■日本代表、勝利するも低調な内容

 新生日本代表の2戦目となるグアテマラ戦が行われ、2-1で日本が勝利しました。

今回の対戦相手グアテマラは全員が自国リーグでプレーする選手のはずで、中米でもホンジュラスやコスタリカよりワンランク・ツーランク落ちる戦力。ホームでもアウェーでも日本が問題なく勝てる相手と評価していました。

特にホームであれば大量点差での勝利が求められるレベルの相手でしたが、1点差勝利という結果は不満の残るものです。

結論から先に言えば、内容も非常に低調な試合だったと思います。

 試合経過を見てみましょう。

前半立ちあがりは前の試合からよいリズムが続く日本のペース。

2分、香川の右サイドからのクロスに本田が合わせてヘッドするもシュートはバーの上。

12分、左サイドを突破した長友からセンタリング、これを森本がヘッドでファーサイド側のゴールマウスへ流し込み、早くも日本先制。

失点したグアテマラはすぐさま4-4-2から3-5-2へシステム変更して守備の立て直しを図りますが、おかまいなしに日本が攻めたてます。

20分、本田からのスルーパスに抜け出した香川がGKと1対1。香川のシュートはGKに弾かれますが、こぼれ球を森本が押し込んで2-0。

ところがベテランの凡ミスが日本代表のよい流れを台無しにしてしまいます。

22分、日本陣内深くでボランチの橋本が相手にボールを奪われ、パスを受けたM.ロドリゲスのシュートが決まって1点返されます。

このプレーを境に日本代表から組織プレーと連動性が消え、単発の攻撃ばかりになってしまいます。

さほどレベルの高くないグアテマラにおつき合いするように日本も凡プレーの連続。

 後半、両チームとも選手を大量に入れ替えますが低調な内容はかわらず。

日本代表は、遠目からの強引すぎるロングシュートが目立ちます。

そうこうしているうちに34分、自陣深くでモタモタとボールキープしていた橋本がまたしてもボールを奪われ大ピンチ。

M.ロドリゲスのシュートを楢崎が何とかセーブしてCKへと逃れました。続くCKもしのいで嫌な汗をかかされます。

その後、中村選手が交代出場してから流れが少しよくなり、何度かチャンスもつくりましたがそのままタイムアップ。

グアテマラに最少得点差の勝利という不満の残る結果となりました。

 それでは試合内容を分析します。まずは守備から。

まず失点シーンですが、本田選手からのパスもあまりよくなかったのですが、それにしてもこの試合ボランチに入っていた橋本選手のあまりにも軽率なミス。

自陣深くでボランチがボールを奪われれば後ろにはもうセンターバックしか残っていないわけで、たった一つのミスが即失点につながります。

よって慎重の上にも慎重な安全第一のプレーが求められますが、経験のないまるで16歳17歳の選手がやるようなミスでした。

このたった一つのミスでそれまでのよい流れが台無しになり、攻守ともに日本のプレーが低調になってしまいました。

後ろに控えていた岩政選手も、自分がマークすべき相手FWをフリーにしていて、いつ前にいる味方がボールを奪われても対応できるような準備を怠っていました。

さらに「相手FWは自分を抜かないかぎりシュートを打ってこない」と決めつけていたのか、パスを受けたM.ロドリゲスへの間合いをつめてシュートコースを消しに行くのが遅れ、M.ロドリゲスが岩政選手を抜ききる前からミドルシュートを打ってきたたために、あっけなくやられてしまいました。

確かにJリーグですと、センターバックを抜ききらない段階では日本人選手はなかなかシュートを打とうとはしないのですが、その感覚でインターナショナルマッチに臨んでしまうと、こういうことになってしまいます。

W杯壮行試合の韓国戦でパクチソンにミドルシュートを決められたのと同じやられ方です。

これもベテラン選手らしからぬ経験のなさがうかがえるプレーです。

橋本選手は後半34分にも自陣深くでボールを奪われ、あわや同点かというおんなじようなミスを繰り返しています。

セリエAのクラブなら、次の日から自分のポジションが無くなっているような致命的ミスだと思います。

リスクをどれくらいかけてもよいかは自分がボールを持っているゾーンで違ってくるというのは、ユース年代までに身につけて置くべき戦術上の常識でしょう。


優先順位
(クリックで拡大)


岡田ジャパン時代もそうだったのですが、橋本選手は「チーム陣形をコンパクトにすること」の重要性、特にボランチはセンターバックの前のバイタルエリアを広く空けてはいけないということもまったく理解できていません。

そのためにパラグアイ戦よりも日本代表が間延びしていて、守備はもちろん攻撃面でも組織が機能しませんでした。

その点、パラグアイ戦でボランチに入った中村選手はバイタルエリアを広く空けないように注意していたようで、細貝選手も中村選手にリードされてバックラインとの適切な距離が保てていました。

ところが橋本選手とボランチを組んだこの試合は細貝選手もバイタルエリアを広く空けてしまって、チームの間延びに「貢献」してしまいました。

細貝選手は自分自身の判断でボランチとバックラインとの適切な距離をキープするということを体に覚えさせておかなければなりません。

橋本選手には厳しいことを言いましたが、現代サッカーではボランチの役割が非常に重要になってきていて、チームを生かすも殺すもボランチの出来・不出来にかかってくるようになってきています。

橋本・岩政両ベテラン選手の、サポーターの期待を裏切るプレーでした。

嫌な形から1点返されたあと、意気消沈したチームを鼓舞するリーダーがいなかったのも残念でした。

 攻撃面では、森本選手の2ゴールがよかったですね。

ファーに流し込んだ1点目の正確なヘッドもよかったですし、2点目も香川選手のシュートのこぼれ球に備えて、いいポジショニングが取れていました。

試合前に大きな期待を集めた乾選手ですが、個人的には失望させられるプレーぶりでした。

ミスが多いのはともかくとしても、メンタル面でのひ弱さを感じます。

例えば、キックオフ直後に右サイドを駆け上がった時、FKをもらうために相手の足がひっかかっていないのにシミュレーションのダイビングをしていましたが、そのまま倒れずにドリブルしてペナルティエリアに侵入していれば、もっと大きなチャンスになったはずです。

あるいは、自分からプレーをやめてレフェリーにファールを取ってくれとクレームをつけたり、自分で勝手にオフサイドと判断して味方からのパスを追いかけるのをやめてしまったりと、プレーに精神的な不安定さがダイレクトに現れていました。

神戸の大久保選手と似たような感じを受けるのですが、こういうメンタル面でのひ弱さを克服しないとフットボーラーとしての人生を棒に振ることになってしまいかねません。

クラブなり代表なりのコーチがよい方向へ導いてあげる必要があります。

本田選手も相変わらずよくありません。

彼は「自分がチームの攻撃の中心にならなければ」という思いが強すぎるのだと思いますが、攻撃になったとき自分一人で何でもやろうとしすぎています。

トップ下なのにボランチやサイドハーフの担当エリアまで行ってしまうなど「動きすぎ」で、肝心のシュートやラストパスを出すときには消耗しきっています。

ポジションチェンジは必要最小限にして、周囲の味方を使ってシンプルにパスをはたいたら、ラストパスやシュートが狙える次のスペースへ動いて、「おいしいところ」でパスを受ける準備をすべきでしょう。

 先ほど言いましたが、パラグアイ戦と違ってチーム陣形が間延びしたことは攻撃面でも悪影響が出ていました。

選手一人一人の距離が遠くなりお互いサポートしづらいこともあって、各選手が一発のパスで相手を崩そうとしたり、強引な個人プレーでゴールを狙おうとばかりしていました。

日本代表にとって、攻撃でも守備でもコンパクトな陣形を保つということが死活的重要だということは、W杯前のテストマッチで見た地獄と南アフリカで見た天国で、嫌というほど思い知らされたはずなのですが。

後半38分に中村選手がボランチに入ってバイタルエリアを狭め、チーム陣形がコンパクトになってから日本の攻撃が機能しはじめたのが印象的でした。

 グアテマラ戦は1点差での勝利という結果も不満ですし、試合内容もよくありませんでした。

1ヶ月後アルゼンチン戦があるようですが、このままですとホームで0-3の大敗なんてことになりかねません。

選手個々の評価も厳しいものとなりました。

日本サッカー界の一部には「自分がされると腹がたつから、選手個々の評価をしない」という風潮もあるのですが、それはちょっと違うのではないかと思います。

もちろん言い方には注意が必要ですが、むしろ「戦術理解が足りない」とか「プレーの優先順位が間違っている」と率直に本人に伝えた方がよほど親切なのではないでしょうか。

各選手も素直に経験不足を認め、若いうちから一つ一つミスをつぶしていく経験を積んでいけば、橋本選手や岩政選手も今ごろプレミアリーグでバリバリのレギュラーをはっていたかもしれません。

試合後、ザッケローニ監督が「私は甘やかされているのかもしれない」とコメントしていたのが興味深かったですね。

試合内容が低調でも勝てばお客さんに拍手してもらえるのを見た彼が発した、イタリア流の皮肉なのかもしれません。

だとすれば、次の試合からは新監督が日本代表のゆるんだ手綱を引き締めてくれそうです。

 最後に、この試合をもってGKの楢崎選手が代表を引退する意向を表明しました。

GKは体の手入れを怠らなければ40歳まではやれるポジションですし、楢崎選手はまだまだいけると思っていたのでとても残念です。

楢崎選手には何度も日本代表のピンチを救ってもらいましたし、偉大な功労者の一人と言えます。

「お疲れさま」と同時に「長い間よいプレーを見せてくれてありがとうございました」と言いたいです。



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       2010.9.7 大阪市長居陸上競技場

      日本  2  -  1  グアテマラ


      森本 '12      M.ロドリゲス '22
      森本 '20


   
     GK 楢崎       GK トリゲーニョ
                 (モリーナ 46)
     DF 長友      
      (永田 46)    DF カブレラ
       槙野         R.ロドリゲス 
       岩政         ガジャルド
       駒野         J.ロペス

     MF 橋本       MF カスティージョ
       細貝         ラミレス
       乾         (M.ロペス 61)
      (藤本 46)      コット
       本田        (カストリージョ 46)
       香川         アギラル
      (岡崎 65)     (エスタクイ 67)

     FW 森本       FW M.ロドリゲス
      (中村 83)     (ぺッサロッシ 78)
                  ヒロン
                 (チンチージャ 46)





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