■日本代表、イラクに辛勝

 ブラジルW杯アジア最終予選の対イラク戦が埼玉で行われ、日本代表が1-0で勝利しました。

対戦相手のイラク代表は、スウェーデンリーグ・オレブロに所属するヤシン以外は国内か近隣諸国リーグでプレーする選手で構成されたチームです。

日本とは、ホームでもアウェーでも日本が勝利できるぐらいの実力差と見積もっていましたが、イラクのジーコ監督はこれまで最終予選を戦っていたメンバーをガラッと入れ替え、U-23代表の選手を多く起用してきました。

それでも1-0で日本の勝利という結果は順当でしたが、試合内容は悪かったと思います。


        ☆        ☆        ☆

 前半は、強いフィジカルを生かしてマンマークで守るハードワークのイラクに対して、日本は運動量が少なく攻撃の糸口がなかなかつかめません。

4分、イラクのCKからI.ハラフがニアでフリーになり強烈なヘッド、川島がなんとかセーブして肝を冷やします。

11分、左サイドから中央へ切れ込んだ長友がミドルシュート、これは相手GKが防ぎます。

15分、右サイドを突破した岡崎がクロス、ファーポスト側にいた清武がヘッドしますがまたもやGKに防がれました。

21分、イラクのCKからまたしてもH.アハメドをフリーにしてしまいボレーシュートされますが決まらず命拾いしました。

25分、攻撃の連動性が悪い日本でしたが駒野のスローインを岡崎が中央へ折り返し、最後は前田が決めて日本が苦しみながら先制!

先制したあと日本の動きが少しだけ良くなりましたが、しばらくすると再び重い感じに。

41分、日本のCKが決まらなかった直後、イラクがカウンターで逆襲。ヤシンが一対一になっていた駒野の前からコントロールシュート!しかし川島が横っ飛びでファインセーブ!!

 後半は、前半のマンマークディフェンスで消耗したのか明らかにイラクの足が止まり始めます。そのために試合の流れは日本へ。

6分、ゴール前左のセットプレーから遠藤がキック、相手のクリアがこぼれたところを本田がシュートしますが相手選手が体を張ってストップ。

18分、本田のCKが相手にクリアされますが、それを拾った吉田がバイシクルシュート、これは残念ながらバーの上。

24分、長友が左サイドを突破してセンタリング、本田がヘッドしますが枠を外れました。

35分、左サイドからこんどは清武がクロス、満を持してフリーで放った本田のヘディングシュートでしたが、GKのファインセーブに阻止されました。

38分、CKのクリアボールを伊野波が振り向きざまシュートしますが、惜しくもゴール右へ。

イラクは後半からドリブラーのアクラム・アリ、エースストライカーのユニス・マフムード・ハラフを投入して同点を狙いましたが日本の守備ブロックを崩すには至らず試合終了のホイッスルとなりました。


        ☆        ☆        ☆

 続いて試合内容ですが、攻守共にあまり良くなかったですね。

歴代の日本代表とは違い、6-0で勝ったヨルダン戦で高いレベルのサッカーを既に見せてくれていたので、UAE戦の不調はあまり心配していませんでした。

イラクに手の内を見せないためか、体力を温存するためにUAE戦で日本の動きが重かったのかなと考えていたのですが、蒸し暑い日本の気候に適応できなかったのか、心の底ではイラクをナメていたのか、ともかく本当にチーム状態が悪かったようです。

まず守備面ですが、陣形をコンパクトにするということはUAE戦よりできていました。

しかし球際の競り合いではイラクに対してやや劣勢でしたし、こぼれ球への反応もにぶかったですね。

ゴール前の守備ではマークが不徹底で、イラクの選手をフリーにしては非常に危険なシュートを何本も浴びてしまいました。あれが一本でも決まっていたらこの試合どうなっていたかわかりません。今からでもゾッとします。

カウンターからも危険なシュートを食らいましたが、相手のボールホルダーがドリブルするのをただ見ているのではなくて、まだ相手が自陣内にいるうちに、近くにいる選手がたとえ自分がマッチアップしている相手へのマークを捨ててでも誰か一人立ちふさがって(マークを捨てた相手選手は別の味方がみる)、パスコースを限定しないと相手の得点の可能性がどんどんひろがってしまいます。

この守備ではW杯本大会で何点とられるかわかったものではありません。

 攻撃も良くなかったですね。

運動量が少なくて、味方のボールホルダーへのサポートが遅く、パスを受けるための「顔出し」の動きが少なかったのはUAE戦と同様。

相手は日本のダブルボランチから前の選手をマンマーク気味に守ってきましたが、マンマークは相手が必ずついてくるのですからまずこちらから動いて相手の陣形を間延びさせるなり歪ませて、誰かがつくったスペースを別の選手が使うといったことができれば崩せるのですが、日本にチームとしての統一された意識がありませんでした。

日本代表に問題があると当ブログでは図が出てくるわけですが、マンマークディフェンスがすたれた理由は、相手の動きによって守備側の陣形に歪みができてしまうからです。(下図参照)

マンマークの弱点
(クリックで拡大 以下同様)

3バックで1人余るマンマークディフェンスの例ですと、攻撃側(青)の選手があえて敵のリベロ(L)に近づいていくと、敵のストッパー(S)2枚もそれについて行きます。

すると赤丸で囲んだスペースができるので、そこに二列目の選手がフリーランニングしてラストパスを受ければ、もうGKと一対一になって後はシュートを決めるだけです。

もし守備側が陣形の歪みができるのを恐れてついてこなければ、その選手はフリーでボールを受けられます。

ですからマンマークディフェンスを崩すときは、チーム全体で共有された意図を持ち、まずこちらから動かなければ話になりません。

この試合でイラクは、遠藤・長谷部のダブルボランチから前の選手にマンマークにつく4-1-3-2のような陣形で守ってきました。(下図)

イラク戦


最前線の2人がこちらのダブルボランチをマンマークして、中盤の3人の両サイドがこちらのサイドバックを抑えるという感じでした。

本田選手が意図的に高いポジションを取っていたように見えましたが、そのため相手が引きずられて中盤にポッカリとスペースが空く瞬間がけっこうありました。

そのスペースに例えば清武選手や岡崎選手がもっと入っていって、その選手にパスを出して基点をつくるという意識がチーム全体として共有されていたら、もっとスムーズに攻撃が組み立てられたのではないでしょうか。

あるいは日本の選手が意図的にピッチの片方へ寄って、反対サイドに大きなスペースをつくるとか。

2000年代の中ごろに既に代表だった遠藤選手あたりはマンマークの3バックで守るオマーンやバーレーンとやった経験があるはずですが、その他の若い選手たちはマンマークディフェンスの相手を崩す経験があまりなく戸惑ったかもしれません。

次の試合以降、パスの基点となる遠藤・長谷部の両ボランチにマンマークがついたら、こちらから動いて相手を引きずり出して陣形を歪ませ、空いたスペースを別の味方が使うということをコツコツとやって欲しいと思います。

攻撃でもう一つ気になったのは、こちらのクロスボールを相手がヘッドでクリアして相手ペナルティエリア(PA)内に五分五分のボールがあがった場合。

日本の選手はボールの落下点が自分から3mぐらい離れるともう相手がクリアするのをただ見ているだけでしたが、ピョンヤンで戦った北朝鮮戦の失点のように、PA内ではたった一度でもヘッドの競り合いに勝てればそれが即ゴールにつながる可能性があるのですから、相手がヘッドでクリアするのを見ているのではなくて、3m離れたところから助走をつけて全力でヘッドの競り合いを挑んで欲しいですね。


        ☆        ☆        ☆

 選手個々で特筆すべきは、まず前田選手。ゴール決定力は素晴らしいですし、豊富な運動量でパスを受け守備にも奮闘と大活躍。

岡崎選手も右サイドでハードワークしてパスを受け、再三攻撃の基点となり好アシスト。これでゴールがあればなお良しです。

川島選手は毎度のことながら素晴らしいセーブ連発。この試合で勝ち点3が取れたことに対する功績は大ですね。

長谷部選手は相手のロングボールを丹念にヘッドで跳ね返し、ドリブルする相手は体をしっかり寄せてリスクの少ないサイドへ追い込むなど守備で貢献。 

 逆に遠藤選手ですが前半立ち上がり、相手CKの際にゴール前でマークをずらしてしまいあやうく先制点を奪われるところでした。

長友選手は攻撃面では良かったのですが、こちらも相手CKの際に伊野波選手とマークの確認があいまいになって、あわや失点という大きなミス。W杯予選・本大会では89分間良くてもほんの数秒の集中力の欠如が命取りになります。こういうことを繰り返してはいけません。


        ☆        ☆        ☆

 W杯最終予選、前半最後の試合となったイラク戦。

1-0で勝利という結果は順当なものでしたが、試合内容は低調でした。

「W杯予選は勝つものであって内容ではない」という人もいますが、私はそうは思いません。

クラブと違って代表チームは試合数が絶対的に少なく、予選を戦いながらW杯本大会を勝ち抜いていけるレベルまでチーム力や選手個々の能力を高めるしかありません。

特に日本のような発展途上の国は、決してレベルの高くないアジアで予選突破ギリギリのサッカーをやって、W杯開幕までの半年間で数試合のテストマッチをこなせば、いきなりスペインやイタリア・ドイツと互角に戦えるレベルまでチーム力を高められるということはまずありません。

今回のイラク戦の内容では、本田選手が目標とするW杯優勝は夢のまた夢でしょう。

予選の順位表を見てみると、勝ち点で日本が独走しているように見えますが、ホーム戦を先にたくさんやったからであってまだ油断は禁物です。

予選はホームとアウェーで一試合のようなもので、オマーンともヨルダンともイラクともまだ前半戦が終わったにすぎません。

後半戦は相手に有利なアウェーの戦いであり、長距離移動をした先は慣れない環境の中で不可解なレフェリングなど何が起こるかわかりません。

厳しい環境でも日本が勝ち点を積み重ねられるか、真の実力が試されます。

代表の各選手には高い目標をもって、再び始まるクラブでの戦いに臨み、アウェーのオマーン戦に向けて備えてほしいと思います。

        ☆        ☆        ☆

 最後に、イラク戦では日本の選手のコンディションが悪く、いつにも増して疲労しているように見えましたが、これは予選の会場となる埼玉から遠く離れた新潟でテストマッチをやった影響ではないでしょうか。

8月に札幌で行われたテストマッチのように後にW杯予選が控えていなければ問題はないと思いますが、遠路欧州から帰国した選手が新幹線に乗り換えて新潟に移動して試合をやり、さらに埼玉に戻って予選を戦うのは無駄に疲労してしまいます。

せっかくの日本のホームなのにこれではアドバンテージが生かせません。

予選会場が埼玉なら、直前のテストマッチは横浜とか遠くてもせいぜい鹿島ぐらいじゃないでしょうか。

日本サッカー協会がテストマッチの開催地を決める際は、日本のW杯予選突破に最大限有利になるよう配慮して欲しいです。

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       2012.9.11 埼玉スタジアム2002

        日本  1 - 0  イラク


        前田 '25


      GK 川島       GK N.アルバイラミ

      DF 長友       DF I.ハラフ
         伊野波        ファディル
         吉田          H.アルシュワイリ
         駒野          サリム

      MF 遠藤       MF H.アハメド
         長谷部        ヤシン
         清武        (J.ムハメド 78)
        (細貝 89)       K.ムハメド
         本田          アルマスルーキ
         岡崎
                  FW アルジャナビ
      FW 前田         (M.ハラフ 64)
      (ハーフナー 90+)    ハシェン
                    (アクラム・A 75)




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