■日本代表、ピリッと引き締まった好ゲームでトップ通過

 決勝トーナメント進出がかかったサウジアラビアとの第三戦は5-0の大勝という結果となり、日本代表はグループBをトップ通過することができました。

2位通過はヨルダンでしたが、日本が彼らに変な自信をつけさせてしまいましたね。

 さて今回の対戦相手・サウジは、原則として自国のスター選手を海外に出さないという方針をとっているはずで、全員が国内リーグでプレーしています。

ホームでもアウェーでも日本が勝利できるぐらいの戦力差があると考えていましたが、敗退が決まっているサウジのモチベーションの低さを割り引いても、5-0の大勝という結果は大変良かったと思います。

試合内容も前の二試合と比べて、かなり良くなってきましたね。


 いつものように試合経過を追っていきましょう。

両チーム、立ちあがりは互角。

2分、サウジの早いリスタートに日本側の反応が一瞬遅れ、抜け出したアルカハタニがボールを胸で落としてシュートするも、ゴール右へ。

しかしコンパクトな守備ブロックをつくって相手の攻撃をいなし、ワンタッチ・ツータッチでリズム良くボールを回す日本が徐々にペースをつかんでいきます。

8分、フリーでボールを受けた遠藤が高めのサウジDFラインのウラへパス、サウジDFがオフサイドラインをそろえない初歩的なミスを犯すなか、抜け出した岡崎がパスを受けループでGKをかわして早くも先制点ゲット!

13分、左サイドから香川がクロス、サウジDF陣がまったくのボールウオッチャーとなるなか、岡崎がゴール前へ飛びこみヘッドで2点目。

19分、柏木→長友とダイレクトパスがリズム良くつながって、長友のファーストタッチはとても正確なクロス。相手GKの直前で前田が右足アウトサイドを使った技ありシュートで3点目。

25分ぐらいから日本はややペースダウンしサウジに押し込まれますが、コンパクトな守備ブロックをつくって決定的な仕事はやらせません。

35分すぎから日本は試合の流れを取り戻します。

42分、再び小気味良いパスの連続からチャンスをつくり、遠藤から岡崎、前田のスルーをはさんで第三の動きでゴール前中央を突破した香川がパスを受けてGKと1対1となりますが、GKを抜こうとした香川のボールタッチが大きくなりシュートチャンスを逸します。

後半も日本ペース。

6分、岡崎のパスを受けた途中出場の伊野波がダイレクトでこれまた正確なクロス、GK直前に走りこんだ前田がヘッドで確実にミートし4-0。

その後長く見せ場のない状態が続きましたが、35分バイタルエリアでフリーで前を向いた前田がパスし、それを受けた岡崎がためらうことなくゴールへ向かってターンし強烈なシュート!

GKがさわりましたが防ぎきれずボールがサウジゴールへ突き刺さって5-0とダメを押します。これで岡崎選手はハットトリック。

38分、サウジのFKからシャルフーブが意表をついたシュート!クロスにヤマをかけていた感じのGK西川でしたがよく反応してセーブしました。

結局、日本がサウジに5-0と大勝しました。

 それでは試合内容を分析しますが、本田圭選手や松井選手の負傷欠場ということでチーム全体に危機感が走ったせいでしょうか、良い意味で緊張感のあるピリッと引き締まったゲームを、この大会初めて日本代表はやることができました。

ヨルダン戦シリア戦の記事では具体的な戦術上の問題点をいくつか指摘しておきました。

守備では、タテ・ヨコにコンパクトな守備ブロックがつくれていないこと。

攻撃では、この3点を指摘しておきました。

1.持てるからといってボールを持ちすぎず、少ないタッチでどんどんパスを回していくこと。

2.中央突破にこだわりすぎず、もっとサイドからの速いクロスを使うこと。

3.シュートへの意識を高めること。

「サウジ戦ではこうした問題点がかなり修正できた、だから勝てた」という極めて論理的な結果になったと思います。

 まず守備では、この大会で初めて日本代表はコンパクトな守備ブロックをつくって相手の攻撃に対応していました。(ヨルダン戦やシリア戦の録画映像と見比べてください。それがはっきりとわかるはずです)

おかげで90分間を通して、ほとんど決定的なチャンスを相手に与えることはなかったと思います。

これまでの二試合のような守備の不安定さがかなり改善されました。

守備が安定してくると攻撃にも良い影響を与えます。

特に岡崎選手の先制点は日本のコンパクトな陣形が導いたものと言えます。

サウジはベタ引き戦術をとってきませんでしたが、もし日本の陣形が間延びしていて早い段階でFWや2列目が相手陣内深くへ攻めこんでしまうと、ウラを取られたくないサウジDF陣が引いてしまい、ウラのスペースが狭くなってしまいます。

つまりこちらの陣形が間延びすることで、ウラへ走りこむスペースを自分から消してしまうことになるわけです。

しかしこの試合の日本代表はコンパクトな陣形であったために相手のウラに広いスペースが空いていて、遠藤選手の浮き球のパスと岡崎選手のウラへの飛び出しが成功しやすい状況にありました。

ウラへの飛び出しが好きな岡崎選手はこうした法則を良く覚えておきましょう。ブンデスリーガで生き残りたいなら必須の戦術理解です。

 「持てるからといってボールを持ちすぎない」という課題についても格段に良くなっています。

前の試合までは選手一人一人がボールを持ちすぎて、相手が何人もいるところへ単騎ドリブルをつっかけていってはボールを失い、攻撃のリズムが悪くなっていました。

サイドからクロスを入れるときでも、無駄に何度も切り返すので相手の守備陣形が整ってしまうし、ゴール前で合わせる選手もその都度動き直さなければならず、攻撃が「各駅停車」になっていました。

ところがこの試合は柏木選手がトップ下に入ったおかげでしょうか、中盤の組み立てやラストパスにおいて少ないタッチ数でどんどんパスを回して行ったので日本の攻撃リズムがとても良く、周りでパスを受けたりシュートしたりする選手もとても動きやすくなっています。

 「サイドからの速いクロスを使え」という課題についても、実際にクロスから前田選手が2ゴール・岡崎選手1ゴールと破壊力抜群でしたね。

長友・伊野波の両サイドバックが無駄に切り返さず、相手の陣形が整わないうちにダイレクトで正確なクロスをあげたことも勝因でした。

 日本の選手は「シュートへの意識」も高かったと思います。アタッキングサードではプレーの優先順位をまずシュートに置くということができていました。

岡崎選手の3点目はシュートへの意識の高さが良く表れていました。

これまで日本人選手でありがちなのは、あの場面でもシュートではなく「確率の高い選手」を探してまずパスを考えてしまうのですが、岡崎選手は迷わず自分でボールを持って前方へターンしそのままシュートを打っていきました。

シュートはややGK正面でしたが、岡崎選手の積極性と強気な気持ちがボールをゴールへとねじ込みました。

サウジのモチベーションの低さはあったものの、この試合の日本代表は「勝つべくして勝った」といえるでしょう。

 次の試合へ向けての課題があるとすれば、後半の後半、守備ブロックがややばらけてしまったので、90分・120分と攻守にわたってコンパクトな陣形を保てるよう完成度をもっとあげていくということがまず一点。

こぼれ球への反応がまだ遅い場面も見られるので、集中力を高めて球際の競り合いには絶対に勝つということ。

そして一番重要なのが、日本のゴール前で時たま見られるマークの甘さをきっちり修正すること。(特に内田選手)

たとえ日本が圧倒的に攻撃していても、たった一度でも自分のゴール前でボールウオッチャーになったり出足が一歩遅れたことでフリーにしてしまった相手選手のヘディングシュートを食らい、それで勝敗が決まってしまうことがあるのがサッカーという競技の怖さです。

次の試合からはいよいよ決勝トーナメントの一発勝負。

自軍ゴール前では水も漏らさぬ鉄壁マークで、次も完封をめざして欲しいと思います。

一発勝負といえば決勝トーナメントからはPK戦がありえます。

常に90分内での日本代表の勝利を祈っていますが、もしPK戦になるようなことがあった場合、PK戦はなんとか日本が先蹴りを取って相手にプレッシャーをかけたいのと、プレッシャーのかかる1人目・2人目や4人目・5人目には普段あまりシュートしないDFの選手は避けた方が良いというのが個人的な考えです。

まあ知識と経験が豊富なザッケローニ監督のことですからそのへんも手抜かりはないでしょう。

 選手個々では、第一戦から好調を維持している岡崎選手が体を張ったキレのあるプレーでハットトリック。素晴らしいです。

前田選手も過緊張がとれたみたいで、シュートチャンスで冷静さを保ったまま2ゴールは良かったですね。

この試合日本の攻撃が機能したのは、トップ下に抜擢された柏木選手が少ないタッチ数でどんどんパスを回してチーム全体の攻撃リズムを良くしたことが大きかったです。

攻撃の中心選手は自分のゴールやラストパスだけでなく、こういう役割も果たすことがとても大事だと思います。

日本代表にしろCSKAでのゲームにしろ、私が本田圭選手に求めるのはこういうシンプルなプレーですね。それでこそ彼の個性が生きてくるはずです。

W杯前のロシアリーグの試合ではそんなことは無かったのですが、W杯直前の対談企画で「W杯で自分の思い通りにやらなかったので後悔している」という中田英寿氏の発言を聞いてそれが悪い方へ出てしまったのか、本田選手は一度ボールを持ったらなかなか放さない選手になってしまいました。

「自分が攻撃の中心にならなければ」という気持ちはわかるのですが、本田選手がボールを持ちすぎてそのたびに相手にひっかかるので、チーム全体の攻撃リズムやパスの回りまで悪くなってしまいます。

CSKAのスルツキ監督が本田選手をトップ下にしないのは決して意地悪しているからではないと思います。

本田選手もうかうかしていると、代表でもトップ下のポジションを奪われてしまうかもしれません。

 ここまで3試合見ましたが、香川選手も決して状態が悪いわけではないと思います。

前半42分に、遠藤→岡崎とダイレクトパスがつながったところに香川選手が第三の動きで中央突破し、サウジDFを完全に崩したシーンは得点にこそなりませんでしたが、さすがでした。

ただ、ゴールという結果が出ていないことで香川選手はパスを受けた後のことを考えすぎているのか、ボールを受けるときにややプレーが雑になっている気がします。

パスを受けたとき自分の思い通りのところへボールを置けるかどうかでシュート成功率の半分以上が決まってきますので、まずは丁寧なトラップを心がけ、自分の隣のポジションにいる選手がボールを持ったらそちらへ寄って行って、バイタルエリアでボールにからむ回数を増やしていくことでおのずと良い結果が得られるでしょう。

次のゲームでは相手のマークが前田・岡崎両選手に集中することが予想されますし、香川選手にとってはチャンスではないでしょうか。

後半出場の伊野波選手も良かったですね。

内田選手は、ゴール前で相手を一瞬フリーにしたり球際の争いでやや「軽いプレー」が見られますので、やはりうかうかしているとレギュラーポジションが危うくなることでしょう。

競争が激しくなることでチーム全体もレベルアップしていく。
この試合は若い選手をどんどん試し、経験と実績を積ませることができたことも大きな収穫でした。

 最後に余談ですが、この試合を裁いたイルマトフ主審は、手で相手をひっぱったり両手を相手の肩にのせてジャンプするようなプレーを厳しく取る人のようです。

決勝トーナメントで再びイルマトフ主審に当ったら、そうしたレフェリングのクセは頭に入れておいた方が、無駄なFKやPKを与えたりせずに済むことでしょう。 

 この試合、5-0で勝利という結果は大変良かったですし、試合内容もぐっと良くなってきました。

いよいよ次からは、延長・PK戦があり勝負の決着を必ずつける決勝トーナメントに入ります。
たった一つのミスで勝敗が決まってしまうこともある一瞬の気も抜けない戦いが続きます。


対戦相手は地元のカタールで、これが本当のアウェー戦。
地元の大観衆に、審判の判定も影響されかねません。

厳しい戦いが予想されます。

南アフリカでは決勝トーナメント1回戦で日本代表は悔しすぎる思いをしましたから、その思いを次のカタール戦へぶつけて絶対に勝利を勝ち取って欲しいです。


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 2011.1.17 アハメド・ビン・アリスタジアム(アルラヤン)

    サウジアラビア  0  -  5  日本

                     岡崎 8'
                     岡崎 13'
                     前田 19'
                     前田 51'
                     岡崎 80'


    GK W.アリ          GK 西川

    DF シュハイル       DF 内田
      ハウサウィ          (伊野波 46)
      アルハルビ          今野
      カミル             吉田
                      (岩政 63)
    MF アハメド           長友
      アブド
      (アブシャギル28)   MF 長谷部
      (ムタズ 46)         遠藤
      シャルフーブ        (本田拓 87)
      タイシル            岡崎
                       柏木
    FW アルハザジ         香川
      アルカハタニ
                    FW 前田





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