■アジアカップ総括(その1)

 それではお約束通り、アジアカップ2011カタール大会における日本代表の戦いぶりを総括してみたいと思います。

皆さんご存知の通り、日本代表はアジア単独首位となる4度目の優勝をなしとげたわけですが、準々決勝で完全アウェーのなかホスト国のカタールを破り、準決勝では韓国を破り、最後にオーストラリアを破ってのアジア制覇ですから文句無しの優勝ではないでしょうか。

南アフリカW杯においては、韓国・オーストラリアをおさえて日本代表がアジア最高の成績(2勝1敗1PK負け)をあげていますから、今回日本がアジアカップ優勝を果たした事は順当といえば順当と言えるのかもしれませんが、私が今まで4度見てきた日本のアジアカップ優勝のなかでは一番ハードだったように思います。

大会前、ザッケローニ監督は「成長」をテーマに掲げていましたが、若手選手の成長とともに優勝という結果も同時に手に入れることができたことは本当に大きかったです。

これで日本代表はW杯の前年にブラジルで開催されるコンフェデレーションズカップへの出場権を獲得し、ユーロ2012やコパアメリカ優勝国と対戦できる可能性が出てきたわけで、いつも強豪国とのマッチメイクに苦労していることを考えれば日本にとって大きなご褒美となりました。

 ただ、今回のアジアカップにのぞむにあたり日本代表は準備の時間がほとんどとれず、ぶっつけ本番となってしまいました。

日本代表は1試合1試合アジアカップを戦いながら実戦感覚を取り戻し、同時に結果も出していかなければならないという難しい課題をこなさなければなりませんでした。

選手の実戦感覚がにぶると、攻撃ではシュートやパスが適切なタイミングで出せなくなったり、守備ではボールの競り合いに厳しさが欠け、こぼれ球への反応も遅くなりがちです。

そのためグループリーグのヨルダン戦シリア戦は非常に苦しみました。

第3戦のサウジ戦では、本田圭・松井の両選手が負傷欠場し、危機感が走ったことでチームがピリッと引き締まりました。

相手のモチベーションが低かったこともありましたが、この大会はじめて結果も内容も伴った最高のゲームができました。

しかし中東の強豪サウジに5-0と大勝して再びチームにだら~んとした楽勝ムードがただよったのでしょうか、準々決勝のカタール戦はまたしても苦しい試合となりました。

香川選手の大活躍もあって、1人少ない状況から2点奪って大逆転というドラマティックな試合となりましたが、ゲルマン魂ならぬ大和魂というのでしょうか、最後まであきらめずに勝利をつかみとったことは選手を大きく成長させました。

準決勝の相手は韓国でしたが、相手が相手ですからさすがに楽勝ムードは完全に消えていました。

ところがチームが必要以上に引き締まりすぎて、昨年秋にソウルで互角以上の戦いをしたにもかかわらず、日本の各選手は韓国代表をリスペクトしすぎていて硬くなっていたように思います。

そのため全力を出し切れず相手のペースにはまり、自分からゲームを難しくしてしまったように思いますが、「またやられるんじゃないか」という弱気に打ち勝って韓国をPK戦の末に下したことは、選手たちをさらに大きく成長させました。

決勝のオーストラリア戦は、激闘だった準決勝の影響が色濃く、日本の各選手は疲労しきっているのがありありとうかがえました。

「決勝だから大事にいきたい」という気持ちが強すぎてシュートやパス・クロスに思い切りが欠け、なかなか試合を決定づけるゴールがあげられませんでしたが、南アフリカでの経験を生かしてGK川島選手を中心に守備で良く我慢し、最後の最後で李選手の決勝ゴールにつなげることができました。

若い選手が多いチームにはありがちなんでしょうが、今回召集された日本代表はやや精神的に不安定なところがあって、それによって試合の結果や内容が左右される傾向が強かったように思います。

ヨルダン戦後、長谷部キャプテンから若手選手たちに対して「君たちはチームのお客さんではない」とカツが入ったと報じられていましたが、アジアカップで経験を積んだことで「格下」をナメない・「強豪」をリスペクトしすぎない、1試合1試合全力を尽くすことだけを考えるということの重要性を良く学んだでしょうから、来るべきブラジルW杯アジア予選ではもっと安定したゲーム運びと結果が出せるように望みます。

 続いて、大会を通じて日本代表の具体的なプレー内容はどうだったのかを振り返ります。
 
まず攻撃ですが、「アジアのFCバルセロナ」は褒めすぎにしても、ショートパスから相手の中盤を崩す能力やアタッキングサードに入ってからのチャンスメークにおけるアイデアの豊富さは、アジアナンバーワンだったと思います。

このまま継続していってもっと精度を高めていけば、世界と戦う上で日本の強力な武器になるでしょう。


この大会において日本の最大の得点源は、左サイドからダイレクトでクロスがあがり、それをゴール前に走りこんだ選手が決めるという形でした。

サウジ戦での岡崎選手の2点目や前田選手の1点目がそうでしたし、ゴールこそ決まらなかったものの、韓国戦やオーストラリア戦で岡崎選手がこの形からヘディングシュートして決定機をつくっています。

サイドから入ってくるクロスの質も良くなったんですが、南アフリカW杯の時と比べて日本の選手がゴール前で相手のマークを外す動きがかなりレベルアップしたことも見逃せないところです。

前田選手が相手DFを引っ張って岡崎選手が空いたスペースに飛びこんでヘッドするといった、連携プレーもかなり進歩しています。

たぶんザッケローニ監督の指導が良いのでしょう。

決勝戦の李選手のゴールシーンもそうなんですが、長友選手が直前にいたウィルクシャーを抜ききらないうちにダイレクトでクロスをあげ、オーストラリアの選手がゴールラインに向けて走らざるを得ない状況をつくったことで李選手が相手DFのマークを外しやすくなり、あの決勝ゴールへとつながったわけですね。

またバイタルエリアでグラウンダーのパスを受けた香川選手が高速ターンしながら相手の最終ラインを突破、そのままゴールという形も良かったです。

準決勝の途中で負傷退場したのが本当に残念でしたが、カタール戦の同点ゴールは見事でしたし、勝ち越し点も7割がた香川選手のゴールだったかもしれません。

 逆に守備は不安定でした。

若い選手がDFラインに入ったせいか、カタール入りする前にザッケローニ監督が3-4-3の練習をやっていたせいかはわかりませんが、コンパクトな守備ブロックをつくるということをすっかり忘れ、日本の陣形がタテにもヨコにも間延びしていたことが最大の原因だったと思います。

ヨルダン戦・シリア戦とカタール戦がそれに該当しますが、これらのチームは日本より「格下」なので、あえてコンパクトな守備ブロックをつくらなかったという可能性もあります。

しかしこの3試合で日本の守備が不安定だったのは明らかで、失敗の許されないW杯予選では特にそうですが、相手がどこであろうと馬鹿にせずコンパクトな守備ブロックを保ち続け、最終ラインを高めに置くか低くくするかで攻撃的か・守備的かを調節したほうが良いと思います。

逆に準決勝・決勝とコンパクトな陣形が徐々につくれるようになっていって、守備が安定していきました。

他に気になった点は、GKと最終ライン付近にいる味方のフィールドプレーヤーとの連携の悪さですね。

攻撃でパスをつなごうという意識が強いせいか、最終ラインでもリスクの高い細かいパス回しにこだわって、シリア戦の川島選手退場とPKによる失点、カタール戦の吉田選手の退場と続くセットプレーからの失点につながっています。

ピッチのどこでボールを持っているかでどれくらいリスクをかけて良いかは変わってきます。

優先順位
(クリックで拡大)

シリア戦やカタール戦の失敗を教訓に、多くの事を学びとって欲しいと思います。

 まとめますと、攻撃面は南アフリカW杯より良くなったものの、守備面は不安定さが目立ちました。

トータルでは、昨年のアルゼンチンや韓国とのテストマッチのころに比べると、ちょっとレベルダウンしたように感じます。

W杯アジア予選の開始までまだ時間がありますから、その時までには守備からビルドアップしてチームをより安定した状態に持っていって欲しいと希望します。

攻撃面はかなり良くなっていますから、これで守備がガッチリ安定してくれば、日本代表はアジアでは頭一つ抜け出た相当強いチームになるでしょう。

次回へつづきます




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