■日本代表、チェコの堅守を崩せず

 キリンカップ最終戦となった日本対チェコはまたしても0-0のドロー。

得失点差・総得点でも差がつかず、珍しいことに日本・チェコ・ペルーの3チームが同時優勝となってしまいました。

今回の対戦相手はチェコ。

戦前の評価としては、フルメンバー同士で当たれば日本とほぼ互角の相手と見ていましたが、チェコはバックラインから後ろはほぼレギュラークラスで、アーセナルのロシツキー、ガラタサライのバロシュ、シャフトル・ドネツクのフブシュマンらを欠いていました。

日本のホームで有利な日程、そしてチェコが攻撃面で「飛車・角落ち」であることを考慮すれば、どうしても日本が勝たなければいけない試合でしたが、またしても引き分けという結果は残念でした。

それでは試合の流れを追っていきましょう。

 前半はほぼ互角の展開。やや日本が優勢か。

10分、チェコのFKからライノフがフリーでヘッドするもバーの上。

12分、本田からパスを受けた長谷部がドリブルで持ちこみバイタルエリアで相手選手をかわしてシュート。惜しくもゴール右へ外れます。

14分、チェコのCKからまたしてもフリーでシボクにヘッドされますが、バーの上で助かります。

37分、チェコのゴール前・正面でFKをゲット。遠藤のキックはGKチェフが横っ飛びでファインセーブ。

 後半はかなり日本が押しぎみにゲームを進めます。

6分、CKからつないで本田がクロスを上げ李が中央へ折り返し、最後は吉田がヘッドするがボールはバーの上を大きく越えていきます。

11分、左サイドから中央へ切れこんでの長友のシュートはうまくヒットせずゴールラインを割ります。

32分、日本代表この試合最大のチャンス。本田が左サイドからクロスを上げ、フリーになった岡崎がヘディングシュートを地面に叩き付けます。チェフがなんとかセーブしたボールは前へ転がりそれを李がプッシュしますが、後ろにバランスを崩しながらもチェフが左手一本でボールをかき出し、どうしてもゴールできません。

後半ロスタイム、ゴール右からの本田のFKは落ちきらずゴール上のネットへ。

そのままタイムアップとなりました。

 この試合も日本代表は3-4-3システムで戦いましたが、まず攻撃面から。

攻撃はほとんど機能しなかったペルー戦よりかなり改善されていました。

右ウイングに入った本田選手が中へ絞ったりしてパス回しにからんだため、攻撃の組み立てが良くなりましたね。

ただ、本来の右ウイングのポジションから離れてかなり自由に動いていたので、3-4-3というシステムが機能したのかと言えば微妙なところです。

攻撃がかなり改善されたのにペルー戦と同様無得点に終わったのはフルメンバーを揃えたチェコの守備が固かったせいもあると思います。

組織的なブロックをつくって日本の選手に厳しくプレスをかけてきたので、相当苦しめられました。

特にレギュラーセンターバックのR.フブニクをサイドにもってくるなど右サイドの守備にはかなり神経を使っていたため、スタンドが注目のインテル・長友選手が攻撃にうまく絡めませんでした。(逆にセンターフォワードの李選手は相手にナメられたとも言えそうです)

アジアレベルを超えたチェコの組織的なプレスのせいで使えるスペースが狭くなると、トラップなどの基本技術の差がはっきりと現れます。

前の3人のうち、相手のDFとMFの間のスペースが狭くなってもあまり苦にしない本田選手はさすがでしたが、岡崎選手と李選手はパスを受ける時にトラップが粗く、ボールが強くはねてしまうので相手選手に奪われる場面がありました。

W杯でレベルの高い相手に打ち勝つためには、必ずクリアしておかなければいけない課題です。

 守備面はまずまずでしたが、日本のゴール前でのセットプレーでセンターバック陣が相手選手へのマークをずらし、危険なヘッドを何度か許してしまったのはいただけません。

W杯の予選や本大会ではたった1度のマークのズレが命取りになります。

また、伊野波選手に失点につながりかねない危険なバックパスが2度ほどありました。

新潟でのU-22日本対豪州戦でも相手DFのバックパスが弱く永井選手にかっさらわれて決勝点を食らっていましたが、サッカーという競技は消極的なプレーに「罰」が与えられるものです。

自陣内で無理をしてでもパスをつないでボールを守ろうとするよりは、前線へ大きく蹴った方が良いですし、相手が放りこんできたロングボールもバウンドさせて様子を見るのではなく、バウンドする前にダイレクトで積極的にヘッド等でクリアしておくべきでしょう。

 選手個々では、本田選手の出来が良かったと思います。

ペルー戦と違ってこの試合は判断のスピードや球離れが速く、チェコの厳しいプレスにも適応できていました。

決定機を演出するクロスも2度ありましたね。もっと流れの中からのシュートそしてゴールがあればベストなのですが。

長谷部選手は特別悪いというわけではないのですが、ブンデスリーガのクラブと同等レベルのフィジカルの強い相手に攻守にわたり少し劣勢だったかなという印象。まだボルフスブルグで定位置を獲得するに至っていないわけですが、そのための課題が見えたのではないでしょうか。

岡崎・李両選手はパス・トラップを含む技術やフィジカル能力、オフ・ザ・ボールの動きを含む戦術理解など、世界と戦う上で課題は多いです。

内田選手は体調不良のせいでしょうか、守備がちょっと軽い印象でした。

そして後半からボランチに入った家長選手が注目されましたが、パスを受けてまずボールをキープ、相手にプレスをかけられてクルッと一回転しあまり意味の無い横パスと、依然として次のプレーへの判断が遅いです。

バルセロナのシャビ等のプレーを参考にしてまず現代サッカー戦術への適応をした上で、そこから自分の色を出していった方が良いのではないでしょうか。 

そうでないとリーガエスパニョーラでも厳しくなると思います。

 チェコ戦の結果は残念でしたが、内容は前の試合より改善されていました。

ただ3-4-3システムが上手く機能したかと言えば微妙ですね。

3-4-3が有利になるのは、相手が中盤をフラットにした4-4-2だった場合ではないでしょうか。

ザッケローニ監督が一気に名声を獲得したのはウディネーゼ時代の96/97シーズンに、4バックから3バックに変えて(というか変えざるを得なくなって)ユベントスを破った試合がきっかけでした。

その試合の正確なメンバーはさすがに覚えていませんが、ユベントスのリッピ監督はサッキの影響を受けた4-4-2でプレッシングをかける戦術を取っていたので、たぶんその試合もそうだったのだろうと思います。

一人少ないウディネーゼに0-3と敗れたリッピは衝撃を受け、その後試合中に3バックと4バックを自在に変化させるシステムをユーベに導入した記憶があります。

で、ザッケローニ監督が狙っているように3-4-3のチームのサイドハーフが4-4-2のサイドを突破できれば、相手チームと最終ラインで4対4の形をつくれます。これは3-4-3側にとってかなり有利な展開です。(下図)

有利
(クリックで拡大)

しかし、当時は2トップが「常識」だったのでそれで良かったのですが、以前の記事で取り上げたように3バックはワントップと相性が良くありません。

その後ワントップ系のシステムが増えるにつれ徐々に3バックはすたれていったわけです。

ペルーもチェコも日本の3バックを見てワントップをぶつけてきました。

ある解説者が「だったら3バックのうち誰か1人が上がればいい」と言っていましたが、DFを前へ上げるなら例えば4-2-3-1にして最初から足元が上手い選手を中盤におけば良いのではという疑問が浮上します。

もしくは3人のセンターバックがトップ下並に足元が上手くなるか。

ザッケローニ監督が会見で「11人全員で攻撃も守備もこなすサッカー」とおっしゃっていたように、3-4-3でトータルフットボール的なサッカーを求める彼は後者を望んでいるのかもしれません。

ともかくザッケローニ監督は、キリンカップでまず3-4-3に選手を慣れさせることを最優先にして、相手がこちらに不利なシステムをぶつけてきても、あえて3-4-3をやり通したのだと思います。

ペルー戦の記事で「3-4-3は使えるシチュエーションが限られる」と言ったように、もしそのシステムが効果を発揮するとすれば、4-4-2では良さが出るがワントップにするとチーム力がガクッと落ちるような相手に使う場合ではないでしょうか。

どんなシステムにも長所と短所があるわけですが、これまで述べてきた3-4-3システムの短所をどうカバーしていくか、ザッケローニ監督がどういったソリューションを持っているのか興味あります。

 3-4-3の習熟に時間を大きく割いた今年のキリンカップとなりましたが、日本代表の戦術オプションが広がるきっかけとなれば良いと思います。

ただ戦術の「Aプラン」である4-2-3-1の約束事を忘れてしまわないよう注意が必要です。

アジアカップ優勝で美しく「お化粧」されてしまいましたが、決してあの時は完璧ではなかったので。

 次回は、FCバルセロナの圧勝に終わったチャンピオンズリーグ決勝から感じたことをお話したいと思います。
記事の完成は今度の土日あたりを予定しています。

----------------------------------------
       2011.6.7 日産スタジアム(横浜)


       日本  0  -  0  チェコ


      GK 川島       GK チェフ

      DF 伊野波      DF R.フブニク
        (槙野 64)       シボク
         今野         (セラシエ 46)
         吉田          ライノフ
                      カドレツ
      MF 長友
         遠藤       MF コラージ
        (家長 64)       ペトルジェラ
         長谷部        (ピラジ 83)
         内田          バチェク
                      レゼク
      FW 岡崎         (ヤンダ 90+)
        (関口 89)       フェニン
         李           (ネチド 80)
         本田
                   FW ラファタ
                     (M.フブニク 66)





↑購読料代わりに一日一回ポチッとして頂けるとうれしいです。

  

■コメント

■コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

 



管理人多忙につき、マメにレスを差し上げられません。
ゴメンナサイ。
もちろん、すべてのコメントは拝見させていただきますが、サイトポリシーに違反したものは、予告なく削除します。
悪しからずご諒承ください。

プロフィール

スパルタク

  • Author:スパルタク
  • FC2ブログへようこそ!

月別アーカイブ






   

ブログ内検索