■自分から手放してしまった希望

 ワールドカップ本番前、最後のテストマッチであるコートジボアール戦がスイスのシオンで開催され、日本は0-2で敗北しました。

日本とコートジボアールの戦力差は、日本のホームで引き分け、アウェーでコートジボアールの勝利程度と見ていました。

中立地で0-2の敗戦という結果は順当だったと思いますが、ゲームの内容は悪かったと思います。

 それでは試合を振り返っておきましょう。

試合は立ちあがりから地力に勝るコートジボアール優位に進みます。

前半13分、日本のゴール前でコートジボアールのフリーキック。
ドログバが蹴ったボールは壁でジャンプした日本の選手に当たってコースが変わり、ゴール前につめた相手選手についていった闘莉王に当たってまたしてもオウンゴール。

TV解説者は不運で片付けていましたが、確かにアンラッキーな面もあったと思いますがドログバがボールを蹴った時、闘莉王選手は相手選手の動きだけを見ていてボールをまったく見ていないようでした。

闘莉王選手が最後までボールから目を離さなければ、もしかしたらオウンゴールは避けられたかもしれません。

単なる不運で片付けてはいけないと思います。

16分、ハーフウェー付近でボールを受けたドログバに中澤がつめるが、ドログバはボールを浮かして中澤のウラへ。
これに闘莉王がタックルに行ってドログバと交錯。ドログバは負傷退場。

22分、中盤でボールを奪って日本のカウンターという場面。
長谷部のスルーパスにウラへ抜け出した岡崎が追いつけません。(オフサイドだったかも)

ここまで比較的コンパクトな布陣をつくれていた日本代表ですが、前半20分すぎからいつものように間延びしはじめます。

コートジボアールは先制したこともあり、ドログバの負傷退場を見せられて選手がケガを恐れたこともあってか、攻撃も守備もペースダウンして省エネモードとなります。

28分、コートジボアールはオフサイドラインをそろえないうかつな日本DFのウラへロングボールを放りこみ、ドゥンビアがウラへ抜け出すという単純なカウンター攻撃。シュートがクロスバーの上を超えていき命びろい。

後半、日本代表はメンバーを大幅に入れ替え。

これによってフォーメーションをコンパクトにするという意識は完全にリセットされ、日本代表は韓国戦以前の状態へ。

ただ、省エネモードに入ったコートジボアールも運動量が減って同じく間延び。
選手と選手の間にスペースができたことで日本がボールをある程度まわせるようになります。

5分、ゴール前のFKを中村俊が狙うもGKがキャッチ。

日本はある程度パスはまわせるようになりましたが、コートジボアールはバイタルエリア近くで日本に決定的な仕事はさせません。

時間だけが過ぎ去り、35分コートジボアールのセットプレーから、ゴール前につめたフリーのK.トゥーレに決められて0-2。

これをひっくりかえすことはできず、日本の敗北となりました。

 この後45分間の延長戦が行われ日本代表が1点を返しましたが、それは見ていないので代表Aマッチとして行われた前後半90分に限定して記事を書きたいと思います。

前回の記事で「試合開始からたった25分間しか続かなかったチーム陣形をコンパクトにするということを、90分・120分と持続することができるか。その成否に日本代表のすべてがかかっていると言っても過言ではないと思います」と書きました。

あれから4日間、練習がうまく行っただろうか?コートジボアール戦で少なくとも後半25分ぐらいまではコンパクトな陣形を保てるようになって欲しいと祈るような気持ちでした。

イングランド戦後、選手から敗戦の原因について的外れなコメントが続出して嫌な予感がしていたのですが、この試合でもコンパクトな陣形を保てたのは前半20分すぎまででした。

相手に押しこまれた時だけ、コンパクトな守備ブロックをつくるということは覚えたようですが、まだ相手がDFラインでボールをまわしている時やこちらが攻撃中であってもその状態を保つということができていません。

前半20分をすぎて、時たま思い出したようにつくるコンパクトな守備ブロックも、細かいところで選手の動き方が適切ではないので、不安定な守備による綱渡り状態でした。

まだまだ本番で計算できるものではありません。

カメルーン戦まで残された時間はたったの10日、スタメン組だけでもコンパクトなフォーメーションを90分間維持できるようにするため、テストマッチをやりながら実戦の中で憶えていくことでなんとか本番まで間に合わせなければならない状態だったのに、試合の後半からメンバーを大量に入れかえたためにスタメン組は貴重な練習時間を失い、間延びしっぱなしの日本代表にリセットされてしまいました。

岡田さんのこの采配はまったく理解できません。

わずか前半25分までだったけどコンパクトな陣形をつくれたので好ゲームができたというイングランド戦で見えた一筋の希望を、日本代表が自分から手放してしまったようでした。

 試合内容を見ていきましょう。

まず守備面ですが、内容は相変わらず悪いです。

このチームは「相手の攻撃に備えるため常に準備しておく」ということがまったくできていません

「相手の攻撃に備える」ということは試合終了のホイッスルが鳴るまで、今この瞬間相手にボールを奪われても即失点につながらないような体勢を常に整えておくということです。

そして相手にボールを奪われたら急いで自分のポジションに戻って4-2-3-1なり4-1-4-1なり、本来のフォーメーションをすみやかに回復するということです。

ところが、岡田ジャパンは攻撃時にボールを前へ運ぶに従ってDFラインを押し上げる時にオフサイドラインを揃えることさえしないので、前半28分みたいにロングボールのカウンター一発でやられそうになる。

攻撃の時はチーム全体のことはお構いなしに、フィールドプレーヤー10人が自分の好きな時に自分の好きな場所へ行ってしまいます。

センターバックが上がりボランチが上がりという「カミカゼ特攻サッカー」は相変わらず。

フィールドプレーヤーが前後左右に自由奔放にポジションチェンジして相手にボールを奪われてもすみやかに元のポジションに戻らないのでヒヤヒヤの連続。

こちらのバイタルエリアへ向かって相手選手がドリブルしているのに、阿部選手はその後ろを軽くジョギングしてついていくだけ。

相手はこちらの守備体勢が整うまで攻撃を待ってくれるとでも思っているのか、攻から守への切り替えが致命的に遅いです。

だからわざとではないにしても闘莉王選手がレイトタックルぎみにドログバと交錯するようなことが起こってしまいます。

 岡田さんの目指しているプレス守備の完成形とはいったいどういうものなのかご本人に聞いてみないとわかりませんが、結果が出ていませんし現時点でそれが完成しているようには見えません。

残念ですけどオーソドックスなゾーンディフェンスに戻すべきではないでしょうか。

かつてACミランやイタリア代表を指揮したアリゴ・サッキは、ゾーンディフェンスの失敗としていくつか例をあげています。

まずDFからトップまでが間延びすることでDF-ボランチ-二列目でつくるスリーラインのいずれかの間に、広いスペースをつくってしまうこと。(下図)


ゾーンディフェンス誤

(クリックで拡大 以下同様)
 

次にDF-ボランチ-二列目のそれぞれのラインを横にそろえないと、オフサイド崩れのような形で相手に簡単にパスを通されてしまうということ。(下図)


ゾーンディフェンス誤2


現在の日本代表の守備というのはこういう状態なんですね。
だから無失点に相手を抑えられないわけです。

以前、「このままだと韓国・イングランド・コートジボアールの3連戦で、日本代表は6~9失点しますよ」と予言した通りです。

前回の記事でもちらっと触れましたが、現代戦術におけるオーソドックスなゾーンディフェンスというのは、以下の通りです。

わかりやすいようにゾーンディフェンスの基本4-4-2を用いますが、まずDFとMFの間を10~15mのコンパクトな状態に保ち、相手が使えるスペースを限定してしまいます。

これによって自分達も余計な距離を走らなくて済みます。

次に相手がボールを前後左右させるのに応じてチーム全体で移動します。

そして陣形が整っていることを確認した上で相手のボール保持者が自分の担当ゾーンに入ってきた選手は軽くプレスをかけます。(今の岡田ジャパンの状態では軽くプレスをかけるにとどめ、無理して奪いにいくことは控えるべきでしょう)(下図)


ゾーンディフェンス


すぐ後ろの選手もついていきスペースを消します。

プレスをかけるために前へ出ていった選手の脇にいる選手は一緒にボールを奪いに行くのではなく、軽く寄せて(青線)味方のナナメ後方にポジショニングすることで、相手のボール保持者がドリブル突破(赤線の矢印)してきても応対できるように準備します。この一連の動きがすべての基本となります。

相手がパスでボールを中央寄りに動かした場合もやり方は一緒。(下図)


ゾーンディフェンス2


相手がサイドチェンジしたら、ボールが移動する間にすばやくチーム全体で逆サイドへスライドします。(下図)


ゾーンディフェンス3


こちらのMFラインを相手に突破されてしまった場合でもDFラインの対応の仕方は一緒ですね。(下図)


ゾーンディフェンス4


スペースを狭くし、ボール保持者にプレスをかけたセンターバックの両脇の選手がナナメ後方から適切にカバーに入っています。

相手がたまらずバックパスしたら、それと同じ距離だけ最終ラインを押し上げることを忘れてはいけません。そのときもチーム陣形を維持して全体で押し上げます。

相手からボールを奪ったらなるべくチーム陣形を維持しながら攻撃していきます。

日本の選手は縦だけではなくて横にも間延びしており、攻守両面でボールがあるサイドに寄ることが苦手なのでそこは要改善点ですね。

相手にボールを奪われたら攻守の切り替えを早くして、すぐに本来のフォーメーションに戻らないといけません。

こうして見てもらえばわかる通り、誰一人自分勝手な動きなんてしていないでしょう。

これがゾーンを組織で守るということです。

世界の一流プレーヤーだって90分間完璧にやれているわけではないと思いますが、このゾーンディフェンス戦術の基本を知っているのといないのとでは大違いです。

 そこでこういう練習メニューを提案したいと思います。

選手同士を腰に結びつけたロープかゴム綱(ダラーっと伸びすぎるものはダメ)でつなぎ、コーチ数人でボールを前後左右にパスして、ボールのある位置に応じてチーム全体で前後左右に動きます。(下図)


練習


直角に交わるところでないとロープが結べないので本来の4-2-3-1とは若干位置がずれていますが、これによって選手一人一人の適切な距離感やコンパクトな陣形というものを体で覚えさせるとともに、常にチーム全体で組織だって攻撃も守備もやるということを意識させることができるのではないでしょうか。

前後左右の選手との距離をいつも意識していないと、自分だけ違う動きをしてロープにひっぱられてコケてしまいます。

パスをまわすときも体にロープを結びつけたままチーム全体で前進するということを練習すると良いと思います。

こうしたことをロープ無しでもできるようになるまで練習する。

スポーツニュースによると、岡田ジャパンでは3本の横線をピッチに書いてそこに選手を並べてパスの練習をしているそうです。

これがもしチームをコンパクトにしたり、守備ブロックをつくるための練習なら上手くいかないと思います。

陣形をコンパクトにするということはそういう静的なものではありませんから。

本番まで残された時間は少ないですが、選手一人一人がチームメートと協力して勝手な行動を取らない、攻撃も守備もコンパクトな陣形を保って組織でやるということが死活的に重要だと思います。

 攻撃面では、イングランド戦の前半に見られた連動性がまったくなくなってしまいました。

遠藤・阿部・本田ら各選手がパスを受けたらまずボールをゆっくりキープするということを繰り返していたので、フィジカルの強いコートジボアールの選手に何度もボールを奪われていました。

メッシやシャビといった身長が高くなくてフィジカルも強そうに見えない選手が、世界の屈強なDFを苦にせずプレーできているのはなぜか?

メッシがなぜ自分の体を相手DFに一瞬でも触れさせないような高速ドリブルをするのか、なぜシャビが必要最低限のタッチ数で簡単にパスをはたいてゲームを組み立てるのか、その理由をよく考えて欲しいです。

前半22分に惜しいカウンターがありました。

ボールを奪ってから日本が2対2のケースをつくりかけましたが、長谷部選手がまだ深いところからスルーパスを出してしまったために強いパスを出さざるを得ず、ウラへ抜け出した岡崎選手が追いつけませんでした。

この場合、長谷部選手が焦らずに我慢して相手センターバックに向かってドリブルしてもっと相手センターバックをひきつけてからスルーパスを出せば、さほど速いスピードでなくてもパスが通るようになりますし、岡崎選手も受けやすくなります。

岡崎選手もウラへ抜け出すタイミングが早すぎました。
それにつられて長谷部選手がパスを出してしまったみたいですね。

ドリブルする味方が相手バックとの距離を十分縮めてから、FWがウラへ抜け出す動きをしても遅くはありません。

練習をしっかりやって、カウンター攻撃の経験を積んで欲しいと思います。

 選手個人レベルでは、闘莉王選手のTPOをわきまえない攻め上がりや、戻りが遅くてボールを奪われても危機感のない阿部・遠藤両ボランチのプレーなど全体的に精彩を欠いています。

本田選手もサイドでは生きないですね。

外国人にも負けないフィジカル能力やメンタル面での積極性、そして持っているテクニックから、次のワールドカップで攻撃の中心になって欲しいのは本田選手だと考えています。

このワールドカップでは本田選手をトップ下において監督がトップ下としての動き方を指導することで、将来にもつながっていくような経験を積ませるべきではないでしょうか。

4-2-3-1なら長谷部・稲本の両ボランチでガッチリとバイタルエリアにふたをして、トップ下には本田選手、守備の弱い遠藤選手はサイドハーフに持ってきた方が適材適所のような気がします。

ワントップも結果が出ないなら初めから森本選手でもいいのではないでしょうか。

 イングランド相手に機能した、選手個々が適切な距離感を保ったコンパクトな陣形をキックオフから何分持続できるか、そこに注目していたコートジボアール戦でしたが、やはり前半20分くらいでいつもの日本代表に戻ってしまいました。

内容がよくないので勝利という結果もついてきません。

残された時間は少ないですが、攻守に渡ってチームをコンパクトにするということに集中してほしいと思います。

練習が終わって体を休めている時も頭脳は動かせます。

選手全員でインテルやマンチェスターUなどがどうやってコンパクトな陣形を維持しているかチャンピオンズリーグのDVDなどをじっくり見て、自分がその中で実際にプレーしているつもりになってどう動くべきなのか、チーム全体で共通イメージを持つようにしてはどうでしょうか。


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     2010.6.4 スタッド・ド・トゥルビオン(シオン)


      日本  0  -  2  コートジボアール


                '13 O.G.(闘莉王)
                '80 K.トゥーレ



      GK 川島       GK バリー

      DF 長友       DF エブエ
        闘莉王        K.トゥーレ
        中澤         デメル
        今野         ティエネ
       (駒野 67)
                 MF ゾコラ
      MF 遠藤         Y.トゥーレ 
       (中村憲 46)     ティオテ
        阿部        (コネ 88)
       (稲本 46)        
        長谷部      FW ドログバ
        本田        (ドゥンビア 19)
       (中村俊 46)    (ケイタ 63)
                   カルー
      FW 岡崎         ディンダン
       (玉田 55)
        大久保
       (森本 65)




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■コメント

■「敏捷性」は、どこにいってしまったのか? [youzy_yam]

初めてコメントを書かせていただきます。
私はサッカー素人ですが、このブログを読んでいるうちに、「サッカーって面白い」と思えるようになりました。
「破れた毛布」のお話はとてもわかり易かったです。
日本代表は「あちこち穴が開いた破れた毛布」のような気がします。
オシムさんの頃でしょうか「日本人は敏捷性が高い」と言われていたような気がします。はたして今の代表メンバは敏捷性が高いのでしょうか?
足の遅い選手ばかりのような気がします。中沢や本田の遅さはひどいように思います。
代表は敏捷性を前提とした組織作りをしてきたのでは?
私の勘違いでしょうか?

■今の代表を立て直すヒントになりませんか? [青侍]

下記の頃の岡田ジャパンと現在のそれとを比べると、以前のほうがボールも人もスピード感があり、中盤でのつなぎも出来ていて、運動量もダイレクトパスも多くシュートチャンスもあったと思います。

カウンターというか奪ってからシンプルに裏のスペースに出してという速い攻めも出来ている。そして守備面や攻守の切り替えでもこの3試合のほうが機能しているかなと。

最近、大久保も某所のインタビューでこの頃が一番連動性があってやりやすかったと発言しています。

特にオーストラリア戦とか、この頃のほうが良かったと思うんですが、どう思われますか?

今の代表を立て直すヒントになりませんか?

★2008年09月06日 日本 3○2 バーレーン
Japan vs Bahrain WC2010
http://www.youtube.com/watch?v=mysbXoarMUQ
(W杯アジア最終予選 開催地/バーレーン 交代)日本:3人)

★2008年11月19日 日本 3○0 カタール
Qatar Vs Japan [FIFA 2010 World Cup Asian final-round]
http://www.youtube.com/watch?v=xCra6BNWlC8
(W杯アジア最終予選 開催地/カタール 交代)日本:3人)

★2009年02月11日 日本 0△0 オーストラリア
Japan V Australia - Highlights - 11feb09
http://www.youtube.com/watch?v=OgK7SzW1ng0
(W杯アジア最終予選 開催地/日本(横浜) 交代)日本:2人)

■補足) [青侍]

補足)

>この3試合のほうが機能しているかなと。
というのは
「上記動画の3つの試合のほうが機能していたと思う。(少なくとも今よりも全然良かった)」

>この頃
=この上記動画の3つの試合の頃

という意味です。

失礼しました。
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