■実戦的とは何か

 日本代表の試合やJリーグを観ていて、「世界と比べて日本人選手はここの経験が足りない」とか「ちょっとした工夫でもっと良くなるのに」と思うことがあります。

W杯本番が近づいていますが、日本代表がより実戦的なチームになれるよう戦術上の改善ポイントを今回は見ていきます。

 世界と日本のサッカーで大きな差を感じるのはカウンターアタックです。

図1
誤カウンター
(クリックで拡大)

図1は3対2でカウンターをしかけている場面ですが、日本人選手にありがちなのは、普段コーチから「攻撃でタメをつくれるのが良い選手」と言われているせいかもしれませんが、カウンターでもボール保持者が周囲をキョロキョロ見回しながらドリブルのスピードをわざと遅くしてタメをつくっているケース。(1)

イングランドでは「時間は常に守備の味方」と言われます。

もうカウンターアタックに必要な人数はそろっているわけですし、ドリブルを遅くして不必要なタメをつくっている間に背後から迫っている敵にボールを奪われかねません。

ボール保持者はなるべく速いドリブルでゴールへの最短距離を進む必要があります。

ボール保持者をサポートする選手のポジショニングもまずい場合が多く、ドリブルする味方とは遠いところを平行に走ってしまうケース(2)や、ひどい場合になるとどんどんアウトサイドへ離れていってしまう選手さえいます。(3)

これも普段コーチから「現代サッカーではサイド攻撃が有効」「サイド攻撃の時は自分のスパイクにラインの石灰がつくようにしろ」と言われたことを選手が忠実に守っているせいかもしれません。

しかしこれではせっかく3対2の局面をつくったのにボールがあるところでは1対2でこちらが不利になってます。

サポートすべき選手がボール保持者から離れすぎていては相手を崩しにくくなりますし、仮に味方へスルーパスが通ったとしてもパスを受けた選手がシュートするためには結局ゴールへ向かわなければなりません。(4)

それでは最短距離を戻った相手DFに先回りされて防がれてしまいます。(5)

一度抜いた敵選手をもう一度抜かなくてはならないというのは二度手間ですし、この選手を抜くために手数をかけて中央へセンタリングすればパスミスや受ける方のトラップミスなどミスの可能性が高まり、その分ゴールの可能性は低くなります。

「ゴールは横68mのゴールラインの中央にある」というのはサッカーにおける絶対不変の真理ですが、この当り前すぎる法則を選手がよく理解していないとこういうことが起こってしまいます。


図2
正カウンター1

図2はより効果的なカウンターアタックですが、場面は同じ3対2のシーン。

ドリブルする選手は確実にボールをコントロールできるなるべく速いスピードでゴールへの最短距離をドリブル。

サポートする選手は、スルーパスをもらったらゴールまで最短距離を進んでシュートできるようにポジショニングを考えながらドリブルする味方をサポートしやすい距離まで近づいてフリーランニングします。

こうすればボールのある局面で3対2の形をつくれてこちらが有利、スルーパスをもらった選手も一度抜いた相手に妨げられることなくシュートが打てます。

かける手数も時間も最小限で済み、そのためミスの可能性も少なくなります。

図3
正カウンター2

図3はより高度なカウンターアタック戦術です。

サポート役の選手は敵DFをかく乱するために、ドリブルする味方を追い抜いたらその前方をクロスしてスルーパスをもらいます。

前方をクロスした選手に敵DFがついていかなければその選手にスルーパスを出してシュートさせ(1)、もしスルーパスを阻止するために敵DFが前方をクロスした味方にピッタリついていけば真中にシュートコースが空くわけですから、
ドリブルしている選手がためらうことなく自分でシュートを決めてしまいます。(2)

カウンターアタックはスピードが命。

的確かつ素早い判断力と二手三手先を読んだポジショニングが重要です。

 ロシアリーグ第11節、ルビンカザン対CSKA戦でこういうシーンがありました。

ルビンの中盤左サイドで本田選手がボールを奪取してCSKAが高速カウンター発動。

本田選手はピッチ中央にいた味方(ジャゴエフ?)にパスし、ジャゴエフからリターンのスルーパスをもらった本田選手がルビンの最終ラインを突破してシュート、残念ながらGKにセーブされてしまったというシーン。

本田選手は図1の(2)のケースみたいにジャゴエフよりやや遠いところを平行にランしてしまったので、スルーパスをもらった地点がややアウト側にふくらんで、シュートを打つときゴールへの角度が少なくなってしまいました。

本田選手があと1~2mジャゴエフに近づくようにランニングすればスルーパスをもらったときにゴールへの角度が広がり、もっとゴールを決めやすくなったのではないでしょうか。

ちょっとした工夫で大きく結果が変わるという例ですが、本田選手はロシアリーグで実戦的なよい経験を積んでいると思います。

図4
スルーパス

図4は数年前Jリーグで観たシーンですが、前がかりになった相手の深いところでボールを奪い返し、裏へ飛び出す味方へスルーパスを出したケースです。

この時(1)と(2)両方の選択肢があったわけですが、裏へ抜け出した選手もスルーパスを出した選手も(1)のコースを選択して私は頭を抱えました。(もちろんシュートまで持っていけず)

スルーパスを出したあとのことを考えていない、「ゴールは横68mのゴールラインの中央にある」というサッカーにおける絶対不変の真理をよく理解していないという一例です。

逆に守備側の視点で見れば、こういう形をつくられた時点で負けなのですが、一人残ったDFがイン側へのスルーパスを切るような守備を心がけることで失点の可能性はいくらか低くできるということになります。

 続いて、サイド攻撃やセットプレーからのセンタリングに対し味方がゴール前につめる場合、日本代表にありがちなのは、ゴール前に飛びこむ選手がみんな同じタイミングで同じような場所につめてしまうということです。

図5
飛びこむタイミング誤

これだと、クロスのタイミングに一人合わなければ全員が合わないということになり、得点の可能性が低くなってしまいます。

図6のようにゴール前に飛びこむタイミングを少しづつずらしてニアも中央もファーポスト側もまんべんなく攻めることで、一人タイミングが合わなくても他の誰かが合わせられる可能性が高まりますし、もし図6の真中にいる選手がシュートを空振りしても後からつめている選手にシュートするチャンスが生まれます。

図6
飛びこむタイミング正

これもちょっとした工夫で、得点の可能性が大きく変わってくる一例です。

 こんどはゴール前で自分のマークを外してフリーでシュートするテクニックです。
世界クラブ選手権のガンバ大阪対マンチェスターU戦から取り上げます。

図7
マークの外し方

録画を消してしまったので位置関係などちょっと不正確なところがあるかもしれませんが、前半ロスタイムにマンチェスターUのコーナーキックからC.ロナウドがヘディングシュートを決めたシーン。

ロナウドをマークしていたのは橋本選手だったと思いますが、ロナウドはマークしている橋本選手が自分を見た瞬間あえて前方へランニング。

橋本選手はロナウドとCKからのボールをいっぺんに見ることはできませんから、ロナウドが自分の背後についてきていると思って一緒に前方へランします。

橋本選手が自分を見ずに前方へのランニングを続けるところを見はからい、ロナウドが前方へのランニングをやめてその場で立ち止まるかやや後方へ下がるとマークが外れます。

自分がフリーなったところでGKの位置を確認しつつ落ち着いてヘディングシュートを決める。

イングランドの戦術書に載っている基本的なマークの外し方ですが、覚えておくと実戦で使える戦術です。

セットプレーの前にキッカーと、「自分はこのあたりで止まってマークを外すからそこへボールを頼む」と打ち合わせておくとよいかもしれません。

 最後に戦術ではなく個人の技術面についてですが、日本人選手は世界のトップレベルと比べると足技では差がかなり縮まりましたが、ヘディングでボールを狙ったところへ送るという技術ではまだまだ差をつけられています。

シュートだけでなくヘッドを使ったパスもそうです。

フリーでヘッドさせてもらっているのに、日本人選手がまんまと敵にパスしてしまうシーンを良くみかけます。

本番まであまり時間がありませんが、要改善ポイントでしょう。

 今回は、知っているかいないかで試合の結果が大きく分かれるような実戦的な戦術のポイントを厳選して見てきました。

戦術的にはやはり中級レベル以上の知識になるかと思います。

ワールドカップでは日本より戦力が上のチームが多く、日本が相手に押しこまれる時間が長いことも予想されます。

そうした場合、日本代表が我慢して我慢して数少ないカウンターアタックやセットプレーのチャンスから点を取れるかどうかで勝敗が大きく分かれることもあるでしょう。(データ上、W杯における日本のセットプレー成功率は低かったように思いますが)

世界で勝つためにはこういうプラグマティック(実戦的・実用的)な戦術をしっかりマスターすることが重要です。

日本では、ゴール前でパスをもらったらそれをまたいだりヒールキックしたりするいわゆるサーカスプレーが「オシャレ」と高く評価されるみたいで、惨敗した東アジア選手権の韓国戦でも相手のゴール前でしきりに代表選手がやっていました。

しかし地に足がついていないと言うか、「良いプレー」や「勝つためのサッカー」の方向性が世界とちょっとずれているように思います。




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