■日本代表、泥にまみれてつかんだ勝利

 日本代表のワールドカップ初戦である対カメルーン戦が行われ、日本が1-0で勝利しました。

対戦相手のカメルーン代表は、イタリア・ドイツ・スペイン・イングランドといった欧州主要リーグでプレーする選手がほとんどのチームです。

近年コートジボアールやガーナにやや遅れをとっていますが、アフリカをリードする国の一つでしょう。

ここのところ調子が出ない日本よりカメルーンの方が実力はやや上と評価していましたが、1-0で日本の勝利という結果は素晴らしいものでした。

前回投稿した記事で「勝負はやってみないとわからない」と書いたのですが、本当にその通りになりました。

これで日本代表は中立地で開催されたW杯で初勝利をあげたことになります。

 それでは試合を振り返ってみましょう。

立ちあがりは両チームとも非常に慎重なゲーム運びでした。

日本はもうちょっとカメルーンに押し込まれるかと思ったのですが、お互いが相手の出方をうかがうジリジリと緊迫した展開が続きます。

日本代表はコンパクトな陣形を保てたおかげでカメルーンに決定的なパスを許さず、攻撃でもそこそこパスをまわせていたと思います。

8分、スルーパスを受けたウェボがゴール前へ折り返し、チュポモーティングに渡りそうになりますが、トラップミスに救われます。

21分、日本のクロスボールをGKが落とし、本田がつめるがその前にオフサイド判定。

30分、カメルーンのFKをGK川島がキャッチしにいくも背中から落ちた時にボールをこぼしてしまい、あわてて長友がクリアします。

38分、左サイドでパスをつながれて最後はエノーがミドルシュートを放ちますが、川島の正面。

この試合、日本の攻撃は連動性が高かったとは言えないものでしたが、数少ないパスがつながった好機を日本がものにします。

39分、本田→遠藤→松井とパスがつながって、松井がインサイドへドリブルで切れこんでペナルティエリア角からクロス、これがプライム・スコアリング・エリアで待っていた本田にピタリとあって、ワントラップから落ち着いてシュート、日本が待望の先制点をあげます。

 後半、先制されたカメルーンが攻勢に出ます。

日本代表は5分前後から徐々にチーム陣形が間延びをしはじめ、DF-MF-FWの三つのラインの間に広いスペースが空きはじめると、そこをカメルーンに使われて押される一方となってしまいます。

4分、右サイドを突破したエトオがペナルティエリアからプルバックのパス、これをチュポモーティングがシュートするも危うく日本ゴールをかすめていきます。

この後カメルーンの怒涛の攻撃が続きますが、ドタバタしながらも泥臭く体を張った日本がゴールを許さず。

30分すぎから、日本のMF三人がDFラインに吸収されてしまいボールをまったくつなげなくなる非常に危険な形になり、ロングボールを前線に放りこむカメルーンのゴリゴリのパワープレーをまともに受けてしまいます。

それでも37分、日本の数少ない攻撃のチャンスで長谷部のミドルシュートを相手GKがはじき、これを拾った岡崎のシュートは惜しくもポストに当たって外れます。

40分、日本のMFがDFラインに吸収されて一列になってしまい、ポッカリと空いたバイタルエリアからムビアが強烈なミドルシュート!ポストに当たってはねかえったボールを再びカメルーンにシュートされますが何とか防ぎます。

ロスタイム、カメルーンのクロスがウェボに当たって日本ゴールへ転がるも、川島がナイスセーブ!

そしてタイムアップ。日本が強豪カメルーンから価値ある一勝をあげました。

 それでは試合内容を見ていきましょう。

この試合の勝敗を分けたものは組織の力でした。

日本はチーム組織が一つにまとまっていました。

セリエAやブンデスリーガ、プレミアリーグでプレーする選手をずらりとそろえ、個の能力で日本を上回っていたカメルーンですが、チームが一つにまとまりきれていないように見えました。 

世界的スター選手のエトオがなかなかチームにフィットせず、テストマッチのスロバキア戦・セルビア戦と本大会に近づくにつれてどんどんチーム状態が悪化しているようでしたし、カメルーンは攻撃の中心選手の一人、アーセナルのA.ソングが日本戦に出てこず、監督と選手あるいは選手同士でゴタゴタがあったのかもしれません。

そのせいかカメルーンは非常に神経質になっていたみたいで、試合の前半、日本の出方をずっとうかがているような消極的なプレーをしてしまい、そうこうしているうちに日本の先制点を食らって非常に苦しい立場に追い込まれてしまいました。

もしかしたら、いつものように日本が間延びしたまま前がかりになったところをカウンターで突いて得点し、そのまま逃げ切ってしまうゲームプランだったのかもしれませんが。

後半のカメルーンが本来の姿だと思いますが、前半ずっと消極的なプレーをしてしまったことを相当後悔したのではないでしょうか。逆にカメルーンの失敗を見たオランダやデンマークは、試合の前半からガンガン日本を攻めたててくる可能性があり注意が必要です。

サッカーとは組織のまとまりが勝敗に大きく影響する団体競技であり、いつもこのブログで言っているように「弱気で消極的なチームや選手が罰を受けるスポーツ」だと再認識させられました。

組織力をアップさせれば個の能力で多少劣っていても、試合に勝つ可能性を高めることができるということを、日本サッカー界全体の貴重な教訓として絶対に忘れないで欲しいです。

 次に守備面を見ていきますが、コートジボアールとのテストマッチの記事で岡田ジャパンはオーソドックスなゾーンディフェンスに変更したらどうかと提案したのですが、この試合は普通のゾーンディフェンスを採用していたみたいで、そのおかげで守備がまずまず安定してきたと思います。

まだぎこちないところや経験不足なところも多々見受けられますが、相手のシュートやクロス、ラストパスを選手が体を張って止めるなど、気持ちがこもった積極的な守備でカバーしていました。素晴らしいです。

DFラインからトップまでをコンパクトに保つということも、イングランド戦やコートジボアール戦では前半20分ぐらいしか続かなかったのですが、この試合は前半45分まで続けることができて、そのことも勝利に大きく貢献しました。

ボランチの遠藤選手も練習試合の録画を見て、長谷部選手と一緒にバックラインとの距離に注意していたとコメントしていましたが、大きな進歩だと思います。

しかし、試合の後半から陣形がだんだん間延びしていって、選手がバラけてしまうにつれてボールをまったく拾えなくなってしまいました。

後半に日本代表がゲームのコントロールを失いカメルーンの猛攻を許した原因はここにありますが、チーム陣形をコンパクトに保つということを90分間続けられるように練習しないといけません。

試合後半になるとスタミナ的に苦しいのでしょうが、DF・MF・FW三つのラインのそれぞれの距離をセンターサークルの半分(およそ10m)に保ち続けることが不可欠です。

さらに後半30分すぎからMF三人が下がりすぎてDFラインに吸収されて一つのラインになってしまい、バイタルエリアをポッカリと空けてしまうというもっとも危険な形をつくってしまいました。

そこを使われて後半40分にムビアの強烈なミドルシュートを食らってしまったわけですが、あれがゴールポストの外側に当たって跳ね返ってくれたのは大変ラッキーでした。(下図 クリックで拡大)


吸収


失点が怖いのでしょうけれど日本のDF陣も試合の後半、最終ラインをペナルティエリアの中まで下げていましたが、これも大変危険な形です。

こうなるといつやられてもおかしくない形でしたが、体を張って相手のシュートやパスを止める日本の選手の気合の入った積極的な守備が日本に幸運をもたらしてくれました。

ですが、いつも幸運が味方してくれるとは限りません。

カメルーンは組織力が低く、ロングボールを単純に放りこむ確率の低いパワープレーに来てくれて助かりましたが、オランダやデンマークはカメルーンよりはるかに上の組織力を持つチームであり、こちらがコンパクトな陣形をつくっていても人と人の間を正確なショートパスでつないで相手を崩すことができるチームです。

チームが間延びしていたり、MF陣がDFラインに吸収されたりするとなお危険です。
かなりの確率でやられると思った方が良いでしょう。

しつこいようですが、陣形を90分間コンパクトに保ちつづけDF・MF・FWの三つのラインのそれぞれの距離を10m以内に保ち続けることが死活的に重要です。

相手がボールを下げるたびにDFラインは勇気を持って押し上げて、どんなに下がってもペナルティエリアの直前でふんばって欲しいです。

 他に気づいた点としては、カメルーンがパワープレーをするためにGKがドリブルをしてかなり前進してからロングボールを蹴っていましたが、日本のFWが相手GKにプレスをかけてペナルティエリアから出て来れないようにしないといけません。

本田選手はもう動けなくなっていましたから、交代出場の岡崎選手にそういう役目をやって欲しかったのですが、ドリブルして前進してきた相手GKを振り向きもせず自陣に向かって走っていました。

自分がどう行動すれば相手が一番嫌がるのか、よく考えてプレーして欲しいです。

 攻撃面では、数少ないチャンスから貴重なゴールにつなげることができました。

ペナルティエリアの角あたりでクロスすれば、得点するチャンスが高まります。

その点、松井選手のインに切れこむドリブルは大変良かったですね。

本田選手はワントラップから確実にシュートを決めたのも素晴らしいですが、クロスを受ける動きも素晴らしいです。

本田選手はファーポストの前でボールが来るのを待っていてゴールを決めることが多いですが、ファーポスト前というのはしばしば守備側が注意を怠るエリアであり、得点の可能性が高い場所なんですね。

リンクで示したとおりイングランドの戦術書では「プライム・スコアリング・エリア」と呼ばれますが、ヨーロッパでもまれているうちに本田選手は感覚的にそのエリアを上手に使うことを覚えたのかもしれません。

日本のすべてのサッカー少年・少女はこうしたプレーをお手本にするべきです。(逆に守備の選手はファーポスト側に気をつけろということですね)

本田選手はMFながら1試合当たりの得点率はかなり高いはずです。

代表戦のデータを見ると、日本の攻撃的MFの年間ゴール数は守備の要・センターバックとだいたい同じなんですね。

それについて普段から不満に思っていたのですが、「自分は良いパスを出せればそれで満足」で終わっていた日本人選手の殻をやぶって、貪欲にゴールを奪うことを求め続ける本田選手のメンタリティーはとても素晴らしいと思います。

 しかしながら、日本代表はまだまだ連動性の高い攻撃ができているとは言えません。

ボールを持ってじっくり待っていればチャンスがくると考えるのではなく、自分の前にフリーの味方がいるならパスが出せる最初のチャンスに出してしまうことです。

パスを受けた選手がさらに相手ゴールに近いところへパスが出せれば良し、それが無理なら戻せば良いだけのこと。

周囲の選手もボール保持者が一人で何とかするのを見ているのではなく、チーム陣形をコンパクトに保ったままサポートしていくつものパスコースをつくってやる。

リズムの良いパスまわしが良い攻撃をつくっていきます。

カメルーン戦の後半に日本がほとんど攻撃を仕掛けられなくなったのは、やはりチームが間延びして選手一人一人の距離が離れすぎたからですね。

攻撃も守備も陣形をコンパクトに保つことが必要不可欠です。

さらにクロスばかりではなくてミドルシュートがもっともっと欲しいです。

 日本のワールドカップ初戦となったカメルーン戦、日本の試合内容はスペクタクルなサッカーとはかけ離れたとても泥臭いものでしたが、1-0で勝利という結果はとても良かったと思います。

日本はチームが一つにまとまり、経験のなさを選手個々の気持ちと体を張った積極的なプレーでカバーして、泥臭く泥臭く勝利をたぐり寄せました。

ですが、まだ日本は何も手に入れたわけではありません。
リベンジを果たしたわけでもありません。

次のオランダ戦に向けた準備に全力をあげて欲しいと思います。

デンマークが0-2でオランダに敗れましたが、デンマークにとってはそう悪い結果ではありません。

もし日本がオランダに3点差以上で敗れたり、デンマークがカメルーンに2点差以上をつけて勝利すると、がぜんデンマークが有利になってしまいます。

そうなるとデンマークは最終戦で日本と引き分ければ得失点差で決勝トーナメント行きが決まりますし、勝たなければいけない日本が前がかりになれば、守備を固めてカウンター狙いのデンマークが試合を有利に進められるでしょう。

もちろん不屈のライオン(=カメルーン)はまだ死んだわけではありません。

「オランダ戦は捨てゲーム」などと言う人がいますがとんでもないことです。

できれば勝利したいですし、引き分けられれば日本が決勝トーナメント進出にぐっと近づきますが、デンマーク対カメルーン戦の結果はどうしようもないのですから、どんなに最悪でもオランダ戦は1点差負けに踏みとどまらないといけません。

オランダ戦の開催地であるダーバンですが、海沿いの低地の上にインド洋の温かい海流の影響で冬でも温暖な場所のようです。

昼間のキックオフということもあり、好天に恵まれれば意外と気温が高くなる可能性もあります。

それが吉と出るかどうかはわかりませんが...。

日本代表はカメルーン戦でみつかった課題をきちっと修正して、90分間全力でオランダとファイトしなくてはいけません。

人事を尽くして天命を待つです。

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2010.6.14 フリーステートスタジアム(ブルームフォンテーン)


       日本  1  -  0  カメルーン

     
      本田 '39


     GK 川島         GK ハミドゥ

     DF 長友         DF アスエコット
       闘莉王          ンクル
       中澤           バソング
       駒野           ムビア

     MF 阿部         MF マクン
       遠藤          (ジェレミ 75)
       長谷部          エノー
      (稲本 88)        マティプ
       松井          (エマナ 63)
      (岡崎 69)       
       大久保        FW エトオ
      (矢野 82)        チュポモーティング
                   (イドリスー 75) 
     FW 本田           ウェボ





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