■一筋の希望

 30日にイングランド代表とのテストマッチがオシム氏の自宅があることで有名なオーストリア・グラーツで開催され、日本は先制しながらも逆転負けを喫しました。

対戦相手のイングランドはいまさら解説の必要はないと思います。

日本代表の現在の絶不調を考えればアウェーでやってもホームでやってもイングランドの勝利が妥当。
2チームの戦力差をそう評価していました。

試合は日本から見て1-2という順当な結果となりましたが、前半25分ぐらいまでは日本の試合内容が良かったです。

3年間ずっとこのチームの課題であったフォーメーションの間延びがやっとのことで少し修正されました。


ようやくうっすらと一筋の希望が見えてきたという感じです。

 それでは試合を振りかえりましょう。

日本は4バックの前に阿部選手をアンカーとして置く4-1-4-1の新布陣。

前半立ちあがりは意識してコンパクトな陣形を保つことができており、1人1人の距離が良かったので攻守にわたって組織的なサッカーをすることができました。

逆にイングランドは日本をなめていたのかケガを恐れていたのかわかりませんが、本来の出来と比べて動きが重かったように感じました。

前半6分、日本がコンパクトな陣形を維持できたためにイングランドの裏に大きなスペースが空き、カウンターからウラへ飛び出した大久保に中盤でダイレクトパスの交換から阿部が浮き球のパス、これはイングランドDFのG.ジョンソンがヘッドしてなんとかCKへ逃れます。

7分、そのCKからニアサイドにつめた闘莉王がダイレクトシュート!
これがイングランドゴールに突き刺さって日本先制。

13分、中盤で小気味よいパス交換からサイドの大久保にパスが出て、大久保と阿部のワンツーでイングランドの右サイドを崩して突破、残念ながらセンタリングは防がれます。

25分、今野を基点に遠藤→阿部→大久保→遠藤→岡崎→遠藤→長谷部と中盤で日本の選手が何人もからんでワンタッチでの素早いショートパス攻撃に、さすがに個の能力で勝るイングランドの選手もうかつには飛びこめず、ボールにも日本選手にも触ることができません。

残念ながら長友へのラストパスが長すぎましたが、サッカーの目が肥えているグラーツの観客からも日本代表に拍手が沸き起こります。

ところが30分あたりから日本代表の足が止まり始めます。

攻撃も岡崎に単純なロングボールを放りこむだけとなり、日本が徐々に攻め手を失うとイングランドがゲームを支配するようになります。

31分、ファーディナントのロングフィードを中澤がうまくクリアできず、こぼれ球をGK川島と競ったベントにシュートを食らうも危うくゴール左へ。

39分、ゴール前で強いパスをもらったルーニーが角度をかえてシュートするも外れます。

イングランドは日本に先制を許したことで明らかに焦っており、攻撃で凡ミスを連発。

日本がこのまま失点しなければジャイアントキリングもありましたが...

 後半ジェラードをはじめとしてイングランドは選手を大幅入れ替え。
ハーフタイムで監督からカツが入ったのか運動量を増やして日本を攻めたてます。

日本は前半25分ぐらいまでのコンパクトな陣形をすっかり忘れてしまったように間延びします。


10分日本のゴール前でイングランドのFK。蹴ったボールを本田が手で弾いてしまいPK献上。
しかしランパードのPKを川島が見事にストップしました。

それでもいったん足が止まって受身になってしまった日本代表は、イングランドにゲームを支配され続けます。

27分、日本の左サイドで長友が上がったウラをJ.コールにつかれてセンタリングを許し、これを闘莉王がヘッドでクリアしようとしてオウンゴール、同点に。

38分、イングランドの早い展開から日本の右サイドをA.コールにつかれてクロス、今度は中澤がオウンゴールしてしまい逆転を許します。

A.コールのアーリークロスは、DFの頭より低いところへ強く正確なボールを入れたもので、これぞイングランドの戦術教科書に書いてあるお手本のようなクロスでした。

ロスタイムに阿部の惜しいヘッドがありましたがスコアは動かずにタイムアップ。

日本はイングランドに惜しい逆転負けとなりました。

 それでは試合内容を見ていきましょう。

前半25分ぐらいまでは攻守に渡って日本代表の内容は良かったと思います。

その理由は何と言ってもDFラインからFWまでのフォーメーションをコンパクトに維持できたことに尽きます。

先日の韓国戦の録画を見比べてもらうとその違いが一目瞭然だと思います。

アンカーを置いたことも多少プラスになったと思いますが、一番大きかったのはやはりコンパクトなチーム陣形をつくれたことです。

日本代表がコンパクトなチーム陣形を保つことで選手間の距離が適切になり、中盤でテンポ良くショートパスをつなぐことが出来るようになって攻撃がやっと機能しはじめました。

前半25分にワンタッチのショートパスがリズム良くつながり、フィジカルの強いイングランドの選手にボールも日本選手の体も触らせなかったシーンは象徴的です。

できればバイタルエリアで遠藤選手や長谷部選手が前を向いて、ウラへ抜ける岡崎選手や本田選手などにグラウンダーのスルーパスが欲しいところでしたね。

前半25分ごろまで日本がイングランドと互角に渡り合えたのはそのおかげであり、コンパクトな陣形を保ってこうした攻撃をどんどんやるべきです。

また日本の陣形がコンパクトであったためにイングランドがバックラインを高くあげてきたので、イングランドDFのウラにスペースが広く空き、日本がカウンターをやりやすくなりました。

イングランドが「寸足らずの毛布」を頭からかぶったために足が出てスースーしていたということです。

前半6分に、イングランドのウラのスペースに大久保選手が飛び出してカウンター攻撃が決まりそうになったシーンがその象徴でしょう。

このプレーによって日本の先制点を引き出すCKを獲得したわけですが、韓国戦後に「どうして相手のカウンターが決まって日本のカウンターが決まらないんだろう」と言っていた大久保選手、これで理由がハッキリとわかりましたよね?

 この試合の勝敗の分かれ目となったのは、前半30分あたりから日本代表の足がぱったり止まって徐々に4-1-4-1のフォーメーションが崩れ出したこと。

このあたりからまたしてもピッチ上の選手が本来の自分のポジションを維持できなくなって、フォーメーションがグチャグチャに崩れてチーム陣形がバランスを失いはじめるとゲームの流れはイングランドへ。

後半キックオフ時になるとはっきりとDFからFWまでの陣形が間延びして、選手間の距離が離れすぎて個の能力で勝るイングランドにボールを支配されてしまいました。

間延びするから前半のようにカウンター攻撃もほとんどできなくなり、そして1点取られたらダムが決壊するように逆転負け。

前半30分あたりから日本代表の足がぱったり止まった理由はなんでしょうか?

イングランドの動きが重くそれほど運動量はありませんでしたし、日本代表からさほど激しいプレスをかけていたわけでもありませんでしたから、前半30分で早くもスタミナ切れとは思えません。

やはり精神的なものが理由ではないでしょうか。

あのイングランド代表から先制点を奪ったことで「最近負けっぱなしなので、このまま1点を守りきりたい」という弱気で消極的な気持ちに日本の選手が負けて、精神的に受身になってしまい、イングランドのプレーを足を止めて見ていたか。

それとも自分のミスで日本のリードがパーになってマスコミやサポから叩かれるのが嫌だから、足を止めてボールにからむことから逃げたのか。

どちらにせよあのイングランドを相手にチームのやり方が上手く行っているのに、どうして自分とチームを信じて最後までそれをやり通そうとしないのでしょうか!

ワールドカップで勝ちたいなら歯を食いしばって、1試合90分なり120分なりDFからFWまでのチーム陣形をコンパクトに保ちつづけなければなりません。

試合終了のホイッスルが鳴るまで、例えばアンカーなら自分とDFラインの前後の距離が10m以内か、自分と二列目のラインとの距離が10m以内かいつも確認してポジショニングを修正しなくてはいけません。

これを試合に夢中になって忘れるようでは勝利から遠ざかってしまいます。

これからカメルーン戦まで毎日特訓ですね。

縦の距離をコンパクトにすることも大事ですが、横の選手間の距離も一定にキープして4-1-4-1の陣形を保ち続けることが死活的に重要です。

前半30分ぐらいから、選手が前後左右に好き勝手にポジションチェンジしてそのままになってしまうので、チーム全体のバランスが崩れてパスがつながらなくなりましたし、相手の攻撃にももろくなってしまいました。

 失点シーンのオウンゴール2発はやむをえないところもあったと思います。

しかしクロスを入れられるその前の段階で日本代表のDF陣は問題を抱えています。

日本の4バックはゾーンディフェンス戦術のやり方がおかしいです。(下図)


ゾーンディフェンス誤0
(クリックで拡大)

まず4バックが横に等間隔で並ばず、しかもサイドバック(SB)が自分の前のスペースにいる敵選手に対しボールを持っていない段階からマンツーマン状態でついてしまうためにオフサイドラインがそろいません。

そのせいでSBのウラに大きなスペースを空けてしまっています(1)。

その上、前へ出たSBとセンターバック(CB)との距離が離れすぎていて、その間にも危険なスペースをつくりだしています。(2)

すると日本代表にどういうことが起こっているか。(下図)


ゾーンディフェンス誤1


サイドバックが前へ行きすぎて(1)、空けてしまった後ろのスペース(2)に敵選手が入りこむと(3)、日本のセンターバックがリトリート・ラインの外側まで簡単に引きずり出され(4)、残りのCBとSBが横へスライドしないので日本のゴール前がスカスカになる非常に危険な状態になります。

日本の場合、ボールを奪われた直後に行われる相手のサイドチェンジに対し、横へのスライドが遅れるのはDFラインに限らず、MF陣もそうですね。

後半になると日本のフォーメーションが間延びしすぎて選手間の距離が遠くなり、CBがSBの後ろのスペースへ走りこめなくなりました。(下図)


ゾーンディフェンス誤2


それでも両サイドバックが自分の前にいる相手選手にマンマークぎみについていってしまうので(1)、サイドバックの後ろに広大なスペースが空く(2)。

そのスペースに敵選手が走りこみ、イングランドの中盤から精度の高いパスが出る(3)。

広いスペースからイングランドの正確なクロスがゴール前へ入ってきて、日本のセンターバックのオウンゴール2発で逆転負け。

あのオウンゴール2発は偶然ではなく必然というわけですね。

 前回記事でもふれましたが、もう一度正しいゾーンディフェンスのやり方を確認しておきます。

まず4バックがリトリート・ラインに応じた幅で1人1人が等間隔で守るのが基本です。(下図)


リトリートライン


相手がボールをサイドへ動かしたら、4バックはリトリート・ラインの幅をなるべく保ってすばやくスライドします。この時点ではオフサイドラインをそろえておきます。(下図)


ゾーンディフェンス正0


相手がこちらのサイドバックより外側へボールを動かした場合をみましょう。(下図)


ゾーンディフェンス正


この時はじめてサイドバックが相手のボール保持者との間合いをつめるためにやや前進します(1)。

センターバックは相手選手のマークをサイドバックに受け渡してむやみにアウトサイドへ引きずり出されないようにします。センターバックのポジショニングは相手のボール保持者がこちらのサイドバックを抜いてインサイドに切れこんできてもアウトサイドにきてもカバーできるように前にいるサイドバックのナナメ後方です(2)。

その結果、4バックはフラットなラインではなくやや前方へしなることになります。

(ボール保持者がアウトサイドを突破した場合は、まずサイドバックに任せます)

敵がこちらの手薄な逆サイドに選手を配置してきた場合は、サイドハーフ等がマークにつきます。

これが4バックによるゾーンディフェンスの基本です。

カメルーン戦まで一試合を通してきっちりできるように毎日猛特訓です。

ちなみに、4人のMFによるゾーンディフェンスのやり方も基本的にはこれと同じなので、よく覚えておきましょう。

4-4-2なら4人の選手によるゾーンディフェンスのラインが二つできます。4-1-4-1ならそのラインの中間にアンカーがいてスペースを埋めるというイメージでしょう。

 さて今回アンカーを置いた新フォーメーションを採用したわけですが、アンカーを置いたから良かったというよりは、陣形をコンパクトにできたことの方が守備の安定につながったと思います。

アンカーがいるのに日本が後半間延びしたことで2失点したことがそれを示しています。

アンカー1人だとカバーすべきスペースが横に広すぎて、サイドバックの前にいる敵選手を誰がみるかで混乱が起きていました。

先ほど言ったように、サイドバックが前へ行ってしまうとそのウラにスペースが空いて相手に使われてしまいます。

たとえばデンマーク代表は、サイドハーフがサイドを突破してクロス、ゴール前にいるベントナーやトマソンが決めるというのが一つの攻撃の形でしょう。

今の状態だと日本のサイドバックのウラをサイドハーフのロンメダールあたりにやすやすと突破されかねません。

日本はダブルアンカー制(守備的ダブルボランチ2枚)にしてサイドバックの前にいる選手は二人のアンカーのどちらかがみるようにした方が良いのかもしれません。

もちろん陣形をコンパクトに維持してDFラインとMFラインの間を狭くすることが大前提です。
 
 さらに日本の両サイドバックの守備の位置どりが悪い上に、イングランドに1点リードしていてがんがん攻撃参加のためオーバーラップするとは、無謀どころの話ではありません。

だから逆転負けなのです。

(日本のサッカー記者はちょっとSBの攻撃参加が少ないとすぐ5.0とかつけるでしょう。日本サッカーに守備の文化がないのはそのせいもあるでしょうね)

前半18分にはCBの闘莉王選手まで上がってしまい、そのスペースをつかれてレノンにシュートを食らいましたよね。

こちらが先制されたのならいざ知らず、もしオランダやデンマーク・カメルーン相手に日本がリードしたら、4バックとアンカー(もしくは2ボランチ)は上がるな!と声を大にして言いたいです。

4バックとボランチは守備ブロックを維持するのに専念し、攻撃は二列目とワントップの4~5人だけでフィニッシュまでもっていかなくてはなりません。

もちろんチーム陣形全体をコンパクトにすることは忘れずに!

陣形が間延びしたから中盤でパスがつながらなくなり、イングランドのウラも狭くなってカウンターができなくなったのです。

陣形をコンパクトにして前半25分のようなパス回しを試合終了まで断続的にできるように。

それでこちらのカウンターが決まれば勝利が見えてきます。

 個人では、このシステムならもうちょっと長谷部選手に攻撃の組み立てに参加して欲しいところです。

本田選手もボールに触りたくてアンカーより下がったり、逆サイドへ流れたりするなど動きすぎてしまっています。

まず自分本来のポジションをキープして例えば本田選手が右サイドハーフに入ったら、自分の左横に遠藤選手がいて後方左にアンカーの阿部選手、前方左にワントップの岡崎選手がいるというポジションと彼らとの適度な距離をキープしつつ、自分ととなりあった3選手がボールを受けたらその選手に近づいてフォローしてあげる。

(もちろんグラウンダーでパスを受けられるポジショニング。近づきすぎる必要はないでしょう)

自分がその選手からパスを受けたら、ショートパスを出したいなら別のとなりあった選手へ。ロングパスならそれ以外の味方やスペースへパスを送る。

センターハーフに入ったときもそれは同じ。

その位置関係を崩すのは、基本的には自分が相手のウラへ抜けてスルーパスをもらってシュートといった決定的なケースに限られます。

この動き方を覚えたら、CSKAでジャゴエフからトップ下のレギュラーを奪い取れるんじゃないでしょうか。

選手の名前とフォーメーションを覚えてTVを見れば、ヨーロッパのチームなら攻撃時でも守備時でも背番号が見えなくてもだいたいどのスペースに誰がいるかわかります。

ところが日本代表はすぐフォーメーションがグチャグチャになるので、背番号を見ないと誰がどのスペースにいるのか良くわかりません。

この重要な違い、わかるでしょうか?

今野選手は、反スローをとられないように練習しましょう。

 今回のテストマッチ、逆転負けという結果は残念でした。

しかし試合内容は良かったと思います。

イングランドと互角に戦った前半25分までは。

ワールドカップに向けて日本代表に一筋の希望が見えてきました。

試合開始からたった25分間しか続かなかったチーム陣形をコンパクトにするということを、90分・120分と持続することができるか。

その成否に日本代表のすべてがかかっていると言っても過言ではないと思います。

(あとは4バックのゾーンディフェンスをしっかり安定させること)

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       2010.5.30 UPCアレナ(グラーツ)


      日本  1  -  2  イングランド


    '7 闘莉王       '72 O.G.(闘莉王)
                '83 O.G.(中澤)


     GK 川島        GK ジェームズ
                  (ハート 46)

     DF 長友        DF A.コール
       闘莉王         ファーディナンド
       中澤          G.ジョンソン
       今野         (キャラガー 46)
                   テリー

     MF 阿部        MF ハドルストーン
       長谷部        (ジェラード 46)
       遠藤          ランパード
      (玉田 86)       レノン
       本田         (ヘスキー 77)
                   ウォルコット
     FW 岡崎         (ライトフィリップス 46)
      (森本 65) 
       大久保       FW ベント
      (松井 71)      (J.コール 46)       
                   ルーニー




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