■日本代表、ガーナに大逆転勝利

 オランダ遠征の2試合目となったガーナ戦は4-3で日本の大逆転勝ちとなりました。

今回対戦したガーナ代表は、チェルシーのエッシェンやインテルのムンタリら、イングランド・イタリア・フランスなど欧州各国でプレーする選手を集めたチーム。

ガーナを見るのは3年ぶりですが、以前よりかなり組織的になりましたね。

これも欧州主要リーグでプレーする選手が高い戦術理解力を獲得した効果なのでしょう。

試合前の段階で、もしW杯大陸間プレーオフであたったとしたら日本のホームで引き分け、ガーナのホームでガーナの勝ち、日本から見て1分1敗ぐらいの実力差と見ていました。

中立地で試合をやって4-3で日本の勝利という結果は、健闘と言えると思います。

ただ、ガーナ代表はW杯予選の激闘から中2日でこの試合にのぞみ、しかも予選のあったガーナからオランダまで一晩かけて飛行機で移動してきたわけですから、日本とコンディションが同じだったらどういう結果になったかも見たかったというのはあります。

(ガーナ代表の皆さん、大変お疲れのところ良いメンバーをそろえてくれて深く感謝します)

 それでは試合展開を振り返っておきます。

立ちあがりは両チームともプレスをかけあい、ショートパスを中心とした攻防が続く互角の展開。

15分、早いパスの組み立てから中村俊選手が絶妙のスルーパス、DFラインのウラでボールを受けた中村憲選手がGKと一対一になるもシュートはワクを外れます。

18分、左サイドから中へ切れこんだ岡崎選手が意表をつくシュート、これはGKがCKへと逃れます。

29分ガーナのCK。ファーポスト側に入ったボールにガーナの選手が合わせようとするが、マークを放してしまった長友選手が手でボールをはたいてしまい、PK献上。これをギャンが決めてガーナ先制。

前半は日本の方が決定的なチャンスをつくっていましたが決められず、ゴール前におけるたった一つのミスでまたしても先制を許してしまいました。

 後半2分、GKのキックが前線のギャンへ渡り、ギャンが一対一で中澤選手を振り切ってゴール。0-2となります。

8分、ガーナゴール前へ入ったボールが相手に当たって誰もいないスペースへこぼれます。これを中村憲が蹴りこんでラッキーなゴール。1-2とします。

このあたりからガーナは省エネモードへスイッチ。
組織的なショートパス攻撃が影をひそめ、ロングボールをシンプルに最前線の選手へと放りこむアフリカ伝統のスタイルへと切り替えてきます。

21分、正確なロングパスが日本のDFラインのウラへ出て、抜け出したアモアが都築選手をかわしてゴール。1-3と突き放されます。

後半30分をすぎると運動量が目に見えて減ったガーナ。
疲労もあったのでしょうが、たった一つの凡ミスから守備が大崩壊します。

サッカーにおいて、2点リードというのは大逆転劇を一番生みやすい点差であるわけですが、このあたりがW杯で優勝が狙えるオランダとガーナとの経験の差と言えるでしょう。

33分、ガーナの選手が自陣深くで長友にプレゼントボール。パスが玉田選手へ渡り、「玉田ゾーン」(相手ゴール左の角度のないところ)から放たれたシュートが決まって2-3と追撃の狼煙をあげます。

追われる側が一度こうなってしまうと、どんなに分かっていても崩れたチーム体勢を立て直すのは至難のわざ。

逆に日本代表はスタミナ増強剤でも注射されたように生き生きと走り回りはじめます。

モチベーションがサッカー選手のスタミナ持続に大きく関係してくるという好例ですね。得点は選手を良く走らせる薬となり、失点は足を止まらせる原因となります。

34分、稲本選手のピンポイントクロスをフリーで抜け出した岡崎がバックヘッドで決めてついに同点。

こうなると逆転は時間の問題で、38分長友の中央への折り返しを拾った稲本がミドルシュート!良くコントロールされたシュートが決まって逆転に成功。

日本が4-3で大逆転勝利をおさめました。

 この試合一番良かった点は、メンタル面で成長が見られたことです。

オランダ戦は、たった1点取られただけで「これで終わった」と下を向き、ガタガタと音を立ててチームが崩壊していったのですが、ガーナ戦では最後まであきらめず、勝ちにこだわってプレーできたところに成長の跡がうかがえます。

何でも勝ちにこだわるというのはサッカー選手として本当に重要なことで、どんな相手であっても絶対に忘れて欲しくないですね。

どんな相手であっても、油断して馬鹿にしてはいけないし、「絶対に勝てっこないよ」とリスペクトもしすぎない。

オランダ戦も「オレンジ色のユニを着たチームを相手に最後まで自分達のサッカーをやり通す。そして絶対に負けない」という気持ちを全員が持っていたなら、結果は違っていたかもしれません。

今の日本代表は、得点・失点によってモチベーションが大きく揺れ動きすぎで、強い相手との試合で場数をふんで、改善していく必要があります。

 つづいて攻撃からプレー面での具体的な内容を分析しましょう。

攻撃についてはオランダ戦に引き続き、ショートパスを中心とした人とボールが良く動く攻撃が機能していたと思います。

まだガーナが元気だった前半に、中村憲の一対一をつくりだしたパスの崩しは見事でした。

後半30分すぎからガーナの運動量が落ちると、日本のショートパス攻撃にガーナは全くついてこれなくなりました。

日本の豊富な運動量によって、身体能力の高さ・技術の高さというガーナのストロングポイントを無効化することができました。

こうした状況が大逆転劇を生んだのですが、これをW杯の本大会で実現させたいわけです。

 課題はオランダ戦と同様ですが、相手のバイタルエリアに入ってからの攻撃です。

さきほど述べた中村憲がGKと一対一になった場面、ファーポスト側を狙ったのは定石通りですが、少なくともシュートをワクに入れないと勝負になりません。

彼のことですから技術というよりメンタル面の問題でしょう。

これも強豪相手にシュートする場数をふんで、メンタルの強さを身につけていくしかありません。

もしガーナのコンディションが万全であったのなら、後半の大逆転はなかったかもしれません。それを考えると前半にいくつかあった決定機で決めて、相手の足が止まらなくても有利にゲームを展開したいところです。

 守備に関しては、中盤のプレスはまずまず良かったと思いましたが、スタミナ切れを心配したのでしょうか、ちょっとセーブしていたようでした。

オランダ戦は70分まで相手を無失点に抑えましたが、この試合は30分で先制を許してしまいました。

W杯本大会で自分より強い相手に先制されるとかなり厳しいです。

もしガーナの体調が万全であったら、1-3のままという可能性もあったと思います。

スタミナ切れを心配して体力を温存したとしても、負けてしまっては無意味です。

 それに加えてプレスをややセーブした分だけ、ガーナに正確なロングパスを許してしまいました。

日本代表は個の能力で劣勢なだけに、当たりの強さやテクニックの高さで一対一にめっぽう強い選手をそろえているチームとやるときは余計、正確なロングパスを許したくないものです。

まず、パスの出所にしっかりプレッシャーをかけて相手のロングパスを不正確なものにすることが欠かせません。

そしてボールの落下地点には必ずマーク&カバーの体制をしいて、一発で抜かれないようにします。


前々から気になっていたのですが、日本が相手を押し込んでいる時のDF陣のポジショニングが効果的ではありません。

(下の図 クリックで拡大)

ミス


たとえば相手が日本の陣内に一人だけFWを残し、こちらの両サイドバック(SB)が上がっている場合は、センターバック(CB)の一人がマークにつき、もう一人がカバーのポジションを取るのが基本です。


2対1

ロングボールが相手FWに渡っても、後ろのCBは自分の前にいる味方を追い越してまで焦ってボールを奪いにいく必要はありません。

相手FWが自分の前にいる味方をドリブルで抜くためにバランスを崩し、体からボールを放した瞬間を狙って奪います。

上図のように、後ろのCBはボールを持つ敵選手と味方ゴールの中心を結ぶ直線上に立ち、相手FWが左右どちらから前にいる味方をドリブル突破してきても良いように準備しておきます。

これはすべての守備の基本です。

もちろん、相手のロングボールが逆サイドに出る場合も想定に入れて、上がっているSBやボランチと協力してスペースをケアします。

相手が二人FWを残した場合は、CB一人とSB一人がマークにつき、残りのCBがスイーパーのポジションに入ります。

3対2

以上が、相手が個の能力で上回る場合や絶対に点をやれないので安全策を取りたいという時に、効果的なポジショニングのとり方です。

 これは攻撃の課題にしようかと迷いましたが守備にします。

中村俊や中村憲が典型的ですが、フィジカルが弱く、ボールを受けてからどこへパスを出すか考えることに喜びを見出すタイプの選手は、フィジカルが強いチームのプレスにとって格好の餌食です。

特に先制点をとられるきっかけとなったCKは、日本陣内のわりあい深めのところで中村俊が囲まれてボールを失ったところから始まったように思います。

中村憲も持ちすぎて何度もボールを失っていました。

相手のバイタルエリアまではパスの判断を速くして、シンプルなつなぎを心がけて欲しいです。

 そして、またしてもサイドバックのマークのズレから先制点を許してしまったわけですが、強豪が相手だとDFの一つのミスが試合を決定づけることになりかねず、今のままですと不安です。

バーレーンとの試合でも、サイドバックがたった一回競り負けただけで勝ち点3を失ったことがありました。

攻撃は前の6人でがんばって動いてもらうようにして、フランス代表のチュラムがサイドをやっていたように、サイドバックにセンターバックも務まるような、多少攻撃力の低下に目をつぶっても最低限守備に穴をあけない選手を入れたくなってしまいます。

そうでなければ、長友・内田・駒野といった選手にゴール前でのマークのつき方、ヘッドの競り方から猛特訓ですね。

GKの都築もベテランらしからぬ不安定さで、大変残念でした。

GKとセンターバックのポジションは、故障者が出ると途端に手薄になってしまいます。

レギュラー陣のバックアップ確保と次世代を担う人材育成の両面から、20代中盤以下の有望な若手を呼んで、チャンスをあげるべきでしょう。

 最後に本田選手の扱い方ですが、ゴールを取りたいから守備したくないというのも困ったものですが、以前言った通り、やはり守備の負担が少なく点を取るのが仕事であるFWに起用したらどうかと思います。

2トップの右側はどうでしょうか。

 まとめます。

ガーナ戦は4-3で勝利という結果も良かったですし、2点リードされても下を向かず、最後まで勝ちにこだわってゴールを狙いつづける姿勢が見れたことが大変良かったと思います。 

オランダ戦からメンタル面での進歩がうかがえ、選手たちも自信をつけることができたと思います。

たとえオランダのような強豪であっても、たとえ相手の体調が万全であっても臆することなく、是非こういうサッカーをW杯で見せて欲しいものです。


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2009.9.9 スタディオン・ニューヴ・ハルヘンヴァールト
            (ユトレヒト)


      日本  4  -  3  ガーナ

    中村憲 '53       ギャン(PK)'31
    玉田  '78       ギャン   '47
    岡崎  '79       アモア   '66
    稲本  '83


   GK 都築        GK R.キングストン
                   (アマムー 45)
   DF 駒野  
     闘莉王       DF アフル
     長友           メンサー
     中澤          (アッド 45)
                   ペイントシル    
   MF 遠藤          ボルサー
      中村俊        
     (本田 69)     MF アナン
      中村憲         (アッピア 45)
     (阿部 89)        L.キングストン
      長谷部         (インコーム 63)
     (稲本 53)        ドラマニ
                   (アモア 45)
   FW 岡崎           ムンタリ
     (興梠 84)       (ディッコー 86)
      前田           エッシェン
     (玉田 69)    
                 FW ギャン




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■サッカーへの思い [ボウヤ]

アメリカでは、チェンジを掲げてオバマ氏が大統領になった。日本も、新しい政治を掲げて民主党が政権を取った。

一方、日本代表のサッカーは、負けないために小さくまとまろうとしている。しかし、成長するためにはもっと大胆なサッカーが必要だ。

「中村俊と遠藤のサッカーに本田と松井がマッチするか」という発想だと、「本田と松井は代表に不要または後半のオプションにしか使えない」という結論になる。しかし、「本田と松井のサッカーに中村俊と遠藤がマッチするか」と発想を変えれば、別の選手が見えてくる。

このような発想の転換は、岡田監督には不可能だが、サッカーファンなら可能だ。

注)選手はJなどのリーグで成長しなければならないが、日本が成長していることを世界に証明するには日本代表の試合しかない。
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