■まだ迷っている日本代表

 東アジア選手権、日本の第2戦は香港との試合になりましたが3-0での勝利という結果でした。

対戦相手の香港は、ホームでもアウェーでも日本が大差で勝利できる相手という戦力評価は昨年秋と変わっていません。

日本が優勝するためには、韓国に勝った中国が香港との試合を残していることを考えると、この試合できるかぎりの大量点での勝利、最低でも6点差以上の勝利が欲しいところでしたが3点差で勝利という結果は物足りないものです。

 それでは試合展開をおさらいしましょう。

前半、立ちあがりからホームの日本が押し込みますが、香港もプレスを勤勉にかけてきてなかなか自由にはやらせてもらえません。

日本はプレーが硬く、まだシュートやパスに迷いが見られ、攻めている割には質のよいチャンスをつくれません。

それでも41分、相手のクリアミスを拾った玉田が左サイドの角度のないところから思いきってシュートを放ち、ようやく日本先制。

ですが先制後もプレーにまだ迷いが見られます。

 後半早々、平山が投入され日本が香港を攻めたてる展開は変わりません。

20分、CKから闘莉王が高い打点のヘッドを決めて、ようやく追加点。

このあたりから香港の運動量ががっくりと減り、日本の攻撃が機能し始めます。

37分、ショートコーナからゴール前へ入ったボールに日本が波状攻撃、相手ともつれてこぼれたボールを玉田が押し込んで3点目。

しかしこの後が続かずタイムアップ。勝利するも3点差という優勝を狙うには不満の残る結果に。

 それでは試合内容を見ます。

まず守備からですが、プレスも良くかかり安易に相手に飛びこむことも無くなって、前回の問題点がかなり修正されていました。

ただ一点だけ、試合の後半に闘莉王選手が日本のゴール前で長くドリブルを続けて相手を抜きにかかっていましたが、安全第一のディフェンディング・サードでは絶対にやってはいけないプレーというのは指摘しておきます。

ミスパスからボールを失った時レフェリーが笛を吹いてくれたので助かりましたが、カメルーン以上の相手なら即失点は覚悟のケース。

闘莉王選手も前の選手がなかなか点がとれなくてイライラしていたのだと思いますが、二度とあってはいけません。

 攻撃面も前回より少し良くなっていましたが、まだ大事に大事に行こうとしすぎてプレーに迷いが見られます。

中盤の組み立てではパスの受け手の「顔出し」が増えたのですが、パスを出すほうがまだ迷っています。

どこへパスやクロスを出そうかグズグズ迷っているうちに香港が守備組織を整えてしまい、そうこうしているうちにフリーの味方がいなくなってバックパスというパターン。

上がった両サイドバックが「バックパス専用選手」になってしまう時というのは、日本の攻撃リズムが悪い時でしょうね。

グズグズといっても時間にしてほんの3~4秒ぐらいですが、それが大きな差を生んでしまいます。

選手に「ボールを失ってはいけない、大事にパスを出そう」という思いが強すぎるので、どこへパスを出すか迷いが生まれ、それが攻撃リズムを失わせてなかなかゴールという結果がでない。

結果がでないと「大事にパスを出そう」という思いがさらに強くなってしまうという悪循環です。

自分より前にフリーの味方がいて十分パスが通ると判断できるなら、オートマチックにパスを出して自分は次のスペースへ動くということをチーム全体の約束事にしておくべきでしょう。

ボールが自分より相手ゴール近くにいるフリーの味方に渡って、得することはあっても損することはないじゃないかと割り切ったほうが良いです。

 アタッキングサードでも同様に「結果が出ていないから大事に行こう」としすぎてなかなかシュートを打とうとしません。

FWもシュートを打つことにまだためらいが見られますし、日本の場合、攻撃的MFのゴールが少なすぎます。

しかし玉田選手の先制点を見ればわかるように、シュートを打たなければゴールはあり得ません。

もし玉田選手が「角度がなさすぎるから、確率の高いところにいる味方にパスしよう」と考えてプレーしていたら、当然あのゴールは幻となっていましたし、この試合もスコアレスドローに終わっていたかもしれません。

どうして日本人選手はアタッキング・サードに入ってもシュートすることをためらうのか、消極的で弱気という日本人の民族性もあるのでしょうけれど、まず第一に「プレーの優先順位」というものを、ユース年代までにキッチリ叩きこまれてこなかったからではないかと思います。

攻撃戦術の鉄則としてまず最初に叩きこまれなければいけないのは、「自分がボールを持ったら、相手のフィールドプレーヤーが前に立ちはだからない限り、相手ゴールまで最短距離のルートをなるべく速いスピードでドリブルしていって、自分がそのままシュートを決める」です。

自分の前に相手のフィールドプレーヤーが現れて初めて、パスをするのかドリブルで抜くのか、それとも相手の前からシュートを打ってしまうかという選択をすることになります。

攻撃戦術の最初歩
(クリックで拡大)

Jリーグなんかを見ていますと、ハーフウェーラインあたりまで相手DFが押し上げていて、そのウラへボールが出てFWがうまく抜け出してカウンター、後はGKと一対一という場面で、そのFWがドリブルのスピードを緩めて「タメ」をつくり、左右をキョロキョロしながら味方が押し上げてくるのを待っているというシーンを見かけてガックリすることがあります。

(なんでもかんでも「タメ」をつくれば良しとするのは日本サッカー界の悪いところでしょう)

味方の押し上げを待つということは、相手DFが戻ってくるのを待つということでもあり、それではせっかくの得点チャンスをむざむざドブに捨てるようなものです。

どうしてこういうことが起こるのかというと、選手が「自分の前にゴールマウスとGKしかいなかったら、自分自身がシュートを打つ」ということが絶対的に正しいという確信を持っていないからでしょう。

なぜそうした確信を持っていないかといえば、前述のような攻撃戦術の初歩を子供の時からキッチリと叩きこまれていないからとしか思えません。

その代わり、日本のコーチや解説者がシュートを外した選手に「フリーの味方にパスすれば良かったのに」という結果論で批判するから、まじめな選手は余計に迷ってしまいます。

「自分がボールを持ったら、相手のフィールドプレーヤーが前に立ちはだからない限り、相手ゴールまで最短距離のルートをなるべく速いスピードでドリブルしていって、自分がそのままシュートを決める」

日本代表レベルの選手なら常識であると信じたいですが、この攻撃戦術の初歩を今一度確認して体で覚えさせることです。

たとえば、フィールドプレーヤー全員にセンターサークルあたりからゴールまでの最短距離をできるだけ速くドリブルしていって、自分でシュートを決めさせるという練習はどうでしょうか。(もちろんGKをつけます)

練習のための練習にならないように、スタッフに各選手のシュート決定率を記録してもらって、監督から「誰を使うか迷ったらシュート決定率の高いやつから使うからな」と選手に宣告して実戦さながらのプレッシャーをかけます。

そして「自分の前にゴールマウスとGKしかいなかったら、自分自身がシュートを打つ」ということが絶対的に正しいという確信が持てるまで、練習することでしょう。


 次に頭に叩き込んでおくべきなのは、ボールがピッチのどこにあるかでプレーの優先順位が変わるということです。

優先順位
(クリックで拡大)

ピッチを三分割した場合の自軍ゴール寄りであるディフェンディングサードでボールを失えば即失点の可能性があり、何よりも安全第一のプレーを心がけなくてはいけません。

そこではドリブルで相手を抜きにかかったり、背中に敵選手を背負ったままボールを持って前方へターンすることは避けるべきです。

ヒールキックによるパスなど不確実性の高いプレーもご法度。

続くミドルサードは、攻撃を組み立てボールを前へ運ぶためによりリスクをかけても許されるゾーンです。

ただし、DFラインでボールを失えば後はGKしかいません。ボランチで失えばDFライン一枚しか守りはいなくなります。

たとえチーム全体がミドルサードにスッポリ入っていても、DFやボランチのラインではやはり安全第一が求められます。

相手ゴールに近いアタッキングサードでは、ゴールするためにボールを失うリスクをおかすことが許されるゾーンです。

ゴールするためのシュートやラストパス・クロスは、ここまで大事に運んできたボールを思いきって手放すことで初めて可能になります。

ミドルサードからアタッキングサードに入った時点で、特にペナルティエリアの中とその周辺部では、「ゴールするためにはシュートしなくてはいけない。そのためならボールを失っても良いんだ」という頭の切り替えをしっかりできないと、パスはさんざん回ったけど1点も取れずに負けたということになってしまいます。

これが三つのゾーンごとのプレー優先度の違いです。

スコアレスドローに終わった対中国戦において、選手達は監督から「サイド攻撃を!」と強調されていたようです。

しかし、今お話した二つの攻撃戦術の初歩を選手達が知っていれば、両サイドからボールを前へ運んでアタッキング・サードに侵入した時点で頭が切り替わり、自分の判断でペナルティエリア内やその周辺では確信を持ってシュートを打てるはずです。

ところが監督の「サイド攻撃」という指示を最後の最後まで守り、ペナに入ってもまだクロスやプルバックのパスにこだわりすぎて、ゴールという結果がでない。

ゴールや勝利という結果が出ないから、「サイド攻撃」という監督の指示への不信感が頭をもたげて、香港戦では強引な中央突破ばかりになり、それでもなかなかシュートを打たないということは変わらないので、やっぱりスッキリとした勝利という結果が出ない。

ゾーンごとのプレー優先度の違いや「自分の前にゴールマウスとGKしかいなかったら、自分自身がシュートを打つ」ということを、日本の選手はユース年代までにしっかりと叩きこまれてこなかったのでは?と感じてしまいます。

 優勝のために大量点が望まれた香港戦でしたが、3点差で勝利という結果は物足りないものです。

特に攻撃面でプレーにまだ迷いと消極性が見られ、試合内容も今一つといったところでした。

練習と実戦経験を積むことで改善は可能だと思いますが、積極的か消極的か・強気か弱気かという問題は生まれついての性格や育った環境も大きいと思います。

結果が出ないから大事に行こうとしすぎるあまり消極性と弱気が顔を出し、なかなかシュートを打とうとしない攻撃の選手を見ていると、自信過剰ぎみの本田選手をFWとして起用したらどうだろうか、背中にDFを背負っていても強引に前を向いてゴールを決めようとする森本選手が見てみたい。

ついそう思ってしまいます。

シュートというチャレンジから逃げてしまう選手には、これからの伸びしろを感じません。

本田・森本両選手の潜在能力を考えれば、もしすぐには結果が出なくても本番までの残り少ない貴重な時間を使って失敗の経験を積ませても、何か得られるものがあるのではないでしょうか。

私が監督なら、ふてぶてしい彼らを本番までに何としてでもモノにしたいと考えますが...


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        2010.2.11 国立競技場(東京)


      日本   3  -  0   香港


      玉田  '41
      闘莉王 '65
      玉田  '82



     GK 楢崎        GK ヤ・フンファイ

     DF 駒野        DF リー・チホ
       闘莉王         ゴ・ワイチウ
       中澤         (ガイ 75)
       内田          ウォン・チンフン
       今野          チャン・ワイホ
      (平山 45)
                 MF スー・デシュアイ
     MF 小笠原         オーヤン・イウチャン
      (稲本 62)       レン・チュンポン 
       遠藤          クォク・キンポン
       大久保        (リー・ワイリン 69)
      (香川 76)       バイ・ヘー
       中村憲       
                 FW チャオ・ペンフェイ
     FW 玉田





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