキックオフ。

しかしリードされている焦りからか、一発のパスでゴールを決めようとしては相手にはね返され、雑になった日本の攻撃はなかなか機能しません。逆にザンビアの反撃にさらされます。

8分、ザンビアの右CK、F.カトンゴのキックを完全フリーになったC.カトンゴにヘッドで合わされましたが、ゴール右へ外れてヒヤっとさせられます。

後半も15分をすぎると、前半を飛ばしすぎたのかザンビアの動きがさらに鈍くなり日本が押し込みますが、追いつかなければならないプレッシャーからかミスが目立ちます。

29分、遠藤のミドルパスを左サイドで受けた香川がドリブルでカットインしてシュート性のクロス、ゴール前に飛び込んだ大久保と彼をマークするDFをすり抜けたボールにGKが反応できず、ややラッキーなゴールでようやく日本が追いつきます。2-2。

「2点差は一番危ういリード」というサッカーの格言どおり、追いついた日本が押せ押せに。

30分、酒井宏のパスを受けた森重がペナルティエリア内右で相手をフェイントでかわしてセンタリング、本田がこれにつめて日本が3-2とゲームをひっくりかえします。

ところが、またしても守備で踏ん張れない日本。

44分、左サイドでパスを受けたL.ムソンダのドリブルに山口の対応が遅れ、遅れて足を出しに行ったところムソンダのシュートが山口の体に当たってコースが変化、ボールはGK西川の頭上を越えて日本ゴールに吸い込まれます。3-3。

ロスタイム1分、遠藤に代えて投入された青山が、キックオフ直後にセンターサークルから蹴ったロングパスを大久保がゴール正面で絶妙のトラップからシュート、これが決まって再び突き放します。4-3。

激しい打ち合いとなったゲームもここまで。日本が前試合に引き続き、逆転勝ちをおさめました。

        ☆        ☆        ☆

 それでは試合内容を見ていきますが、攻守両面を含めたゲーム全体の進め方、攻撃面・守備面それぞれに課題が多く出たゲームでした。

これがワールドカップ本番の試合でなくて本当に良かったと思います。もしW杯初戦で取り返しのつかないミスが起こっていたらと考えるとゾッとします。

では順番に見ていきましょう。

 まずゲーム全体の進め方ですが、私がこの記事 の「もう一つ忘れてはいけないのが...」以下で言いたかったことは、この試合のようなことが起こってしまうことを危惧していたからです。

「相手を押し込もうとしたができず、逆に押し込まれてしまいました。それだと守備が我慢できないので先に失点してしまいました」ではサッカーになりません。

確かにザンビアのコンパクトな守備ブロックと組織的なプレッシングは素晴らしかったですけど、あの「鬼プレス」を暑いなか90分間続けるのは無理があります。

かつてディナモ・キエフを率いた名将ヴァレリー・ロバノフスキーが使った戦術ですが、前半20分まではガチガチ相手に当たりに行く「鬼プレス」をかけて、その後はプレスをかけるフリをするだけというやり方があります。

相手チームはキックオフからの20分間で「鬼プレス」の強い印象を植えつけられるので、そのあとはディナモの選手たちが体力を温存するためにプレスをかけるフリをするだけで本気でボールを奪おうとしなくても、焦った相手が雑なロングボールを前へ蹴ってくれたり、あわててパスをつなごうとしてミスしてくれればそれでよいわけです。(試合日程がきついときなどに、主に格下相手に使った戦術のようです。もちろん途中でフリをしているだけだと見破られたら、マジメにプレスをかけないといけませんが)

世界的な名監督であってもそういった工夫をしているように、「鬼プレス」を90分間通してやることはまず困難で、必ず足が止まってくる時間帯が出てきます。

日本も、前半キックオフから30分間のザンビアによる厳しいプレスの印象が強く残ったのか、ザンビアの足が止まり始めても、ゴールを焦って雑なタテパス一本の攻撃を繰り返したり、ミスパスが増えたりしていましたね。

どんなチームでも鬼プレスを90分間続けることは困難だということを頭にしっかり叩きこんでおいて、鬼プレスでこちらの攻撃がはね返されて逆に相手に押し込まれてもそこは我慢し、こちらもコンパクトな守備ブロックと組織的なプレスをかけつづけ、相手の足が止まって相手陣内でパスを回せるようになるまで、絶対に先制点を奪われないようチーム全体で辛抱しなくてはなりません。

相手の足が止まり始めるのが後半30分過ぎだったら、そこまで最低でも0-0で踏ん張り続ける必要があります。

 また、コンパクトな守備ブロックを崩すには、それに応じた戦術があります。

図1
つまる
(クリックで拡大 以下同様)

図1のように、相手DFラインの前でショートパスを細かくつないでいると、相手もそれに応じてプレスをかけてきて、守備ブロック全体がさらにコンパクトになってバイタルエリアのスペースがどんどん狭くなっていきます。

バイタルエリアで足元へのショートパスをつないで攻撃を組み立てるのが、現在の日本代表にとって「やりたい攻撃」であり、それ自体はぜんぜん問題ありませんが、そればかりやっていると今回のザンビア戦のように、相手がまだ元気な時間帯に、コンパクトな守備ブロックから厳しくプレスをかけられてバイタルエリアのスペースが狭められることでパスがつながりにくくなり、それによって日本の攻撃が機能せず、攻め手がないまま逆に防戦一方といったことになりかねません。

                 
                   
図2
広げる

そのような場合は、図2のようにワントップが高く設定された相手DFラインのウラでパスを受ける動きをし、ボランチやDFからワントップに正確に当てるようにロングパスを出します。

こうした戦術によって、たとえワントップへパスが通らなくても、ウラを取られたくない相手DF陣がラインを下げることでバイタルエリアが広がります。

相手DFが下がりながらロングパスをヘッドでクリアすれば、広くなったバイタルエリアにこぼれる可能性が高くなります。ヘッドしたDFを基点として左右45°の範囲内で、約10m以内のどこかにボールが落ちるのではないでしょうか。

そこでこちらのMFやサイドハーフ(SH)は、味方のワントップや相手DFに当たったボールが広くなったバイタルエリアへこぼれてくることを予測し、反応をすばやくして敵よりも先にボールを拾います。

ロングパスをGKに直接キャッチされてしまっては意味がありません。そこは注意すること。


                 


図3
使う

図2のように、ワントップの動きで意図的にバイタルエリアを広げ、そこでボールを拾ったMFは広くなったバイタルエリアを使って再びショートパスを使って攻撃を組み立てる。(図3)

MFからFWへのスルーパスや、FWからリターンをもらってMFがシュート、あるいはSHやサイドバックを使うなど、攻撃のバリエーションが広がります。

ショートパスで攻撃することで、再びバイタルエリアが狭くなりすぎて図1の状態に戻ってしまったと感じたら、図2→図3の戦術を試してみる。

相手DF陣を揺さぶり、意図的にラインを上げ下げさせることで、チーム全体の足が止まり始め、DFラインの下げに相手ボランチがついていけなくなったら、長い時間バイタルエリアが広く使えるようになる。

足の止まった相手がバイタルエリアのスペースを埋めることを優先させるなら、前へ出てボールホルダーをしつこく追い回すようなプレスをかけることが難しくなるから、こちらが相手陣内でパスを回して押し込めるようになるので、いつものように攻める。


あくまでも日本の攻めの基本はグラウンダーのショートパスによる崩しですから、ロングの縦パス一本によるワンパターン攻撃にハマるのだけは避けること。

ザッケローニ監督が、受けたパスをポストプレーで落とすことに最近偏りがちになっている柿谷選手や、「直感」のままボールを受けにサイド深くに流れたり中盤の底まで下がってしまう大久保選手を、ワントップのポジションからすぐ代えてしまうのは、戦術的に意図したこういった動きができていないからではないでしょうか。

 W杯やUEFAチャンピオンズリーグで上位を目指すチームは、ピッチ上の11人がこうした共通理解をもって、状況に応じて複数の戦術を使い分けることができるぐらいのレベルにあるはずで、「相手を押し込みたかったけど、押し込まれることは想定しておらず、だから辛抱できずに先制されました」というのでは、勝負になりません。

今ごろの岡田ジャパンは守備組織の構築でいっぱいいっぱいで、私がこのレベルの攻撃の戦術論にまで触れる余裕はありませんでしたから、現在の日本代表が4年前から着実に進歩しているのは間違いないです。

W杯開幕まで残り時間は本当に少ないですが、日本がW杯を勝ち抜いていくために、選手全員で90分・120分を通した試合全体を見据えたゲームの進め方や戦術の理解を高め、ゲームの流れが日本と相手どちらに来ているのか、今が「攻め時」なのかそれとも守備ブロックをつくって「辛抱する時」なのか、状況を見ながら戦術を使い分けられるような、勝負にしたたかな試合巧者になって欲しいと思います。

記事が長くなりました。攻撃・守備面の課題と選手個々の評価は明日にアップします。

次回へつづく


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