■コンフェデ総括(その2)

 コンフェデ総括の2回目は、まず日本人選手個々の能力面でどのような課題が浮き彫りになったかを見ていきます。

サッカー選手に求められる能力は大きく分けて4つあるのではないでしょうか。

1.フィジカル能力(スピード・持久力・ボディコンタクトの強さ・ジャンプ力など)

2.技術(ボールを正確に蹴る・止める・ドリブルする・ヘディングするなど)

3.戦術理解(個人戦術・チーム戦術両方を理解して的確な状況判断にもとづいてプレーする能力)

4.精神力(積極的にゲームに参加できるか・自信と勇気を持ってコンスタントに実力を出し切れるか・苦しい時どれだけ頑張れるかなど)


日本代表選手の場合、2の技術面では世界の列強にかなり追いついてきていると感じました。しかし残りの3つに関してはまだ差があるように思います。

特にゴール前での攻防において、その差がはっきりと表れていました。

コンフェデでは日本の守備崩壊が指摘されましたが、日本人選手は基本のところで差をつけられているために、押し込まれると我慢しきれず、簡単に失点を許してしまっています。

守備における個人戦術の一番の基本は、ピッチのどこに居てもまず相手のボールホルダーと自軍ゴールとを結んだライン上に立って、相手と適切な間合いを取るということです。

ゴール前でこれがしっかりできていれば、相手がボールを持って前を向いていても、シュートコースをとりあえず消すことができているということを意味します。

さらに自分のゴール前では、クロスやパスに対して常にこちらが先に触ってクリアするのがベスト、それができないと判断したらボールに関与しそうな相手に体を寄せて自由を奪い、相手のシュートなりパスなりを弱く不正確なものにしてGKのセービングを助けるのがセカンドベストでしょう。

これが3の戦術理解の基本です。

ところが今の日本代表はこれができていません。

メキシコ戦のバロテッリのゴールのように、DFに体を寄せられてもそれをはねのけてゴールしてしまうのが世界トップレベルのゴール前の攻防ですが、日本の選手は簡単に相手をフリーにしてしまいます。

世界トップレベルの選手をフリーにしたら、かなりの確率で正確なシュートをゴールに叩き込まれるのは当たり前。

ブラジルの先制点を振り返りますと、ネイマールのシュートをアシストしたフレッジのポストプレーに対し誰も体を寄せることなくフリーで仕事をさせています。

もし長友選手がフレッジに体を寄せることで胸で落としたボールを1mずらすことができていたら、少なくともあのダイレクトシュートはなかったかもしれません。

ブラジルの2点目も、ペナの中でパウリーニョを離しすぎです。

イタリアの1点目も、ヘッドしたデ・ロッシを長谷部選手がフリーにしてしまったことが敗因ですし、メキシコの先制ゴールは日本の今野・栗原両選手がボールウオッチャーになって、チチャリートをいとも簡単にフリーしてヘッドでやられています。

彼の2点目も、まずニアで遠藤選手が競り負けて相手の思惑どおりにフリックされ、ファーにいた内田選手が一瞬ボールウオッチャーになって対応が遅れたところをチチャに押し込まれて失点という形でした。

チチャの駆け引きも上手いんですが、まず相手より先にボールに触る、それが無理なら相手の体の自由を奪いにいくという意識を持っていれば防げた可能性があります。

日本人選手がゴール前の攻防でたやすく負けてしまう理由は、3の戦術理解の不足というよりも、4の精神力の問題、特に選手個々の勇気と積極性の問題が大きいのかもしれません。

一発で抜かれるのが怖いから自軍ゴール前で相手選手と距離をとり、相手が何かしたらそれに合わせてどうにかしようという受け身の姿勢がけっきょく後手後手にまわって、相手に先にボールを触られてしまう、フリーになった相手に決定的な仕事をやられてしまうことにつながっているのではないでしょうか。

相手より先にボールに触るということは正しい判断力(戦術理解)とともに、自分がマークしている相手を一度捨ててボールに飛び込んでいく勇気と積極性が必要ですし、そこが世界トップレベルとの差なのかもしれません。

コンパクトな守備ブロックを完璧につくれていたとしても、守備ブロックの前から相手FWへ目がけて放り込んでくるロングボールや、こちらのサイドバックを抜ききらない前から入れてくるクロス、さらにコーナーキックなどのセットプレーを100%防ぐことは不可能です。

そのたびに、日本のゴール前での1対1で競り負けて簡単に失点していたのではサッカーになりません。例えサイドを抜かれても、ゴール前での1対1には絶対負けないことが極めて重要となります。

 ブラジルの3点目やイタリアの2点目は、3の戦術理解の不足が露呈したのではないでしょうか。

ブラジル戦ではネイマールを良く抑えるなど健闘した内田選手でしたが、ブラジルの3点目のシーンでは、オスカルとの1対1で常にインを切ってオスカルをタッチライン方向へドリブルするよう仕向ければ、たとえオスカルにサイドを突破されてクロスを入れられたとしても、まだゴール前にいる味方がジョーのシュートを防ぐチャンスがありました。

しかし内田選手がインとアウト両方を切ろうとしたために、ジョーについていた吉田選手が内田選手がオスカルにイン側を突破されるのに備え一瞬ジョーのマークを離して前進したところで、オスカルにゴール中央へのスルーパスを出されてジョーにゴールを決められました。

チームによって戦術上の約束が違うこともあるでしょうが、相手のドリブルにしろパスにしろサイドよりゴール中央方向のほうが失点のリスクは高まりますから、サイドで相手と1対1になったらまず「インを切る」のが基本でしょうし、チーム全体にそういう共通理解があれば、吉田選手もジョーへのマークに専念して、ブラジルの得点の可能性を減らすことができたと思います。

イタリアの2点目は、日本のゴール前というリスクマネジメントで一番注意しなければならないエリアで、吉田選手が相手をブロックしてゴールキックにしようとしたボールを相手にかっさらわれて失点という形でした。

安全第一で前へクリアしておけば何でもないプレーでしたし、イタリアの決勝ゴールも日本が自陣深くで細かくパスをつなごうとしすぎてクリアが窮屈になったところを拾われてカウンターという形でしたが、これも戦術理解があれば防ぐことができた、もったいない失点でした。

これまで述べてきたことは細かいことかもしれませんが、世界トップレベルの選手ほど細かい基本がしっかりできているように思います。

「基本練習は退屈だからいいや」で放っておくか、それとも妥協を許さず細かいところまで詰めていくか、その毎日の積み重ねが試合の勝ち敗けという大きな差につながっていきます。

コンフェデで惨敗したことにより、W杯アジア予選やテストマッチを通じていかに高くないレベルのサッカーに満足していたか、自分に対するサッカーの要求レベルが低かったかを思い知らされたことでしょう。

もし今回のような悔しい思いをW杯でしたくなければ、すべての選手が失敗の経験をしゃぶりつくしてそこから多くのことを学び、二度と同じ間違いをしないということに尽きます。

戦術理解や精神力だけでなく、1のフィジカル能力でもこの大会に限っては持久力で相手より劣り、フィジカルコンタクトの弱さはあいかわらず多くの日本人選手にとって課題となっています。

こうした課題を解決し、自分のゴール前ではしっかりと守り、相手のゴール前では最初のチャンスで勇気と自信をもってシュートし、その数少ないチャンスに集中して確実にゴールする。

それによって試合内容の良さを勝利という結果につなげる「勝負強さ」が身につくのではないでしょうか。

本番まであと一年間しかありません。クラブや代表での練習・実戦において残された時間を大切に使って欲しいと思います。

 最後にザッケローニ監督の采配に触れておきましょう。

ザッケローニ氏の戦術家としての能力は、歴代日本代表監督のなかではトップではないかと私は考えています。実際、ゲーム前に対戦相手に応じた戦術を選手たちにさずけ準備させることがとても上手いと感じます。

しかしキックオフ後に臨機応変に采配をふるう、“アドリブ”についてはあまり得意ではないようにも見えます。

スコアが動いてから後手後手で選手を交代させていくのではなく、ゲームの流れを読み、流れが悪ければその原因を把握して適切な指示や選手交代によってチームを良い結果に導いていくようなタイプの監督が私は好みです。

ザッケローニ監督なりに意図がおありなのでしょうが、流れが良くて動いてはいけないときに動いてしまったり(6/4 対オーストラリア戦)、逆にコンフェデのように流れが悪くてもなかなか動かなかったり選手交代が機能しなかったりと、“アドリブ”がうまくいっていないように感じます。

本田選手や香川選手など先発メンバーより信頼できる控えがいないということも動けない理由なのかもしれませんが、もしそうであるなら控え選手を固定してきた弊害が出ているのではないでしょうか。

先発組をおびやかす気配さえ見えない選手に“指定席”を与えて招集しつづけるなど、ザッケローニ監督の用兵はかなり保守的だと思われます。

それがチーム内における競争の欠如と、控え選手の伸び悩みにつながっているのではないでしょうか。

ザッケローニ監督はつねに選手に成長を求めていますが、監督にもゲームの流れを読んで適切な対処をする能力、チームに活気を与え競争を促す人事・用兵能力での成長をお願いしたいです。

一部でザッケローニ監督の解任論がとりざたされています。

彼より監督としての能力が抜群に優れていて、日本サッカーの現状を理解しそれにふさわしい強化策を実行できる方が存在するなら監督交代を考慮しても良いかもしれませんが、そういう人で「オファーを受けても良い」という方が現実におられるでしょうか?

でなければ、ザッケローニ監督を解任してもっとレベルの低い監督しか見つからなかったということにもなりかねず、それは賢明な策とは言えません。

個人的には、改善点はあるとしてもザッケローニ監督にブラジルW杯を任せられるだけの能力はある、最低限の合格ラインはクリアしていると考えています。

南アフリカにおいて、日本はボール支配率で劣り、パス成功率は60%と出場32か国で最低でした。

岡田ジャパンは攻撃における組織力に欠け、チームでボールをポゼッションする能力が低かったと言えます。

コンフェデではパス成功率が3試合平均74%、ブラジル戦を除いてボールポゼッションでほぼ互角でしたが、それはザッケローニ監督の戦術によって攻撃における組織力が改善されたことが理由の一つでしょう。

FIFA公式データ

「ザックジャパンになって日本は悪い方向へ向かっている」とか「南アフリカW杯よりレベルが下がった」などという感情論もあるようですが、それは事実とは違うように思います。

選手はもちろん監督さんにも成長してもらって、来年のブラジルW杯では決勝トーナメントを堂々と勝ち進んでいく日本代表の姿を見てみたいです。

<了>




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