■理想と現実と

 日本代表の南アフリカW杯壮行試合となる韓国戦が埼玉で行われ、0-2でまたしても完敗という結果に終わりました。

対戦相手の韓国の戦力は、前回対戦時の結果から日本よりやや上と見ていましたが、やはり日本のホーム。

二度と同じ失敗は許されない状況でしたが、またしても2点差をつけられての完敗でした。

 試合を振り返っておきましょう。

前半は、日本より優勢なフィジカル能力で厳しいプレスをかけてきた韓国がやや押しぎみの展開。

前半6分、日本のボランチのところでボールを失い、パク・チソンがゴール前へドリブル、日本のセンターバックの寄せが甘いところをDFラインの前からミドルシュート。これが決まって韓国先制。

あまりにも早すぎる失点に日本のゲームプランが狂います。

13分、韓国のCKからキムジョンウがヘッド、日本ゴールをかすめていきます。

20分をすぎると、疲れがあるのかケガをしたくないのか韓国代表がややスローダウン。

21分、左サイドをドリブルで切りこんだ大久保がミドルシュートするも枠をとらえず。

40分、こぼれ球を拾った本田がミドルシュートするがヒットせず。

日本は韓国の強固な守備網になかなかバイタルエリアへ近づけず、質の良いチャンスをつくることができません。

 後半も長い時間同じような展開が続きます。

後半32分、森本が韓国の右サイドから強烈なシュートを放ちますが、残念ながらGK正面。

このあたりから日本は何とか同点に追いつこうと前がかりになりますが、逆に韓国は試合を決定づけるためにカウンター狙い。

33分、韓国のカウンターをいったんは防ぐも、こぼれを拾ったキム・ナミルがループシュート、GK楢崎がCKに逃れるので精一杯。

45分、前がかりとなった日本からボールを奪った韓国の速攻。スルーパスにパクジュヨンが抜け出し楢崎と一対一。
楢崎がたまらず飛びこんでパクを倒してしまいPK献上。

これをパクが決めて勝負あり。

日本がホームで大敗とも言える0-2の完敗を喫しました。

 つづいていつものごとく試合内容を見ていきたいと思います。

W杯直前になって問題点ばかりあげつらってもチームが自信を失うだけなので、悪いところよりも良いところを取り上げてチームに自信を持たせてワールドカップに送り出したいというのが試合前の本音でした。

前回ドイツ大会直前の記事もそのつもりで書きました。

しかし昨日の試合はそういう記事を書くのが難しい内容でしたね。

ポジティブに考えれば、問題点が今の段階で明らかになって良かった、あれがワールドカップ本番じゃなくて良かったという点がこの試合の良かったところでしょう。

東アジア選手権の韓国戦からセルビア戦と日本代表はホームで大敗を続けていて、今回の試合でも修正すべき点がまったく修正されておらず、同じような失敗を繰り返しています。

日本代表はバックラインからトップまでが間延びしていて、特にセンターバックの前に広いスペースを空けてしまう、「破れた毛布」なのですが、このために一人一人の距離が離れすぎてしまい、選手一人当たりがカバーすべきスペースがそれだけ広くなってしまいます。


図1「破れた毛布」
毛布
(クリックで拡大)


一人一人の距離が離れてすぎていて組織で攻撃も守備もできないとなると、個の能力で劣勢のチームはとても不利です。

並のディフェンダーがメッシやロッベンに広いスペースを与えて一対一の勝負を挑んだら、彼らのドリブルを防ぎきれないのは自明の理ですよね。

大久保選手が「日本はなんであんなにカウンターを食らうんだろうなって思っていたし、逆に日本はなんでカウンターができないのかとやってて思う」とコメントしていましたが、その答えはこれまで何度も言ってきたように、日本代表のFWや二列目が得点を焦ってあまりにも早いタイミングで前へ前へ行くから警戒した相手DFラインが下がって裏のスペースが狭くなるので、カウンターを仕掛けにくくなるのです。(下図)


抜けちゃえば一緒1


逆に日本が同点を狙ってDFラインを押し上げ韓国陣内へ攻めこめば、日本の裏に大きなスペースが空きます。(日本の場合DFラインの前にも広いスペースが空く)だから韓国のカウンターが決まるのです。

本田選手も記者から日本代表の中盤が間延びして距離が遠くなっていた点を問われて、「それは難しいところ。後ろに下がって(パスを)回せてもシュートが打てなかったという可能性もあるし」とコメントしていますが、日本の攻撃の選手がゴールから遠ざかる恐怖をあえて辛抱し、DFラインを引きぎみにしてきっちりゾーンディフェンスを敷いて、4-2-3-1のバックからトップまでを30m前後に維持することで相手チームがDFラインを高くあげてくれば、相手のウラが広くなってカウンターがやりやすくなる。(下図)

「押してもダメなら引いてみな」ということですね。

(アラブのチームみたいに最終ラインをペナルティエリアぎりぎりに置いてベタ引きからカウンターというのは、日本代表には無理だと思いますが)


堅守速攻


もし相手チームが日本代表を押しこんでいるのにDFラインを上げてこなければ、それは相手チームが間延びしているということを意味しているので、人と人の間のスペース(特に相手のバイタルエリア)で素早くボールを回して相手を崩せばいいわけです。

相手チームがDFラインを上げず、コンパクトな陣形を保つ堅守速攻型をとってくれば、相手のウラにも人と人の間にもスペースがあまりないということでそれを崩すのは一番やっかいということになります。

今シーズン、チャンピオンズリーグで優勝したインテルなんかが堅守速攻型チームのもっとも完成された形でしょう。

 岡田さんはこの試合でも、どんな相手であっても前からプレスをかけて相手を押しこんでボールを回しゴールを奪うという彼の理想とするサッカーを目指していたのではないでしょうか。

ボランチから前の選手たちもそれを実現するために相手陣内深くへと向かっていったのではないかと思います。

しかしガーナ戦・韓国戦・セルビア戦とカウンターでやられ続けているDFラインは、カウンターからウラを取られるのが怖いので前へ行きっぱなしのボランチについていくのがどうしても遅れる。(もしどうしても前から行きたいなら思いきってDFラインをあげないといけません)

日本の中途半端なDFラインの位置取りは、DFラインの前(バイタルエリア)とDFラインのウラに広いスペースをつくりだし、やっぱりカウンターでやられてしまう。

結果が出ないので選手が焦り、日本代表の「破れた毛布」がもっとひどくなる。

そんな悪循環に陥っているように見えます。

岡田監督が理想を追い求めても、厳しい現実がそれを許さないというのが、今年に入ってからの代表戦ではないでしょうか。

現状を何ら修正せずに監督がこのまま理想を貫こうとすれば、本大会でも玉砕の可能性が高いと思います。

日本サッカー界の将来を真剣に考えてそれでも良しとするのかどうか、日本サッカー界の最高責任者が速やかに決断を下すべきでしょう。

 次に守備にしぼって見ていきますが、先制されたシーンは自陣で、しかもボランチのところであっさりボールを失ったのがまず敗因。

次にドリブルするパクチソンに対し、センターバックがシュートコースを切るのが遅れたことで失点につながりました。

Jリーグですと、たいていの選手はセンターバックを抜いてペナルティエリアに入ってからシュートを打つケースがほとんどですしミドルシュートの精度も低いです。

でもワールドクラスの選手になると、バイタルエリアで前を向けたらセンターバックの前からでも十分、ミドルシュートの有効射程距離なんですね。

だから口を酸っぱくして「バイタルエリアを広く空けるな。バイタルエリアでボールを持った相手選手を前へ向かせたら、スナイデル・トマソン・エトオあたりに何点やられるかわかったものではない」と言っているわけです。

Jリーグの感覚で「まだシュートを打ってこないだろう」と思ったのかパクチソンと一対一で抜かれるのを恐れたのかはわかりませんが、日本の選手がパクチソンのシュートコースを切る動きが緩慢でした。

これも勇気と積極性の問題です。

さらに4バックの横の位置取りにも問題があったように思います。

4バックはリトリート・ラインに応じた幅で一人一人等間隔で守るのが基本です。(下図)


リトリートライン


ボールがサイドにあるときは、4バックがなるべくリトリート・ラインの幅を維持して横へスライドして守ります。(下図)


リトリートライン2


もちろん相手がサイドチェンジしたら幅を保ったまま素早く逆サイドへスライドしなくてはいけません。

リトリート・ラインより広がって守ると、一人一人の担当スペースが広くなりすぎて、よほど個の能力が高くないと守りきれません。(下図)


リトリート誤


先制された時も、ドリブルするパクチソンの前に日本のセンターバックがなかなか姿をあらわさず、4バックの横幅や選手個々の位置取りが適切だったのかなという疑問が浮かびました。

 早い時間に先制されて同点に追いつかないといけなくなりましたからやむをえないところもあるのでしょうが、日本代表はしばしば両サイドバックが同時に上がってしまって、前述のようにボランチ二人も前へイケイケなので、結局守っているのはセンターバック二枚だけというケースが多々あります。

これではサイドバックに守備的な選手を入れてもぜんぜん意味がありません。格下ならいざ知らずカウンターを浴びるのも当然かと。

これからデンマーク戦まですべて日本より戦力が上のチームとばかり当たりますが、相手の出方を慎重にうかがって両サイドバックとボランチ二枚の不用意な攻めあがりは自重すべきだと思います。

二点目は楢崎選手も良くわかっていると思いますが、結果が出ていないことからくる焦りでしょうか、相手に飛びこむのが早すぎました。

 攻撃面では、パス回しにおける連動性がほとんど見られません。

相手の方がフィジカルで勝っているというのはわかりきったことなのですから、相手が自分の体にさわる前にパスをはたいてしまう、リズム良くパスが回れば、相手もうかつに飛び込んでこれなくなります。

しかし今年最初のベネズエラ戦からそうなのですが、パス回しに連動性がほとんど見られません。

ボールを持っている味方が自分でなんとかするのを周りの選手がだまって見ている。

ボールを持っている選手もパスが出せる位置に味方がいてもなかなかパスをせず、ドリブルしながら次にどうすべきか迷っています。

そして最後には韓国の選手が3人いるようなところへ単独でドリブルをしかけてひたすらボールを失うだけ。

今年に入って選手が自信を失っているのか積極性が見られず、W杯アジア予選やオランダ遠征の時と比べて連動性はがくっと落ちています。

守備から立て直して結果を出すことで選手の自信を回復させないと、攻撃の連動性も回復しないのではないでしょうか。今は「日本対オランダ戦の前半」という理想を追い求めるのはいったん中断すべきです。

チームが間延びしていて選手一人一人が離れすぎているので攻撃でパスが回らないというのもあります。

選手個々があまりにも自由奔放に動いてしまうのでチーム陣形がグチャグチャになってカオス状態になっています。

下図はちょっと極端な例ですが、両サイドバックが同時に上がってしまう(1)、ボランチもバイタルエリアを放り出して上がってしまう(2)、パスが回らないことにじれた二列目が盛んにボランチまで下がる(3)、トップ下がサイドハーフに近づきすぎたりその外側まで行ってしまう(4)、センターフォワードがサイドへ流れすぎる(5)


アンバランス


そうではなくて4-2-3-1の陣形ならなるべくそのフォーメーションを保ちつつ、ボールを前へ運ぶのに連動してチーム全体で前進する。(下図)

フォーメーションの形にはちゃんと意味と役割分担があるわけですから、よほどの場合以外、そのバランスを崩さないことが重要です。

もしポジションチェンジをしてもフォーメーション全体の形やバランスをなるべく維持しなくてはいけません。


チームバランス


 個人技では、相手に厳しいプレスをかけられてスペースが狭くなると日本人選手のトラップ技術の甘さが目立ちます。要改善点です。

 今回の韓国戦は結果も思わしくありませんでしたし、試合内容も問題点がまったく修正されず、そのことが最近3試合の結果につながっています。

W杯代表メンバー発表後に、選ばれた選手があっちこっちのテレビ番組に出ていましたが、とてもがっかりさせられたのは「南アフリカに何のDVDを持っていくか」ということを盛んにしゃべっていたことです。(お笑い番組のDVDがどうとか)

結果が出ているなら南アにDVD持って行こうがホテルに彼女連れこもうが文句は言いません。プロですから。

しかし今年に入ってからのチーム状態で、選手が南アでDVD見ているひまなんてあるのでしょうか。

以前にも言いましたが、ワールドカップはサッカー選手引退前の卒業旅行先じゃありません。

プロサッカー選手という夢をかなえ、さらにW杯の代表にも選ばれたという大変な幸運に恵まれたのが今の日本代表選手でしょう。

だったら一度しかない人生でこれからのたった1ヶ月間死ぬ気で24時間サッカーのことだけに集中する毎日を送ってみてはどうですか。

どうやったらカメルーンに勝てるのか必死に考えてみる。カメルーン戦が終わったらその反省をもとにどうやったらオランダ・デンマークに勝てるか考える。

シュートの正確性を高め、どんな強いパスを受けても足にすいつくようなトラップができるようになるまで練習する。

フィジカルが劣勢でもボールを取られない技術を研究する。

チャンピオンズリーグの録画を見て日本代表とどこが違うかじっくり勉強する。

南アで何のDVDを見るか気にするJリーグの日本人選手と、欧州リーグで活躍するオランダ・デンマーク・カメルーンの選手たち。サッカーに賭けているものが根本から違うのではないですか。


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        2010.5.24 埼玉スタジアム2002


       日本  0  -  2  韓国


                '6  パクチソン
                '90+ パクジュヨン(PK)



     GK 楢崎        GK チョン・ソンリョン

     DF 今野        DF イ・ヨンピョ
       中澤          イ・ジョンス
       阿部          チャ・ドゥリ
       長友         (オ・ボムソク 67)
                   カク・テヒ
     MF 遠藤 
      (駒野 79)     MF パク・チソン
       長谷部        (イ・スンリョル 76)
       中村俊         キム・ジョンウ
      (森本 63)       イ・チョンヨン     
       本田          キ・ソンヨン
      (中村憲 82)     (キム・ボギョン 76)
    
     FW 大久保       FW ヨム・ギフン
      (矢野 87)      (キム・ナミル 46)
       岡崎          イ・グノ
                  (パク・ジュヨン 46)
 




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■コメント

■Re: 理想と現実と [kkenji1]

弱すぎてがっかりしました。
イングランド戦はもう少し期待を持たせて欲しいです。
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