■日本代表、改善されない消極性

 豊田スタジアムで行われたブルガリアとのテストマッチは0-2で日本代表が敗れました。

対戦相手のブルガリアは、国内組を中心にオランダやロシアでプレーする選手を組み合わせたチームで、2014W杯欧州予選はホームでイタリアと引き分け、デンマークとも互角に渡り合う東欧の実力者です。

監督のペネフは、かつてはブルガリア代表のセンターフォワードで、当時カントナやパパン、ジノラがいたフランス代表をパリで破って94W杯行きを決めた、フランスから見た「パルク・ド・プランスの悲劇」の立役者の一人です。

私もTVでその試合を見ましたが、当時のブルガリアはコスタディノフ・ペネフ・ストイチコフの超強力3トップを擁し、攻撃の破壊力たるや「悪魔のようなチーム」でした。

昔話はさておき、今回ペネフ監督はほぼベストメンバーを連れてきてくれ、日本との戦力差はほぼ互角、こちらに有利なホームに迎え撃つなら日本が勝たなければいけない試合でしたが、残念な結果になってしまいました。

試合内容もヨルダン戦と同じ問題を依然として解決できず、良くありません。

        ☆        ☆        ☆

 まず試合展開を振り返っておきましょう。

日本は久しぶりに3-4-3を試します。

3分、少し不可解な判定から相手にフリーキックを与え、マノレフが蹴ったブレ球キックをパンチングしようとした川島が後逸して0-1、日本は立ち上がりからノックアウト・パンチを食らってしまいました。

20分、日本のクリアを拾ったミネフがカットインしてシュート、これは川島がセーブします。

前半の半分をすぎると、ようやく日本は流れを引き戻し、反撃に転じます。

26分、左サイドで香川からパスを受けた乾がシュート、相手に防がれたこぼれ球を駒野がシュートしますが、GKストヤノフが押さえました。

30分、ペナルティエリアやや左でボールを受けた香川が上手くターンしてシュート、しかしストヤノフが弾いてCKへ逃れます。

後半、日本は選手を入れ換え、4-2-3-1へ。

ところが、守備は間延びしてプレスがかからず、攻撃では味方のボールホルダーを周囲が足を止めて見ている時間帯が増えてきて、日本は試合の流れを失っていきます。

後半10分、香川からパスを受けた清武がミドルシュート、これはヒットせず。

25分、ブルガリアの右FKが長谷部に当たって不運なオウンゴール。0-2となります。

31分、左サイドから清武のクロスをハーフナーが競り勝ってヘッド、惜しくもゴール上へ。

33分、ゴール前でFKを獲得、遠藤のキックはゴール右へ外れます。

ロスタイム、清武のパスを受けた長友のシュートが決まったかに見えましたがオフサイドの判定。

後半は攻守に機能しないままゲームセットとなりました。

        ☆        ☆        ☆

 それでは日本のどこが悪かったのか、試合内容を分析していきます。

まず攻撃からです。

前半は久しぶりに3-4-3を使いましたが、これまでで一番マシだったと思います。

しかしヨルダン戦と同様、選手ひとりひとりの「失敗をしたくない」という思いが強すぎて、一つ一つのプレーが消極的で臆病になっているのが、ボールをうまく前へ運べず、ゴールもできない最大の原因です。

例えば後ろから来たパスを受けるとき、まず半身になってボールをトラップしつつ相手ゴール方向へターンして、そのまま前を向けばチャンスになるのに、相手ゴール方向へ背を向けてボールを失わないよう「安全に」パスを受けてしまうと、その瞬間に敵選手数人が戻ってしまい、バックパスするしかなくなります。

縦へパスを入れる時も、味方が動いて相手のマークを外した最初のタイミングでパスすればよいのに、グズグズ迷っているうちに数秒間フリーだった味方にマークがついてもう出せなくなる。

結局バックパスして、ザッケローニ監督が激怒。

ボールホルダーの周囲にいる選手も、しだいに足を止めてボールを持っている味方を見ているだけか、かえって味方のボールホルダーからどんどん遠ざかっていき、孤立したボール保持者は遠くにいる味方へグラウンダーで長いパスを出すしかなくなりますが、相手選手にカットされないよう強く難しいパスになるので、味方が追いつけない、受けられたとしてもトラップミスしてボールを失うという悪循環におちいっています。

シュートにしても、前半はヨルダン戦より改善しようという姿勢がうかがえましたが、決断が遅いのでシュートを自分の前に入り込んできたDFにぶつけてしまうケースがほとんどでした。

相変わらずペナルティエリア周辺でのパス中心の攻撃が細かすぎで、それを裏付けるように、日本のシュートの多くがペナルティエリア内から打たれたもので、中央をかためるブルガリア守備陣にひっかかってしまっています。

今の日本の攻撃は、守る側にとって「ヤバいッ。ゴールを奪われる!!」という恐怖感がありません。

ゴールするってサッカー選手にとって一番楽しい時ではないですか?

シュートを打つ瞬間もっと楽しんで、心に余裕を持てるような練習をしたらどうでしょうか。

ブルガリアの選手みたいに、もっとミドルシュートを使うべきです。

バイタルエリアでシュートコースが見えたら、最初のチャンスを逃さずシュートしてみる。

DFがシュートコースを消しに前へ出て来たら、遊んでやるつもりでワンフェイント入れて、相手を振り回してシュートする。

日本の選手は悪い意味でマジメすぎて、「失敗への責任感」が強すぎるのだと思います。

人間がやる勝負ごとですから、どうしても失敗はあります。

悪い結果を恐れず、自分たちがが今やるべきことにベストを尽くす、そのことに集中して欲しいですし、それを楽しんで欲しいですね。

全力を出し切って上手くいかなければ人間サバサバしたものですが、やれば勝てたのに、勝負から逃げて「戦わずして負ける」では悔しすぎるじゃないですか。

2010年正月から南アフリカW杯開幕までの岡田ジャパンが似た感じでしたが、今の日本代表はそういう状態だと思います。

こうしたメンタルの弱さを克服できれば、日本はワンランク上のチームになるでしょう。

 守備面では、球際の競り合いが相変わらずルーズで、相手が縦にクサビのパスを入れても誰もプレスをかけないので、中盤でフリーにボールを持たせすぎです。

ゴール前でのマークのズレから強烈なヘディングシュートを浴びたのも一度ありましたし、このあたりもヨルダン戦からあまり改善されていません。

後半から4バックに戻しましたが、コンパクトな守備陣形の作り方をすっかり忘れたかのようなプレー。

相手のサイド攻撃にこちらのサイドバックが応対するとき、センターバックの栗原選手らが同サイドへスライドせず、ゴール前中央にとどまったままなので、サイドバックとの間に大きなスペースを与えていたのも危険なポジショニング・ミスです。(下図で言えば(2)のスペースを空けてしまう)

悪い形


おそらく選手たちは3-4-3の決まりごとを覚えるのにいっぱいいっぱいで、4バックのコンパクトなゾーンディフェンスのやり方をすっかり忘れてしまったのでしょう。

ザッケローニ監督は御存じないのかもしれませんが、日本の選手はこの世代でも、守備戦術の基本がユース時代から体にしっかり叩き込まれていません。

大事なW杯予選前に選手を混乱させるのは得策ではありません。
3-4-3のテストはコンフェデでも何でもいいですから、W杯出場が決まってからにして欲しいです。

        ☆        ☆        ☆

選手個々で特筆すべきは、まず乾選手。

左サイドの攻撃を活性化させていましたし、これでシュートへの決断を速くするのと、ドリブルをバイタルエリア付近に限定させればもっと良くなるでしょう。

ドイツの新聞に指摘されているとおり、中盤で相手が3人も4人も待ち構えているところへドリブルで突っ込んでいくのは、「独りよがり」ではないでしょうか。

逆に、川島選手は痛恨のセーブミス。

まずは相手のブレ球シュートを褒めるべきでしょうが、やはりGK正面に来たシュートをふせげないのはGKの責任とせざるを得ません。すべりやすいパンチングではなく、指を開いてシュートをはたき落とした方がベターだったかもしれません。

栗原選手も、4バックのときの前述のようなポジショニングミスに加え、相手CKのときにマークをずらして相手をフリーにしてしまうミスがあったように見えました。

遠藤選手もただパスをさばいているだけではなくて、FWやトップ下にパスを出した後その選手を追い越してバイタルエリアに侵入し、もう一度リターンをもらって自分でシュートを打ってゴールするというプレーが欲しいです。

遠藤選手は、香川選手ら若手の引き立て役に徹し、彼らにパスを出してゴールさせるのが自分の役目と考えているようで、ゴール前のFKを除いて流れの中から絶対といって良いほどシュートしないプレーヤーです。少なくとも代表では。

それがゴールに対して貪欲な本田選手がいないときに、日本代表がゴールできない・試合に勝てない隠れた原因の一つになっているのではないでしょうか。

本田選手がいないと、他の選手たちは攻撃のチームリーダーとして遠藤選手を見るようになり、彼のプレースタイルを良くも悪くもお手本としているように感じられます。

遠藤選手は、ボールを持ったらルックアップして相手の急所を突くパスを出したり、それが無理なときは横や後方にパスをさばき、自分では決してシュートしません。

ですから、フィールドプレーヤー10人すべてが「遠藤選手」になってしまえば、チームは点をとれず試合にも勝てません。流れの中からほとんどシュートしないのですから。

現代サッカーにおいて遠藤選手のようなタイプがチームに一人いれば助かりますが、2人以上は多すぎます。

チームの攻撃が停滞しているときは、遠藤選手自ら流れの中からシュートをどんどん打って、他のフィールドプレーヤーに自らのプレーで今やるべきことを示して欲しいと思います。

        ☆         ☆        ☆

 本番直前の大事なテストマッチとなったブルガリア戦は、敗戦という結果も悪かったですが、試合内容もヨルダン戦の反省が生かされず、同じような過ちを繰り返しています。

今度対戦するオーストラリアは、ブルガリアとはまったく異なったスタイルで、屈強なフィジカルを生かして前線にロングボールをどんどん放り込んでくることが予想されます。

パスを百本つないで華麗にゴールするのもサッカーなら、セットプレーからたった一度の空中戦に競り勝ってゴールし、後は守備を固めて逃げ切るというのもサッカーであり、オーストラリアはそれができるチームです。

ゴール前のこぼれ球を“D”のエリアで待ち構えていてミドルシュートというのも彼らの得意な形。
オーストラリアとやるときはいつも言いますが、対策が必要です。

対策

日本代表はもっと勇気と積極性を持って、シュートなり前方へのパスにチャレンジして欲しい。

相手とのフィジカルコンタクトを避けずに、一つ一つのプレーでしっかりと体を密着させて、たとえ勝てなくても相手の体の自由を奪って正確なプレーをさせない、こぼれ球を予測して常にマイボールにする。


そのように、相手が一番嫌がることを90分コツコツやっていくということが求められます。

そしてW杯予選で常に全力を出し切ることに集中すれば、良い結果は必ずついてくるはずです。

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           2013.5.30 豊田スタジアム

        日本 0 - 2 ブルガリア

                     マノレフ 3'
                     O.G.(長谷部) 70'


        GK 川島        GK ストヤノフ

        DF 今野        DF I.ミラノフ
           栗原         (アレクサンドロフ 40)
           吉田           ディミトロフ
          (清武 46)        I.イワノフ
                          ミネフ
        MF 駒野
          (長友 46)    MF マノレフ
           遠藤         (フリストフ 79)
           長谷部         ガジェフ
          (細貝 80)      (ズラティンスキ 56)
           内田          ディアコフ
          (酒井宏 46)      ポポフ
                        (G.ミラノフ 65) 
        FW 乾
          (中村 69)    FW G.イリエフ
           前田          (べレフ 68)
          (ハーフナー 46)   デレフ
           香川          (ミカンスキ 59)





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