■日本代表、自分を見失って大敗

 東アジア選手権の最後の試合となった韓国戦、日本が優勝するためには2点差以上の勝利が求められた試合でしたが、逆に2点差をつけられての黒星という結果に終わってしまいました。

対戦相手の韓国は日本とほぼ互角の相手と見ていました。

よってホームでは絶対に勝たなければいけない相手でしたが、1-3という結果はあってはならない大敗だったと思います。

 それでは試合展開を振り返りましょう。

立ちあがりは両チームとも激しくプレスをかけあってほぼ互角の展開、やや日本が優勢だったでしょうか。

前半20分、遠藤のFKから闘莉王がウラへ抜け出したところ相手DFに手で押さえ込まれPK獲得、これを遠藤が落ちついて決めて日本先制。

しかしここから日本がやや受身にかわり、韓国が攻めこみます。

韓国は日本の中盤のプレスを避けてロングボールを多用し、日本のセンターバックとボランチの間のスペースが広く空いていたのでことごとくボールを拾われます。

一方日本も韓国につられるようにロングボール攻撃を多用、フィジカルの強い相手の思うツボとなり徐々に攻撃のリズムを失っていきます。

32分、日本の右サイドにパスを通されてペナルティエリアに侵入した韓国の選手を内田が倒したとしてPK献上、これをイ・ドングクが決めて振り出しへ。

39分、カウンター攻撃から中盤でボールを受けたイ・スンヨルが強引にロングシュートを放ち、前方にいた中澤に当たってコースが変わり、やや不運な失点で逆転を許します。

41分、日本のFKの時、相手ともつれた闘莉王が報復行為で一発退場。きわめて苦しくなりました。

 後半も立ちあがりは重苦しい展開は変わらず。

7分、岡崎を倒した相手選手が2枚目のイエローで退場、さらに15分ぐらいから韓国の運動量が落ちて日本が押しぎみになります。

20分、右サイドを突破した内田から玉田へパスが出ますが今一歩のところでシュートできず。

逆に25分、韓国のカウンターからこちらの右サイドを突破され、センタリングを受けたキム・ジェソンがシュート。これが決まって1-3。

このあと日本はたいした見せ場もつくれずタイムアップとなりました。

 それでは試合内容を分析します。

まず最初に指摘したいのは、「クラシコ・伝統の一戦」に対する過緊張のせいか、良い結果が出てない焦りからか知りませんが、この試合の日本代表は攻守にわたってこれまでやってきた事がブッとんでしまい、韓国につられて相手の注文通りのサッカーをやってしまったということです。

日本代表が自分達の長所を放棄して、わざわざ相手の長所をひきたてるようなサッカーをやってしまった、それが1-3というスコアになってあらわれたと思います。

1-3というスコアも同じなら、先制して逆転されたという得点経過も同じ、日本よりフィジカルに勝り、ロングボールを多用する相手につられるようにこちらもロングボール攻撃を多用して攻めのリズムを失い、日本のセンターバックの前にスペースを空けてそこで相手にボールを拾われてピンチの連続。

2006年W杯ドイツ大会のオーストラリア戦と同じ失敗を繰り返してしまいました。

韓国の監督は「日本を研究していた」と言っていますが、もしそれが事実ならこういうことではないでしょうか。
(もちろん私が韓国の監督なら、日本の欠点を親切に教えてやるようなことはしません)

日本代表が現代サッカー戦術の基礎をまだしっかりとマスターしきっていない、ちょっとプレッシャーがかかる試合だと普段できることでもたちまちできなくなってしまう、その弱点を相手につけこまれたと思います。

 現代サッカーのチーム戦術では、DFからFWまでの長さを30m前後におさめてチームが上下動してもそうしたコンパクトな状態を常に保たなくてはいけません。

システムにもよりますが、チーム全体で30m前後におさまるのはもちろんのこと、DFとMFでつくる2ラインもしくは3ラインを等間隔にして、ブロックをつくるようにしなければいけません。

これがチームの守備・攻撃すべてのベースとなります。


引きぎみ
(クリックで拡大)

     ↓  ↑

普通

     ↓  ↑

押しぎみ


当ブログ記事・W杯出場決定も、いろんな意味で後味の悪い試合(その2)

当ブログ記事・地のサッカー

ところが日本のサッカー選手はチームをコンパクトに保つということが本当に苦手で、一つのチームが、失点を怖がって引きぎみになるDFラインと、得点を焦って前のめりになるFW・攻撃的MFの二つに別れてしまって、特にDFとボランチの間のスペースを空けてしまうという悪いクセがよく見られます。


間延び
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また、全体をコンパクトにして強烈なプレスディフェンスをかけてくるチームを破るときの定石は、FWにロングボールを当ててウラを取られたくない相手DFをズルズルと下がらせることでチーム全体を間延びさせるというもの。

これはW杯アジア予選、ホームでのウズベキスタン戦で指摘したとおりですが、この試合でもおそらく韓国は意図的にロングボールを多用して日本を間延びさせ、特に日本はDFとボランチの間のスペースを空けやすいということを知っていて、そのスペースが空いたところをうまく使って攻撃を展開してきたものと思われます。

これはドイツ大会でオーストラリア監督だったヒディンクが使った戦術と同じです。

日本がPKで先制したことでやや受身になったこともあって、余計にそうした戦術がハマってしまったのではないでしょうか。

 それではどうすれば良いか。

ロングボールを放りこまれても日本のDFラインが多少下げさせられてしまうのはやむをえませんが、特にDFラインとボランチのラインを一定にしてスペースを空けないということに注意して、相手のロングボールをこちらのDFがヘッドでクリアしたら、必ずこちらのボランチがボールを拾って前へつなぐということを、一試合を通し辛抱してやり続けることです。

相手がロングボールを多用するチームだと相手につられて間延びしがちになりますが、選手は常に前後のポジションの味方との距離をチェックして修正し、チーム全体でコンパクトな陣形を保ち続けられるようにしなければなりません。


失点シーンですが、2点目はややアンラッキーな面がありました。

しかし、1点目のきっかけとなったPK献上について、既に一度レフェリーがPKの笛を吹いているときはいつもよりPKが出やすくなっていると注意すべきで、あの判定は少し日本に厳しいものでしたが内田選手はその点経験不足でしたね。

3点目は韓国のカウンターを受けた時、いちばんメインスタンド側がいた選手がオフサイドラインをそろえるのを怠るという初歩的なミス。そのため相手はオフサイドにならずゴール前の決定的な位置でパスを受けることができたように思います。

闘莉王選手が退場になった場面ですが、どういう理由であれイライラして退場に結びつくプレーをやってしまえば相手の思うツボ。

経験のある大人の選手がやるプレーではありませんでした。二度とあってはいけないことです。

 次に攻撃面ですが、まず中盤での攻撃の組立てから見ていきます。

中盤では韓国に厳しいプレスをかけられて、なかなかパスをつなぐことができませんでした。そして韓国につられるようにロングボール攻撃ばかりになってしまいました。

日本が韓国よりフィジカルで勝っていればロングボール攻撃も機能したのかもしれませんが、残念ながらほとんど相手DFラインを崩せませんでした。

韓国はセンターバックとボランチの間のスペースを空けないよう、キッチリ守備ブロックをつくって対応していたこともあります。

相手がゴールにカギをかけてもスペインあたりだと理にかなったパス回しで、例えるならカギ穴に合ったハリガネを差し込んでちょちょっと回して簡単にゴールをこじ開けてしまいますが、日本代表の場合、がむしゃらに力任せにカギをひっぱたいてそれでいてゴールをこじ開けられない、世界トップレベルとの差はそれくらいあると思います。

日本代表がこの試合どうしてパスを回せなくなってしまったかというと、局面局面でパスを受けるのに最適なポジショニングというのを、まだ完全に理解できていないからです。

相手が動けば当然パスを受けるのに最適なポジショニングというのも刻々と動いていきますが、相手が4-2-2-2という基本布陣で来た場合は下の図のようになります。


最適ポジション
(クリックで拡大)

黄色で示したポジションが中盤でグラウンダーのショートパスをつなぐ時にパスを受けるための最適ポジションであり、青で示したところはラストパスを受ける(自分の足元or相手DFのウラ)のに最適なポジションです。

ゴールキーパーが相手のシュートを防ぐ時、相手が蹴る瞬間は必ず止まっていないとシュートに対応できないと思いますが、それと同じでフィールドプレーヤーが足元でパスを受ける時も最適ポジションに入ったらパスが出る瞬間までは止まっていないといけません。

ところが今の日本代表は、パスを受ける最適ポジションとはまったく関係のないところへも含めて、90分間がむしゃらに走りまくっていて、これではちょっと厳しくプレスをかけられただけでパスが回らなくなるのも当然です。

「サッカーの守備の基本は相手をフリーにしない、攻撃の基本は相手からフリーになる」ですが、ひどい場合日本代表の選手たちはわざわざ相手の選手へ向かって走って行ってしまい、自分の背中をタイミングが合わないパスが通過するというシーンがしばしば見られます。


ミスパス


スペイン代表やFCバルセロナの試合をよく見てもらいたいのですが、グラウンダーのショートパスをつなぐ時はその局面局面で最適ポジション(人と人の間)を取り、良いポジションを取ったら一度止まってパスを受け、次の展開をはかるという基本を一からやり直すべきです。

パス回しの時も自分の前後にいる味方との距離に注意し、チーム全体をコンパクトに保って前進することが欠かせません。


チームが間延びするとサポート距離が離れすぎてうまくパスが回せなくなります。

仮に相手のプレスが厳しすぎてうまくパスが回らなくても、我慢してチームをコンパクトにし続けて守備ブロックをつくり相手のロングボール攻撃を跳ね返し、ショートパス・ロングパスを織り交ぜながらねばり強く攻撃をしかける能力がなければ、W杯で上位に行くことは難しいでしょう。

この試合、後半の15分過ぎからそれまで猛烈なプレスをかけていた韓国がスタミナ切れを起こしていましたから、そこまで少なくとも同点のまま粘っていたら、後半の後半は日本が押し込む展開になり勝利も可能だったと思います。

思うような攻撃ができなくても、攻守に渡ってコンパクトな陣形を保って自分達の時間が来るまで辛抱するということができずガタガタッと崩れてしまうのは、今の日本代表は経験が足りないということです。

こうした失敗の経験を生かして、W杯までに二度と起こらないように修正しなくてはいけません。

 バイタルエリアに入ってからの攻撃については、日本の選手のシュート意識の弱さを前回課題にあげておきましたが、この試合でもほとんど改善されていません。

シュートを打たなければ何も始まりません。

韓国の2点目なんかが典型ですが、シュートを打てば中澤選手に当たってボールがドロップし、そのままゴールになってしまうということも起こるわけです。

逆に日本の選手はバイタルエリアで自分にパスが来ると、それをまたいでばかり。むざむざ相手DFへの絶好のプレゼントボールになっていました。

本当に消極的です。

「サッカーは消極的な選手・チームが罰を受けるスポーツ」だと何度も言ってきましたが、この試合も罰を受けたのは日本代表でした。

 岡田監督の采配も疑問符がつきました。

この試合2点差以上をつけて勝たなければ、日本の優勝はないわけです。

それが前半を折り返して1点負けていてしかも一人少ないのですから、後半の早い時間から3枚目の交代カードを切って機能しない攻守を立て直し、同点・逆転を狙いにいくべきでしたが、実際にカードを切ったのが試合終了10分前ぐらい。

まさかGK負傷に備えて温存していたのでしょうか。もしそうなら全く意味のないことです。

さらにチームづくりの良い流れを無視した選手起用というのも中国戦から変わりません。

香港戦では遠藤選手を前へ上げてから攻撃が機能しはじめました。

ならばこの試合も遠藤選手を前に出して、いまいち調子が出ていない中村憲・大久保の両選手を外すか、別のポジションで起用するべきではなかったのではないでしょうか。

ところがこの試合でも香港戦で良かった流れをぶった切って、機能していないいつもの布陣・いつもの顔ぶれ。

武士の情けで名指しはしませんが、代表戦で1年3ヶ月以上ゴールできていない選手をほぼレギュラーとしてFWもしくは2列目で使い続けるのはまったくもって理解できません。

岡田監督は「角を矯めて牛を殺している」というか、多少トラップが甘かろうが少々守備で手抜きしようが、チャンスを与えた新しい選手がゴールという結果を出せばそれでいいじゃないか、と私は考えますが。

日本人がやる人事というのは、一度功績があればずっとそのポジションに居続けることができるという非常に硬直した「年功序列制度」になりがちです。

岡田監督の選手起用もそうした傾向があり、それがチームの活性化を阻んでいるのではないでしょうか。

チームのベストメンバーというのは日々刻々と変化する生き物であって、監督の硬直した脳内にあるものではありません。

フランスW杯アジア最終予選において突如大スランプのおちいった三浦カズ選手を、当時の加茂周監督はレギュラーFWとして先発起用し続けました。

もっと早く先発FWを中山選手や呂比須選手に切りかえるべきでしたがそれができず、日本は予選落ちのピンチに陥りついに加茂監督はクビになりました。

岡田監督も同じ失敗を繰り返しつつあります。

 東アジア選手権最終戦の対韓国戦は、1-3というホームではあってはならない大敗という結果になりました。

たかだか韓国相手にカーッとなって自分達のやるべきサッカーを見失っているようでは、もっと緊張するW杯本大会では日本のサッカーをまったくやらせてもらえないうちに終わってしまうことでしょう。ドイツ大会のように。


これは調整が遅れている、時間をかければ自然と調子が戻ってくるとか、そんな生やさしい問題ではありません。

ぬるいテストマッチでだましだまし通用させてきた、日本代表がサッカーの基礎をきっちりマスターできていないところを韓国につかれて、いままで述べてきたような課題が浮き彫りになったと思います。

「これがW杯本番でなくて良かった」と前向きに考えるより他ありませんが、W杯までたった4ヶ月あまり。

このままJリーグが始まって何の修正もなされないまま本大会突入となれば、決勝トーナメント進出さえ非常に厳しいと思います。

オランダやデンマーク・カメルーンは必ず日本のこうした弱点をついてくると考えた方がよいです。

無理をしてでも時間を空け、1ヶ月ぐらい時間をとって集中合宿とテストマッチをやる必要があるのではないでしょうか。

岡田監督の認識は甘いと思います。


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         2010.2.14 国立競技場(東京)

       日本   1  -  3   韓国



      遠藤(PK)'23     イ・ドングク(PK)'33
                  イ・スンヨル  '39
                  キム・ジェソン '70



     GK 楢崎          GK イ・ウンジェ

     DF 長友          DF オ・ボムソク
       闘莉王           カン・ミンス
       中澤            チョ・ヨンヒョン
       内田            パク・チュホ

     MF 遠藤          MF キム・ジェソン
       稲本            キム・ジョンウ
       中村憲           キム・ボギョン
       大久保          (オ・ジャンウン 87)
      (香川 26)         シン・ヒョンミン
      (岩政 45)
                   FW イ・スンヨル
     FW 岡崎           (ク・ジャチョル 56)
       玉田            イ・ドングク 
      (佐藤 82)        (イ・グノ 62)





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