■日本代表、韓国と惜しい引き分け

 今年はやくも3度目となる日韓戦がソウルで行われ、惜しくも引き分けとなりました。

数年前、バーレーンとの試合が何回も続いた時もそう感じましたが、1年間に同じ国と3度も4度も試合をするのは個人的にはいささか食傷ぎみになります。

さて現時点における日本と韓国の力関係は、南アフリカの中立地で韓国を大差で破ったアルゼンチンに日本がホームで勝ったことを考えれば、日本のホームで日本の勝利、韓国のホームで引き分けぐらいの差だろうと考えていました。

それを踏まえれば0-0で引き分けという今回の結果は順当と言いたいところですが、今年2度も負けている相手ですから何としても勝ちたかったですね。

ただ、ハンドのPKをレフェリーに見逃してもらっての引き分けですから、韓国にとっては負けに等しい試合でした。

結論から先に言ってしまえば、日本の試合内容も悪くはありませんでした。

ハンドの場面も含め、質の高いチャンスをより多く創り出していたのは日本だったと思います。

岡田ジャパン時代の2試合とは比べ物にならないくらい、試合内容が良くなりました。

 ここで試合経過を振り返っておきましょう。

試合立ちあがりはやや韓国が優勢か。

前半12分、日本のゴール前でヘッドでクリアしようとした駒野に韓国の選手が後ろから大変危険なレイトタックルの頭突き。

変な態勢で落下した駒野が腕を骨折して退場。のっけから大変なアクシデントに見まわれます。

しかし、15分ぐらいになると日本が優勢にゲームを進めます。

右サイドからの松井のクロスを韓国のDFが戻りながらクリア、これを拾った香川が胸でワントラップしてシュートを狙いますが、相手DFに防がれます。

もうペナルティエリア内に入っていたのですから、香川は相手のクリアボールをワントラップせずにダイレクトでヘディングシュートすべきだったと思います。

27分、バイタルエリアで前を向いた本田圭が相手DFの前からミドルシュート!GKがセーブしてなんとかCKへと逃れます。

30分あたりから試合の流れは韓国へ傾きます。

38分、日本陣内右サイドから韓国のFK。ゴール前でシン・ヒョンミンがヘディングシュートしますがバーの上。

シン・ヒョンミンと競ったのは内田のように見えましたがマークがズレてしまい、シンにほぼフリーでシュートを許してしまいました。

こういうことは二度とあってはいけません。

 後半も引き続き韓国ペース。

7分、今野がGK西川へバックパスするも弱く、危うくパク・チュヨンにつめられそうになります。

13分、韓国のFKを西川がパンチングで防ぐが、これをパクチュヨンがヘディングシュート。西川がハンブルしてボールが股間を抜けるが、後ろでカバーしていた日本の選手が危うくクリア。

悪いながれを断つべく、27分ザッケローニ監督は細貝を入れて4-2-3-1から4-3-3へシフトチェンジ。

30分あたりから韓国の足が止まりはじめたこともあって、ゲームの流れは再び日本へ。

32分、日本のカウンターから長谷部が相手DFのウラへ抜け出した松井へスルーパス。しかし松井が痛恨のトラップミスでシュートチャンスを逸します。

しかしボールを持ち直した松井がセンタリング、これを韓国の選手がハンドで防ぎますが、レフェリーは流します。

韓国の選手は体のラインから手を離して明らかなハンドでセンタリングを叩き落としましたが、あれがPKにならないところがいわゆる「ホームタウン・デシジョン」でありアウェー戦ということでしょう。

もっとも日本にやってくる外国のレフェリーは、ホームの日本にもアウェーチームにも大変公平な笛を吹いてくれる気がしますが、それはなぜでしょうか(苦笑)

35分、右サイドを突破した本田圭からのパスを長谷部がシュート!これも残念ながらバーの上。

44分、再び日本のカウンター攻撃。今度は本田圭が自分でミドルシュートしますがGKに防がれました。

そしてタイムアップ。試合は0-0のドローで終わりました。

 それでは試合内容を見ていきましょう。まずは守備から。

岡田ジャパン時代はほとんど言及されませんでしたが、ザックジャパンがアルゼンチンに勝ってからテレビが盛んにコンパクトコンパクト言い出しはじめましたね。とても面白い現象だと思います。

アルゼンチン戦では後半20分ぐらいから間延びしはじめてピンチの連続となりましたが、この試合はところどころ間延びした時間帯はありましたが、ほぼ90分間コンパクトな陣形を保つことができていました。

韓国の攻撃をシャットアウトできたのはそのことが大きかったと思いますし、進歩です。

W杯南アフリカ大会決勝のスペイン対オランダでは、身長とフィジカルコンタクトの強さで勝るオランダがボールを持つと、マタイセンとハイティンハの両CBが両サイドいっぱいまで開いてボールを回してピッチを広く使おうとし、それに対するスペインはオランダの陣形に引きずられないように一生懸命コンパクトな陣形を維持しようとしていました。

また卓越した個の能力を持つオランダのウイング・ロッベンに対して、スペインは左サイドバックのカプデビラとボランチのシャビ・アロンソの二人で数的優位をつくって組織で応対していましたが、レベルこそ違うものの、そのことを思い出しながら私はこの試合を見ていました。

アジアで最もフィジカルが強い国の一つである韓国は伝統的にロングボールを多用する「間延びしてもあえてOK」のサッカーをやってきますが、これまで日本が韓国に苦しんだのは日本の選手も監督も相手につられてこちらの陣形が間延びさせられても修正できずに、相手の有利な土俵で試合をさせられてしまったことが一因でした。

この試合でも日本が間延びしそうになるとザッケローニ監督が盛んに「コンパクトにしろ」と指示を送っていましたので、守備の組織戦術に関するかぎり安心して見ていられました。

惜しむらくは日本のアタッカー陣にイニエスタ並の決定力があれば、勝てた試合でした。

 守備の課題としては、日本のゴール前における空中戦で危険なマークのずれが何度かあったことです。

前述した前半38分のシン・ヒョンミンがヘディングシュートした場面。

マークしていたのは内田選手のように見えましたが、しっかりと体を寄せることができませんでした。

後半36分だったでしょうか、パク・チュヨンがヘディングシュートした時もマークしていた栗原選手のジャンプが遅れ、ほぼフリーでシュートを許してしまいました。

たとえ90分間完璧にコンパクトなゾーンディフェンスを維持できても、たった一度でもゴール前でマークがずれてフリーでヘディングシュートを打たれれば、90分間の苦労が水の泡になってしまいかねません。

結果オーライではなくて、こういうことは絶対にあってはいけないことです。

 攻撃面では岡田ジャパン時代よりは良くなりましたが、まだまだ課題は多いです。

日本の一部のサポが「鬼プレス」と呼ぶ、韓国の激しいプレスにうまく対応できませんでした。

日本の選手がパスを受けたらミドルサードでまずボールをキープしようとするので、すぐさま2人・3人と相手選手に囲まれボールをロストする場面が目立ちました。

ボールを持って前を向いたら自分より前にいる味方にシンプルにはたいて目の前の敵選手を抜いてしまえば、得点の可能性がぐーんと広がっていくのに、モタモタとドリブルしているうちに相手がどんどん戻ってしまい、自分からゴールチャンスのドアを閉じてしまいました。

パスをもらったときに選手がまずチャレンジすべきことは、ボールを持って前方へターンする事ですが、韓国代表をリスペクトしすぎているのか、日本の選手はパスをもらうと後ろ向きにトラップして、まずボールを大事にキープしようとする消極的な姿勢も目立ちました。

そのこともうまくパスを回せなかった原因の一つです。

ザッケローニ監督が「自分たちの才能に気付いていない選手、このチームがもっと良くなることを信じていない選手がいる」と試合後コメントしたのは、このことを指しているのではないでしょうか。

それはシュートも同様で、前半20分に後ろからきたパスをゴール前でフリーだった松井選手が受けて、そのまま前方へターンすればGKと1対1のシュートまでもっていけたのに、松井選手が選択したのはアウトサイドの味方へのヒールキックでした。これも消極的です。

こういうことが起こってしまうのは消極性・弱気というメンタルの問題と、前回ちょっと触れたボディシェイプの悪さが関係しています。

相手選手を背中に背負って密着マークされているなら別ですが、フリーな状態であれば半身になって後ろから来たパスを受けることで前方への視界が確保でき、スムーズに前方へターンしてシュートなりパスなり次のプレーにつなげることができます。(下図)


ボディシェイプ
(クリックで拡大)

しかしこの試合では、フリーなのに相手ゴールに背中を向けてパスを受ける選手が多かったために、必然的に無駄なバックパスが多くなって、パスがスムーズに回りませんでした。

ザッケローニ監督は「攻撃時のタテのスピードの必要性」を強調していますが、選手はパスを受けたら前方へターンしてまずシュート、あるいはさらに前方へのパス・ドリブルをすることを考え、それができない時に初めてヨコや後ろへのパスを選択するというプレーの正しい優先順位を体に染み込ませないと、攻撃に「タテのスピード」を乗せることはできません。

細かいことですが、選手一人一人が正しいボディシェイプを保ってボールを受け、正しい優先順位でプレーを選択するという基礎がキチンと出来ているかどうかで、厳しいプレスをかけられてもパスが回せて攻撃で主導権を握れるかどうか結果が大きく違ってきます。

毎度のことですが、韓国の「鬼プレス」も後半25分ぐらいから足が止まるので、そこが相手の息の根を止める勝負どころでしたが、松井選手・長谷部選手・本田選手らが相手を仕留めきれなかったところは残念でした。

シュートにチャレンジし、味方へのパスへ逃げなかったことは大いに賞賛します。

ですが、韓国代表をリスペクトしすぎて過緊張だったのか、シュートやトラップが不正確になったのが彼ららしくありません。

本田選手はアルゼンチン戦よりもシュートを打つタイミングが改善され、調子が回復してきました。

ただレアル・マドリードの10番になるためには、このレベルの相手からはきっちりと1本決めたいところです。

それでも日本代表はチーム全体として、攻守ともに試合内容はまずまず良かったと思います。

あとはU-19代表もそうなんですが、日本サッカー界は総力をあげてフィジカルコンタクトの弱さを根本的に解決しないといけませんね。

 選手個々で気になったところは、GKの西川選手がザックジャパン初登場となりましたが、経験のなさが出てちょっとバタバタしてしまいましたね。気長に経験を積ませる必要があるでしょう。

ワントップの前田選手は相手のスリーバックを相手に苦労していたのはやむを得ないところですが、ポストプレーにかかりっきりでシュートゼロに終わったのは残念。

どうも先発でワントップに入った選手がシュートを打つのに苦労しているみたいですが、どうせシュートが打てないならポストプレー役と割りきって、2列目の香川・本田・松井の各選手にシュートを打たせた方が良いのかもしれません。

韓国のようなフィジカルの強い選手を背負っても当り負けしない人が適任でしょう。

日本のオリバー・ビアホフ、FC東京の平山相太選手はどうか、どなたかザッケローニ監督に聞いてみてください。

 今年3度目の日韓戦、引き分けという結果はちょっと残念でしたが大人のチームになった日本代表は手堅く最低ノルマは達成したというところ。

試合内容も進歩が見られ、まずまず良かったと思います。

これで来年1月のアジアカップが楽しみになりました。4度目の優勝を期待します。

ところで代表引退を表明しているパクチソンの花道を飾るため、大会直前に2週間の合宿を予定するなど韓国はいつになく本気モードのようです。

日本は原技術委員長が欧州組をアジアカップに呼ばない意向を表明し、ザッケローニ監督がエトオみたいなスター選手だってアフリカ選手権に参加しているのにと言ったと報じられましたが、直前合宿も含めて本当に日本サッカー協会はそれで良いのでしょうか。

 最後に、駒野選手が大けがを負いましたし栗原選手も被害にあいましたが、日本の選手がヘディングしようとすると韓国の選手は日本の選手の後頭部や側頭部めがけて意図的に前頭部で頭突きしてきて、ボクシングでいうバッティングの反則のような大変危険な行為を繰り返していました。

ケンカのとき韓国人の必殺技は頭突き(パッチギ)だそうですが、技術の無さを暴力で解決するようなプレーはアンチ・フットボールであり強く反対します。

アルゼンチンのマラドーナ前監督も、韓国戦に出場する自国選手のケガを心配するコメントを出していたと思いますが、韓国代表のああいった行為はサッカーの進歩・発展に兆戦するものですし、誰の利益にもなりません。

FIFAもボールとは関係ない、あからさまに相手のぜい弱な後頭部や側頭部を狙った危険な頭突きは警告・退場の対象とすべきです。


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     2010.10.12 ソウルワールドカップ競技場


      韓国  0  -  0   日本




  GK チョン・ソンリョン    GK 西川

  DF イ・ジョンス       DF 駒野
    チョ・ヨンヒョン      (内田 15)
    ホン・ジョンホ        栗原
                   今野
  MF イ・ヨンピョ         長友
    シン・ヒョンミン
   (キ・ソンヨン 46)    MF 長谷部
    ユン・ビッガラム       遠藤
    チェ・ヒョジン       (中村 85)
   (チャ・ドゥリ 82)      松井
                  (金崎 78)
  FW チェ・ソングク        本田圭
   (ヨム・ギフン 66)      香川
   (ユ・ビョンス 82)     (細貝 72)
    パク・チュヨン
    イ・チョンヨン      FW 前田




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