■パスの種類とその長所・短所

 今回は図をたくさんつくったので記事を作成するのに長い時間がかかってしまいました。

さて、今日はパスについてクローズアップしてみます。

パスの種類はたくさんありますし、いろんな分類のしかたがあると思います。

足のインサイドやアウトサイドを使ったパス、あるいはヒールを使ったパス。

まっすぐ進むパスやボールが左右に曲がるパス。

私が一番重視するのはグラウンダーのパスか、浮き球のパスかの違いです。

日本のサッカー界ではこうした区別はあまり意識されていないような気がします。

もし意識されていたとしても「グラウンダーだろうと浮き球だろうと、パスが通ってしまえば一緒でしょ?」

こういうふうに考える人が多いのではないでしょうか。

グラウンダーのパスと浮き球のパスはそれぞれ違った特徴を持ち長所・短所も違いますが、実際のプレーを見る限り日本サッカー界ではそれらをよく理解した上で使い分けているようには見えません。

 それではグラウンダーのパスと浮き球のパス、それぞれにどんな特徴があるのでしょうか。

両者の重要な違いは、グラウンダーのパスはボールが地面を転がることでパスの出し手と受け手の2点間を最短距離で移動しますが、浮き球のパスはボールが空中を遠回りして移動するということです。(下図)


パスの質
(クリックで拡大 以下同じ)


浮き球のパスは、芝との摩擦で勢いが弱まることがないのでロングパスに向いていますし、敵選手の頭上をボールが通過するのでその死角にいる味方にもパスを出すことができます。

しかし必ず地球の引力に引かれてピッチ上のある1点にボールが落ちてくるので、守備側にパスの最終目的地(落下地点)が読まれやすく、遠回りする分だけボールの移動時間も長くなるので守備側にポジショニングを修正する時間を与えやすいと言えます。

よって、浮き球のパスを確実にマイボールにしたいならば受け手に広いスペースが要求されます。

じゅうぶんに広いスペースでパスを受けられれば、ワントラップして確実にボールを自分のコントロール下においても、守備側がポジショニング修正して体を寄せるのが間に合いません。

広いスペースがフリーでパスを受けることを許してくれます。


浮き球1


ところが、浮き球のパスを受けるのにじゅうぶんなスペースが取れなかった場合、ボールが空中を移動している間に守備側がポジショニングを修正して体を寄せる時間を与えてしまいます。

そうなると必然的に攻撃側と守備側とで1対1の競り合いになり、マイボールにできる確率はぐっと下がります。

特に攻撃側が当りの強さやジャンプ力・身長などフィジカル能力で劣っている場合ボールを失う確率が高く、浮き球のパスを使うメリットがありません。


浮き球2


よって浮き球のパスは、広いスペースにいる味方に出すのに適していると言えます。(それ以外絶対に使うなと言っているわけではありません)

例えば、相手DF陣がオフサイドラインを高く上げていてそのウラに空いた広大なスペースに味方が走りこむのに合わせてパスを出すといった場合で、実際には相手も警戒しているので簡単には通させてくれませんが、成功すれば直接ゴールに結びつきます。

もしパスが通らなくてもウラを取られたくない相手のDF陣がズルズルと下がれば、相手のコンパクトな陣形を間延びさせ、味方のために敵のバイタルエリアにスペースをつくり出すという効果もあります。

相手チームがボールがあるサイドに寄っていて、逆サイドの広く空いたスペースにいる味方にサイドチェンジする時などにも浮き球のパスは向いています。

相手よりフィジカル能力で勝てるという自信があれば、バイタルエリアにいる味方の頭にロングパスを合わせてもよいでしょう。

先ほども述べましたが浮き球のパスを使う場合、特に注意しなければならないのが受け手のフィジカル能力です。

受け手のフィジカル能力が弱ければ浮き球のパスをマイボールにできる確率はぐっと低くなってしまいます。

フリーでパスを受けられればフィジカルが弱くてもマイボールにできますが、相手陣内、とくにゴール前へ近づけば近づくほどスペースは狭くなりフリーになりにくくなっていくのが通常です。

その点に注意する必要があります。

例外は、センターフォワード(CF)が両サイドのスペースに流れてロングパスを受けるプレーです。


CFの墓場


Jリーグではゴールの次に大歓声があがる場面ですが、これは思ったほど得点につながりません。

CFがボールを受けた地点を「センターフォワードの墓場」と呼ぶ人もいるようですが、この位置でロングフィードを受けて前を向けてもゴールまでは距離が遠く角度も悪いのでシュートという選択肢は取りづらいところです。

数的不利な状況がほとんどですから単独でのドリブル突破も難しく、たいていはボールをキープしてタメをつくり味方が押し上げる時間を稼ぐことになりますが、味方が押し上げる時間をつくるということは守備側の選手が自陣へ戻る時間を与えるということです。

よって絵的にはカウンターの大チャンスに見えても思ったほど得点にはつながらないということになります。

浮き球のロングパス主体の攻撃はどうしても陣形の間延びを招き、陣形が間延びするとたとえトップにボールがうまく収まっても、どうしても味方のフォローが遅れるために直接ゴールには結びつきにくいです。

「地のサッカー」の記事で書いたとおり、日本では浮き球のロングフィードが好んで使われる傾向にありますが、残念ながら日本のサッカー界ではロングパスが持つ短所についてあまり考えていないように思えます。

特に世界と比べてフィジカル能力で劣勢な日本人選手は、浮き球のパスの使い方に特に注意しないと、簡単にボールを失ってしまうことになります。


 これに対してグラウンダーのパスは、ボールが地面を転がると芝との摩擦でだんだん勢いが弱まるのでロングパスには向かず、また敵選手の死角にいる味方にはパスを出すことができませんが、それをおぎなって余りあるメリットがあります。

まず出し手に難しい技術があまり必要とされずパスミスが起こりにくい。(特にショートパスの場合)

パスを受けるのが容易でトラップミスが起こりにくく、パスが来たらそのままワンタッチ目でシュート・ドリブル・パスとダイレクトに次のプレーにつなげやすい。

ダイレクトプレーがやりやすいので敵選手に体を寄せられるより先に仕事を終えられる、つまり狭いスペースでもフリーでパスが受けやすい。

といったことがあげられます。

 グラウンダーのパスはロングパスに向かない以外は、非常に使い道が広いと言えます。

中盤の組み立てからラストパスに至るまで、さらにワンツーやオーバーラップの一部分を形成するなど汎用性が高いです。

グラウンダーのパスが浮き球のパスに比べて優れる部分は、受け手がフィジカル能力や身長で劣っていてもパスを確実に受けやすいという点です。

常に地上を転がってくるボールを受けますから身長の高低は関係ありませんし、パスを受けたワンタッチ目でシュートなりパスなり次のプレーにダイレクトにつなげることができますから、フィジカル能力が弱くても相手にボディコンタクトされてバランスを崩すまえに仕事を終えてしまうことができます。

さらに浮き球と違って相手にポジション修正の時間を与えにくいので、より狭いスペースでもパスを受けることができます。

センターバックの前のスペース(バイタルエリア)のような危険なスペースほど相手は警戒して狭くしているものですが、相手にとって一番危険なスペースにいる味方にパスを出したりそこからゴールに直結するラストパスを出すのに、グラウンダーのパスは向いていると言えるでしょう。

2010年W杯優勝国で、いま最もモダンな戦術をとっていると言われるスペイン代表ですが、攻撃の中核を担うイニエスタやシャビは身長170cm代前半と日本人選手とあまり体格は変わりません。

そのスペイン代表がグラウンダーのショートパスを中心に攻撃を組み立てているのは、とても理にかなっています。

自分たちの長所・短所とパスの種類ごとの長所・短所をよく理解して、スペイン人の長所とグラウンダーのパスの長所を組み合わせた攻撃戦術を取っていると言えます。

ただ、前述のようにグラウンダーのパスは敵選手の死角にいる味方には出せないという弱点があります。

ですからグラウンダーのショートパスを中心に攻撃を組み立てるには、常に敵選手の死角から出るようにして周囲がボールを持つ味方をサポートして複数のパスコースを用意してやらなければなりません。


グラウンダー


敵が味方のボール保持者にプレスをかけるために動けば当然死角の位置も移動しますから、それに応じて攻撃側の選手も移動して、複数のパスコースを維持し続けることが欠かせません。

これこそ連動性であり組織力ですが、スペインの選手が世界一優れているのはこの高い組織力を支えるポジショニング能力です。

ほとんどの試合でスペインのボールポゼッション率が対戦相手より上回り、パス成功率も80%とW杯出場国平均より10%は上回ることができるのも、グラウンダーのパスを正確に出す技術力とこのポジショニング能力のおかげです。

対照的に、受け手が死角にいても出すことができる浮き球のパスをこれまで多用してきたせいでしょうか、日本のサッカー選手はボールを持っている味方から見て死角にいることをあまり気にしない傾向にあります。

それでは当然パスは回らないわけで、日本代表の攻撃面での組織力が低く、パス成功率が60%と32ヶ国中最下位だったのもうなづけます。

新しい日本代表監督にはそうした面での指導を期待したいです。


 それではグラウンダーのパスと浮き球のパス、それぞれの長所・短所をおさらいします。

まず浮き球のパスの長所ですが、強風の向かい風なら話は別としても芝との摩擦で勢いが弱まることがないのでロングパスに向いている。

敵選手の頭上をボールが通過するので、その死角にいる味方にもパスを出すことができる。

浮き球のパスの短所は、必ず地球の引力に引かれてピッチ上のある1点にボールが落ちてくるので、守備側にパスの最終目的地を読まれやすい。

ボールが空中を移動する間に落下地点を読んだ敵選手がポジショニングを修正することができる。よって味方がパスを受けて確実にマイボールにするためにはより広いスペースを必要とする。

パスの受け手がワンタッチ目をそのままシュート・ドリブル・パスとダイレクトかつ正確に次のプレーに移行するには高い技術力が要求される。よってミスプレーが起こりやすい。

距離が長くなればなるほど、正確なパスを出すためには出し手に高い技術力が求められ難易度が高い。

 グラウンダーのパスの長所ですが、出し手に難しい技術があまり必要とされずパスミスが起こりにくい。(特にショートパスの場合)

パスを受けるのが容易でトラップミスが起こりにくく、パスが来たらそのままワンタッチ目でシュート・ドリブル・パスとダイレクトに次のプレーにつなげやすい。

ダイレクトプレーがやりやすいので敵選手に体を寄せられるより先に仕事を終えられる。つまり狭いスペースでもフリーでパスが受けやすく、身長が低くボディコンタクトを苦手としていても確実にマイボールにしやすい。

といったことがあげられます。

次に短所ですが、芝との摩擦でボールの勢いが弱まるのであまりロングパスに向いていない。

敵選手の死角にいる味方にはパスを出すことができない。無理に出そうとすると敵選手にボールをぶつけて渡してしまうことになる。

よって味方がパスを受けられるスペースが限定されます。

 グラウンダーのパスと浮き球のパス、それぞれの特徴と長所・短所はこんなところでしょうか。

実戦でパスを使う時は、グラウンダーのパスと浮き球のパスそれぞれの長所・短所をよく頭に入れて、場面に応じて適切なパスを選択する必要があります。




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