■効果的な攻撃の組み立て方

 5月4日の記事で、サッカーは積極性と勇気が求められるスポーツであると言いました。

しかし戦術を知らなければ「有意義な挑戦」と「無謀な自爆行為」との区別がつかず、ただ単にがむしゃらに走りまわっていただけでは気がつくと試合に負けていたということになりかねません。

やはり自分より強い相手に効率よく勝つためにはサッカーというスポーツを深く知る必要があり、そのためには戦術理解が欠かせません。

 今回は攻撃の組み立て方についてとりあげたいと思います。

岡田ジャパンの攻撃面における課題として、バイタルエリアを上手く使って相手を崩すことができないということを再三指摘しました。

「日本の場合、前線に人数をかけないと点が取れない」と岡田監督はしばしばコメントします。

ところが、前線に人数をかけてもあまり効果的な攻撃ができていないのがこれまでの岡田ジャパンであり、前線で相手を崩すための有効な動きができないために将棋で言う「死に駒」になっている選手が多いのがその原因です。

逆にいえば、選手が有効に動ければ前線にそれほど人数をかけなくても点はとれるわけで、岡田ジャパンはそれができないから守備が手薄になってカウンターから失点しているとも言えます。

 あるサッカー雑誌に、パスで攻撃を組み立てる時の岡田ジャパンの練習方法がのっていました。

好ましくない練習
(クリックで拡大 以下同様)

まずセンターバックが縦にクサビのパスをいれ、前方の選手が下がってきてボールを受けてバックパス、それを受けた選手が前方へパスをするというものです。

書店で普通に売っているJリーグの元監督が書いたサッカーのテキストでも、いわゆる「ポストプレー」と称して攻撃のお手本とされています。(黄色い円内のプレー)

しかし、こういうプレーを絶対にやってはいけないとは言いませんが推奨はしません。

なぜなら選手に間違ったプレーを習慣づけてしまいかねないからです。

後方からパスが来た場合、選手が第一に選択すべきプレーはボールを持って前方へターンすることです。そして前方へのシュートかパスかドリブルかを選択することになります。

必要もないのにバックパスすればそれだけ攻撃が遅くなりますし、時間がかかれば相手の守備も整ってしまいます。

後方から来たパスを受けて前方へターンする場合、相手ゴール方向への視界を確保するために自分のヘソをタッチライン方向へ向けて半身でボールを受けるのが理想的なボディシェイプです。(下図の右)


ボディシェイプ


自分の背後に相手選手がぴったりついている場合は半身になってボールを受けるのは難しくなりますが、そういう場合はパスを受ける前に一旦パスを受けたいスペースとは逆方向などへ動いて相手のマークを外し、そこからパスを受けたい本来のスペースへ戻ってきて半身でパスを受けるようにするのが理想です。

こういうプレーはスペインの選手が伝統的に上手いですし、細かいことですが選手が手を抜かないできちっとやることでスペインの芸術的なパスワークが支えられていると言えるでしょう。

サッカー番組ではメッシのドリブルやC.ロナウドのブレ球シュートといったミラクルな個人技の映像を好んで流すせいか、レベルの高い試合で勝敗を決定するのはミラクルな個人技を出せるかどうかだみたいな誤解が日本にあってその分基礎がおろそかになっているように思うのですが、むしろ後ろから来たボールを正しいボディシェイプで受けるといった地味なサッカーの基本を11人の選手がどれだけ正確に積み重ねていけるか、それが二つのチームの優劣を分けるベースだと思います。

私がサッカーの試合を見るときも、まずそこに注目します。

高いレベルで基礎ができているチーム同士が他者に差をつけるための応用力、その一つがミラクルな個人技でしょう。

 さて一番上の図で示した日本でお手本とされるポストプレーの練習ですが、後方からパスを受ける選手は相手ゴールに完全に背を向けてパスを受けることがほとんどです。

これでは相手ゴール方向への視野が確保できず、ボールを持って前方へターンするのがやりづらいです。(上図の左)

しかも練習によって「後方から来たパスを受けたら必ずバックパスしなければいけない」という間違った習慣が身についてしまいかねません。

後方からパスが来たら第一選択肢はボールを持って前方へターン、それができない時はバックパスという、サッカー選手として正しい優先順位でのプレー選択が実戦ではできなくなるおそれがあります。

実際、岡田ジャパンの攻撃は無駄なバックパス・横パスが多く、パスが回っている割には攻撃が機能していません。

岡田ジャパンがやっているというああいった練習法では高度なパスサッカーはできないと思いますし、バイタルエリアを有効に使って相手を崩すこともできないでしょう。

後方からパスが来たらできるだけ半身でボールを受けて前方へのターンを心がける、パスを出すほうもできるだけパスに角度をつけてジグザグにボールを前方へ運んでいくのが理想的です。


パスの組み立て方


上の図は、パスを回す選手を消去してボールの動きのみを黄色い矢印で表したものですが、岡田ジャパンがやっているポストプレーの練習(図の下)のようにタッチラインと平行のパスを中心に攻撃を組み立てるのは、あまり好ましくないと思います。

(相手の陣形の都合上、実戦ではどうしてもタッチラインと平行のパスを出さなければならないケースはありますから、絶対にやるなとは言いません)

図の上のように、ワンツーやオーバーラップを組み合わせて、角度をつけたパスでジグザグに前方へボールを運んでいくのが理想的です。

そのためには細かいことですが、ボールを受ける時のボディシェイプに注意したり、相手のマークを外すためにボールをもらう直前の動きを工夫する必要があります。

 そこであるイタリアのサッカー戦術書から岡田ジャパンにあいそうな練習メニューを紹介しておきます。


オーバーラップ練習


ボールを持った選手がドリブルし敵に見立てた人形の前方へ来るまでに、もう一人の選手がドリブルする選手を追い抜いてパスを受ける体勢を取ります。パスを受ける時は常に正しいボディシェイプを心がけましょう。
 
ドリブルする選手は味方にパスを出した後、前方の人形を抜きます。

この時重要なのは、パスを出したのと逆方向から人形を抜くことです。

こうすることで、敵選手をパスを受けてドリブルする選手と自分を抜いてフリーランニングする選手のどちらについて行くかで迷わせ、守備側の混乱を誘います。

人形を抜いた選手はドリブルする味方を背後から追い越し、ドリブルする選手が人形に近づきすぎてしまう前に正しいボディシェイプでパスを受ける体勢を取ります。

このオーバーラップを何回か繰り返した後、最後は必ずGKをつけたゴールにシュートでフィニッシュします。

今度はパスを出す方向を左右逆にして練習します。右と左を交互に織り交ぜても良いでしょう。

この練習の途中にワンツーの練習を組みこむのも有効だと思います。

二人の選手がタイミングを合わせることが重要ですし、ドリブルする選手があまりノロノロドリブルしていたのでは実戦で使えません。

「練習のための練習」では意味がありません。常に実戦で使うことを意識させます。

ミスがないようにできるだけ速く正確にプレーできるようになるまで練習します。

 それができるようになったら、今度は三人が同時にからみます。


第三の動き


この練習によって実戦で常に第三の動きを選手に意識させることで、プレー中に関係のないところでボールウオッチャーとなって突っ立っている無駄な「死に駒」を日本代表からなくしていきます。

上手くできるようになったら、止まっている人形ではなく実際に動く選手にプレスをかけてもらって練習するともっと効果的です。

こうした練習メニューを繰り返すことで、後方からパスを受ける時に常に正しいボディシェイプをとる、パスを受けたらまず前方へのターンを試みるというよい習慣が身につき、実戦においてオーバーラップやワンツーを組み合わせた高度なパス回しによる攻撃展開を実現できるのではないでしょうか。

ただがむしゃらに走りまわるのではなくて、考えて走ることが重要です。



(高校やユースチームの練習に取り入れてもOKでしょう。実戦で使えるようになるまで練習したら、あなたのチームも「セクシーフットボール」なんて言われてしまうかもしれません)



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■コメント

■Re: 効果的な攻撃の組み立て方 [りすお]

はじめまして。楽しく拝見させていただきました。
ちょっと疑問に思ったことがあったのでコメントします。
所謂定石のポストプレーを否定し、ジグザクにボールを運ぶことを推奨していますが、どちらも正解であり、正解ではないと思います。
サッカーは相手があるので、相手がそのやり方に対応してきたら、どんなプレーも通用しません。その時の状況に応じて、相手が対応できない(しにくい)プレーを選択するべきなのです。
私の考えとしては、定石として攻撃の型は複数マスターして、相手の状況に応じてとるべきと考えます。でも、日本のサッカーは全然そこまでできてないですね。
ブログ主さんもおっしゃってるとおり、日本はサッカーへの理解が足りないとつくづく思います。
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