■日本代表、残念なドローも収穫あり

 W杯最終予選ウズベキスタン戦にむけたテストマッチである対UAE戦はドローに終わりました。

対戦相手のUAEは国内リーグでプレーする選手で固めたチーム。
ホームでもアウェーでも日本が勝てるぐらいの実力差はあると評価していました。

それからすると1-1で引き分けという結果はかなり残念なもので、これが予選本番であったなら負けに等しいドローといったところでした。

それはひとまず置いておくとしてもこのテストマッチ、どちらからオファーしたのかわかりませんが、もし仮想ウズベキスタンとして日本側がマッチメイクをしたのであればかなり疑問です。

2007年アジアカップのときと変わっていないのだとしたら、ウズベキスタン代表は白人選手を中心にスピードとパワーを生かして、ヨーロッパ的なきれいな組織サッカーをしてくるチームです。

しかし伝統的にUAEは、アラブ人と黒人、その両者の混血選手を中心に柔らかいテクニックを生かして、守ってカウンターを狙う典型的な湾岸アラブスタイルで全然別のチーム。

もし仮想ウズベキスタンということであれば、ちょっと実力が落ちるのですが、民族やサッカースタイルがより近いと思われるタジキスタン・トルクメニスタン・キルギスといった中央アジアのチームとやった方が良かったのではないでしょうか。

11月の予選・カタール戦の前にシリア代表とのテストマッチが組まれていますが、シリアはカタールと同じアラブとはいっても黒人選手をあまり見かけず、スピードとパワーを生かした縦に速いサッカーが伝統ですし、ウズベキスタン戦の前にシリア戦を持ってきてカタール戦の前にUAE戦を持ってくるというならまだ話はわかるのですが、その逆というのは代表や協会のスカウティングがどうなっているのか理解に苦しみます。

 それでは試合展開を振りかえります。

試合は予想通り、完全に日本ペース。

UAEの組織的攻撃力が低いので、プレスからかなりボールを奪うことが出来ました。

ボールを奪取してからのショートパスの組み立ても、稲本・長谷部の両選手を基点として上々の出来。あとはアタッキングサードに侵入してゴールするだけでした。

4分の中村俊選手のFKを皮きりに、14分岡崎選手の振り向きざまのシュート、25分寺田選手のヘッド、45分大久保選手のヘッドと惜しいチャンスがありながら決められず。

 後半も引き続き日本が主導権を握ります。

後半も中村俊のFKを皮きりに、10分玉田選手のラストパスを大久保がバーの上にフカし、11分にも大久保が強引にシュートしますがGK正面。

しかし後半から投入された興梠選手がUAE守備陣を混乱させ、27分、興梠のヘディングシュートがポストに当たって跳ね返ったところを内田選手がファー側へクロス、これを香川選手が落ち着いて決めて待望の日本先制。

ところが、FW・MF陣が前へイケイケになったところでUAEお得意のカウンターを浴び、アルハマディのシュートが高木選手の足に当たってゴールイン。

たった5分間で追いつかれ、その後香川の惜しいシュートが2本ありましたが、そのままドローとなってしまいました。

 それでは試合内容を攻撃面から見ていきましょう。

ミドルサードまでの攻撃の組み立てはかなり良かったと思います。

前回のバーレーン戦と比べると無駄に持ちすぎる選手もあまりおらず、パス判断のスピードや球離れが良くなっていましたし、ボール保持者へのサポートも改善されています。

中盤の組み立てにおける両ボランチの貢献も大です。

長谷部が攻守に効いているのはいつものことですが、特に稲本選手が素晴らしい出来。

ボールを奪って相手の攻撃の芽をつむと、すぐさま的確にボールを散らし、2列目やFWを追い越してのオーバーラップによる攻撃参加で中盤の組み立てを活性化させていました。

ただチーム全体として、パスが出せる最初のタイミングでパスを出さず躊躇してしまう場面もあり、中盤のオートマティズムについてまだまだ改善の余地はありそうです。

 アタッキングサードの攻撃については、サイドから相手GKとDFラインの間にグラウンダーのクロスを入れる攻撃がこの試合の課題となっていたようでした。

ですが、前半の前半は中央突破にこだわりすぎていたようです。

前半の後半からサイド攻撃をボチボチ入れ始めましたが、サイドから入れるグラウンダーのクロスの精度が今二歩ぐらい。

トラップしないダイレクトキックからでも精度の高いクロスが行くよう、各選手はしっかりと練習を積んでほしいです。

本番では、浮き球でも良いので、サイドをえぐらずに入れるアーリークロスをもっと使っても良いと思います。

 アタッキングサードの攻撃の総仕上げであるシュートですが、この精度の高低が日本と世界との差と言えるでしょう。

ファンの方には申し訳ないですが、神戸でのプレーはともかく、大久保は代表戦となるとどうしても精神の乱れがシュートの乱れとなってあらわれてしまう気がします。

フリーでシュートを打った決定的なシーンが2~3度ありましたが、いずれもゴールマウスさえ捕らえられません。

こればっかりは実戦で経験と自信を上積みしていくほかありません。香川もヘディングを良く練習しましょう。

この試合バーレーン戦と比べると、先制するまでシュートやゴールへの意識がやや弱かったように思いました。

 つづいて守備面です。

UAEの攻撃面での組織力が低かったこともありますが、中盤からのプレスが機能して良くボールを奪えていたことはとても良かったです。

特に両ボランチがプレスの要となって効いていました。

 日本の攻守両面でなかなか解決されない問題として、FWからDFラインまでの距離が間延びして、得点を焦って前へ行きたがるFW・2列目と、ウラを取られるのを恐れてズルズル後退する最終DFラインという二つのチームに分裂してしまい、ちょうどボランチの前後に広大なスペースをつくってしまうということがあります。

この前のウルグアイ戦で守備が大崩壊したのは、ボランチの前後にできた広大なスペースを使われたからでしたが、この試合も失点の原因はそれでした。

前半はともかく試合の後半、日本のFWからDFラインまでの距離がどんどん間延びしていって、しかも稲本をベンチに下げたことによりボランチのスペースをカバーする選手が足りなくなってしまいました。

そして待望の先制点を取った後、ボランチからFWまでがイケイケになってしまって、DFラインだけが後方に孤立。DFラインの前にぽっかりと広大なスペースをつくっていました。

そこでUAEのカウンターを浴び、相手の攻撃陣とこちらの守備陣がほぼ同数という形をつくられてやられてしまいました。

新潟はサッカーのやりやすい涼しい気候だったはずで、FWからDFラインまでコンパクトにできないというのは戦術意識の問題でしょう。

特にUAEのようにロングボールからカウンターを狙うチームは、相手自身が間延びしやすいので、こちらも意識的にコンパクトな布陣を心がけていないと、相手につられて間延びしてしまいます。

試合の後半になると少しきついでしょうが、コンパクトな布陣と選手間前後の距離を常に意識してほしいです。ボランチの前後に広大なスペースを自らつくってしまえば致命的なピンチとなります。

 個人に関しては、前述のように稲本が攻守に良く効いていました。

そして前半の後半から徐々に消えてしまいましたが、岡崎もシュートへの積極性・パス判断の速さ・運動量で光るものを見せ、興梠も持ち前のスピードで相手守備陣をかきまわし混乱に落とし入れていました。

興梠は先輩に遠慮しているのかシュートをためらってパスしてしまう場面がありましたが、先輩・後輩なんて関係ありません。積極的にどんどんシュートを打って欲しい。

この試合、興梠・岡崎ら若手のフレッシュなプレーは収穫でした。

先制ゴールにつながった香川の先のプレーを読んだポジショニングもすばらしいです。

若手FWを玉田や大久保といった選手と競争させて、沈滞ぎみの代表FW陣にカツをいれたいもの。

実力さえあるのなら南アフリカのピッチに立っているのが興梠・岡崎・森島でも全然かまいません。

大分の金崎選手も代表に呼んでどれだけやれるか、個人的には1.5列目あたりで見たいところです。のびしろを考えてじっくり育てても良いと思います。

 最後に試合と直接関係ありませんが、W杯予選からここ何試合かでとても気になっていたことを。

試合前に両チームと審判団がメインスタンドに向かって整列し、招待されたVIPと握手をするセレモニーがあります。

その時、各チームのキャプテンがまず先頭のVIPに自己紹介して握手した後、自チームの選手を紹介しながらVIPをエスコートして先導し、列の最後まで行ったらキャプテンは選手の列に加わって二人目以下のVIPと握手するというのが、サッカーにおける外交プロトコール(儀礼)になっています。

で、UAEのキャプテンはそれができていましたが、日本代表の場合アジア3次予選のときもそうだったのですが、それができていません。

本来なら日本サッカー協会会長以下、監督・コーチといった指導者がそうした外交プロトコールを理解した上で代表キャプテンに教えてあげるべきですが、それもできていません。

ザルツブルグの宮本選手が代表キャプテンだったときは、できていた気がするのですが...

一見小さなことですが、サッカー文化の成熟度や国際化において日本がどのレベルにあるか、世界から判断される一つの基準ともなりますので、次回からは招待客をほったらかしにしないようお願いします。

 この試合、1-1という結果は大変残念なものでした。

ただ、試合内容はまずまず良かったですし、UAEレベルではこちらの若手FW陣もかなりやれるということがわかったことは収穫です。

あとはアタッキングサードでゴールを決めるだけでしたがシュートの正確性に欠け、ディフェンディングサードで戦術理解の不足から失点を招いてしまいました。

1点を取ったり1点を守ったりという試合結果を左右する重要なところで、日本代表はまだまだ理解と経験が不足しているようです。


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  2008.10.9 東北電力スタジアム(新潟)


  日本  1  -  1  UAE


'72 香川       '77 アルハマディ


GK 楢崎       GK M.ナセル

DF 中澤       DF H.アリ      
  長友          B.サイード
  内田          A.マララー
  寺田         (M.オスマン 46)
 (高木 46)       O.メサリ
               F.ジュマー
MF 中村俊
  (香川 70)    MF M.イブラヒム
   稲本         (N.ムバラク 64)
  (中村憲 65)     Y.ジャベリ
   長谷部        A.ムバラク

FW 玉田       FW I.マタル
  (興梠 57)       アルシェヒ
   大久保        (アルハマディ 75)
  (佐藤 82)
   岡崎
  (巻 82)



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