■岡田ジャパン総括(2)

 今回は、岡田ジャパンがなぜW杯で成功できたのか、戦術面からその要因をさぐっていきたいと思います。

結論から言えば、パラグアイ戦の前日の記者会見で岡田監督が「わたしも好きなサッカー、理想のサッカーというのはあります。しかしわたしは今、日本代表監督として、勝つことを常に考えています」とコメントしていたように、大会直前に「現実主義への転換」を決断したことが最大の要因でした。

これまでの岡田ジャパンは、どんな相手であっても前からどんどんプレスをかけて真っ向勝負を挑むというスタイルでやってきました。

アジア相手ではそれでも良かったのですが、今年になってW杯常連国とのテストマッチで大敗を続けたことで、現実主義への転換を決断せざるをえなくなりました。

W杯壮行試合の韓国戦に敗れた後、日本代表はグラーツでのイングランド戦でフォーメーションを4-1-4-1にして、自陣に引いてカウンターを狙う堅守速攻型へと変貌をとげました。

しかし、いかんせん練習時間と経験が足りなすぎました。

イングランド戦でも次のコートジボアール戦でもコンパクトなブロックをつくって我慢していられたのは試合開始から20分間ぐらいで、それをすぎると再びフィールドプレーヤー10人が好き勝手に動いてしまい、そのために陣形が間延びして1人1人の担当スペースが広くなると、個の能力で劣勢というマイナス面がもろに出て結果が出せませんでした。

守備が機能していないのを見た私は、コートジボアール戦後の記事(自分から手放してしまった希望 6/5アップ)で、「オーソドックスなゾーンディフェンスに戻すべきではないでしょうか」と提案しました。

すると、まるで岡田監督が当ブログをご覧になっていたかのように、6/6日にキャンプ地ジョージに入ってから「日本代表はゾーンディフェンスを徹底する戦術練習を行っている」と報じられました。

(6/10 読売新聞) 

今だから打ち明けますがこの記事を読んでとても驚いたのが、長谷部選手の「初めてのやり方だけど、僕はこの方が守りやすい」というコメントでした。

ゾーンディフェンスが初めてのやり方ということは、岡田ジャパンではこれまでどういう守備戦術を採用していたのだろうか?完全マンツーマンだったのだろうか?と、驚くとともに強い興味を持ちました。

私自身これまで「セオリーをまだ十分理解していない人がやっている未完成のゾーンディフェンス」だとばかり思っていたので。

それよりも「カメルーン戦まであと3~4日しかないのに大丈夫か、どうにか間に合ってくれ」と正直かなり焦ったのを覚えています。

 そしてカメルーン戦当日を迎えましたが、結果は日本の勝利でした。

欧州の一部マスコミは「大会4日間で最も低調な試合」と書き、一部の日本人が憤慨していましたが、まあプロのコーチやジャーナリストなど見る人が見ればわかってしまうので、残念ながら私には返す言葉がありませんでした。

4-1-4-1というか4-3-3というか、ともかくコンパクトなブロックをつくって相手の攻撃をしのぐゾーンディフェンスが前半45分間は機能していました。

ところが後半になると、4バックがズルズルと下がってペナルティエリアの中まで最終ラインを下げてしまい、3人のMFも最終ラインに吸収されて、DF-MF-FWのスリーラインを維持できませんでした。

これでは世界から「日本代表はアマチュアか?」と思われても仕方ありません。

その結果バイタルエリアがぽっかりと空いて、そこからフリーになったムビアにミドルシュートを食らってポストを直撃、あわや同点の危険なシーンも有りましたが、経験のなさが招いた戦術上のミスを選手の意地とプライドと気合でカバーして無失点に抑えきったのでした。

日本代表、泥にまみれてつかんだ勝利

とにもかくにも初戦に勝てたことは、とてつもなく大きかったです。

 続くオランダ戦ですが、日本代表のゾーンディフェンスは目覚しい進歩を遂げていて、後半25分ぐらいまでコンパクトな陣形とスリーラインが保てるようになっていました。

強力な攻撃を誇るオランダを1点に抑えた守備力というのは十分評価できます。

W杯2試合目にして、どうにかこうにか日本代表の守備組織構築が間に合いました。

正しい戦術さえ示してやれば、日本のサッカー選手の理解力・吸収力というのは、世界的に見てもすごいものがあるというか、トップレベルだと思います。

ただ、問題点も露呈しました。 

デンマークがオランダに2点差で敗れていることを考えると、日本が決勝トーナメントへ行くためには最低でも1点差負けに踏みとどまっておくべきではないかとゲーム前に私は考えていました。

日本がオランダに負け、デンマークがカメルーンに勝って最終戦を前にして勝ち点3で並んでも、得失点差で日本が上回る可能性が出てくるからです。

そこは「オランダ戦迫る!」のエントリーでも、「1点差であればこれまで通り点を許さないような守備をしつつ、あまり人数をかけないで同点を狙っていくというやり方もあると思います」と書いた通りです。

オランダ戦の後半立ちあがりにスナイデルのゴールを許したのですが、後半25分すぎから日本は明らかに同点を狙いに前掛かりになって攻め込んでいきました。

これは「日本代表、オランダに惜敗」の記事で指摘したとおり、戦略上の大きな判断ミスだったと思います。

その結果オランダのカウンター攻撃を浴びて、大きく空いたDFラインのウラをアフェライに突かれて、GK川島選手と1対1の場面を何度もつくられてしまいました。

たった一度でもアフェライのシュートが決まっていたら、日本の決勝トーナメント進出は消し飛んでいたかもしれません。

日本対オランダ戦の後で行われたカメルーン対デンマーク戦はデンマークの1点差勝利に終わり、最終戦を前にして日本とデンマークは勝ち点で並び得失点差で日本が上回って、デンマーク戦は引き分けでも日本の決勝T行きが決まるという大変有利な状況になりました。

日本対オランダ戦が1点差負けで終わったことがいかに大きかったことか。

オランダ戦で同点を狙いに行ったのが誰の判断だったかはわかりませんが、例え選手がそれを望んだのだとしても監督が制止すべきでした。

アフェライの決定的なシュートを2本防いだ川島選手に、岡田さんは足を向けて寝られません。

オランダ戦を中継した民放の解説者も元サッカー選手のゲストも「日本はもっと攻めろ!攻めろ!」だったので、
オランダ戦の記事をアップした後「誰かまともなことを言っている人はいないのか?」と思ってネットを探したら、私の知る限りオシム氏だけがこのことを指摘していました。

「川島が素晴らしいセーブで2点を阻止した。もし失点していたら、ただ単に負けること以上の計り知れないダメージを負ってしまうことになっていた」

「リスクを冒すのもほどほどにしろという場面があることも付け加えておきたいと思う」

日本が常時決勝Tに進出できるような強豪国となるためには、こういう失敗の経験を国民全体で共有していかなくてはいけません。

 そして決勝T行きをかけたデンマーク戦ですが、自陣に引いてブロックをつくる日本のゾーンディフェンスは、ほぼ完成の域に達していました。

得失点差で下回り、勝たなければ決勝T行きの道が断たれるデンマークが積極的に前へ出てきたので堅守速攻型の日本代表にとって試合を有利に進めやすい、おあつらえ向きの展開となりました。

セットプレーから2点、カウンターから1点と、堅守速攻型のチームとしては理想的な点の取り方でした。

これがもし得失点差や総得点で日本を上回ったデンマークが引き分けでも決勝Tへ行けるという逆の状況だったら、デンマーク戦はパラグアイ戦のように0-0で終わっていたかもしれません。

そうなれば日本の決勝T進出は幻となっていました。

アフェライのシュートがたった1本でも決まっていたら単なる1失点にとどまらず、まさに計り知れないダメージとなっていたことでしょう。

ただこの試合も戦術の選択に問題があって、立ち上がりの10分間ほど4-2-3-1で前からどんどんプレスをかけていく戦術を取ったわけですが、やっぱりデンマークとの個の能力差がもろに出て、日本陣内に広く空いたスペースにどんどんパスを回されて危険なシーンを何度かつくられました。

前半10分ぐらいでいつものゾーンディフェンスに戻して事無きを得ましたが、ここまでで失点しなかったのはとてもラッキーでした。
(日本代表、決勝トーナメント進出!!) 

 日本にとって未知の領域となるベスト8行きをかけたパラグアイ戦でしたが、残念ながらPK戦での敗退でベスト16どまりとなりました。

パラグアイもどちらかと言えば堅守速攻型のチームで、パラグアイがやや優勢にゲームを進めましたが、試合は膠着状態になって120分間戦って0-0でした。

PK戦はもちろんそれまでの120分間も、プレーするパラグアイの選手からは時々笑みがこぼれていましたが、日本代表はずっと必死の形相で、ハイレベルの試合の経験や精神的な余裕といった面でやはりパラグアイの選手の方が一枚上手だったと思います。

(プレトリアの死闘)

 ワールドカップの組み合わせが決まった時、オランダ・デンマークと欧州予選トップ通過国が二つも同じ組に入り正直「これはきつい」と思いました。

グループE組を2位通過し、決勝T1回戦で南米3位の強豪パラグアイと実質引き分けという岡田ジャパンの出した結果は、日本代表の現有戦力を考えて見ても上出来だったと言えます。

埼玉での韓国戦に大敗して岡田監督が進退伺いを出した時、あれがジョークか否かにかかわらず選手に大きな動揺が走ったでしょうし、あの時点で指導者として正常な判断が下せない状況にまで追い込まれていたと思います。

あのどん底からチームを短期間で立て直してW杯ベスト16に進出させた岡田監督は素直にすごいと思います。

まず崩壊していた守備を安定させたことが日本のここまでの成功につながったと思いますし、大会直前に現実主義にもとづく堅守速攻型への転換をよくぞ決断したと思います。

コートジボアール戦後にゾーンディフェンスに転換したわけですが、あれがW杯に間に合うギリギリのタイミングでした。

イタリアのリッピ監督が日本を評価していましたが、本大会まで時間がぜんぜん足りなかったですから、日本人とイタリア人ぐらいしか楽しめないような、スペクタクルに欠け守備的な堅守速攻型サッカーへの転換もやむを得ませんでした。

W杯にのぞむ23人の代表メンバーを決定した後に堅守速攻型へ戦術をチェンジしたため、召集したのに戦術にあわなくてほとんど使われない選手が何人もいたことも問題点としてあげられます。

それでもベスト16という結果は日本サッカー界全体にとって大きいと思います。

魅力的な内容のサッカーで勝利という結果がついてくるのが理想ですし、勝ちさえすれば内容やそこまでのプロセスなんてどうだっていいというつもりはまったくありませんが、やはりW杯では結果を出すことが大事ですしね。

 ですが直前で堅守速攻型に転換したからといって、岡田ジャパンで3年近くやってきた「がむしゃらにプレスをかけ、走りまくるサッカー」がまったくの無駄だったかというとそうではないと思います。

W杯で日本代表はパラグアイ戦をのぞいて、だいたい選手1人につき1kmぐらい相手チームよりも多く走っていたようです。

デンマーク戦データ 

がむしゃらに走りまくるサッカーは確かに非効率だったかもしれませんが、3年近くそれをやってきたおかげで選手個々にスタミナがつき、パラグアイやオランダといった強豪国といえどもそう簡単には点が取れないような、ブロックをつくって粘り強く守るゾーンディフェンスを90分・120分と足が止まることなく続けることができました。

この守備なくして日本の成功はありえませんでした。

「真っ向勝負」から「堅守速攻」へと転換しましたが、「相手に走り勝つサッカー」というコンセプトだけは貫き通したと言えるでしょう。

しかし、いつかは日本代表もスペインやオランダといった世界の強豪国を相手に、世界を魅了する攻撃サッカーで5分と5分の勝負を挑めるようになれたらという強い希望を私自身は持っています。

思ったより記事が長くなってしまいました。

次回は、これから日本代表が目指すべきサッカースタイルはどんなものか?

そうしたサッカースタイルを確立するために日本サッカー界はどうすれば良いのか?

新しい代表監督はどんな人物が適任なのか?


について考えてみたいと思います。

次回につづきます




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