■バーレーン戦、繰り返された失敗(前編)

 W杯アジア最終予選が開幕し、日本はアウェーでバーレーンと対戦して3-2と勝利をおさめました。

対戦相手のバーレーンですが、クウェートやカタールのリーグなどでプレーする海外組と国内組からなるチームであり、「日本よりも実力的に下でアウェーでも勝たなければならない相手」という私の戦力評価は以前から変わっていません。

3次予選対バーレーン戦(アウェー) 

3次予選対バーレーン戦(ホーム)

3次予選の結果を振りかえってみても、バーレーンはホームにタイとオマーンを迎えて引き分けることしかできませんでした。

日本とタイ・オマーンとの実力差を考慮すれば、バーレーンとのアウェー戦で日本がタイ・オマーン以上の結果、つまり勝利を得ることは十分可能と見るべきでしょう。

それを踏まえると3-2で日本の勝利という今回の結果は順当なものです。
ただ、試合内容には多くの点で疑問と不安が残りました。

 まず試合経過をおさらいしておきましょう。

 試合は立ちあがりから攻守に積極的な日本ペース。

プレスをかけてボールを奪うと、ショートパスで攻撃を組み立てていきます。

敵最終ラインを決定的に崩すところまではいかないものの、数多くアタッキングサード内に侵入できたため、ゴールに近いところで相手からファールを受けてセットプレーのチャンスを得ます。

前半18分、ゴール右前で得たFKのチャンスを中村俊選手が直接決めて待望の日本先制。

しかしジーコジャパン時代からそうですが、日本は1点リードすると「やれやれ点が取れた。ふー、どっこいしょ」とばかりに一服モードに入ってしまい、チーム全体が消極的な守りの姿勢に入ってしまう傾向があります。

結果こそ違えども、2000年アジアカップのオマーン戦(重慶)しかり、ドイツW杯予選の北朝鮮戦(埼玉)しかり、ドイツW杯本大会のオーストラリア戦しかりです。

ここからバーレーンが攻勢に出て日本は再三押し込まれますが、これはあえてボールを持たせて攻めさせているというよりも、ゲームのコントロールを失ってガンガンに攻めこまれている危険な状況でした。

私は「このまま無失点でいけば1-0で日本の勝ちだが、もし1点でも失えば攻め手を完全に失っている日本はガタガタッと来て、オーストラリア戦のような大逆転負けもあり得る。なんでベンチが手をこまねいて見ているのか!」とヒヤヒヤしながら見ていました。

中澤・闘莉王の両CBを中心に何とか相手の攻撃をしのいでいるうちに、数少ない反撃から再び相手陣内でセットプレーのチャンスを得ました。

44分、こんどは左サイド奥からのFKを遠藤選手がゴール前中央へ戻し、これを中村俊がシュートしますが、相手選手がシュートを手ではたき落としてPKゲット。

これを遠藤が決めて2-0とし、前半終了。

 後半もバーレーンが猛攻に出て、反撃手段とゲームのコントロールを失っている日本は依然として危険な状態。

日本が何とか守備でふんばり、後半20分を過ぎるとバーレーンがスタミナ切れを起こして流れは再び日本に。

足が止まったバーレーンに日本はカウンターで反撃。

40分、中村憲選手のミドルシュートが相手に当たってコースが変わりそのままゴール。3-0とします。

このゴールの数十秒前に、岡田監督は守備固めのために今野選手を投入していますが、これがゲームの流れを一変させてしまいます。この試合最大のターニング・ポイントだったと言えるでしょう。

交代直後の42分、バーレーンが右サイドからグラウンダーのクロスを入れると、今野の目前にクロスが来たにもかかわらずクリアしないでスルー。

それがペナルティエリア内にいたサルマン・イッサに渡り、マークを外されてシュート、日本が1点返されました。

これで明らかに動揺が走った日本。

バーレーンがロングボールを蹴りこんで来て、それに応対した闘莉王が前方へヘディングクリアすれば何でもないところでバックパス、このボールがGKの楢崎選手と入れ違ってしまいオウンゴール。

バーレーンサポが大騒ぎをはじめスタジアムが異様なムードに。
どちらがレッドを出されて1人少なくて、どちらが勝っているのかまるでわかりません。

ロスタイムは3分、楢崎の安定したセーブと相手の不正確なシュートに助けられて、日本はどうにかこうにか最小得失点差で勝ち点3を得ることができました。

 いつかのエントリーで書きましたが、サッカーとは消極的で弱気なチーム・監督・選手が罰を受けるスポーツです。

「外れたらどうしよう」と考えてシュートから逃げパスを選択する。
ペナルティエリア内でそんなことを考えている選手ばかりでは絶対に得点できません。

「マークに行って抜かれたらどうしよう」と考えて、みんなが相手選手のマークを押しつけ合い、シュートコースを消しもせず、ただ相手がすることを黙って見ていたら失点しないほうが不思議です。

 この試合の最大のターニングポイントとなったのは、後半40分の今野投入でした。

後半42分、バーレーンがグラウンダーのクロスをゴール前へ送り、それが今野の目の前に来ますが、今野は走るスピードをダウンさせて見送っています。

TV解説者は失点は内田のミスとしていましたが、確かに応対に問題が無かったわけではないものの、そもそも今野が走るスピードをゆるめず簡単にクリアしていれば、その後のサルマン・イッサのフェイントもシュートも無かったわけです。

しかも、酷暑の中ほぼ90分走りまわってきた内田・中澤・阿部・闘莉王らと違って、今野は投入されたばかりのフレッシュな選手のはず。

その選手がゲームをぶち壊すような、こんな消極的なプレーをしていてはダメ。

今野の愚直なまでのひたむきなプレーは買います。たぶん人柄もすごく良いのでしょう。

日本における彼への評価も高いようですが、東アジア選手権の日韓戦で、ペナルティエリア内で足をすべらせて失点の一因となるなど、インターナショナルレベルでの「経験」が無さすぎます。

上記リンクの記事で、

次にCBですが、まず自分のヘソをタッチライン沿いに居る選手ではなく相手陣地方向に向けていれば、クロスと相手選手の両方を視界に入れることができますから、慌てて足を滑らすようなことも無くて済みます。



と書きましたが、「武士の情け」で名指しはあえて避けたものの、ボールウオッチャーになって慌てて足を滑らせたCBというのは今野のことです。

クラブに戻ってトレーニングを積んで、もう一度代表にチャレンジして欲しいです。

 そして最大の問題は岡田監督の消極的な采配。

前述のように、日本がガタガタッと崩壊しそうな危険の予兆は前半からありました。

日本は先制してから攻め手とゲームのコントロールを失って、ガンガンに攻めこまれ続ける危険な状況でした。

流れが悪いならゲームが切れたときにでも、「中盤の4人で攻めの組織をもう一度立て直せ。FW2人とMF2人の最低4人だけでも良いから、機を見てもう一度ゴールを狙え」と監督から指示があるべきです。

それでも流れが変わらないなら、もっと早めに交代選手を入れるなりして攻めの組織を立て直し、弱気になって守りに入ろうとしているチームに積極性を与えるべきでした。

ただ、相手の攻撃レベルの低さに助けられ、危機は表面化はしませんでした。
そのうち願ってもない追加点が日本にもたらされます。

 ここで岡田監督は守備固めに今野を入れたわけですが、攻撃ではうまく流れがつくれないものの、闘莉王・中澤・阿部・内田の最終ラインと遠藤・長谷部の両ボランチでつくる守備組織は、良い流れで来ていました。

ここであえて良い流れで来ていた守備組織をいじり、長谷部を外して今野を入れたのですが、監督による「守りに入れ」という選手交代のメッセージは、自らの弱気と必死に戦い、攻めの気持ちをもった守りをして最後の一線でふんばりファイトしていた選手たちを一気に消極的な守りの姿勢に入らせることになってしまったと思います。

今野の消極的プレーがたちまち失点を誘発、それまでがんばっていた闘莉王に弱気が伝染、下がりながらのいくぶん難しいヘッドでしたが、前へクリアすれば何でもないロングボールをバックパスし、楢崎と入れ違いでオウンゴールになってしまいました。

GKへのバックパスはゴールマウスを外して行うというのは鉄則ですが、それよりも最初の失点が無ければ、その前に岡田監督が守備組織をいじって流れを変えなければ、オウンゴールも無かったかもしれません。

流れが良いときは、ピッチの中をいじらないというのは采配のセオリーと言われます。

うまくいっていない「流れの中からチャンスをつくる攻撃の組織」をいじらず、それまでうまくいっていた守備組織をいじって自滅。

勝ち点3がとれたのは、選手たちと幸運のおかげと言わざるをえません。

 これで思い出すのが98年W杯アジア最終予選の日韓戦(国立)です。
リアルタイムで見ていない人のために振りかえりますと、

日本は山口の芸術的ループで先制し、組織力で韓国を押し続けます。

しかし加茂周監督は後半30分近くに、FWの呂比須を外してDFの秋田を守備固めで投入。

秋田はどのスペースの誰をマークするのかあやふやなまま、ピッチをさ迷います。

これでFWが1人欠けた日本の攻勢がストップし、一転して韓国がガンガンに押してきます。

ほどなくして同点ゴールを許すとチーム組織はガタガタに崩壊。

呂比須にマンツーマンでついていたイ・ミンソンがフリーとなって駆け上がり、逆転ゴールとなるミドルを浴びました。

結局、加茂氏も「消極的で弱気なチームは罰を受ける」というサッカーの掟によって敗れ去りました。

「流れが良いときは、ピッチ内のその部分をいじらない」

「守備固めと称して、消極的で弱気な采配はしない」

というのが、あの時日本サッカー界全体が学んだ教訓であり、永遠に語り継がれていかなければならない貴重な経験です。


その師匠の失敗を岡田監督は目の前で見ていたはずですが、今回のバーレーン戦で二度と繰り返してはいけない同じ過ちを繰り返してしまいました。

弱気になりそうな選手に勇気を与え、90分ファイトさせなくてはいけない監督が、一番弱気になってしまいました。

 日本は1点リードするとチーム全体が消極的な守りの姿勢に入ってしまい、攻め手とゲームのコントロールを失って、もし1点でも取られるとチーム組織がガタガタッと崩壊し立て直しがきかなくなる、続けざまに2点3点と失点してしまうというのが、W杯ドイツ大会のオーストラリア戦から学んだ苦い教訓でした。

98年W杯アジア最終予選の教訓と06年W杯の教訓、その苦い教訓から日本は多くのものを学んだはずでしたが、なんど同じ過ちを繰り返していくのでしょう。

我々は、なんど良い経験をしなければいけないのでしょうか。


 試合結果と試合内容を分けて分析しなければ、それが順当勝ちなのか、まぐれの勝利なのかを理解できません。

「勝てば、結果オーライ」で済ませた方が楽です。

しかしそれでは何度でも同じ失敗を繰り返すことになるでしょう。今回のように。

次回につづきます。



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■コメント

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岡ちゃんてなんでいつも守備固めで今野使うんだろうね。
あそこで変えるのならバテて余計に走らないヤットかえるべきだったかな?もしくは巻みたいにプレスがんがんかけるタイプとかねぇ。
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