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■寸足らずの毛布

 1950年代にブラジル代表で活躍したジジという選手がいましたが、彼はこんな名言を残しているそうです。

「サッカーは寸足らずの毛布だ。足下にかければ上半身が寒い、頭からかぶると足が出る」

サッカーとスペースの関係をこれほど的確にあらわした言葉はないと思います。

DFラインからトップまでのチーム陣形を「寸足らずの毛布」にたとえて、足元にかければ上半身が寒い=自陣にベッタリ引き過ぎると相手ゴールまで遠くなりすぎて得点しづらい。(図1)

図1
毛布2

(クリックで拡大 以後同様)

頭からかぶると足が出る=逆にゴールが欲しくて前がかりになりすぎると、カウンターから失点しやすくなる。(図2)

図2
毛布1


「サッカーは寸足らずの毛布」

サッカーの本質をついた言葉に、うなってしまいます。

日本のサッカー界はやる方も観る方も「サッカーチームの強弱は個人の技術の高低で決まる」という考え方がとても強いように思います。

市販されているサッカーのテキストも、足技に関するものがほとんどです。

高い個人技ももちろん重要ですが、ワールドカップで勝つためにはそれだけでは十分でありません。

日本サッカーが世界の列強国にはっきりと差をつけられているのが「スペースの上手な使い方」への理解です。

ジジの「寸足らずの毛布」という表現を借りて日本のサッカースタイルをたとえれば、「上半身も下半身も寒いのは嫌なので、寸足らずの毛布をムリヤリにひっぱった結果、毛布がまん中から破れてしまった」という風に言えるでしょう。(図3)

攻撃が大好きで前へ前へと行きたがる攻撃陣と、失点を恐れてズルズル下がる守備陣。

結果としてセンターバックの前のバイタルエリアを広く空けてしまい、そこを相手に支配されて2次攻撃・3次攻撃を受けて失点してしまう。こちらはまったく反撃できなくなる。

図3
毛布

ジーコジャパンの時代から、当国際サッカー戦略研究所が「悪い時の日本代表はチーム陣形が間延びしている」と口をすっぱくして言っているのはそういうことです。

トップのビドゥカにロングボールを当てて、日本の広く空いたバイタルエリアにボールがこぼれたところをキューエルら二列目が拾って2次攻撃・3次攻撃。

先制したあと防戦一方になった日本は最後には耐えきれなくなって大量失点で敗れたW杯ドイツ大会のオーストラリア戦が典型です。

岡田ジャパンにもそうした傾向があります。

日本サッカー界の傾向として、なんといっても攻撃が大好きで
0-0で引き分けるぐらいなら2-3で負けた方が納得がいくという考え方があるように思います。

Jリーグのスコアを見ていると2-3とか4-4みたいな、しまらない点の取り合いが多い印象を受けます。

今年のACLで早くもJリーグ勢が全滅してしまいましたが、Jリーグ各チームの、陣形が間延びしたイケイケの攻撃サッカーというスタイルも関係しているのではないでしょうか。

ジジの「寸足らずの毛布」という格言を聞いたことはあるでしょうが、それを本当に理解できている日本人監督や選手は少ないと思います。

 日本サッカー界ではヨーロッパと南米の両方をサッカーの先進地域と考える人が多いと思いますが、ことサッカー戦術に限って言えば、世界の最先端を走っているのはヨーロッパです。

ヨーロッパにおける近年の戦術進化の傾向は、FCバルセロナに代表される攻撃的ポゼッションサッカーと、モウリーニョ監督率いるインテル・ミラノに代表される堅守速攻型サッカーに二分されるのではないでしょうか。

試合で大半の時間ボールをポゼッションして前からガンガン攻める前者のスタイルをとれるチームは、FCバルセロナやスペイン代表など限られています。

一方、程度の差はありますが後者のスタイルをとっているチームの方が多いかと思います。

ブラジル代表というとこれまで自由奔放で華やかな攻撃サッカーのイメージがありましたが、ドゥンガ監督が就任してからのブラジルは堅守速攻型にスタイルを変更したように見えます。

今年岡田ジャパンが対戦したセルビア代表3軍もこのタイプでした。

DFラインを自陣のやや引きぎみのところに置いて、DFからトップまでを30mぐらいでコンパクトに保って守備ブロックをつくり、そこからプレスをかけていくという堅守速攻型が一番手堅い戦術と言えます。(図4)

ベッタリ引かれても相手が間延びしていればDFラインの前にスペースがあるので崩せますが、コンパクトな陣形でやや引きぎみに構える堅守速攻型を崩すのは一番苦労します。

図4 堅守速攻型
堅守速攻


 さてワールドカップメンバーの発表記者会見で、抱負を聞かれた岡田監督は「日本らしくプレスをかけて高い位置でボールを奪って攻めたい」とコメントしていました。

フランスW杯アジア予選でクビになった加茂周元日本代表監督も「日本人選手は深い位置からボールを奪っても相手を崩す力はない。相手ゴールに近いところでボールを奪わないと日本人は得点できない」というのが持論でした。

図3で示した通り、日本の攻撃的な選手は得点が欲しいあまり、焦って早くから相手ゴールに近づきたがる傾向にあります。

しかし「相手ゴールに近いところでボールを奪わないと日本人は得点できない」とは限らないと思います。

もし岡田監督の言う「前からプレスをかけて相手ゴール近くでボールを奪う」ということが、図2の頭から毛布をかぶった状態のことを指しているのであれば、こちらが相手を押しこんでいる分相手DFラインが深くなって裏が狭くなっているということを意味します。(図5)

図5
抜けちゃえば一緒1
(敵の4バックの裏へ日本の選手〔青〕が抜け出したところ)

「バイタルエリアが使えない日本代表」の記事で、「ゴールの確率が一番高い攻撃の形はどんなものかというと、オフサイドにならずにボールを持った味方が前を向いて相手GKと一対一になること」と言いました。 

ここが重要なポイントですが、オフサイドにならずにボールを持った味方が相手DFラインの裏へ抜け出せれば、相手DFラインが深かろうが浅かろうが得点の可能性にたいした違いはありません。

(裏へ抜け出したこちらの選手より相手のDFの足の方が相当速いというなら別ですけど)

むしろこちらが堅守速攻型の陣形をとることで相手がDFラインを浅くして押しぎみに来てくれた方が、相手DFの裏のスペースが広くなってGKと一対一の形をつくりやすくなると言えます。(図6)

先ほど言ったとおり、いったんボールを持った味方が相手DFラインの裏へ抜け出してしまえば、よほどの鈍足かドリブルが下手くそでもない限り、得点の可能性にたいした違いはありません。

裏へ抜け出してさえしまえば後は図の5と6は一緒ということです。
だったら図6の方が広いスペースがある分だけ断然裏へ抜けやすいと言えるのではないでしょうか。

図6
抜けちゃえば一緒2

後で詳しく述べますが、ドイツW杯直前にドイツ代表とテストマッチをやってもう少しで勝つところでしたが、日本がドイツから先制したシーンは日本陣内でボールを奪って、相手が高く上げた最終ラインの裏へ味方選手とボールを送りこんでカウンターから奪ったゴールでした。

つまり加茂元監督が言う「相手ゴールに近いところでボールを奪わなければ日本人選手は得点できない」とは限らないわけです。

そういう発想は「サッカーは寸足らずの毛布」という格言に代表される、サッカーとスペースとの関係をよく理解できていないことのあらわれです。

 さらに言えば、こちらが相手を押しこんで攻撃的にやりたいという理想を持っていても、相手が格下のアジア諸国だけならいざしらず、ワールドカップに行けば日本代表より戦力で勝るチームの方が多いわけですから、ほとんどの時間、相手に押しこまれる展開が続く試合もあるかと思います。

たとえ互角の相手であっても、こちらが先制して相手が同点にしようと猛攻をしかけてきて、日本代表が相手の攻撃をがっちりと受け止めて失点しないよう耐えなければいけない時間帯というのもあるでしょう。

そういう時は日本代表も堅守速攻型の陣形をとって我慢する必要があります。

逆に日本が勝たなければいけない試合で相手が最初から堅守速攻型の陣形をとってきたり、こちらが先制されて相手が1点を守りきる戦術に切り換えた場合、日本がボールをポゼッションして(させられて)相手を押しこんで攻撃しなければならないケースも出てくるかもしれません。

日本代表が攻撃的なポゼッションサッカーを理想とするのはとてもよいことだと思いますが、世界で勝ちたいなら相手との力関係やゲーム展開に応じて攻撃的なポゼッションサッカーと堅守速攻型サッカーを上手に使い分けられるようにしておく必要があると思います。

堅守速攻型をとったからといって「日本らしいサッカー」を放棄することにはならないと思います。

DFラインをやや引きぎみにしてそこから相手に厳しくプレスをかけ、ボールを奪ったら「人とボールをよく動かして」すばやいパス回しから相手の浅いDFラインの裏へ味方とボールを送りこむ。

DFラインをどこへ置くかの違いだけで、それだってアジリティの高い日本人に合ったサッカーではないでしょうか。

(余談ですが、二つのチームが両方とも堅守速攻型をとったら、試合が膠着状態になって引き分けの可能性が高そうです)

 これまで試合を観た経験から言って、ジャイアントキリング(大番狂わせ)が起こるパターンというのは、弱小チームが強豪チームに先制されてそれをひっくり返して大逆転したケースというのはほとんど観たことがありません。

弱小チームが強豪チームに攻められても我慢してゴールを許さず、逆に弱小チームの方が先制点をとったことで強豪チームが焦って攻撃でミスを連発、結局そのままタイムアップになってしまったというのがジャイアントキリングの典型的なパターンです。

アトランタ五輪で日本がブラジルを破ったケースしかり、昨年のコンフェデでアメリカがスペインを破ったケースしかりです。

ワールドカップでは、オランダもデンマークもカメルーンも「日本から勝ち点3を取れないチームが決勝トーナメント行きを逃す」と考えていることでしょう。ここに日本がつけこむスキがありそうです。

オランダもデンマークもカメルーンも日本から先制点を奪えない時間が長くなればなるほど焦ることでしょう。

勝ち点3を取るために相手が押しこんでくるなら、相手の裏のスペースが広く空きます。
それを利用して日本が先制できれば、どんな強豪でも相当焦ります。

日本がしっかりと相手の攻撃をいなすことができれば、焦りからくるミスも手伝って、番狂わせの可能性が出てきます。

先ほど言った、W杯ドイツ大会の直前にレバークーゼンでドイツ代表とテストマッチをやった時のことですが、もう少しで日本がドイツから大金星をあげるところでした。

あの試合も地力で勝るドイツが日本を圧倒的に押しこんで、日本は引かされて守るという展開。

日本が先制したシーンは、日本人の俊敏性を生かして素早いパス回しからスルーパス、ドイツが高く上げた最終ラインの裏へ高原選手が抜け出しGKレーマンをかわしてゴールしたものでした。

日本の2点目もカウンターからでしたが、ドイツが本気で攻めに来て日本の守備が耐えきれず、ドローに終わってしまったのは残念でした。

ドイツはW杯初戦のコスタリカ戦でもメッツェルダーとメルテザッカーの両センターバックが高く上げたDFラインが不安定で、カウンターからワンチョペにゴールを食らっていましたが、南アフリカで日本が強豪国を打ち負かすヒントがレバークーゼンでのドイツ戦にあると思います。

ではどうしてこの試合で日本はコンパクトな陣形(堅守速攻型)ができたのに、本番ではできなかったのかというと、日本は自分で意識的に陣形を決めることができず、対戦相手につられる傾向があるからです。

つまり、ドイツのようにコンパクトな陣形をとる欧州型のチームとやる時は日本もつられてコンパクトな陣形になるために、時たまびっくりするような好ゲームを見せることがあります。(プラハでチェコを破った試合など)

ところがオーストラリアのように相手が間延びしたチームだとそれにつられて日本も間延びしてしまいがちです。

ロングボールを多用するオーストラリアは間延びした陣形でもOKというか、それが彼らの得意とするスタイルですし、逆に日本にとって不利なスタイルと言えます。

日本が相手につられて間延びすることで相手が得意とする土俵にまんまと乗ってしまった、それがドイツW杯のオーストラリア戦だったということです。

日本代表は、どんなに緊張する試合でも冷静さを失わず、自分たちの意志で陣形を決められるようにならなければいけません。

ワールドカップで日本代表が決勝トーナメントを勝ち進んで行くためには「サッカーは寸足らずの毛布」であることをよく理解して、相手との力関係や試合展開に応じて攻撃的なポゼッションサッカーと堅守速攻型サッカーを上手に使い分けられるようになることが必要だと思います。


 今日はサッカーの戦術としては、中級から上級編のお話をしました。

日本代表の最近の試合内容が気になるので、ある代表選手にメールをしてみました。

返事はありませんでしたけど、実際に取り入れるかどうかは別として、当国際サッカー戦略研究所の問題提起が岡田ジャパンに届くとよいと思います。





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