■日本代表、にぶい「戦う意識」

 アジアカップ2011・カタール大会が開幕。

日本の初戦となった対ヨルダン戦は1-1の引き分けに終わりました。

対戦相手のヨルダンは国内リーグでプレーする選手がほとんどで、サウジやキプロスリーグでやっている選手がちらほらという程度。

エジプトの知将・エルゴハリ監督に率いられた2004年のチームはかなり良いサッカーをやっていましたが、近年はパッとした成績を残せていません。

ホームでやってもアウェーでやっても日本が勝利できるぐらい力の差があるというのが当研究所の戦前の評価でした。

それをふまえれば、1-1でドローというのは日本にとって大変残念な結果でした。しかも後半ロスタイムにようやく追いつくという薄氷を踏むような展開。

ただ、ヨルダンがびっくりするような特別な日本対策をやってきたとか、東アジア勢との対戦に特別強いということではないと思います。

むしろこの試合は「日本の自滅」と言って良いでしょう。

試合展開を振りかえります。

 試合は地力に勝る日本が圧倒的にボールを支配し、ヨルダンが引きぎみに守ってプレスをかけてカウンターを狙うというおなじみの展開。

6分、本田のパスを受けた前田がミドルシュートを放つもワクをとらえず。

14分、遠藤のFKは壁にはね返されました。

23分、左サイドを突破した香川がファーサイドへコントロールシュートするもGKがなんとかパンチングで逃れます。

25分、相手クリアを拾った長谷部がミドルシュート、これをGKが前へこぼし吉田が押し込むも残念ながらオフサイド。

40分、ゴール前の細かいつなぎから前田がスルーしたボールを受けた香川がGKと1対1、香川が放ったシュートはGKが防ぎます。

45分、自陣深くで日本の選手同士が衝突、ミスからボールを相手に奪われてしまい、ラストパスを受けたハサンのシュートが吉田の足に当って角度が変わりヨルダンが先制。

後半も同じような展開が続きます。

10分、本田の曲がるFKはGKがセーブ。

16分、ゴール前でパスを受けた香川がドリブル突破し、最後はループシュートするもGKがキャッチ。

18分、後半出場の岡崎が左サイドを突破しセンタリング、これを長谷部がすべりこみながらダイレクトシュートするが惜しくもゴール右へ。

日本は選手を次々に交代させるものの、引いて守るヨルダンをなかなか崩せません。

ロスタイムに入ってようやく選手のお尻と闘争心に火がつき、ショートコーナーから長谷部のクロスを吉田が打点の高いヘッドでゴールにねじ込み、どうにかこうにか同点に。

そして直後にタイムアップ。

最悪の事態は避けられたものの、痛い痛い引き分けとなってしまいました。

 それでは試合内容の分析に入りますが、内容もあまり良くありません。

その原因は、闘争心にあふれ勝利に飢えた「戦士の集団」にチームがまだなっていないこと。

50/50のボールへの日本の選手の反応がにぶく、棒立ちになっているボールウオッチャーが多くてこぼれ球をなかなかマイボールにできませんでした。

相手のボール保持者への体の寄せも足りず、中盤ではフリーでボールを持たれ、ゴール前では危険なヘディングシュートを何度か許してしまいます。

前半に失点しても「相手は格下だから、点はいつでも入るよ」といった感じで、後半ロスタイムに入るまでチームに危機感というものが感じられませんでした。

こういったことはサッカーで勝つ上で、個人技やチーム戦術うんぬん以前の問題です。

攻撃の戦術面でも「相手が格下だから簡単にできるだろう」という意識が強いのか、日本の攻撃の選手はメッシみたいにドリブルで何人も相手を抜くことや、アルゼンチン得意の中央突破みたいにゴール前で細かいパスをつないで相手を完璧に崩すことにこだわりすぎていたと思います。

「シュートは相手を完璧に崩してから」というこだわりから各選手がボールを長く持ちすぎで、シュートへの意識が低かったですね。

日本の選手がバイタルエリアに入ってもプレーの第一選択肢をシュートではなくパスにおいている選手が多く、あの試合にかぎってはシュート17本でも少なかったと思います。

ヨルダンの先制点や、オフサイドになりましたが長谷部選手のミドルシュートをGKがこぼして吉田選手が押し込んだシーンのように、シュートを打たないことには何も始まりません。

「あとからもっと良いチャンスが来るかも」という迷いは捨てて、シュートは打てるときに打つべきです。

日本代表は、欧州クラブ所属という「貴族の称号」でサッカーに勝とうとし、自分の美しい勲章をじゃらじゃら相手に見せびらかしているうちに、決して剣さばきが上手くないヨルダンから死に物狂いの一太刀を浴びて大ケガ、もうすこしで首まで取られるところでした。

典型的な、上位チームが下位チームに「金星献上」をしてしまうパターンだったと思います。

 引いてスペースを無くし守備を固めるチームを崩す定石は、「飛び道具」を使うことです。

持てるからといって決してボールを持ちすぎずワンタッチでどんどんパスをまわして相手が守備態勢を整えないうちにサイドから、できればペナルティエリア角付近から鋭いクロスを入れてゴール前の一瞬できたスペースに飛びこんだ選手がヘッドで決める。

あるいは長谷部選手が再三狙っていたように、相手DFラインの前からミドルシュートを積極的に打っていくべきでした。

 守備戦術で細かい問題点を指摘すれば、ザックジャパンの約束事はコンパクトな守備ブロックをつくって、日本のゴール前中央へのコースを切って相手のボール保持者をサイドへ追い込む、横にコンパクトな4バックが逆サイドを空けても良いのでボールがあるサイドへスライドして守備する、というものだったはずです。

しかしこの試合では、やはり「格下の相手」という意識が強いのか、相手ボールになっても守備への切り換えが遅く、縦にも横にもコンパクトな守備ブロックをつくれませんでした。

攻撃のとき、引いた相手を崩すために日本がピッチをワイドに使ってパスをまわしていましたが、相手ボールになったとき、そのままの陣形で守備へ移行してしまったということです。

これでは例え相手が「格下」でもやられます。

失点シーンでも、自陣深くでミスからボールを失ったのが痛かったですが、4バックが横に間延びしすぎていてスカスカ。こちらのボランチが抜かれたあと誰もカバーがいません。

センターバックの吉田選手が相手に正対できず、遅れぎみに足を出してシュートを防ぎに行ったので、防ぎきれずにボールが日本ゴールに突き刺さってしまいました。

相手がアルゼンチン・韓国だろうがヨルダン・シリアだろうが、ボールを失ったらできるだけ速く切り換えて、コンパクトな守備ブロックをつくらなければなりません。 

攻撃のとき、日本の陣形が縦に間延びしていたことも、コンパクトな守備ブロックをつくりにくくしていました。

一刻も早く、昨年秋のアルゼンチン戦・韓国戦のクオリティーを取り戻さなければ。

 選手個々で目だったところは、交代出場の岡崎選手が入ってからゲームの流れが良くなりました。彼だけが最初からファイティングスピリットを持ってピッチにあがっていました。

同じく交代出場の李選手は、FWなのにシュートを打てるところでもパスばかりで残念。

これは「戦い」なのですから遠慮会釈なく、打てるときはどんどん打っていって欲しいです。

 アジアカップ初戦となったヨルダン戦ですが日本代表は、何年も戦闘に参加していないのにヨーロッパの王様(クラブ)からもらった「貴族の地位」があれば、やる前から「アジアの平民」に対する勝利は約束されているかのように勘違いしたような試合ぶりでした。

「紅白戦と、ユニホームの色が違うチームとの対戦は違う」とは良くいいますが、これもテストマッチを一切やらずにぶっつけ本番でアジアカップに突入してしまったことが響いているのではないでしょうか。

前々回の記事で、「『アジア相手なら7割の力で流しても勝てらあ』みたいに油断さえしなければ、日本は文句なく優勝候補の一角だとは思いますが、テストマッチもせずにぶっつけ本番なのが気になります」と書きましたが、やはりそうした懸念が現実になってしまったようです。

次の相手シリアはヨルダンのお隣さんで両チームの違いがわからない人もいるかと思いますが、タイやシンガポールと引き分けて出てきたヨルダンと比べ、中国を1勝1分で下して予選トップ通過でアジアカップ本大会にやってきたシリアはヨルダンより強い相手です。

日本代表は次の試合までに目の色をかえて戦闘態勢を整え、泥まみれになり死に物狂いで勝ち点3を奪いに行かないと、大変なことになりかねません。


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   2011.1.9 スハイム・ビン・ハマドスタジアム(ドーハ)


      日本  1  -  1  ヨルダン


     吉田 90'+       ハサン 45'



     GK 川島       GK シャフィ

     DF 長友       DF スリマン
       今野         バシャール
       吉田         シャディ
       内田         ハテム
                 (アルドメイリ 80)
     MF 遠藤       
       長谷部      MF バセム
       香川         バハー
       本田         アメル
      (藤本 90+)      ハサン
       松井         ウダイ
      (岡崎 58)     
                FW ディーブ
     FW 前田        (アブデルハリム 72)
      (李 45)






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■コメント

■Re: 日本代表、にぶい「戦う意識」 [coco]

戦う意識を出そうにもコンディション的にきついんじゃないでしょうか?本田、松井初め国内組もシーズンオフに加え多くの選手がこの所まともな休養もとってませんから。

そういう中でも気持ちは大事だと思いますが限界はあるでしょうから今大会はコンディションを考えた選手起用をしないと厳しいかもしれません。その辺の事は本来協会が配慮すべき事かもしれませんが。
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